17 / 24
第17話 深い闇の真相
しおりを挟む「うーーん。とりあえず、話しは解った。」
そう言って、兄は残りのごはんを食べ始める。そして、おまえらも食えよと言う。暫くは3人で無言で食べ始める。
「お兄ちゃんとごはんとか、もう2度とできないと思ってた。」
ポロリと、私は寂しさを口にしてしまった。
時計は、12:45を指していた。
「ダメだ。なんかドッキリな気がしてきた。」
そう言う兄に、神崎さんは財布から免許証と保険証を見せる。私も慌てて、同じようにする。
「・・・・ウソ・・・みてぇだな。」
そう言って、兄は私たちを交互に見る。
「そうか、歩美はともかく、拓也は見るからにオッサン・・・いや、このまえ会ったばっかなのに、老けすぎだよな。」
「・・・・老けた言うな。ったく、親友を失う俺の身にもなってくれ。精神的にきて、ドッと老けるだろ。」
ちらっと時計を見る。
「でも、どうする?お前らが言う通りなら、あと2時間。」
「逃げろ、晃。」
神崎さんが即答する。
「頼むから逃げてくれ。」
「んなこと、言ったって・・・。」
頭をかく兄は、少し上を向いて目を閉じて、うんと言うようにこちらを向く。
「ムリだ。」
「晃っ!」
「同僚や患者を残して、俺だけ逃げるとか、そんなのムリだ。」
ガタン!と、神崎さんが立ち上がる。
「晃、俺は・・・おまえを力ずくでも連れて行く!」
そう言って、兄の胸ぐらを掴んだ。
「・・・拓也、おまえなら分かるだろ?俺は医者として死ぬなら本望だ。」
兄に掴みかかったまま、ブルブルと、神崎さんの腕が振るえる。
「死んで、本望・・だと?」
何かを堪えるように目を閉じて、眉間に皺を寄せてから、彼は言った。
「俺なんだぞ・・・・・・。」
押し殺したような、声を絞り出して。
「避難所を、片っ端から捜し歩いて・・・瓦礫の中を歩きまわって・・・!やっと、見つけたのは・・・俺なんだ。」
一瞬、神崎さんは何を言っているのか、分からなかった・・・。
そして、あなたは、乱暴に兄から手を離して言った。
「瓦礫の中で、泥に埋まって死んでる、お前を見つけたのは、俺なんだ・・・!」
心臓が・・・凍りつく。
息を・・・することが出来ない・・・。
まさか・・・そんなことが、あっていいのだろうか。現実に、そんな・・・。
それは、悪夢。地獄。なんて表現すればいい・・・。
「気が狂いそうだった・・・!・・・頼む、晃!俺は、このままじゃ・・・このままじゃ、おかしくなる!頼むから、逃げてくれ!」
その悲痛な叫びのような言葉を、兄にぶつけて、彼の目からは一筋の涙が流れた。
どうすることも出来なくて。
私は、泣きながら、彼の背中に突っ伏した。
あなたが、誰にも言えなかった、その事実を。
ずっと抱えてきた、その辛過ぎる現実を。
そんなの、そんなの苦しくて、悲しくて、辛過ぎる。
ずっと、あなたは1人で抱えて生きてきたなんて。
誰か、ウソだと言って欲しい。
どうしたらいい?
どうしたら救える?
この残酷すぎる現実を、事実を・・・変えたい。どうにか、変えたい。
その時、ふと思いつく。
「・・・病院をハッキングする。」
私の突然の言葉に、兄が、「はぁ?」と言う。
神崎さんが、私を見る。
「病院のPCをネットワークを通じて、ウイルス感染させて、爆破予告するんです!」
「綾瀬・・・?」
「それは、私がやります!そうですね、爆発物は病院内に数十か所ということにします。それから、神崎さんは、理工学部だったんですよね?爆弾作れます?」
「お・・・おい、歩美、おまえ何言って・・・。」兄が狼狽える。
「脅しは現実味があった方がいいの!だから駐車場あたりで、爆破させればいい。それを見たら、みんな平常心ではいられないはず。この病院から逃げ出すはずだよ。」
神崎さんは、冷静さを取り戻していた。
「・・・・患者を、病院から、避難させるのか。」
「そうです。お兄ちゃんは、適当にみんなに言って、高台にある病院にみんなを避難させるの!」
2人で、兄を見る。
すると、かなり戸惑っていた兄が、眉間に皺を寄せながら言う。
「・・・・・おう。わかった。」
兄の返事に、神崎さんが反応する。
「晃・・・・。」
「・・・信じられねぇけど、やるよ。俺だって死にたいわけじゃない。それに、拓也のあんな顔見せられて、ホント参ったよ。」
時計は、13時10分を刻んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
【完結】 大切な人と愛する人 〜結婚十年にして初めての恋を知る〜
紬あおい
恋愛
結婚十年、子どもも授かり、日々執務と子育ての毎日。
穏やかで平凡な日々を過ごしていたある日、夫が大切な人を離れに住まわせると言った。
偶然助けた私に一目惚れしたと言い、結婚し、可愛い子ども達まで授けてくれた夫を恨むことも憎むこともしなかった私。
初恋すら知らず、家族愛を与えてくれた夫だから。
でも、夫の大切な人が離れに移り住んで、私の生き方に変化が生まれた。
2025.11.30 完結しました。
スピンオフ『嫌われ悪女は俺の最愛〜グレイシアとサイファの恋物語〜』は不定期更新中です。
【2025.12.27追記】
エミリオンと先に出逢っていたら
もしもの世界編は、諸事情により以下に移動しました
『今度は初恋から始めよう〜エミリオンとヴェリティのもう一つの恋物語〜』
よろしければ、ご訪問くださいませ
いつもありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
半世紀の契約
篠原皐月
恋愛
それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。
一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。
同期の姫は、あなどれない
青砥アヲ
恋愛
社会人4年目を迎えたゆきのは、忙しいながらも充実した日々を送っていたが、遠距離恋愛中の彼氏とはすれ違いが続いていた。
ある日、電話での大喧嘩を機に一方的に連絡を拒否され、音信不通となってしまう。
落ち込むゆきのにアプローチしてきたのは『同期の姫』だった。
「…姫って、付き合ったら意彼女に尽くすタイプ?」
「さぁ、、試してみる?」
クールで他人に興味がないと思っていた同期からの、思いがけないアプローチ。動揺を隠せないゆきのは、今まで知らなかった一面に翻弄されていくことにーーー
【登場人物】
早瀬ゆきの(はやせゆきの)・・・R&Sソリューションズ開発部第三課 所属 25歳
姫元樹(ひめもといつき)・・・R&Sソリューションズ開発部第一課 所属 25歳
◆表紙画像は簡単表紙メーカー様で作成しています。
◆他にエブリスタ様にも掲載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる