女神なんかじゃない

月野さと

文字の大きさ
68 / 83

68話 ブリテンのラタ族1

しおりを挟む
「俺は、ブリテンに住んでいるラタ族だ。」
 褐色の肌と黒髪で、金色の目をした男が言う。

 サラは、一生懸命に考えたけれども、どこにある国かも分からなかった。まだルカを産む前、ゴードンさんから色々聞いて世界の勉強したけれども、もう今ではうろ覚えだ。
 サラとテルマは両手を縛られて、乗って来た馬車で、どこかに連れて行かれていた。 
「どこへ連れて行くつもり?」
 サラが聞くと、男は答えた。
「おまえが女神だな?お前の力をラタ族が手に入れる。」
 サラは、思いっきりため息をついた。
「女神の力ってこと?・・・残念だけど、私は女神の力を失ったわ。ウォステリアに結界を張ったのを最後に、もう私には何の力もないの。」
 ジャキン!と刀を素早く閃かせて、サラの首筋に剣をピタリと当てる。サラは息を飲んだ。
「それを信じるかどうかは、お前を犯して子を産ませてからだ。」
「サラ様!!」
 テルマさんが身を乗り出した瞬間、男は、サラに剣を向けたまま、テルマさんの首を左手で掴んだ。そのままテルマさんを壁に押し付けて首を絞める。
「やめて!!彼女に手を出したら、舌噛んで今すぐ死んでやる!!」
「うぐ・・・さ・・サラ・・・さま・・!!」
 男は、サラの目を睨みつけたまま、少し考えると、テルマさんから手を離した。
「取引だ。この女をココで馬車から下ろしてやる。その代わり、お前は俺の言う通りにしろ。」
 サラは慎重に考えて答える。
「・・・・いいえ、信用できないわ。彼女を安全な場所で降ろしてくれないと、言う事を聞けない。あなたの仲間が、彼女を人知れず殺すかもしれないでしょう?」
 男はニタリと笑う。
「フン!食えない女だな。良いだろう。ウォステリアの国境で、役人に引き渡すでどうだ?」
 国境?首都から国境までは馬車で数日かかるはず。それまでに・・・。
「・・・わかったわ。」

 サラの予測は覆された。
 驚くことに、この馬車は既に国境まで来ていた。馬車の窓の外を見ると、国境である壁が見えてきた。
「どうゆうこと?あなたたちは魔術師なの?」
 クツクツと男は笑う。
「我々が飼育している一角獣は、一足飛びに千里を駆ける。」
 男の言う通り、馬車のスピードは新幹線のように早い。いや、それよりも早い・・・。
 そして、テルマさんは馬車から下ろされた。

「サラ様!!」
 馬車を下ろされたテルマさんが、サラを見る。
「テルマさん、私、ここで見てるから、州知事の所へ、建物の中に入って?」
 テルマさんの目が、何かを無言で訴えていた。サラはゆっくりと頷く。
 きっと、アーサーに言いに行ってくれる。そう信じた。

 男は、剣をサラの首にくっつけたままにする。
 テルマは、城門まで走って行く。門番と話をして、扉の中へと入って行った。

「これでいいな?」
 男はそう言って、馬車の扉を閉めた。
 馬車の窓の外を眺める。再び新幹線のように移動を始める。

 ウォステリアを出て、トルネ山の麓。そこには雪に閉ざされたような町があった。人が誰も外には居ない。遊牧民族のような、大きなしっかりめのテントが点在していた。
「ここが、ブリテン?」
 冷たい目をした男が、無表情で返事をする。
「そうだ。1年を通して雪に覆われている。魔獣の出る街だ。」

 馬車を降りると、サラは気になっていた、馬車を引いていた馬を見る。
「これが一角獣?」
 馬に短い角が生えていて、青みがかった白く光る毛並みだった。
「なんて・・・綺麗な馬なの。」
 サラは、一角獣に近寄って行く。
「おい!待て!怖くないのか?」
 手を縛られているので、一角獣の傍まで行くと、ほおずりしてみた。
「怖くなんてないわ。・・・わぁ。温かい。フワフワの毛並み。」
 とても大人しくて、賢そうな生き物だと思った。この世界には、まだ知らないことが多いな。

 その時、大きなテントのような家から、10人位が姿を現した。
「ヒューガ!戻ったか!!」
「上手くいったんだな!!さすがは長だ!ヒューガだ!」

 見る限り、10代20代の若い人たちばかりだった。民族衣装なのだろう。みんな同じような服を着ている。『ヒューガ』と呼ばれた男は、私を引きずり下ろすと、家の中に引っ張って行く。両手を縛られた縄を引っ張るので、縄が手首に食い込んだ。

 家の中は、思っていたテントの作りでは無く、普通に仕切りがある家だった。外から見た時はテントだと思ったのに、ちょっと驚く。
 だだっ広い広間に、絨毯が敷いてあって、そこに男たちが胡坐を組んで座っていた。
 その目の前に、投げ込まれる。バランスを崩して、私はその場に倒れこむ。・・・地味にイタイ。

「この女が、ウォステリアを守っているという女神か。」
「あぁ、そうだ。何ヵ月もかけて隙を狙っていたが、やっと運が廻ってきた。」
「この女を抱けば強大な魔力を得て、子を産ませれば、魔力の強い子供が生まれるのか。」
「それなら、10人ほど産ませれば、いいんじゃないか?」
 男たちは、サラを目の前にして、恐ろしい話を始めた。

 サラは、何とか息を吸い込んで言った。
「待って!本当に、もう力を持っていないのよ!私を犯しても、何をしても、何の意味も無いわ!!」

 男たちの中に居た、1番屈強な男がサラに近づく。
「なんだと?だが、最近現れた王子は、強大な魔力を持っているそうじゃないか。」
「・・・それは、まだ女神の力を失う前だったから!」
 サラは自分で言っていて、信じてもらうには、説得力が無く、証拠も何も無い事に気が付く。 

「信じられるか!!もう、俺達には後が無いんだ!!」
 他の男も叫ぶ。
「そうだ!俺たちが生き残るには、女神の力を手に入れるよりほかにない!」

 生き残る?
「どうゆうこと?生き残るって、何があるの?」

 興奮した男たちは、サラの声など聞こえないようだった。
 ギラギラとした男たちが、サラを取り囲む。

「誰からやる?」
「全員でやるか?」
「順番だ。」

 手を縛った縄を引っ張られる。 

「痛!!・・やめて!本当なの!何の力も無い!!・・・嫌!!やめて!!」


 



 
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

処理中です...