女神なんかじゃない

月野さと

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25話 竜神

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 サラは、夢を見ていた。

 次から次へと、知らない男性が現れては、襲ってくる。
 走って逃げた廊下の先、逃げ込んだ部屋の中。
 逃げてもに逃げても、どこへ行っても逃れられない。

 『女神の力を手に入れろ!』
 『世界最強の魔力保持者になるんだ!』
 『世界征服も夢では無いぞ!』  

 そこに現れたのは、金髪の男だった。
 「?」
 顔が、よく見えない。だけど、アーサーじゃない。
 
 金髪の男は、ニタリと気味の悪い笑い方をする。
 ガシッと、サラを捕まえると、言った。

 『女神よ。おまえは、私のモノだ!』

 掴まれた腕から、鳥肌が立って、全身に広がる。
 嫌!
 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!もう嫌だ!!

 
「・・・ラ。・・・サラ!!!」

 はっ!!と、目が覚める。
 
 薄暗い部屋の中で、目の前に男性の陰。
「い・・・いやーーーー!!!」
 慌てて、突き飛ばそうとするも、相手はビクともしない。その場から逃げ出そうと、体をよじらせると、腕を掴まれた。  
「サラ!!私だ!」
 聞きなれた声に、はっとする。
 振り返って、よく見ると、そこに居たのはアーサーだった。

「あ・・アーサー・・・。」
 ポロっと、1粒だけ涙がこぼれる。 
 はぁ~~~っと息をついて、アーサーの腕の中にダイブする。
 2人で抱きしめあって、横になる。ブルリと体を震わせて、もう一度ため息をついて、自分を落ち着かせる。

「うなされていたぞ。・・・怖い夢でも見ていたのか?」
 アーサーの背中に腕を回して、彼の胸に顔を埋める。ついでに彼の服で涙を拭く。
「・・・うん。」
 怖かった。
 思い出すと、本当に怖くて・・・アーサーの背中の服をギュー!っと握りしめてしまう。
 アーサーは、何度も何度もサラの頭を撫でて、もう片方の手で、あやす様に背中をトントンしてくれる。
 ほっとして、力が抜けていく。

「アーサー。」
「どうした?」
 彼の低い声が、心地よく響く。
 その声に安心して、力が抜けてしまって、ささやくような声が出る。

「傍に居て。ずっと、ずっと傍に居て。・・・どこにも行かないで・・・。」
 そう言い終えると、サラは、そのまま眠りについた。


 アーサーは、サラが眠りについたのを確認する。

 近頃、サラが夢にうなされることが、増えてきている。と、アーサーは気になった。
 レオンが、サラには夢見の力もあると言っていた。

「・・・。」
 サラの額に唇を当てて、魔力を込めて呪符を唱え始める。
 

 サラの手を握って、アーサーは目を閉じた。




◇◇◇◇◇



 サラは、再び夢を見ていた。

 周囲を見渡すと、お城のバルコニーに立っていた。 

 大空を真っ白い竜が飛んでいる。


 隣を見ると、アーサーがいた。
 2人で目を合わせてから、その白い竜を見ていた。 

 白い竜はどんどん降りてきて、バルコニーに顔を近づけた。
 すると、どこからともなく声がした。

『女神よ。お前は、元の世界に帰れ。』
 竜は口を開く事もなく、話している。
『女神は、実在してはいけない。神と人間は本来交わらないのだ。お前は元の世界に帰れ。』

 白い竜の目は、深紅のような赤だった。竜は言葉を続けた。
『お前を元の世界に戻してやる。来るのだ。』

 そう言って、お辞儀するように首を下ろした。
 アーサーが、サラの手を掴んで引き寄せる。

「竜よ!この娘を、元の国に戻すことはできない!!」

 竜は、目を見開いた。
『・・・アーサー王よ。この娘は災いとなろう。』

 サラは怖くなって、アーサーにしがみつく。

『女神の力を欲しがる人間どもが、女神が死ぬまで現れ続けよう。この世界を争いで埋め尽くし、地獄を見ることになる!』
 
「・・・みんなが目指してる平和な国作りの、私が妨げになる?」
 サラが質問すると、竜が大きく頷く。
『来い!元の世界に戻してやる。』
 俯いた私の肩を、アーサーはしっかりと抱き寄せた。
「他に方法は無いのか?!神の力など要らない!この娘が欲しいのだ!」
 アーサーの言葉に、泣きそうになる。

 竜が、少し身動きして、髭を波打たせた。そして言った。
『ふはははははっ!人間ごときが!我と話をしようとは!お前は、どうやら幸運の持ち主のようだな。』
 1度上空に舞い上がると、ボウっと、竜が火を噴く。
 戻ってくると、目を見開いて竜は言った。
『良いだろう!ここに入り込んだ貴様に免じて、1度だけ機会をやろう!』
 サラは、アーサーに縋りついたまま、竜の言葉を聞く。

『女神の真珠を手に入れるのだ。』

 竜は、大きな爪を持つ手を、サラの目の前に差し出す。

『女神の真珠を手に入れて飲み込めば、お前はただの人間になる。』

 サラは、竜の方に歩み出る。
「そうすれば、私はここで生きていける?」

『人間として生きていける。そのチャンスをやろう。さぁ、来い。』
 言われるがままに、竜の手に乗る。

「サラ!」
 アーサーの声がしたけれど、一瞬で空高く舞い上がった。

 眼下に広がるのはウォステリア国、その先には隣国のガルーダ。そのもっと先に、様々な国が続いていて、山と大地と海と、この世界が広がってた。

 竜は、空を旋回しながら登り、国境まで一気に飛んで行った。

 国境近くの荒れた大地に、何か飛ぶものが見える。鳥のようなコウモリのような、変わった飛び方をしている。

 どんどん近づいて行くと、よく見えてきた。それは鳥ではなく巨大な羽をもっていて、空飛ぶ恐竜のような、見た事の無い動物だった。

 そんな恐竜に乗る、若い男性がそこに居た。


 こちらを見ている。
 アーサーと同じ金髪に青い瞳が、こちらを見ている。

「竜の娘よ!おまえは何者だ?」
 恐竜に乗った男が、サラに話しかけた。
 サラが返事をしようとしたとき、竜が頭の中で話しかけてきた。

『この男が持つ“女神の真珠”を飲めば、おまえは女神の力を失い、ただの人間として生きて行けるだろう』
 そう、頭の中に竜の声が響いて、上昇する。

「あ、待って!あなたは誰?あなたの名前は?!」
 手がかりをと思って、男性に話しかけるけれども、白い竜はおかまい無しに空に駆け上がっていた。
 

 城のバルコニーに戻ると、そこにアーサーは居なかった。
 竜を振り返ると、サラの目の前に、竜のウロコが宙に浮かび上がる。
 サラは、竜の目を見る。

『真珠を見つけ出すも良い。また、元の世界に帰る決心がついたなら、これで私を呼ぶのだ。』

 

 そう言って、白い竜は天高く登って行った。





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