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1章「クランからの追放とNTR、そして現実がゲームに」
第1話「無課金の誇りとクランからの追放」
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#第1話「無課金の誇りとクランからの追放」
昔、俺はゲームで世界の頂点に立てると信じていた。
中学二年、俺――結城 蓮(ゆうき・れん)は、世界的なVRMMO『ダークファンタズム・オンライン』で、自分が立ち上げた無課金クラン『エクリプス』を率いていた。あえて言えば課金もコネもない弱小クランだった。それでも、戦術と効率を磨き上げて俺たちは必死に食らいついていた。
その中に、ルナという名の仲間がいた。ゲーム内で出会いずっと一緒にプレイしてきた女の子。俺と同様に無課金ながら高い操作技術と判断力で、クランの右腕とも言える存在だった。
「金持ちには負けない!無課金でいつかは世界一に!」とよくチャットで語り合っていた。俺たちは信頼で繋がっていた――そう、思っていた。
だが、越えられない壁があった。
――課金。
金持ちは宝箱を何十個も購入して一気に開けた。そうしてAランクの武具や使役モンスターを当たり前のように手に入れたのだ。装備は開けた本人にしか使えない仕様であり強者の証となった。
その状況は動画で配信された。そして圧倒された。俺たちが何十時間もプレイして敵モンスターを倒しようやく入手できる宝箱、それを課金で何十個単位で購入して開けていく。強い使役モンスターや武具が出た時には賞賛のコメントであふれかえった。
正直、その動画を見て俺も羨ましくなった。俺もお金があれば……そのように思うことも多かった。
そして彼らは強い装備と強い使役モンスターで構成されたパーティを組み、深層ステージを高速で周回。とどめを刺す者に多くの経験値が入る仕様もあって、火力の高い彼らはレベル上げも爆速だった。
使役モンスターを壁にして相手モンスターを弱らせて最後の止めをさして経験値を得るという周回だ。時には使役モンスターを犠牲にすることもあったが何度でも宝箱を開けモンスターを使役できる彼らはおかまいなし。使役モンスターの犠牲の上に自らをレベルアップさせていった。
俺のクランではできない周回だ。使役モンスターも貴重な俺たちは時にはモンスターを守った、時には使役モンスターに敵モンスターを倒させて使役モンスターのレベルアップを促すこともあった。全体としては強くなる。しかしそれではどうしても自分のレベルアップがおろそかになった。
強い者が爆速でレベルを上げ、より強くなる。いくら頑張っても差は広がるばかり。そして弱い者も強いクランに入ればすぐにレベルを爆速で引き上げてもらえる。強いクランに人が集まるのは当然の道理だった。
無課金の俺たちはレベル上げもままならず、新しい仲間も入らず、どうしてもそこに食い込めなかった。俺たちは良くてもせいぜい世界順位100位程度。課金勢は後から短時間であっさりと俺たち抜かし更に勢力を拡大して俺たちが未達の50位以内にまで進出していく。そうして埋めようのない差が付いていった。課金勢との差に絶望を感じたものだ。
でもそれも仕方がない。ゲーム会社が儲からないと続かない。課金ユーザーを手厚く守るのは当然だった。そこには資本主義の全てが詰まっていた。
国内でも課金と動画配信で有名になった有名クラン『レヴァンティア』があった。そのリーダーで配信者でもあるアズマは、動画内で俺のことを「宝箱ひとつ買えない貧乏人」と鼻で笑った。他のクランにも様々なゆさぶりをかけ、引き抜きまで行って勢力を高めていたが、とうとう俺たちのような弱小クランにまでゆさぶりをかけてきたのだ。
有名クラン『レヴァンティア』は多額の課金をして爆速でレベルアップするだけでなく、クランを乗っ取ったりレベルの高い人間を引き抜いて強くなっていった。
そして、いつしか俺のクランも乗っ取られた。我が無課金クラン『エクリプス』のほとんどのメンバーが『レヴァンティア』傘下に入ることに同意したのだ。
有名クラン『レヴァンティア』から来た人間がクランリーダーになり俺は降ろされた。
大事な相棒だったはずのルナも同意した。
「ごめん、レン……。向こうのクラン傘下なら毎月宝箱を五個無料でもらえるって……。正直、魅力だった。このクランで頑張ってきたけど、やっぱり限界がある。育ててもらった恩は本当にありがたいと思ってる。でも……申し訳ないけど、リーダーを降りて欲しい」
ずっと尽くしてくれていたルナに、俺は十分な報酬も出せなかった。基本は成功報酬、彼女の実力に見合った環境をリーダーとして与えられていたとは言えない。俺はリーダーを降りることに同意した。
そして……その時はついにやってきた。
「レン、君をこのクランから追放する。どうしても無課金のやり方のくせが付いているからね。君がいることでマイナスになっている。申し訳ないがこのクランを抜けて欲しい」
新しくやってきたリーダーから俺は追放を言い渡された。
ルナは無言だった。もしかしたら反対してくれたのかもしれない。でもすでに話は付いていたのだろう、特に何も言い出さなかった。その後も誰も反対せず俺の追放が決まった。
「みんな、これまでありがとう。俺はみんなとやってこれて楽しかった。俺が抜けてもみんな力を合わせてルナを中心として頑張って欲しい」
そう言って俺はログアウトした。
はぁ、これがNTR追放ってやつかな。まあ別にルナとそういう関係ではないのでNTRというのは表現は違うけど気分的にはそんな感じがする。クランも女も奪われたわけだ。心が通っていたと思っていた女の子に裏切られたような気分だ。
結局、無課金の俺は"努力だけじゃ届かない場所"があることを、痛いほど思い知った。現実にはトップどころか100位以内でさえも厳しいのだ。
俺は長時間かけて作った無課金クラン『エクリプス』、そして仲の良かった女の子を金の力であっさりと奪われた。
思えば俺は寝る時間も食事の時間も節約して1秒1秒を大事にゲームに費やした……その数年の努力が金であっさりとくつがえされた。俺はそのやりようのない孤独と絶望に1人で号泣した。しょせん、貧乏な凡人はいくら懸命に努力しても金にかなわないのだ。
そして――ゲームで絶望を感じていたその冬のことだった。更なる悲劇を俺を襲った。
両親が交通事故で亡くなったのだ。
泣く暇もなかった。まだ小学生の幼い弟と妹を養うために俺はゲームから離れた。ゲームに未練はなかった。
俺についてきてくれた人がいたから新しくクランを立ち上げたが、俺は正直に両親が他界したことを伝えクランのトップを譲った。現実の話を信じてもらえたかは分からない。もしかしたらゲームから離脱するための嘘だと思われていたかもしれないな。そして、その後クランがどうなったかは知らない。
高校へは奨学金で進学。だが生活費は足りず、昼は学校、夜はコンビニや清掃のバイトで時間を埋める毎日だった。奨学金のためには成績を落とすこともできない。当然、弟と妹を養うためにバイトもやらなければいけない。あっという間に時間が過ぎる毎日、睡眠時間さえも削られ疲弊した。
気がつけば、ゲームなんてもう遠い世界の話になっていた。
だけど、あの夜。
俺はバイト帰りの空に、ひときわ眩しい閃光が走ったのを見た。
流星――いや、隕石だった。
その後、世界が大きく変わり始めた。
昔、俺はゲームで世界の頂点に立てると信じていた。
中学二年、俺――結城 蓮(ゆうき・れん)は、世界的なVRMMO『ダークファンタズム・オンライン』で、自分が立ち上げた無課金クラン『エクリプス』を率いていた。あえて言えば課金もコネもない弱小クランだった。それでも、戦術と効率を磨き上げて俺たちは必死に食らいついていた。
その中に、ルナという名の仲間がいた。ゲーム内で出会いずっと一緒にプレイしてきた女の子。俺と同様に無課金ながら高い操作技術と判断力で、クランの右腕とも言える存在だった。
「金持ちには負けない!無課金でいつかは世界一に!」とよくチャットで語り合っていた。俺たちは信頼で繋がっていた――そう、思っていた。
だが、越えられない壁があった。
――課金。
金持ちは宝箱を何十個も購入して一気に開けた。そうしてAランクの武具や使役モンスターを当たり前のように手に入れたのだ。装備は開けた本人にしか使えない仕様であり強者の証となった。
その状況は動画で配信された。そして圧倒された。俺たちが何十時間もプレイして敵モンスターを倒しようやく入手できる宝箱、それを課金で何十個単位で購入して開けていく。強い使役モンスターや武具が出た時には賞賛のコメントであふれかえった。
正直、その動画を見て俺も羨ましくなった。俺もお金があれば……そのように思うことも多かった。
そして彼らは強い装備と強い使役モンスターで構成されたパーティを組み、深層ステージを高速で周回。とどめを刺す者に多くの経験値が入る仕様もあって、火力の高い彼らはレベル上げも爆速だった。
使役モンスターを壁にして相手モンスターを弱らせて最後の止めをさして経験値を得るという周回だ。時には使役モンスターを犠牲にすることもあったが何度でも宝箱を開けモンスターを使役できる彼らはおかまいなし。使役モンスターの犠牲の上に自らをレベルアップさせていった。
俺のクランではできない周回だ。使役モンスターも貴重な俺たちは時にはモンスターを守った、時には使役モンスターに敵モンスターを倒させて使役モンスターのレベルアップを促すこともあった。全体としては強くなる。しかしそれではどうしても自分のレベルアップがおろそかになった。
強い者が爆速でレベルを上げ、より強くなる。いくら頑張っても差は広がるばかり。そして弱い者も強いクランに入ればすぐにレベルを爆速で引き上げてもらえる。強いクランに人が集まるのは当然の道理だった。
無課金の俺たちはレベル上げもままならず、新しい仲間も入らず、どうしてもそこに食い込めなかった。俺たちは良くてもせいぜい世界順位100位程度。課金勢は後から短時間であっさりと俺たち抜かし更に勢力を拡大して俺たちが未達の50位以内にまで進出していく。そうして埋めようのない差が付いていった。課金勢との差に絶望を感じたものだ。
でもそれも仕方がない。ゲーム会社が儲からないと続かない。課金ユーザーを手厚く守るのは当然だった。そこには資本主義の全てが詰まっていた。
国内でも課金と動画配信で有名になった有名クラン『レヴァンティア』があった。そのリーダーで配信者でもあるアズマは、動画内で俺のことを「宝箱ひとつ買えない貧乏人」と鼻で笑った。他のクランにも様々なゆさぶりをかけ、引き抜きまで行って勢力を高めていたが、とうとう俺たちのような弱小クランにまでゆさぶりをかけてきたのだ。
有名クラン『レヴァンティア』は多額の課金をして爆速でレベルアップするだけでなく、クランを乗っ取ったりレベルの高い人間を引き抜いて強くなっていった。
そして、いつしか俺のクランも乗っ取られた。我が無課金クラン『エクリプス』のほとんどのメンバーが『レヴァンティア』傘下に入ることに同意したのだ。
有名クラン『レヴァンティア』から来た人間がクランリーダーになり俺は降ろされた。
大事な相棒だったはずのルナも同意した。
「ごめん、レン……。向こうのクラン傘下なら毎月宝箱を五個無料でもらえるって……。正直、魅力だった。このクランで頑張ってきたけど、やっぱり限界がある。育ててもらった恩は本当にありがたいと思ってる。でも……申し訳ないけど、リーダーを降りて欲しい」
ずっと尽くしてくれていたルナに、俺は十分な報酬も出せなかった。基本は成功報酬、彼女の実力に見合った環境をリーダーとして与えられていたとは言えない。俺はリーダーを降りることに同意した。
そして……その時はついにやってきた。
「レン、君をこのクランから追放する。どうしても無課金のやり方のくせが付いているからね。君がいることでマイナスになっている。申し訳ないがこのクランを抜けて欲しい」
新しくやってきたリーダーから俺は追放を言い渡された。
ルナは無言だった。もしかしたら反対してくれたのかもしれない。でもすでに話は付いていたのだろう、特に何も言い出さなかった。その後も誰も反対せず俺の追放が決まった。
「みんな、これまでありがとう。俺はみんなとやってこれて楽しかった。俺が抜けてもみんな力を合わせてルナを中心として頑張って欲しい」
そう言って俺はログアウトした。
はぁ、これがNTR追放ってやつかな。まあ別にルナとそういう関係ではないのでNTRというのは表現は違うけど気分的にはそんな感じがする。クランも女も奪われたわけだ。心が通っていたと思っていた女の子に裏切られたような気分だ。
結局、無課金の俺は"努力だけじゃ届かない場所"があることを、痛いほど思い知った。現実にはトップどころか100位以内でさえも厳しいのだ。
俺は長時間かけて作った無課金クラン『エクリプス』、そして仲の良かった女の子を金の力であっさりと奪われた。
思えば俺は寝る時間も食事の時間も節約して1秒1秒を大事にゲームに費やした……その数年の努力が金であっさりとくつがえされた。俺はそのやりようのない孤独と絶望に1人で号泣した。しょせん、貧乏な凡人はいくら懸命に努力しても金にかなわないのだ。
そして――ゲームで絶望を感じていたその冬のことだった。更なる悲劇を俺を襲った。
両親が交通事故で亡くなったのだ。
泣く暇もなかった。まだ小学生の幼い弟と妹を養うために俺はゲームから離れた。ゲームに未練はなかった。
俺についてきてくれた人がいたから新しくクランを立ち上げたが、俺は正直に両親が他界したことを伝えクランのトップを譲った。現実の話を信じてもらえたかは分からない。もしかしたらゲームから離脱するための嘘だと思われていたかもしれないな。そして、その後クランがどうなったかは知らない。
高校へは奨学金で進学。だが生活費は足りず、昼は学校、夜はコンビニや清掃のバイトで時間を埋める毎日だった。奨学金のためには成績を落とすこともできない。当然、弟と妹を養うためにバイトもやらなければいけない。あっという間に時間が過ぎる毎日、睡眠時間さえも削られ疲弊した。
気がつけば、ゲームなんてもう遠い世界の話になっていた。
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その後、世界が大きく変わり始めた。
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