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12章「広がる世界と狭くなる世界」
第118話「必殺技」
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#第118話「必殺技」
クラン『暁の牙』との合同討伐が終わった。撤収の列から外れて、俺は黒澤さんといつの間にかやってきた田嶋さんに付いていった。
拠点の簡易稽古スペースには、打ち込み台と傷だらけの木刀が立てかけてある。
「レン、今日の合同討伐はどうだった?」
「俺もどうだったか訊きたいっす!」
と黒澤さんと田嶋さんが俺に聞いてきた。難しいな、何と答えたものか。
「安全で良い討伐だと思いました」
「正直に言え」と黒澤さん、ちょっと恐い。
少し間を置いて、観念した。
「……ちょっと物足りない感じはしました。余裕がありすぎて。いつもの俺がやっている討伐とはかなり違います。俺も安全マージン取ってやっているつもりでしたがそれ以上ですね」
「まぁお前から見ればな。だがレベル4とレベル5の実力ぐらいだと、5人で4階層は結構いっぱいいっぱいなんだ。お前が特別なんだよ。普通のレベル4とは違う。今日、分かっただろ?」
そっか、俺は普通のレベル4より強いんだな。嬉しいことは嬉しい。ただあの中で今の俺が混じっても得られることは少ない……というか正直なところ何もないのだよな。まあ強さが分かったことは嬉しいけど。
「俺が普通よりは強い……そうなんですかね。俺は5体を引き受けるのは余裕なので、そこは優位だと思いますけど」
「そこが異常なんだ。レベル5でも4階層とは言え5体を抱えるのは厳しい。お前は単純なスピードやパワーでは多少劣っても――敵モンスターの見極め、適切な位置取り、他の人間への目配り、咄嗟の判断力、度胸などの全てがずば抜けてる。叩き上げの“戦い方”が身に付いてるのだろうな。総合力ならレベル5、いやそれ以上かもな」
「そこまで強いっすか!レンくんは凄いな。すぐに追いつかれそうっす」
「だといいのですけど」
黒澤さんはそこでニヤリとした。
「ただな――」
「ただ、何です?」
「“必殺技”がないようにも見えた」
「なんですかそれ? 必殺技って響きは最高にカッコいいですけど!」俺はちょっと興奮気味に聞いた。
「お前の一番強い一太刀は何だ? 綺麗に当てるが、芯を喰うパワーショットはまだ薄い。上に行くほどモンスターの耐久が跳ね上がる。仕留め切る一撃を持ってる奴がラストヒットをさらっていくのが常だ。“トドメ総取り”の世界じゃ、必殺に近い技がないと、結局は経験値が集まらん」
「パワーを乗せる時は、上段からの真向斬りを使いますけど……」
「さっきの討伐では見てないな。やってみろ。俺が見てやる」
「分かりました。やってみます」
「最初に、さっきやっていた半身からの打ち込み、そして次に正対からの打ち込みをやります。
俺は言われるまま木刀を握った。そして最近は討伐の時に普通になっている半身からの袈裟斬り。
ドン――。
そして、一呼吸おいて正面に立つ。いつもの半身ではなく正対――息を整え、踏み込み、上から真っ直ぐに落とす。
ドスン――。
討伐ではここ最近は使っていないけど、訓練では毎日数百と練習を重ねている打ち込みだ。以前は威力にばらつきがあったが今はまずまず普通に打てる。まあ敵相手ならこうはいかないかもしれないけどね。
低く重たい音が稽古場に残った。田嶋さんが目を丸くする。
「おお……レンくん、凄いっすよ。今のはかなり威力があるっすね」
黒澤さんも頷いた。
「なるほど。力を乗せた打ち方は持ってるんだな。それはそうか、あのルナが指導しているのだから当たり前か。ならば更に威力を上げたいところだな。5、6階層に上がるほど、削りだけじゃ間に合わない場面も出る。そこで落とせるやつが、柱になり自然とそいつがレベルアップする」
「必殺技……“ここぞ”で確実に仕留める一太刀、ですね」
「そうだ。日常運転は今のままでもいい。だが必殺技も磨いた方がいい。教わってるのがルナなら、その辺りの設計は抜かりないはずだろうけどな」
木刀を納め、深呼吸した。
――多少のリスクを負ってでも勝負を決める剣。それも今後は必要になっていくのだろう。まだかなり先でもありそうだけどね。
とは言え訓練で正面からの真っ向斬り、この訓練を今でもやっている理由が分かった気がする。やはりルナはしっかりと先を見ているのだろう。
「分かりました。必殺技についても頭の中に入れておきます。……ルナにも相談してみます」
黒澤さんは口の端を上げた。
「よし。また合同はできるか?正直、今日の感じだとレンには物足りないよな。かと言って5階層はさすがにまだ早いだろうし、どうしたものか」
「そうですね。当面は一人でやってみます。それで厳しくなったら相談させて下さい」
「レンくん、俺はそれよりもレンくんと一緒にいたという2人の美女の方が気になるっす。是非2人を連れてきて欲しいっす!」
「それは無理です」と俺は普通にそして即座に断った。田嶋さんはうなだれるがこれはさすがに仕方がないところだ。
もちろん状況によってはそういう合同討伐もありえるのかもしれないけど今はその時期ではないかなと思う。
今はレベル4で使役モンスターとの4階層が中心でいいだろう。まだまだ俺たちだけでレベルを上げていくべきだ。
でもレベル上げはどんどん難しくなるようだ。順調だとは思っていたけど先はまだまだ長い。
早く黒澤さんや田嶋さんのレベルに追いつきたい。
でも焦っても仕方が無い。俺は俺のペースで頑張っていこう。
クラン『暁の牙』との合同討伐が終わった。撤収の列から外れて、俺は黒澤さんといつの間にかやってきた田嶋さんに付いていった。
拠点の簡易稽古スペースには、打ち込み台と傷だらけの木刀が立てかけてある。
「レン、今日の合同討伐はどうだった?」
「俺もどうだったか訊きたいっす!」
と黒澤さんと田嶋さんが俺に聞いてきた。難しいな、何と答えたものか。
「安全で良い討伐だと思いました」
「正直に言え」と黒澤さん、ちょっと恐い。
少し間を置いて、観念した。
「……ちょっと物足りない感じはしました。余裕がありすぎて。いつもの俺がやっている討伐とはかなり違います。俺も安全マージン取ってやっているつもりでしたがそれ以上ですね」
「まぁお前から見ればな。だがレベル4とレベル5の実力ぐらいだと、5人で4階層は結構いっぱいいっぱいなんだ。お前が特別なんだよ。普通のレベル4とは違う。今日、分かっただろ?」
そっか、俺は普通のレベル4より強いんだな。嬉しいことは嬉しい。ただあの中で今の俺が混じっても得られることは少ない……というか正直なところ何もないのだよな。まあ強さが分かったことは嬉しいけど。
「俺が普通よりは強い……そうなんですかね。俺は5体を引き受けるのは余裕なので、そこは優位だと思いますけど」
「そこが異常なんだ。レベル5でも4階層とは言え5体を抱えるのは厳しい。お前は単純なスピードやパワーでは多少劣っても――敵モンスターの見極め、適切な位置取り、他の人間への目配り、咄嗟の判断力、度胸などの全てがずば抜けてる。叩き上げの“戦い方”が身に付いてるのだろうな。総合力ならレベル5、いやそれ以上かもな」
「そこまで強いっすか!レンくんは凄いな。すぐに追いつかれそうっす」
「だといいのですけど」
黒澤さんはそこでニヤリとした。
「ただな――」
「ただ、何です?」
「“必殺技”がないようにも見えた」
「なんですかそれ? 必殺技って響きは最高にカッコいいですけど!」俺はちょっと興奮気味に聞いた。
「お前の一番強い一太刀は何だ? 綺麗に当てるが、芯を喰うパワーショットはまだ薄い。上に行くほどモンスターの耐久が跳ね上がる。仕留め切る一撃を持ってる奴がラストヒットをさらっていくのが常だ。“トドメ総取り”の世界じゃ、必殺に近い技がないと、結局は経験値が集まらん」
「パワーを乗せる時は、上段からの真向斬りを使いますけど……」
「さっきの討伐では見てないな。やってみろ。俺が見てやる」
「分かりました。やってみます」
「最初に、さっきやっていた半身からの打ち込み、そして次に正対からの打ち込みをやります。
俺は言われるまま木刀を握った。そして最近は討伐の時に普通になっている半身からの袈裟斬り。
ドン――。
そして、一呼吸おいて正面に立つ。いつもの半身ではなく正対――息を整え、踏み込み、上から真っ直ぐに落とす。
ドスン――。
討伐ではここ最近は使っていないけど、訓練では毎日数百と練習を重ねている打ち込みだ。以前は威力にばらつきがあったが今はまずまず普通に打てる。まあ敵相手ならこうはいかないかもしれないけどね。
低く重たい音が稽古場に残った。田嶋さんが目を丸くする。
「おお……レンくん、凄いっすよ。今のはかなり威力があるっすね」
黒澤さんも頷いた。
「なるほど。力を乗せた打ち方は持ってるんだな。それはそうか、あのルナが指導しているのだから当たり前か。ならば更に威力を上げたいところだな。5、6階層に上がるほど、削りだけじゃ間に合わない場面も出る。そこで落とせるやつが、柱になり自然とそいつがレベルアップする」
「必殺技……“ここぞ”で確実に仕留める一太刀、ですね」
「そうだ。日常運転は今のままでもいい。だが必殺技も磨いた方がいい。教わってるのがルナなら、その辺りの設計は抜かりないはずだろうけどな」
木刀を納め、深呼吸した。
――多少のリスクを負ってでも勝負を決める剣。それも今後は必要になっていくのだろう。まだかなり先でもありそうだけどね。
とは言え訓練で正面からの真っ向斬り、この訓練を今でもやっている理由が分かった気がする。やはりルナはしっかりと先を見ているのだろう。
「分かりました。必殺技についても頭の中に入れておきます。……ルナにも相談してみます」
黒澤さんは口の端を上げた。
「よし。また合同はできるか?正直、今日の感じだとレンには物足りないよな。かと言って5階層はさすがにまだ早いだろうし、どうしたものか」
「そうですね。当面は一人でやってみます。それで厳しくなったら相談させて下さい」
「レンくん、俺はそれよりもレンくんと一緒にいたという2人の美女の方が気になるっす。是非2人を連れてきて欲しいっす!」
「それは無理です」と俺は普通にそして即座に断った。田嶋さんはうなだれるがこれはさすがに仕方がないところだ。
もちろん状況によってはそういう合同討伐もありえるのかもしれないけど今はその時期ではないかなと思う。
今はレベル4で使役モンスターとの4階層が中心でいいだろう。まだまだ俺たちだけでレベルを上げていくべきだ。
でもレベル上げはどんどん難しくなるようだ。順調だとは思っていたけど先はまだまだ長い。
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