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53話 再会
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「わぁ!ここがウォステリア?」
ルカが、楽しそうに馬車から降りる。
染めた髪が、長旅ですっかり金髪に戻っている。
「ここで待っていれば、おじさんの知り合いの人が来てくれるはずなのよ。」
エマが言うと、ルカは少し待っていたけれど、商店街に興味をそそられて、立ち上がる。
「かーさま!お店見てみようよ!」
そう言って、駆け出して行く。
「あ!ルカ待って!」
2人の長い旅も、もうすぐ終わりを迎える。
目指してきた国に、やっとたどり着いて、2人とも安堵したのだと思う。大きな街に、浮かれていた。たくさんの知らない食べものや、オモチャに目を奪われる。
それは突然だった。
急に「久しぶりだな」と、男性から話しかけられる。
エマが振り向くと、力づくで路地裏へと引きずり込まれた。
男性は、頭にターバンを巻いていた。
男の顔を見ても、何も思い出せない。
「あの・・・わたし・・・人違いでは?」
商店街で、はぐれてしまったルカが「かーさまー!」と呼んでいる。
「おまえ、なんでここにいる?人違いだと?ふん。まぁいい。お前を抱けば、また魔力が戻る。」
この男が、何を言っているのか分からない。不穏な空気に、エマは走りだす。すぐに髪を捕まれて、引き寄せられる。
「いや!やめて!!」
むりやりにキスをされる。
瞬間に、思いっきり噛みついた。
「っ!!」
バシッ!!と、頬を殴られて、エマは地面に叩きつけられた。
「・・・何故だ?魔力が戻らない。おまえ、女神じゃないのか!」
男が叫んだ。
恐怖に震えながら、エマは体を起こす。
「女神?あなたは誰?私を知ってるの?」
頬の痛みで、呂律が回っていたか定かではない。なんとか体を起こしながら、男を見る。口の中が切れたのか、血の味がする。
「あ!かーさま!!」
ルカが、エマを見つけて駆け寄ろうと走って来る。
「ルカ!来ちゃダメ!」
そう言った瞬間に、再び髪の毛を掴まれる。そして、首を絞められる。
「うぐ!」
「黙ってついてこい!!」
その瞬間、ドン!!!!と爆風があがった。
男は一瞬で吹き飛び、近くにあった建物も吹き飛ぶ。
商店街の人たちが、悲鳴を上げて逃げ惑う。
吹き飛ばされた男は、起き上がり、ルカを見る。
「なんだ・・・おまえは・・・子供のくせに!」
ルカは抑えきれない感情と共に、魔力を吹き出し続ける。
「かーさまを、なぜ連れて行こーとする!!」
ゴウゴウと爆風が吹き荒れる。
エマは、何とかルカに駆け寄る。
「ルカ!ダメ!もうやめて!」
「悪いやつ!あいつ、かーさまを傷つけるヤツ!」
「ルカ!!だめよ!」
ルカの魔力は暴走したまま、全く静まらない。こんな怪しい男から、早く逃げ出したかった。必死でルカに抱き着くけど、どうすることもできなかった。
「ふん、ガキなど、お仕置きが必要だな!!」
ルカに向けて手を向ける男を見て、咄嗟にルカの前に立ちふさがる。男からの解き放たれた、魔術の刃がエマを吹き飛ばした。
「かーさま!!!」
ルカが駆け寄ってくる。おなかに刀傷ができ、血がにじんでいる。それを見たルカは、我を忘れる。
再び、ドン!!と、凄まじい魔力の柱が立ち上がった。
「おまえ・・・許さない。」
バリバリバリ!!と稲妻があたりに立ち込める。近くにあった家が燃え始める。
「絶対許さない!!!!」
ルカが、魔力を爆発させた。
周囲の人々は逃げ惑い、近くの建物は次々と燃え上がり始める。
◇◇◇◇◇
その頃
アーサーは、妙な魔力を感じ取っていた。
「・・・なんだ?」
アーサーは、お城のバルコニーに急いで出る。
城のバルコニーからは何も見えない。けれども、何か強大な魔力を感じる。
「陛下?どうされましたか?」
ウィルが走って追いかけて来た。
「・・・何か、なんだ?どこかから・・・いや、結界の中だ!なんだ?この魔力は。」
バタバタバタ!っと、足音が響く。
「陛下!!」
レオンとサミュエルだった。
「レオン!これは、襲撃か?」
「これをご覧ください!!南東の国境です!」
サミュエルが持ってきた水晶玉に、映像が映る。
そこには、小さい男の子が魔力を暴発させていた。
そして、対峙しているのは・・・。
「カイン・・!ガルーダの元王太子か!!あいつ、まだ生きていたのか!」
数年ぶりに見るカイン元王太子は、見る影も無くやつれていたけれども、やつに間違い無かった。
「しかし、この子供は・・・」
映し出される子供を、食い入るように見つめた、その時だった。
「・・・・!」
そこに居た男の子は、見覚えがある。赤ん坊のころから、知っている・・・夢の中で、サラと一緒に居た子供だ。
アーサーが、急に走り出す。
「陛下?!」
「陛下!お待ちを!!どちらへ?」
レオンもウィルも慌てる。
魔法陣の描かれた部屋に入ると、アーサーは瞬間に転移魔法を使う。
レオンは、慌てて魔法陣の中に飛び込んだ。
そのまま、一瞬でレオンとアーサーが、お城から消えた。
「ど・・・どうしたんだ?」
取り残されたサミュエルが、途方にくれる。
ウィルもあっけにとられたまま、立ち尽くす。
転移魔法で、到着したのは、南東にある国境沿いの街だった。
アーサーはすぐさま、砦の中を走って行く。
「陛下!?」
砦に居た兵士たちが、驚きを隠せない。
「飛竜を借りるぞ!」
アーサーはそう言うと、砦に居た飛竜に乗り込む。
レオンも、黙って同じようについて行った。
飛竜はガルーダと和平を交わしてから、輸入されるようになっていた。
上空に飛び立つと、火柱が上がる場所が見えた。黒い雲が立ち込めて、稲妻が走る場所があった。
「凄い・・・。魔力が暴走してるのか。」
レオンがポツリと呟く。
アーサーは、真っ直ぐに飛んでいく。レオンも続いた。
暴走している子供を見つけて、真上で旋回する。
そして、レオン団長は気が付いた。
子供の近くに、黒髪の女性が倒れている。うずくまっていた。
次の瞬間、アーサーは飛竜ごと地上に降りた。凄まじい爆風の中、飛竜は子供とカイン元王太子の間に降り立つ。と、同時にアーサーは、カイン元王太子に、魔力砲をぶちこむ。
「?!?!」
ルカは、驚いて、飛竜に乗ってやってきたアーサーを見る。
アーサーは、吹き飛んだカインの傍まで行くと、剣を抜いて首に当てた。
「まだ生きていたのか?何年ぶりだ?カイン。」
体を起こすのがやっとの、カイン元王太子は言った。
「アーサー王か。やはり、あいつ、女神だったのか!」
そう言った瞬間に、アーサーは首を切り落とした。
迷いなど、1ミリも無かった。
その姿を、ルカは、ジッと見ていた。
エマも、その残酷な、金髪の青い瞳の美しい男性を見ていた。
アーサーはルカに視線を移す。
夢で見た、男の子が居た。
自分と同じ、アイスブルーの大きな瞳だった。
少し目を移すと、そこには、サラが居た。
座り込み、血を流している姿に、慌てる。
「サラ!」
駆け寄ろうとすると、サラはその傷で、立ち上がり、子供の傍に駆け寄る。そして、私から守るかのように、目を吊り上げて叫んだ。
「来ないで!!近寄らないで!」
「・・・サラ?」
アーサーの口から、聞き取れない程の声が漏れる。
恐怖に震えながら、ルカは魔力を暴発させる。
「おまえは誰だ?!かあさまに何かしたら許さないぞ!」
次の瞬間、レオン団長が透明のシャボン玉のような物をルカ目掛けて投げる。すると、ルカがシャボン玉の中にスポン!と入って、気を失った。
それを見て、叫び声が響く。
「ルカ!!ルカ!」
アーサーは、何が起こっているのか、分からなくなりそうだった。サラに近づこうと足をすすめる。
「来ないで!近寄らないで!」
キッと睨みつけて、叫ぶ声が響く。
アーサーは、立ち止まる。
その目。その声。その黒髪は、女性らしく長く伸びたけれども。その顔立ちは、少し大人びたように見えるけれど、サラだ。間違いない。間違えるわけがない。サラだ。
サラは子供を抱えて、立ち上がる。その体は恐怖に震えていた。キッと睨みつけたまま叫ぶ。
「こっちに来ないで!!この子に、手を出さないで!」
ガクガクと震えながら、子供を必死に守ろうと、抱えたまま立ち上がる。サラの体から、血がポトポトと落ちる。
その姿に、アーサーもレオンも固まった。
ルカが、楽しそうに馬車から降りる。
染めた髪が、長旅ですっかり金髪に戻っている。
「ここで待っていれば、おじさんの知り合いの人が来てくれるはずなのよ。」
エマが言うと、ルカは少し待っていたけれど、商店街に興味をそそられて、立ち上がる。
「かーさま!お店見てみようよ!」
そう言って、駆け出して行く。
「あ!ルカ待って!」
2人の長い旅も、もうすぐ終わりを迎える。
目指してきた国に、やっとたどり着いて、2人とも安堵したのだと思う。大きな街に、浮かれていた。たくさんの知らない食べものや、オモチャに目を奪われる。
それは突然だった。
急に「久しぶりだな」と、男性から話しかけられる。
エマが振り向くと、力づくで路地裏へと引きずり込まれた。
男性は、頭にターバンを巻いていた。
男の顔を見ても、何も思い出せない。
「あの・・・わたし・・・人違いでは?」
商店街で、はぐれてしまったルカが「かーさまー!」と呼んでいる。
「おまえ、なんでここにいる?人違いだと?ふん。まぁいい。お前を抱けば、また魔力が戻る。」
この男が、何を言っているのか分からない。不穏な空気に、エマは走りだす。すぐに髪を捕まれて、引き寄せられる。
「いや!やめて!!」
むりやりにキスをされる。
瞬間に、思いっきり噛みついた。
「っ!!」
バシッ!!と、頬を殴られて、エマは地面に叩きつけられた。
「・・・何故だ?魔力が戻らない。おまえ、女神じゃないのか!」
男が叫んだ。
恐怖に震えながら、エマは体を起こす。
「女神?あなたは誰?私を知ってるの?」
頬の痛みで、呂律が回っていたか定かではない。なんとか体を起こしながら、男を見る。口の中が切れたのか、血の味がする。
「あ!かーさま!!」
ルカが、エマを見つけて駆け寄ろうと走って来る。
「ルカ!来ちゃダメ!」
そう言った瞬間に、再び髪の毛を掴まれる。そして、首を絞められる。
「うぐ!」
「黙ってついてこい!!」
その瞬間、ドン!!!!と爆風があがった。
男は一瞬で吹き飛び、近くにあった建物も吹き飛ぶ。
商店街の人たちが、悲鳴を上げて逃げ惑う。
吹き飛ばされた男は、起き上がり、ルカを見る。
「なんだ・・・おまえは・・・子供のくせに!」
ルカは抑えきれない感情と共に、魔力を吹き出し続ける。
「かーさまを、なぜ連れて行こーとする!!」
ゴウゴウと爆風が吹き荒れる。
エマは、何とかルカに駆け寄る。
「ルカ!ダメ!もうやめて!」
「悪いやつ!あいつ、かーさまを傷つけるヤツ!」
「ルカ!!だめよ!」
ルカの魔力は暴走したまま、全く静まらない。こんな怪しい男から、早く逃げ出したかった。必死でルカに抱き着くけど、どうすることもできなかった。
「ふん、ガキなど、お仕置きが必要だな!!」
ルカに向けて手を向ける男を見て、咄嗟にルカの前に立ちふさがる。男からの解き放たれた、魔術の刃がエマを吹き飛ばした。
「かーさま!!!」
ルカが駆け寄ってくる。おなかに刀傷ができ、血がにじんでいる。それを見たルカは、我を忘れる。
再び、ドン!!と、凄まじい魔力の柱が立ち上がった。
「おまえ・・・許さない。」
バリバリバリ!!と稲妻があたりに立ち込める。近くにあった家が燃え始める。
「絶対許さない!!!!」
ルカが、魔力を爆発させた。
周囲の人々は逃げ惑い、近くの建物は次々と燃え上がり始める。
◇◇◇◇◇
その頃
アーサーは、妙な魔力を感じ取っていた。
「・・・なんだ?」
アーサーは、お城のバルコニーに急いで出る。
城のバルコニーからは何も見えない。けれども、何か強大な魔力を感じる。
「陛下?どうされましたか?」
ウィルが走って追いかけて来た。
「・・・何か、なんだ?どこかから・・・いや、結界の中だ!なんだ?この魔力は。」
バタバタバタ!っと、足音が響く。
「陛下!!」
レオンとサミュエルだった。
「レオン!これは、襲撃か?」
「これをご覧ください!!南東の国境です!」
サミュエルが持ってきた水晶玉に、映像が映る。
そこには、小さい男の子が魔力を暴発させていた。
そして、対峙しているのは・・・。
「カイン・・!ガルーダの元王太子か!!あいつ、まだ生きていたのか!」
数年ぶりに見るカイン元王太子は、見る影も無くやつれていたけれども、やつに間違い無かった。
「しかし、この子供は・・・」
映し出される子供を、食い入るように見つめた、その時だった。
「・・・・!」
そこに居た男の子は、見覚えがある。赤ん坊のころから、知っている・・・夢の中で、サラと一緒に居た子供だ。
アーサーが、急に走り出す。
「陛下?!」
「陛下!お待ちを!!どちらへ?」
レオンもウィルも慌てる。
魔法陣の描かれた部屋に入ると、アーサーは瞬間に転移魔法を使う。
レオンは、慌てて魔法陣の中に飛び込んだ。
そのまま、一瞬でレオンとアーサーが、お城から消えた。
「ど・・・どうしたんだ?」
取り残されたサミュエルが、途方にくれる。
ウィルもあっけにとられたまま、立ち尽くす。
転移魔法で、到着したのは、南東にある国境沿いの街だった。
アーサーはすぐさま、砦の中を走って行く。
「陛下!?」
砦に居た兵士たちが、驚きを隠せない。
「飛竜を借りるぞ!」
アーサーはそう言うと、砦に居た飛竜に乗り込む。
レオンも、黙って同じようについて行った。
飛竜はガルーダと和平を交わしてから、輸入されるようになっていた。
上空に飛び立つと、火柱が上がる場所が見えた。黒い雲が立ち込めて、稲妻が走る場所があった。
「凄い・・・。魔力が暴走してるのか。」
レオンがポツリと呟く。
アーサーは、真っ直ぐに飛んでいく。レオンも続いた。
暴走している子供を見つけて、真上で旋回する。
そして、レオン団長は気が付いた。
子供の近くに、黒髪の女性が倒れている。うずくまっていた。
次の瞬間、アーサーは飛竜ごと地上に降りた。凄まじい爆風の中、飛竜は子供とカイン元王太子の間に降り立つ。と、同時にアーサーは、カイン元王太子に、魔力砲をぶちこむ。
「?!?!」
ルカは、驚いて、飛竜に乗ってやってきたアーサーを見る。
アーサーは、吹き飛んだカインの傍まで行くと、剣を抜いて首に当てた。
「まだ生きていたのか?何年ぶりだ?カイン。」
体を起こすのがやっとの、カイン元王太子は言った。
「アーサー王か。やはり、あいつ、女神だったのか!」
そう言った瞬間に、アーサーは首を切り落とした。
迷いなど、1ミリも無かった。
その姿を、ルカは、ジッと見ていた。
エマも、その残酷な、金髪の青い瞳の美しい男性を見ていた。
アーサーはルカに視線を移す。
夢で見た、男の子が居た。
自分と同じ、アイスブルーの大きな瞳だった。
少し目を移すと、そこには、サラが居た。
座り込み、血を流している姿に、慌てる。
「サラ!」
駆け寄ろうとすると、サラはその傷で、立ち上がり、子供の傍に駆け寄る。そして、私から守るかのように、目を吊り上げて叫んだ。
「来ないで!!近寄らないで!」
「・・・サラ?」
アーサーの口から、聞き取れない程の声が漏れる。
恐怖に震えながら、ルカは魔力を暴発させる。
「おまえは誰だ?!かあさまに何かしたら許さないぞ!」
次の瞬間、レオン団長が透明のシャボン玉のような物をルカ目掛けて投げる。すると、ルカがシャボン玉の中にスポン!と入って、気を失った。
それを見て、叫び声が響く。
「ルカ!!ルカ!」
アーサーは、何が起こっているのか、分からなくなりそうだった。サラに近づこうと足をすすめる。
「来ないで!近寄らないで!」
キッと睨みつけて、叫ぶ声が響く。
アーサーは、立ち止まる。
その目。その声。その黒髪は、女性らしく長く伸びたけれども。その顔立ちは、少し大人びたように見えるけれど、サラだ。間違いない。間違えるわけがない。サラだ。
サラは子供を抱えて、立ち上がる。その体は恐怖に震えていた。キッと睨みつけたまま叫ぶ。
「こっちに来ないで!!この子に、手を出さないで!」
ガクガクと震えながら、子供を必死に守ろうと、抱えたまま立ち上がる。サラの体から、血がポトポトと落ちる。
その姿に、アーサーもレオンも固まった。
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