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第16話
しおりを挟む気が付くと、そこは病院のロビーだった。
見慣れない、私の記憶には無い病院のロビー。
神崎さんは、胸を押さえたまま、うずくまっていて、私は彼を支えたまま、病院のロビーだった。
「え?」
どこ?どうゆうこと?
看護師さんたちが駆けつけてきて「大丈夫ですか?」「とりあえず、こちらへ!」と言われて、誘導されていく。でも、何か・・何かが変だ。
あぁ、そうだ。聞こえてくる声が、全て・・・・なまりがある。
懐かしい・・・なまり、発音だ。
神崎さんは、看護師さんたちに囲まれて、なんとか落ち着きを取り戻す。
「良かった。おそらく過呼吸と思われます。ここの椅子で少し休んでてください。」
そう言われて、2人でポカンとする。
「・・・・ここ・・・・どこだ?」
神崎さんも、呆然としている。
そして、私は少しの心当たりと、自分が口走った言葉と、この方言の飛び交う中で、1つの可能性を言う。
「た・・・タイムスリップしちゃったかも・・・。」
私の言葉に、神崎さんは、私を見て口を開ける。
「・・・・・・・・・・は??・・・・おまえ、何言って・・・・。なんて言った??」
廊下の真ん中に飛び出して、キョロキョロする。
そして、近くのおばあちゃんに話しかける。
「あの!ここはどこですか?」
「はい??あ~なんだっぺ。東北総合南病院だべよ。」
・・・・!!
それを聞いて、2人で固まる。
その時だった。
「あれ?なんだよ?拓也?」
その声の方に、2人で振り向く。
それは、
それは、恐らく、まさに、私ですらも心臓が停止しそうなほどに驚いた。
兄が、そこに立っていた。
白衣を着て、聴診器を首にぶら下げて、気楽な顔して。
「ん?あれ?歩美?・・・どゆこと?おまえら、何してんだよ。」
「・・・晃。」
神崎さんが、立ち上がる。
「ん?なんだよ。変な顔してさぁ。てゆーか、拓也。お前なんか老けた?」
近づいてくる兄の肩を、ガシッと神崎さんは掴む。
「晃・・・なんだな?」
そんな神崎さんを見て、兄が眉を吊り上げて、神崎さんの腕を掴んで引っ張る。そして、何故かヘッドロックを食らわす。
「拓也!なんなんだよ、気持ち悪ぃな!」
「痛い!痛い痛い痛い!本気でやるなバカ!」
良い大人が、じゃれあっているのを・・・とりあえず、見守る。
「で?おまえら、2人でどーしたんだよ?てゆーか、2人で来たんだよな?」
その時だった。看護師さんが、声をかけてくる。
「先生のお知り合いでしたか。とりあえず、問診票と保険証お願いしますね。」
そう言われて、問診票を渡されてしまう。
えーーーと、と神崎さんと顔を見合わせてから、とりあえず、場の状況に流されてみる。
「今日って、何日でしたっけ?」
と、ペンを持って神崎さんが聞く。
「2011年3月11日ですよ。」
瞬間に、私と神崎さんは顔を見合わせる。
すぐに時間を確認する。
すると、ロビーの大きな仕掛け時計が、リンゴン言い出して正午12時を知らせる。
看護師さんが言った。
「午前の診察が終わってしまったので、午後でも大丈夫ですか?」
2人で頷く。
そして、兄が言った。
「とりあえず、飯でも食いに行く?」
14時46分まで、タイムリミットは迫っている。
「ちょっと待ってろ。白衣脱いでくる。」
そう言って、兄が立ち去ってすぐに、私は神崎さんの手をとる。
「神崎さん、ごめんなさい。私がタイムスリップなんかさせたから。」
「タイムスリップ・・・。晃が・・・まだ生きてる?」
「でも、あと2時間とちょっとで・・・。」
「・・・元の世界に戻れるのか?」
「え?」
「歩美は、元の時代?時間に戻る方法を知っているのか?」
「あ、はい。えーっと。」
ゴソゴソとバックの中を探す。有った!
「ここに入ってる鈴を鳴らすと、戻れます。」
そう言うと、神崎さんは、真剣な顔で私の手を握る。
「・・・・晃を助ける!」
私は、眉間に皺を寄せて考える。
「可能?」
「可能?・・・不可能?・・・そうか、パラドックス。いや、そんなものは、どうでもいいんだ。」
神崎さんは、物凄い速さで頭を回転させて、決断をしたようだった。
「論理的パラドックスだ。しょせんは机上の空論だ。すべては、実験で立証される。」
自分の手を握りしめて、その拳を見て、それから私を見る。
そうして彼は言った。
「これが現実なら、夢じゃ無いなら。可能性がゼロだとしても・・・。」
そこで、兄が戻って来た。
「そんじゃ、なに喰いたい?」
楽しそうに言い出した兄に、神崎さんは素早く答える。
「晃、大事な話があるんだ。しかも時間が無い。短い時間で食べれるのが良い。むしろコンビニでいい。」
「えー?なんだよ。うーん、分かった。じゃぁ、病院の休憩スペースでもいいか?」
総合病院内には、コンビニもあり、食堂もあった。
私たちは、食堂の隅の席を確保して、3人で食事を始める。
時計を確認すると、12:15だった。
「で?なんだよ。話って。2人のこと?」
兄の質問に、なんて言っていいのか、言葉を選んでいると、神崎さんが言った。
「晃、今から言うことは、信じられないと思う。でも、信じて欲しい。」
そうして、神崎さんは、話し始めた。
兄は、途中でゴハンを喉に詰まらせて、咳き込んだりした。だけど、神崎さんの真剣な話し方に、真剣な顔に、あまりツッコミを入れずに聞いていた。途中からは、食事の手をとめて、真剣に聞き入っていた。
私は、時計ばかりを見ていた。
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