雲は竜に従い、風は愛に従う

月野さと

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Episode 33 最終話

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 unforgettable blue… 
 I want to see you again.
 忘れられない青。もう一度、会いたい。

 SNSにUPされた写真。その青を見て、ジャンは立ち上がった。
「ポール!今すぐに日本に行く!」
 そう言うと、クローゼットからボストンバッグを取り出し、着替えを詰め込む。そうしている間も、ドクンドクンと、心臓が熱く脈打ち始める。
 今年で18歳になったはずだ。今か、今か、と待っていた。待ち遠しくて、日本で待っていようかとも思った。しかし、日本に行ってしまったら、我慢できずに、私はストーカーのように、おまえを追いかけ回してしまうかもしれない。だから、ずっと我慢していたのだ。
 しかし、やっと。やっとだ。
 ルナに会いに行く。やっと、会いに行ける!
「今すぐだ!今すぐに会いに行く!」
 そこへ電話中だったポールが、電話を切って、慌ててジャンを引き止めた。
あるじ!!変身して飛んで行っては、いけません!!いいですか?!プライベートジェット機で、大人しく!人間らしく!!」

 お金がありあまっているジャンは、飛行機を購入していた。写真を撮りに行く時や、今後、ルナの所まで、すぐに行けるようにと考えたのである。  
 そうして、ジャンは、プライベートジェット機で、日本へと向かった。
 



 その頃、日本では。

 完全に寝不足になってしまったルナが、朝日を浴びて目を覚ます。

 朝起きてすぐに、SNSを見ても、Jean-Claudeからの返信は無かった。
「・・・」
 どうして、返信をくれないのだろう?そう不安に思いながら、いつも通り、学校へ行く支度をする。
 学校へ行ってからも、休み時間のたびに、何度もチェックする。
 けれど、返事は無かった。

「瑠~奈♪今日さ、みんなでカラオケ行かない?」
 友人が誘ってくれたけれど、気分が乗らない。
「うーん。」
 悩んでいると、もう一人の友人が後ろから来る。
「瑠奈さ。本当は何か悩んでるんじゃないの?・・・失恋とか?」
「えっ・・・」
「ほら、やっぱり!そうなんでしょ?何で話してくれないのよぉ!そうゆうのはね、話して泣いて忘れるか、歌って忘れるか、次の恋だよ?次!」
 そっか、2人とも心配してくれてるんだ。友人たちの気づかいに、ほんのり心が温かくなる。
 そこへ、クラスの男子が加わって来る。
「え~何々?瑠奈ちゃん、失恋??」
まこと~!あんた、入ってくんじゃないわよ!」
「なんだよ?失恋には新しい恋だろ?な?どう?友達とか紹介する?」
「お呼びじゃないわよ!!」
 誠君と友人のユイカは、幼馴染だ。とっても仲良しなのである。その後も、2人でワイワイなにか言い合っていて、もう一人の友達、ミカが私に言う。
「あの2人も仲良しだよね~。大学も同じってんだから、凄すぎ。」
「そうだね。でも、ずっと一緒ってなんか良いなぁ~。」
 ふふっと笑っていると、ミカが言った。
「じゃぁ、とりあえず、カラオケ行こう?そのうちさ、聞かせてよ。失恋話。話したら楽になるかもよ?」
 私は、苦笑いしてミカを見つめる。

 言えたなら、良いな。

 私の好きな人は、この世界の人じゃない。人間でもない。
 綺麗な物が好きで、誇り高い竜であろうとする、強くて優しい人。

 お互いに大好きだったのに、もう会えなくなったこと。それが、辛くて苦しいこと。

 あんなに、好きになれる人なんて、この先に現れるのかな?
 みんなが言うように、いつか、ジャンを忘れる日が、来るのかな?
 そんなこと、想像もつかないよ。

 
 
 みんなで昇降口を出て、校門まで歩き出した時だった。
 クラスの子たちが、走って戻って来る。
「ねぇ!!大変!!校門にね、すっごい、すっごいイケメンが居るの!!」
「白人!白人だよ!!背が高いし、そこらの芸能人よりイケメン!!八頭身!」
 それを聞いて、ミカとユイカも浮足立つ。
「え?どこどこ?」
「早く!見に行こうよ!!」
 2人は、猛ダッシュで走って行った。

 私は、誠君と目を合わせる。
「誠君、あれ、良いの?」
「イケメンを愛でるのと、好きな男って違うだろ?」
「ふふっ、やっぱり、ユイカと付き合ってたんだ?」
「え?今更?まぁ、俺らは、切っても切れない幼馴染だから、言葉で言わんでも解る関係?」
「何それ。」
 笑いながら、誠君と2人で校門まで歩き出す。
 
 門の前に、女子がいっぱいいた。その中には、背の高いイケメン?に声をかけている子まで居た。
「お兄さん、誰か待ってるんですか?日本語、通じる?」
「すっごいイケメンですね?ここで何してるんですか~?」
 確かに、高校の校門で、何しているんだろう?
 そう思って、興味は無かったものの、チラッと視線を向ける。 
 
 ・・・・!

 門の前に立っていた人が、私の方を見る。

 シャタンクレールの髪。
 高身長で、やたらと整った顔。
 
 私は、動けなくなった。動くことが出来なくなった。
 今、私の目に写っている人が、本物なのか、目で分かって、頭が理解して、心がついてこない。

「・・・うそ」
 
 私を見つけた彼は、目を細めて、嬉しそうに微笑んだ。

 そして、真っ直ぐに、ゆっくりと、私の前まで歩いてくる。

「ルナ」
 スラックスに白いシャツ。シンプルなジャケットを羽織っていて、髪は前より短く切って揃えてあるけれど、その顔は‥‥その声は‥‥あなたは‥‥
「・・・ジャン?」

 ゆらゆらと、視界が揺らいで見えなくなっていく。だけど、だけど、確かに、私の目の前には、ジャンが立っていた。
「ルナ。会えて良かった。あのメッセージを見て、どうしても、すぐに会いたくて、飛んで来た。」
 そう言いながら、また数歩、私に近づく。そして、思い出したように言う。
「あぁ、飛んで来たと言っても、ちゃんと飛行機で来たぞ?うっかり、本当に飛んで行きそうになったんだが、ポールに怒られた。」
 笑いながら、そう言うと、彼の大きな手が、私の頬を撫でて涙を拭う。
 その手の感触が、温かくて優しくて、懐かしい。

「うそ・・・だって、本当に?ジャンなの?あの時・・・!あたし、もう、もう会えないんだって・・・思っ・・・だからっ、」
 ボロボロと涙が溢れてきて、ジャンが見えなくなりそうで、必死で両手で拭う。
 泣いて見えなくなったら、幻のように消えてしまうような気がした。
「ルナ、すまない。あの時は、ああするより他になかった。けれど、あの後、ガイアが助けに来てくれたんだ。」

 あぁ、あの、黒い竜。時を駆ける竜。
 そうか。そうなんだ。
 じゃあ、夢でも幻でもない?目の前のジャンは、本当に、生きてるんだ。本物なんだ。
 もう立っていられなくなって、ふらりとジャンに手を伸ばすと、彼は私を引き寄せて、抱きしめた。

「会いたかった。」

 そう言ったジャンの声は、心底、安心したかのように、心の底からの声だった。
 温かい大きな胸、力強い大きな腕。ジャンの匂い。
 あぁ、本当に、本当に、生きてるんだ。
 に居るんだ。
「あたしもっ、会いたかった!」
 
 学校の、みんなの前だったことも忘れて、私は、泣きながら抱きついた。

 嬉しくて、信じられないくらいに幸せで。
 もう、他には何も要らないと思った。

 
「ルナ。もう、絶対に離さない。」
「うん。うん!あたしも!」
 力いっぱい、ジャンを抱きしめて、胸がいっぱいになる。
 ジャンは、私の耳元で、そっと囁いた。

「愛してる」


 おまえが何処へ行こうとも、一生をかけて、何度でも探し出す。

 千年えいえんの愛を誓う。





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