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Episode 30 旅立ち
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兵士たちが扉を破って部屋の中に入ってくると、鏡の前で大量の血を流して倒れている竜がいた。
兵士たちが取り囲み、息があるかを確認する。
「どけ!」
後ろからアンドリュー王子が部屋に入って来て、ジャンクロードを見下ろした。そして、部屋の中を見渡す。
「ルナベルはどこだ?」
その時だった。コッコッコッ!っと、ハイヒールの音が鳴り響いて、本物のルナベルが部屋に入って来た。
「アンドリュー様!?」
ルナベルは、嬉しそうに駆け寄って、アンドリュー王子に抱きついた。
「ルナベル・・・?」
「アンドリュー様!!あぁ!あぁ!お会いしたかったです。まさか、この町にいらっしゃるなんて!!先ほど、私兵の方を見かけて、もしかしてと思って私・・?・・!!?」
ルナベルは、床に倒れている、ジャンクロードに気がつく。
「ひぃ!!」
驚き悲鳴を上げて、体を振るわせて、王子にしがみつく。
「こ・・・この人は・・・・竜・・・??」
ルナベルの反応に、アンドリュー王子はさすがに気がついた。つい数分前まで、全く違う服装で、よくよく考えてみれば、話し方すら違った。
「ルナベル?では・・・先ほどのルナベルは・・・?」
アンドリュー王子が戸惑っているのを見て、ルナベルはピンとくる。
「アンドリュー様、ルナにお会いになったのですね?ルナはどこです?」
「ルナ・・・?」
「はい。ルナです!私と同じ顔で、同じ髪色で、同じ髪の長さの、ルナという女性です!竜と一緒にいた、私の代わりになっていてくれた、ルナです!」
王子は、やっと、ルナベルとルナが別人であったことを知った。
ルナベルは、鏡に血がついていて、鏡の前に倒れているジャンクロードを見る。
「・・・・竜も、ルナを愛していたのね。」
そう呟くと、王子の腕にしがみついて顔を背けた。
「私が悪いのです。ルナに身代わりをさせて・・・もっと早くに心を決めて戻って来ていれば!こんな惨いことには・・・」
アンドリュー王子はルナベルを抱きしめて、慰めるように背中をさすった。
「せめて、せめて、ルナの為に、竜の弔いを・・・」
ルナベルは震えながら、動かなくなった竜に触れようとした。その時だった。
「触るな!!」
その声に、その場にいた全員が、振り返る。
部屋の入り口には、ガイアが立っていた。
そして、みるみる黒い影が大きくなっていき、竜の体に変化していく。屋敷を突き破り、大きな手でジャンクロードの体を鷲掴みにすると、空に舞い上がった。
『おのれ、人間どもめ!!許さん!許さんぞ!!』
地響きのように声が響き渡り、黒い雲が漂い始める。町中を黒い雲が覆うと、その黒い雲の中から、次々と竜が姿を現した。
ピカッと稲妻が走り、突風が吹く。
地響きのように雷鳴が響く。
何十頭という竜の群れが現れると、アンドリュー王子の居た建物を全て破壊して焼き払った。
命からがら、焼け落ちた屋敷から、ルナベルとアンドリューが出て来ると、竜達は次々とエルバーン国に向かって飛んで行く。
竜の群れはあっという間に、エルバーン国の上空に辿り着くと、お城を焼き砕き破壊した。
それは、全て、ジャンクロードを殺された、竜達の復讐だった。
竜の群れが、国王やお城を攻撃しているのを見て、国民は震え上がった。
竜の復讐は、一晩中、続いた。とうとう、エルバーン国の王城と城下町、全てを焼け野原にしてしまった。
その後、何十年と人々の間では“竜伝説”が語り継がれることとなった。
『恐ろしい竜』とか、『泣いた竜』とか、様々な形で物語が作られることとなった。
◇◇◇◇◇
竜達は、天上界に帰って行くと、再び、個々の生活へと戻って行った。
ガイアはジャンクロードを天上界にある、川の中に沈めた。
その川の名前は“黄泉川”と言って、体を修復して治してくれる力があった。死んだ者を入れると、冥界へと誘ってくれるとされていた。
川に入れて2日経つと、ジャンクロードの体は青い竜へと変化して、傷も全て治癒した。ガイアはその間、ずっとジャンクロードから離れることなく、見守り続けていた。
青い竜は目を開けて、川の底から顔を出す。
「ガイア・・・ありがとう。」
ジャンクロードが、川辺にいるガイアに声をかけると、ガイアは呆れたように溜息をつく。
「死んだと思ったぞ。かろうじて生きてたんだな。まぁ、命拾いしたな。」
ジャンクロードは、満面の笑みを見せてから、川から這い出る。その姿を黙って観察していたガイアは、変な顔をして、確かめるように言った。
「・・・まさか、お前、俺が助けに来ることを期待してたな?」
ジャンクロードは口角をグッと上げて笑う。
「期待していたというか、信じていた。間に合わなければ、きっと時を駆けて助けに来てくれるかもしれないとは思っていた。」
「おまえなぁっ~~!!こっちは、本当に!どんな気持ちだったと思っているんだ!!」
ガイアは尻尾で、ジャンクロードの尻尾をベシベシ!と軽く叩く。
あははっと、ジャンクロードは声を上げて笑った。その姿を見て、ガイアは本当にホッとする。
「おまえ、少し変わったな。地上に降りて色々あったからか、一回り大きくなったんじゃないか?」
そんなガイアの言葉に、ジャンクロードは、遥か遠くを眺めてから言った。
「Everything is going to be OK」
「?なんだそれ?どこの言葉だ?呪文か?」
ははは、と笑って首を振る。
「ルナが言ったんだ。どんな時でも、どんな状況でも、成功する方法を模索して信じるんだそうだ。」
あのままでは、自分は息絶えて、ルナとは死に別れてしまっていた。ガイアを信じて待つより他は無かった。
「ったく。間に合ったから良かったものの、俺の気も知らないで!」
ガイアはプンプン拗ねてしまった。
そこへ、銀色の竜が姿を現した。
「ジャンクロードよ。どうやら死んではいなかったようだな?」
この銀の竜は、齢900年で、今いる竜の中で1番の年長者だった。みんな、長老と呼んでいた。
「はい。長老。ガイアや、みんなのおかげで何とか生きています。ありがたく、感謝しきれません。」
ジャンクロードの言葉に、長老はウンウンと頷く。
「してな、ここ数百年と現れなかった、異世界を旅する竜が、おまえだと噂を聞いてな。」
ジャンクロードとガイアは顔を見合わせる。そして、ジャンクロードは長老に言った。
「私は、雲を操る竜だと産まれた時に聞きました。しかし、違ったということでしょうか?」
銀色の竜は、髭をくねらせてから、うーん、と言って暫く考えてから言った。
「ガイアもそうだったと思うが、時や次元なんかを超えるという能力は、成人してから発揮する能力だ。時空や異世界を超えるというのは、ちと難しい問題がからむからと言われておる。若い竜には扱いきれん能力だ。おそらく、おまえは発現するのが遅かったか、成人する前に地上に囚われて居たせいで、気がつかんかったのだろう。」
なるほど。14歳で飛べなくなっていたのだ。未熟だった。まさか、自分ではなく人間に、その能力を先に使われることになるとは、前代未聞だと苦笑する。
なんだか、全てスッキリして、ガイアと長老を真っすぐに見て、決意を言葉にした。
「私は、みんなに助けられて、こうして生きている。しかしながら、この異世界へ旅する力を1度だけ使い、そして、たった一人の番いの為に、この生を全うしようと思う。」
ガイアは、その宣言を聞いて、眉をひそめた。しかし、何も言う事が出来なかった。可愛い弟分が、決めたことだ。遠くに行ってしまうのは、悲しいけれど・・・。
長老は、頷いて言った。
「竜は自由だ。時を駆けるも、異世界へ行くも、生きるも死ぬも、自分で決めればよい。だがな・・・」
勢いよく、全て良い良いと言っていたのに、急に長老は覆す様に言った。
「だが、自死するのは、もう時代遅れ。生を全うしろ。何度でも人は生まれ変わる。輪廻に乗り、探し出せ。竜ならば、それが可能だ。そして、おまえには、もう友が居る。1人ではないのだ。」
照れたような顔で頷くガイアを見て、ジャンクロードは笑った。
そして、ガイアとジャンクロードは、おでことおでこをくっつけた。
先にガイアが言った。
「おまえは頭が岩で出来てんだよ。少しは柔らかく考えて、たまには俺に会いに来い。」
笑いながらジャンクロードが答える。
「そうする。誓って、この一生を愛する女と、友の為に使う。」
「よし!その約束、忘れるなよ?」
「頭固いから、約束は守る。」
「ふっ。違いない!」
そうして、ジャンは異世界へと旅立った。
兵士たちが取り囲み、息があるかを確認する。
「どけ!」
後ろからアンドリュー王子が部屋に入って来て、ジャンクロードを見下ろした。そして、部屋の中を見渡す。
「ルナベルはどこだ?」
その時だった。コッコッコッ!っと、ハイヒールの音が鳴り響いて、本物のルナベルが部屋に入って来た。
「アンドリュー様!?」
ルナベルは、嬉しそうに駆け寄って、アンドリュー王子に抱きついた。
「ルナベル・・・?」
「アンドリュー様!!あぁ!あぁ!お会いしたかったです。まさか、この町にいらっしゃるなんて!!先ほど、私兵の方を見かけて、もしかしてと思って私・・?・・!!?」
ルナベルは、床に倒れている、ジャンクロードに気がつく。
「ひぃ!!」
驚き悲鳴を上げて、体を振るわせて、王子にしがみつく。
「こ・・・この人は・・・・竜・・・??」
ルナベルの反応に、アンドリュー王子はさすがに気がついた。つい数分前まで、全く違う服装で、よくよく考えてみれば、話し方すら違った。
「ルナベル?では・・・先ほどのルナベルは・・・?」
アンドリュー王子が戸惑っているのを見て、ルナベルはピンとくる。
「アンドリュー様、ルナにお会いになったのですね?ルナはどこです?」
「ルナ・・・?」
「はい。ルナです!私と同じ顔で、同じ髪色で、同じ髪の長さの、ルナという女性です!竜と一緒にいた、私の代わりになっていてくれた、ルナです!」
王子は、やっと、ルナベルとルナが別人であったことを知った。
ルナベルは、鏡に血がついていて、鏡の前に倒れているジャンクロードを見る。
「・・・・竜も、ルナを愛していたのね。」
そう呟くと、王子の腕にしがみついて顔を背けた。
「私が悪いのです。ルナに身代わりをさせて・・・もっと早くに心を決めて戻って来ていれば!こんな惨いことには・・・」
アンドリュー王子はルナベルを抱きしめて、慰めるように背中をさすった。
「せめて、せめて、ルナの為に、竜の弔いを・・・」
ルナベルは震えながら、動かなくなった竜に触れようとした。その時だった。
「触るな!!」
その声に、その場にいた全員が、振り返る。
部屋の入り口には、ガイアが立っていた。
そして、みるみる黒い影が大きくなっていき、竜の体に変化していく。屋敷を突き破り、大きな手でジャンクロードの体を鷲掴みにすると、空に舞い上がった。
『おのれ、人間どもめ!!許さん!許さんぞ!!』
地響きのように声が響き渡り、黒い雲が漂い始める。町中を黒い雲が覆うと、その黒い雲の中から、次々と竜が姿を現した。
ピカッと稲妻が走り、突風が吹く。
地響きのように雷鳴が響く。
何十頭という竜の群れが現れると、アンドリュー王子の居た建物を全て破壊して焼き払った。
命からがら、焼け落ちた屋敷から、ルナベルとアンドリューが出て来ると、竜達は次々とエルバーン国に向かって飛んで行く。
竜の群れはあっという間に、エルバーン国の上空に辿り着くと、お城を焼き砕き破壊した。
それは、全て、ジャンクロードを殺された、竜達の復讐だった。
竜の群れが、国王やお城を攻撃しているのを見て、国民は震え上がった。
竜の復讐は、一晩中、続いた。とうとう、エルバーン国の王城と城下町、全てを焼け野原にしてしまった。
その後、何十年と人々の間では“竜伝説”が語り継がれることとなった。
『恐ろしい竜』とか、『泣いた竜』とか、様々な形で物語が作られることとなった。
◇◇◇◇◇
竜達は、天上界に帰って行くと、再び、個々の生活へと戻って行った。
ガイアはジャンクロードを天上界にある、川の中に沈めた。
その川の名前は“黄泉川”と言って、体を修復して治してくれる力があった。死んだ者を入れると、冥界へと誘ってくれるとされていた。
川に入れて2日経つと、ジャンクロードの体は青い竜へと変化して、傷も全て治癒した。ガイアはその間、ずっとジャンクロードから離れることなく、見守り続けていた。
青い竜は目を開けて、川の底から顔を出す。
「ガイア・・・ありがとう。」
ジャンクロードが、川辺にいるガイアに声をかけると、ガイアは呆れたように溜息をつく。
「死んだと思ったぞ。かろうじて生きてたんだな。まぁ、命拾いしたな。」
ジャンクロードは、満面の笑みを見せてから、川から這い出る。その姿を黙って観察していたガイアは、変な顔をして、確かめるように言った。
「・・・まさか、お前、俺が助けに来ることを期待してたな?」
ジャンクロードは口角をグッと上げて笑う。
「期待していたというか、信じていた。間に合わなければ、きっと時を駆けて助けに来てくれるかもしれないとは思っていた。」
「おまえなぁっ~~!!こっちは、本当に!どんな気持ちだったと思っているんだ!!」
ガイアは尻尾で、ジャンクロードの尻尾をベシベシ!と軽く叩く。
あははっと、ジャンクロードは声を上げて笑った。その姿を見て、ガイアは本当にホッとする。
「おまえ、少し変わったな。地上に降りて色々あったからか、一回り大きくなったんじゃないか?」
そんなガイアの言葉に、ジャンクロードは、遥か遠くを眺めてから言った。
「Everything is going to be OK」
「?なんだそれ?どこの言葉だ?呪文か?」
ははは、と笑って首を振る。
「ルナが言ったんだ。どんな時でも、どんな状況でも、成功する方法を模索して信じるんだそうだ。」
あのままでは、自分は息絶えて、ルナとは死に別れてしまっていた。ガイアを信じて待つより他は無かった。
「ったく。間に合ったから良かったものの、俺の気も知らないで!」
ガイアはプンプン拗ねてしまった。
そこへ、銀色の竜が姿を現した。
「ジャンクロードよ。どうやら死んではいなかったようだな?」
この銀の竜は、齢900年で、今いる竜の中で1番の年長者だった。みんな、長老と呼んでいた。
「はい。長老。ガイアや、みんなのおかげで何とか生きています。ありがたく、感謝しきれません。」
ジャンクロードの言葉に、長老はウンウンと頷く。
「してな、ここ数百年と現れなかった、異世界を旅する竜が、おまえだと噂を聞いてな。」
ジャンクロードとガイアは顔を見合わせる。そして、ジャンクロードは長老に言った。
「私は、雲を操る竜だと産まれた時に聞きました。しかし、違ったということでしょうか?」
銀色の竜は、髭をくねらせてから、うーん、と言って暫く考えてから言った。
「ガイアもそうだったと思うが、時や次元なんかを超えるという能力は、成人してから発揮する能力だ。時空や異世界を超えるというのは、ちと難しい問題がからむからと言われておる。若い竜には扱いきれん能力だ。おそらく、おまえは発現するのが遅かったか、成人する前に地上に囚われて居たせいで、気がつかんかったのだろう。」
なるほど。14歳で飛べなくなっていたのだ。未熟だった。まさか、自分ではなく人間に、その能力を先に使われることになるとは、前代未聞だと苦笑する。
なんだか、全てスッキリして、ガイアと長老を真っすぐに見て、決意を言葉にした。
「私は、みんなに助けられて、こうして生きている。しかしながら、この異世界へ旅する力を1度だけ使い、そして、たった一人の番いの為に、この生を全うしようと思う。」
ガイアは、その宣言を聞いて、眉をひそめた。しかし、何も言う事が出来なかった。可愛い弟分が、決めたことだ。遠くに行ってしまうのは、悲しいけれど・・・。
長老は、頷いて言った。
「竜は自由だ。時を駆けるも、異世界へ行くも、生きるも死ぬも、自分で決めればよい。だがな・・・」
勢いよく、全て良い良いと言っていたのに、急に長老は覆す様に言った。
「だが、自死するのは、もう時代遅れ。生を全うしろ。何度でも人は生まれ変わる。輪廻に乗り、探し出せ。竜ならば、それが可能だ。そして、おまえには、もう友が居る。1人ではないのだ。」
照れたような顔で頷くガイアを見て、ジャンクロードは笑った。
そして、ガイアとジャンクロードは、おでことおでこをくっつけた。
先にガイアが言った。
「おまえは頭が岩で出来てんだよ。少しは柔らかく考えて、たまには俺に会いに来い。」
笑いながらジャンクロードが答える。
「そうする。誓って、この一生を愛する女と、友の為に使う。」
「よし!その約束、忘れるなよ?」
「頭固いから、約束は守る。」
「ふっ。違いない!」
そうして、ジャンは異世界へと旅立った。
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