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52話 絶望と希望
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「団長・・・なんか、妙じゃないですか?」
「・・・・・・気色悪いから、そんなに顔を近づけるな。」
サミュエルとレオンが、なにやら言い合いしている。
そんな2人を見て、ウィルが笑う。
「相変わらず仲良しですね~。」
「おいウィル、これが仲良いわけないだろう。」
レオン団長が冷たく言う。
「そういえば、陛下の後宮ができたって聞きましたけど?」
サミュエルが楽しそうに言う。
ウィルが、ため息をつく。
「えぇ、まぁ、陛下がなかなか世継ぎをつくらないので、家臣たちはやっきになってます。しかし・・・」
「どうした?」
「夢を見るようなのです。サラ様の。」
レオンは立ち止まる。
「夢?」
サミュエルも立ち止まる。
2人に見られて、ウィルが話を続ける。
「サラ様を忘れられないのです。それが、眠れなくなるほどのリアルな夢を見るらしくて、夢と現実を往復するのがお辛い様子で・・・。近頃は不眠症になられてしまって。」
ウィルが2人を見る。
「・・・・・どうかしましたか?」
サミュエルと、レオンは顔を見合わせる。
「団長、妙じゃないですかねぇ?」
最初に、揉めていた会話に、2人は戻る。
サミュエルが、むずがるように表現する。
「・・・・何か、こう、あの時と同じというか。それに、ほら・・団長なら感じるでしょ?」
レオンは、腕を組んで俯く。
「おまえが言うことは解る。近頃、何とも言えない魔力を感じるしな。」
レオン団長は、サミュエルを連れて、アーサーの所に急いだ。
執務室に入ると、確かに目の下にクマのある陛下が居た。
「なんだ。おまえたち。暇なのか?」
「失礼な。陛下を、お助けすべく来たんですよ。」
「・・・・ふふ。不眠症でも治してくれるのか?」
アーサーは溜息をついて、笑った。
その様子に、魔術師2人は黙る。
「・・・」
アーサーが顔を上げる。
「?なんだ?」
レオン団長が、ため息交じりに言う。
「実は、最近、妙なことがありまして。」
そう言いかけて、サミュエルを見ると、ほらほら妙なこと~と茶化した目をしてきた。なんとなくため息をつく。
「とにかく、陛下の夢の話を伺います。」
「言いたくない。」
アーサーが即答する。
「何故です?不眠でお悩みだと。」
アーサーは、両手で顔を覆う。
「サラの夢を見る。それだけだ。今更、自分でも情けないと思っている。しかし、すごくリアルで、神経を逆なでされているような、そんな気分になるんだ。」
目を閉じると、その夢に引き込まれそうになる。
「本当に、そこに居るかのようなんだ。目が覚めても、現実との区別がつかないほどだ。もう3年になろうとしているのに、何故、あんなに鮮明な夢を見る?あの声も、何もかも。もう、気が狂いそうだ。」
そう言って、頭を抱えた。
その姿を見て、レオンが聞いた。
「異世界に、いらっしゃいましたか?」
アーサーが、顔を上げる。
「・・・なんだと?」
レオンは、少しの間を置いてしまう。
「異世界にいらっしゃったのかと、伺っているんです。」
「・・・・どうゆうことだ?」
サミュエルとレオンが、チラッと目を合わせる。
「確信の無い事で、状況を確認したいのです。夢の詳しい話を伺っても良いですか?」
いぶかしげに、アーサーは渋々、話し出す。
アーサーは、この苦しみから逃れたかった。なんとかしなければ、自分が狂い、国が傾いてしまうことを危惧していたのだ。いっそのこと、夢を見なければ、サラを忘れられればとさえ、思っていた。
「はぁ・・・笑うなよ?いつも同じ夢だ。サラは子供と一緒なんだ。金髪で青い目の子供だった。夢で見るたびに、その子は少しずつ、成長していくんだ。歩けなかった子が、次に見る時には、つかまり立ちをして、近頃は歩きまわって、走り回っていた。まるで、本当に生きているかのように・・・私の願望なのだろうか。」
サミュエルと、レオンが固まる。
ウィルまでもが、ビタリと動きが止まる。
青冷めたウィルの態度に、アーサーが聞く。
「・・・・何かあるのか?」
レオンは、慎重に話をしようとする。そして、うっかり言い方を間違えた。
「あの・・・女神の指輪は、サラ様が持って行かれたのですよね?」
その質問に、アーサーの目が吊り上がる。
「持って行く、だと??・・・レオン、何を考えている?」
その瞬間、ウィルが無鉄砲に口走る。
「ま、まさか、サラ様は生きておられる・・・?」
そこまで言いかけて、レオンが大きな声をだした。
「確信がない!生きているという確信がない!だから、申し上げられないんです!」
サミュエルが、興奮したように口を開く。
「でも、まるで、サラ様が最初にココに来た時と同じじゃないですか!夢で会っているだなんて!しかも、サラ様が子供と一緒にいるだなんて!生きていれば、3歳だ!歩き回ってる!」
アーサーが立ち上がる。
「何を言ってる?全部話せ!!確信が無くてもいい!どうゆうことだ!」
レオン団長は、サミュエルを睨みつける。
それから、腹を決める。
「陛下。」
アーサーは、レオンを見る。
「サラ様は、陛下のお子を妊娠されていたのです。」
「・・・・な・・・んだと?」
そこで、ゴードンが入室してくる。
「今更なんの話をしているのです?」
全員がゴードンを見た。
「過ぎたことです。午後の執務に入りますよ。」
アーサーの体から、魔力が渦を巻き始める。
「ゴードン・・・。」
サミュエルが、なだめるように間に入る。
「あの、少しだけ、10分で話が終わるんで~~。ゴードン様は少し席を外して頂いて~。」
アーサーの魔力で、書類や棚がカタカタと揺れ出す。
「ゴードン、お前も知っていたんだな?全員、知っていて!サラに私を助けさせたのか!?」
アーサーの問いかけに、ゴードンは表情を変えなかった。
「私が指示しました。お子よりもサラ様よりも、陛下の命の方が優先だと。」
瞬間に、アーサーはゴードンに掴みかかる。
アーサーを止めに入ったレオンが、慌てて叫ぶ。
「違います!サラ様は、ご自分で決められたのです!!誰も止められなかった!」
悔しそうに顔を歪ませて、レオンは言った。
「陛下の居ない世界で、生きていけない。そう、おっしゃられて。」
・・・生きて、いけない?
そうだ・・・その通りだ、サラ。
おまえを失って、私は・・・・。
静かに、ゴードンから手を離した。
そして、レオンを見る。
レオンは、アーサーの目を見て話を進める。
「白竜に会いに行ったサラ様に同行したのは、私です。あの時、命と引き換えにと竜は言いましたが、実際は、死というよりはサラ様は消えたんです。跡形もなく。それはまるで、ここに来た時と同じです。竜のあの言葉が、この世界から消えると言う意味だとしたら・・・。異世界に帰ったのかもしれないと考えました。生きているのか、確かめたいのです。しかし、生きていたとして、異世界から呼び寄せられるのか?は分かりません。」
一気に話し終えると、アーサが質問した。
「どうやってだ?」
「・・・?」
「どうやって、生きているかを調べる?」
アーサーの問いに、レオン団長が頭を抱える。
「召喚・・・・しかし、上手くいく気がしないのです。女神の指輪も無い。それに竜がこの世界の神だとすると、サラ様が2度と呼び寄せられないようにしたと考えるべきなのか。」
サミュエルが、口を開く。
「陛下、許可を頂きたい。サラ様を捜索することをです。それと、夢はリアルな場合、詳細を伺いたいです。私たちも、手探りですし、それに陛下の命令とあれば、仕事の合間にやる必要もなくなる。」
レオン団長は、付け加える。
「これはあくまでも可能性です。ただの夢。サラ様は、もうどこにも存在していないことも。」
「構わない。」
アーサーはキッパリと言った。
「おまえ達に任せる。費用と必要なものは、私が全て用意する。」
そう言うと、アーサーは出窓まで歩いて行き、額に手を当てる。
「すまないが、全員1度外に出てくれないか?」
アーサーの中で、なにかが壊れそうだった。
抑えきれない感情と、決着のつかない想い。
微かな、それは微かな可能性。
一筋の光。いや、これは新たな絶望かもしれない。
窓枠に寄りかかり、目を閉じる。
目を閉じれば、サラの声が蘇る。
『アーサー!』
私を唯一名前で呼ぶ。あの、明るい声。
『あのね、私が見た夢では、あの辺は緑の大地で、川が流れていたわ。鳥も』
目を開ければ、窓の外に広がる大地が見える。
サラ。おまえの言う通りになった今、この国は平和だ。
私の目指す国造りが、実現されていく中に、お前はいないのか。
私は、絶望と希望の狭間で、なんとか生きている。
「・・・・・・気色悪いから、そんなに顔を近づけるな。」
サミュエルとレオンが、なにやら言い合いしている。
そんな2人を見て、ウィルが笑う。
「相変わらず仲良しですね~。」
「おいウィル、これが仲良いわけないだろう。」
レオン団長が冷たく言う。
「そういえば、陛下の後宮ができたって聞きましたけど?」
サミュエルが楽しそうに言う。
ウィルが、ため息をつく。
「えぇ、まぁ、陛下がなかなか世継ぎをつくらないので、家臣たちはやっきになってます。しかし・・・」
「どうした?」
「夢を見るようなのです。サラ様の。」
レオンは立ち止まる。
「夢?」
サミュエルも立ち止まる。
2人に見られて、ウィルが話を続ける。
「サラ様を忘れられないのです。それが、眠れなくなるほどのリアルな夢を見るらしくて、夢と現実を往復するのがお辛い様子で・・・。近頃は不眠症になられてしまって。」
ウィルが2人を見る。
「・・・・・どうかしましたか?」
サミュエルと、レオンは顔を見合わせる。
「団長、妙じゃないですかねぇ?」
最初に、揉めていた会話に、2人は戻る。
サミュエルが、むずがるように表現する。
「・・・・何か、こう、あの時と同じというか。それに、ほら・・団長なら感じるでしょ?」
レオンは、腕を組んで俯く。
「おまえが言うことは解る。近頃、何とも言えない魔力を感じるしな。」
レオン団長は、サミュエルを連れて、アーサーの所に急いだ。
執務室に入ると、確かに目の下にクマのある陛下が居た。
「なんだ。おまえたち。暇なのか?」
「失礼な。陛下を、お助けすべく来たんですよ。」
「・・・・ふふ。不眠症でも治してくれるのか?」
アーサーは溜息をついて、笑った。
その様子に、魔術師2人は黙る。
「・・・」
アーサーが顔を上げる。
「?なんだ?」
レオン団長が、ため息交じりに言う。
「実は、最近、妙なことがありまして。」
そう言いかけて、サミュエルを見ると、ほらほら妙なこと~と茶化した目をしてきた。なんとなくため息をつく。
「とにかく、陛下の夢の話を伺います。」
「言いたくない。」
アーサーが即答する。
「何故です?不眠でお悩みだと。」
アーサーは、両手で顔を覆う。
「サラの夢を見る。それだけだ。今更、自分でも情けないと思っている。しかし、すごくリアルで、神経を逆なでされているような、そんな気分になるんだ。」
目を閉じると、その夢に引き込まれそうになる。
「本当に、そこに居るかのようなんだ。目が覚めても、現実との区別がつかないほどだ。もう3年になろうとしているのに、何故、あんなに鮮明な夢を見る?あの声も、何もかも。もう、気が狂いそうだ。」
そう言って、頭を抱えた。
その姿を見て、レオンが聞いた。
「異世界に、いらっしゃいましたか?」
アーサーが、顔を上げる。
「・・・なんだと?」
レオンは、少しの間を置いてしまう。
「異世界にいらっしゃったのかと、伺っているんです。」
「・・・・どうゆうことだ?」
サミュエルとレオンが、チラッと目を合わせる。
「確信の無い事で、状況を確認したいのです。夢の詳しい話を伺っても良いですか?」
いぶかしげに、アーサーは渋々、話し出す。
アーサーは、この苦しみから逃れたかった。なんとかしなければ、自分が狂い、国が傾いてしまうことを危惧していたのだ。いっそのこと、夢を見なければ、サラを忘れられればとさえ、思っていた。
「はぁ・・・笑うなよ?いつも同じ夢だ。サラは子供と一緒なんだ。金髪で青い目の子供だった。夢で見るたびに、その子は少しずつ、成長していくんだ。歩けなかった子が、次に見る時には、つかまり立ちをして、近頃は歩きまわって、走り回っていた。まるで、本当に生きているかのように・・・私の願望なのだろうか。」
サミュエルと、レオンが固まる。
ウィルまでもが、ビタリと動きが止まる。
青冷めたウィルの態度に、アーサーが聞く。
「・・・・何かあるのか?」
レオンは、慎重に話をしようとする。そして、うっかり言い方を間違えた。
「あの・・・女神の指輪は、サラ様が持って行かれたのですよね?」
その質問に、アーサーの目が吊り上がる。
「持って行く、だと??・・・レオン、何を考えている?」
その瞬間、ウィルが無鉄砲に口走る。
「ま、まさか、サラ様は生きておられる・・・?」
そこまで言いかけて、レオンが大きな声をだした。
「確信がない!生きているという確信がない!だから、申し上げられないんです!」
サミュエルが、興奮したように口を開く。
「でも、まるで、サラ様が最初にココに来た時と同じじゃないですか!夢で会っているだなんて!しかも、サラ様が子供と一緒にいるだなんて!生きていれば、3歳だ!歩き回ってる!」
アーサーが立ち上がる。
「何を言ってる?全部話せ!!確信が無くてもいい!どうゆうことだ!」
レオン団長は、サミュエルを睨みつける。
それから、腹を決める。
「陛下。」
アーサーは、レオンを見る。
「サラ様は、陛下のお子を妊娠されていたのです。」
「・・・・な・・・んだと?」
そこで、ゴードンが入室してくる。
「今更なんの話をしているのです?」
全員がゴードンを見た。
「過ぎたことです。午後の執務に入りますよ。」
アーサーの体から、魔力が渦を巻き始める。
「ゴードン・・・。」
サミュエルが、なだめるように間に入る。
「あの、少しだけ、10分で話が終わるんで~~。ゴードン様は少し席を外して頂いて~。」
アーサーの魔力で、書類や棚がカタカタと揺れ出す。
「ゴードン、お前も知っていたんだな?全員、知っていて!サラに私を助けさせたのか!?」
アーサーの問いかけに、ゴードンは表情を変えなかった。
「私が指示しました。お子よりもサラ様よりも、陛下の命の方が優先だと。」
瞬間に、アーサーはゴードンに掴みかかる。
アーサーを止めに入ったレオンが、慌てて叫ぶ。
「違います!サラ様は、ご自分で決められたのです!!誰も止められなかった!」
悔しそうに顔を歪ませて、レオンは言った。
「陛下の居ない世界で、生きていけない。そう、おっしゃられて。」
・・・生きて、いけない?
そうだ・・・その通りだ、サラ。
おまえを失って、私は・・・・。
静かに、ゴードンから手を離した。
そして、レオンを見る。
レオンは、アーサーの目を見て話を進める。
「白竜に会いに行ったサラ様に同行したのは、私です。あの時、命と引き換えにと竜は言いましたが、実際は、死というよりはサラ様は消えたんです。跡形もなく。それはまるで、ここに来た時と同じです。竜のあの言葉が、この世界から消えると言う意味だとしたら・・・。異世界に帰ったのかもしれないと考えました。生きているのか、確かめたいのです。しかし、生きていたとして、異世界から呼び寄せられるのか?は分かりません。」
一気に話し終えると、アーサが質問した。
「どうやってだ?」
「・・・?」
「どうやって、生きているかを調べる?」
アーサーの問いに、レオン団長が頭を抱える。
「召喚・・・・しかし、上手くいく気がしないのです。女神の指輪も無い。それに竜がこの世界の神だとすると、サラ様が2度と呼び寄せられないようにしたと考えるべきなのか。」
サミュエルが、口を開く。
「陛下、許可を頂きたい。サラ様を捜索することをです。それと、夢はリアルな場合、詳細を伺いたいです。私たちも、手探りですし、それに陛下の命令とあれば、仕事の合間にやる必要もなくなる。」
レオン団長は、付け加える。
「これはあくまでも可能性です。ただの夢。サラ様は、もうどこにも存在していないことも。」
「構わない。」
アーサーはキッパリと言った。
「おまえ達に任せる。費用と必要なものは、私が全て用意する。」
そう言うと、アーサーは出窓まで歩いて行き、額に手を当てる。
「すまないが、全員1度外に出てくれないか?」
アーサーの中で、なにかが壊れそうだった。
抑えきれない感情と、決着のつかない想い。
微かな、それは微かな可能性。
一筋の光。いや、これは新たな絶望かもしれない。
窓枠に寄りかかり、目を閉じる。
目を閉じれば、サラの声が蘇る。
『アーサー!』
私を唯一名前で呼ぶ。あの、明るい声。
『あのね、私が見た夢では、あの辺は緑の大地で、川が流れていたわ。鳥も』
目を開ければ、窓の外に広がる大地が見える。
サラ。おまえの言う通りになった今、この国は平和だ。
私の目指す国造りが、実現されていく中に、お前はいないのか。
私は、絶望と希望の狭間で、なんとか生きている。
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