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Episode 29 元の世界へ
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床に倒れたジャンの傍に、駆け寄る。
「ジャン!!ジャン!」
彼の頬や手に触れる。抱き起こしたいけれども、ズップリと深く刺さった3本の矢を見て、体を動かして良いのか分からない。戸惑って、オドオドするばかりの自分にイライラする。早く!早く助けなきゃ!という焦り。
このままじゃ、死んじゃう・・・そう思った瞬間に、自分の体が、信じられない程にガクガクと目に見えて震え上がる。
「ジャン・・・!嫌だ!死んだらヤダ!・・・やだ!ヤダヤダヤダヤダ!ジャン!!」
縋りついて泣き出した私を見て、ヒタヒタと近づいて来る足音。
グイッ!!っと、急に肩を掴まれて、後ろを強引に向かされた。
「ルナベル!!なぜ、縋って泣く?やはり、そいつが好きなのか?!」
眉間に皺を寄せて、物凄い形相で睨まれて、一瞬怯む・・・けれど、私はそれどころではなかった。ジャンのことで頭が一杯だった。
「答えろ!!おまえは、この男を愛しているのか?!」
大粒の涙が、とめどなく溢れてきて、もう胸も一杯で苦しくて、勝手に、しゃくりあげはじめていた。頭の中だけが、ぐるぐると動顛していて、こんなの現実じゃないと思えてきていた。
だけど、1つだけ解る。
「・・・愛してる・・・。わたしっ、ジャンを愛してる。」
そう言った瞬間に、勢いよく押し倒された。そのまま、首を締め上げられる。
「あっ・・・ぐっ!!」
アンドリュー王子は、私の上に馬乗りになり、両手で首を絞めて言った。
「許さんっ!!おまえは私の女だ!なぜだ?!ルナベル!なぜ、心変わりをした!!」
・・・!!い・・・息が出来ない!!
王子が本気で殺そうとしているのが解る。
その顔は、嫉妬で憎悪に歪んで、目だけが泣いているように見えた。
・・・違うって言ってるのに。
・・・・もう・・・いいや。もういい。だって・・・だって、ジャンと一緒なら・・・もう、いい。
私は、最後の力を振り絞って、手を伸ばした。
ジャンに触れたかった。死ぬなら、一緒が良かったから。
必死に伸ばした手を・・・・大きな手が掴んだ!
次の瞬間に、フッと、体が軽くなる。
ドゴオッ!!
っと音がして、アンドリュー王子が吹き飛んだ。
「ゲホッ!!ゴホッゴホッ・・!!」
急に新鮮な空気が肺に流れ込んできて、私は咳き込んだ。
目を開けると、ジャンが起き上がって、四つん這いで私の上に居た。片手で、私の手を握りしめて、もう片方の手は竜の手に変化している。その手の大きに驚き、凝視してしまう。
「ジャン・・・?!」
顔を少し歪ませて、ジャンは私を抱き起しながら、自分も立ち上がる。
片方の腕だけが、肘から下が竜の手になっていて、他は人間のままだった。
「ぐっ・・・!」
痛そうに顔を歪ませると、フラつく。
「ジャン、大丈夫?」
「大丈夫だ。ルナ、今だ。走れ!」
出入口を見ると、誰もいない。
兵士達は、吹き飛んだ王子に駆け寄って、無事を確かめている所だった。その一瞬の隙を見て、私たちは出入り口に走った。
それに気がついた数人の兵士が、近づいて来る。
「止まれ!」
ボウガンを向けられ、ジャンは私の手を引いたままで、走り抜ける。
兵士が放った矢が、ジャンの竜の腕に、そして背中に刺さった。けれど、そのまま出入口を抜ける。
階段を降りた先がエントランスなのに、そこから10名ほどの兵士が向かってくる。それを見て、ジャンは、建物の上に向かい、一番奥の部屋に2人で入った。すぐに内側から鍵をかける。
「はぁっ、はぁっ、、かはっ!・・・はぁ!はっ・・・」
ジャンの息は荒く、背中からは血が出て止まらない。さっき射られた腕の矢は、腕を貫通して刺さっている。肩に刺さった矢も、背中から射られて、右肩から先端が飛び出ていた。
「ジャン・・・!」
「ルナ・・・鏡がある・・・」
「え?」
ジャンは、部屋中をくまなく見渡して、大きな鏡を見つけた。そこまでふらつきながらも近づく。私は、彼を支えながら一緒に行く。
「ジャン?」
ゼェゼェ・・・ハァハァ・・・と、荒い呼吸を整えながら、ジャンが鏡に触れると、手の血が鏡につく。すると、鏡の中には、元の世界が映し出された。
鏡に映し出された場所。それは私の部屋だ。
「良かった・・・時空の扉が開いた。ルナ・・・行け。」
ジャンが、私の背中を押す。
ドカ!!バキッ!バキッ!っと扉を、け破ろうとする音。兵士達の声。
「ジャンも・・・一緒に行こう?」
そう言うと、ジャンは悲しそうに、それから嬉しそうに笑った。
「ルナ・・・愛してる。」
ジャンは私を抱き寄せて、噛みつくようにキスをする。
私も目を閉じて、それを受け入れた。
キスをしたまま、ジャンはルナの体を鏡の中に押し込んでいく。
体の殆どを鏡の中に入れると、唇を離して、ルナの体を勢いよく突き飛ばした。
ドン!!っと突き飛ばされて、元の世界の部屋に、尻もちをつく。
「ジャン・・・?」
ジャンは、笑って私を見下ろす。
笑った、その表情は一瞬だけで、そのまま、金色の目が焦点を失ったように宙を見る。体が力を失って、崩れるように、ドサッと倒れた。
床には、ジャンの大量の血が水たまりのように広がっていた。
「ジャン・・・!!」
もう、立っているのも、やっとだったんだ。
片方の腕の肘から下だけが竜の手になったまま、ジャンは血の海に突っ伏して、動かなかった。その姿を見て、今更解る。
私を守るために、助ける為に、
最後の力を振り絞っていたこと。
竜の姿に戻る力すら、残っていなかったことに。
「ジャ・・・」
名前を呼び掛けて、鏡は私を映した。
鏡の中には、私の部屋と、今にも精神崩壊しそうな、私の顔だけが映し出されていた。
それは、何事も無い、日常を映し出していた。
何もかもが、夢だったみたいに。
「うっ・・・・!うわあああぁぁ!!」
訳も分からず、声を上げて泣いた。
もう、どうしようもないのに、ただ、ただひたすらに。苦しくて、苦しくて。泣き叫んだ。糸が切れたみたいに、気が狂ったかのように、ただひたすらに泣き叫んだ。
もう2度と、異世界への扉は開く事は無かった。
「ジャン!!ジャン!」
彼の頬や手に触れる。抱き起こしたいけれども、ズップリと深く刺さった3本の矢を見て、体を動かして良いのか分からない。戸惑って、オドオドするばかりの自分にイライラする。早く!早く助けなきゃ!という焦り。
このままじゃ、死んじゃう・・・そう思った瞬間に、自分の体が、信じられない程にガクガクと目に見えて震え上がる。
「ジャン・・・!嫌だ!死んだらヤダ!・・・やだ!ヤダヤダヤダヤダ!ジャン!!」
縋りついて泣き出した私を見て、ヒタヒタと近づいて来る足音。
グイッ!!っと、急に肩を掴まれて、後ろを強引に向かされた。
「ルナベル!!なぜ、縋って泣く?やはり、そいつが好きなのか?!」
眉間に皺を寄せて、物凄い形相で睨まれて、一瞬怯む・・・けれど、私はそれどころではなかった。ジャンのことで頭が一杯だった。
「答えろ!!おまえは、この男を愛しているのか?!」
大粒の涙が、とめどなく溢れてきて、もう胸も一杯で苦しくて、勝手に、しゃくりあげはじめていた。頭の中だけが、ぐるぐると動顛していて、こんなの現実じゃないと思えてきていた。
だけど、1つだけ解る。
「・・・愛してる・・・。わたしっ、ジャンを愛してる。」
そう言った瞬間に、勢いよく押し倒された。そのまま、首を締め上げられる。
「あっ・・・ぐっ!!」
アンドリュー王子は、私の上に馬乗りになり、両手で首を絞めて言った。
「許さんっ!!おまえは私の女だ!なぜだ?!ルナベル!なぜ、心変わりをした!!」
・・・!!い・・・息が出来ない!!
王子が本気で殺そうとしているのが解る。
その顔は、嫉妬で憎悪に歪んで、目だけが泣いているように見えた。
・・・違うって言ってるのに。
・・・・もう・・・いいや。もういい。だって・・・だって、ジャンと一緒なら・・・もう、いい。
私は、最後の力を振り絞って、手を伸ばした。
ジャンに触れたかった。死ぬなら、一緒が良かったから。
必死に伸ばした手を・・・・大きな手が掴んだ!
次の瞬間に、フッと、体が軽くなる。
ドゴオッ!!
っと音がして、アンドリュー王子が吹き飛んだ。
「ゲホッ!!ゴホッゴホッ・・!!」
急に新鮮な空気が肺に流れ込んできて、私は咳き込んだ。
目を開けると、ジャンが起き上がって、四つん這いで私の上に居た。片手で、私の手を握りしめて、もう片方の手は竜の手に変化している。その手の大きに驚き、凝視してしまう。
「ジャン・・・?!」
顔を少し歪ませて、ジャンは私を抱き起しながら、自分も立ち上がる。
片方の腕だけが、肘から下が竜の手になっていて、他は人間のままだった。
「ぐっ・・・!」
痛そうに顔を歪ませると、フラつく。
「ジャン、大丈夫?」
「大丈夫だ。ルナ、今だ。走れ!」
出入口を見ると、誰もいない。
兵士達は、吹き飛んだ王子に駆け寄って、無事を確かめている所だった。その一瞬の隙を見て、私たちは出入り口に走った。
それに気がついた数人の兵士が、近づいて来る。
「止まれ!」
ボウガンを向けられ、ジャンは私の手を引いたままで、走り抜ける。
兵士が放った矢が、ジャンの竜の腕に、そして背中に刺さった。けれど、そのまま出入口を抜ける。
階段を降りた先がエントランスなのに、そこから10名ほどの兵士が向かってくる。それを見て、ジャンは、建物の上に向かい、一番奥の部屋に2人で入った。すぐに内側から鍵をかける。
「はぁっ、はぁっ、、かはっ!・・・はぁ!はっ・・・」
ジャンの息は荒く、背中からは血が出て止まらない。さっき射られた腕の矢は、腕を貫通して刺さっている。肩に刺さった矢も、背中から射られて、右肩から先端が飛び出ていた。
「ジャン・・・!」
「ルナ・・・鏡がある・・・」
「え?」
ジャンは、部屋中をくまなく見渡して、大きな鏡を見つけた。そこまでふらつきながらも近づく。私は、彼を支えながら一緒に行く。
「ジャン?」
ゼェゼェ・・・ハァハァ・・・と、荒い呼吸を整えながら、ジャンが鏡に触れると、手の血が鏡につく。すると、鏡の中には、元の世界が映し出された。
鏡に映し出された場所。それは私の部屋だ。
「良かった・・・時空の扉が開いた。ルナ・・・行け。」
ジャンが、私の背中を押す。
ドカ!!バキッ!バキッ!っと扉を、け破ろうとする音。兵士達の声。
「ジャンも・・・一緒に行こう?」
そう言うと、ジャンは悲しそうに、それから嬉しそうに笑った。
「ルナ・・・愛してる。」
ジャンは私を抱き寄せて、噛みつくようにキスをする。
私も目を閉じて、それを受け入れた。
キスをしたまま、ジャンはルナの体を鏡の中に押し込んでいく。
体の殆どを鏡の中に入れると、唇を離して、ルナの体を勢いよく突き飛ばした。
ドン!!っと突き飛ばされて、元の世界の部屋に、尻もちをつく。
「ジャン・・・?」
ジャンは、笑って私を見下ろす。
笑った、その表情は一瞬だけで、そのまま、金色の目が焦点を失ったように宙を見る。体が力を失って、崩れるように、ドサッと倒れた。
床には、ジャンの大量の血が水たまりのように広がっていた。
「ジャン・・・!!」
もう、立っているのも、やっとだったんだ。
片方の腕の肘から下だけが竜の手になったまま、ジャンは血の海に突っ伏して、動かなかった。その姿を見て、今更解る。
私を守るために、助ける為に、
最後の力を振り絞っていたこと。
竜の姿に戻る力すら、残っていなかったことに。
「ジャ・・・」
名前を呼び掛けて、鏡は私を映した。
鏡の中には、私の部屋と、今にも精神崩壊しそうな、私の顔だけが映し出されていた。
それは、何事も無い、日常を映し出していた。
何もかもが、夢だったみたいに。
「うっ・・・・!うわあああぁぁ!!」
訳も分からず、声を上げて泣いた。
もう、どうしようもないのに、ただ、ただひたすらに。苦しくて、苦しくて。泣き叫んだ。糸が切れたみたいに、気が狂ったかのように、ただひたすらに泣き叫んだ。
もう2度と、異世界への扉は開く事は無かった。
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