転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第五章 前編

69話 一体誰の


 一度43層へ行き、それから他のエレベーターに移動して44層に降りることになった。

 本軸のエレベーター以外のエレベーターは一人分くらいの広さしかない上、移動出来る階層も細かく分断している。

 エレベーターの場所や何の階層へ向かうのかも全て把握している俺たちだからこそここまで逃げ切れているのかもしれない。

 まあもし捕まっても俺の脱獄系魔法があれば何とかなるかもしれないけど。

 ……でもまたシスト様が現れたら絶対逃げられないよなぁ。

 ルーハンから逃げられたのも皆が助けに来てくれたお陰だし。

 ウォルズと俺を先頭にジノとイルエラが後を付いてくる形で移動していたが、やはり俺が脱獄した43層。見廻りの数が増えている。

 俺だけじゃない。44層に落とされ実験室に連れていかれたジノも、更には45層にいたイルエラさえも脱獄している。一気に3人も脱獄すれば見廻りの数が増えてもおかしくない。

 ……こんなことなら見廻りの服着ときゃ良かったかな。

 この層の見廻りなら俺でも頑張れば倒せる程度のレベルしかない筈だ。

 …………でもなんか、前より数が増えてる上に、強そうに見えるのはもしかして…………此奴ら、シストの命令で上階からやって来たんじゃないか……?

「うわ、何じゃこりゃ」

 ウォルズの声に、イルエラとジノが顔を覗かせる。俺も一緒に覗いて目を見張った。

 俺達が使用しようとしていたエレベーターの前を大勢の兵士が見張っていたのだ。

 ……それにしても、何か服の作りが一般の兵士と違うな。どこかで見たことあるような気がするけど……。

 ウォルズがブルブルと震え出し、うおおおお、と唸るように声を潜めながら興奮する。

「本物……!? まじで本物!? あのお二人はどこですか……!」

 ジノとイルエラが、ウォルズが大声をあげないかヒヤヒヤしながら見守る中、彼が何を興奮してるんだろうと不思議に思う。

「いたああああ! やばあああい本物まじヤバいイケメンんんん!」

 鼻血でも吹き出さんばかりに真っ赤になりブルブル震えるウォルズを見て、何なんだ、何が、え。ゲームのブランクってこんなに差が出るもの?

 興奮のポイントが俺全く分かんないんだけど!

 ウォルズが拳を握り締めて、口元を押さえて感極まり言った。

「リアルエルデきたぁぁー……——っ!」

 エルデって。

 あああああああああああ——ッ!!

 エルデ! エルデ・ロン・フォング!

 え、どこッ!? どこにいるの!? 俺も見たい!

 エルデ・ロン・フォング——シストの直属の騎士団ビレストの団長の名前だ。

 ビレストは上層部で初めて現れる難関レベルの敵で、全ての騎士達がレベル45以上はある最悪に出くわしたくない集団だった。

 その最強騎士団ビレストの団長——エルデはレベル88。副団長はレベル90くらいだった気がする。

 ウロボスの層より上の階で出てきた兵士だから、ウロボスの兵士より強い者が殆どだろう。

「ダンデシュリンガーは!? ああ、いない、二人でいるところが見たかったのに! こんな機会滅多にないのにぃ!」
「エルデどこ! エルデどこ!?」
「あそこあそこ、エレベーターの入り口の前すぐ。一番奥の」
「あ! いたいたいた、本当だいた! か、かっこいい。もう佇まいからして正にエルデ!」
「だよね! もうエルデでしかなくてエルデと叫んで此方見て欲しいくらいだけど……! ——あれって俺達が来ること見越して見張ってるよね……」
「そ、そうだな……」

 興奮状態も現実に引き戻されてようやく収まり、そっと覗き込んでいた角から身を引いて壁際に隠れる。

 追われる身でさえなければ握手を要求してたのに。

「見廻りといい、シストも本腰入れてるみたいだな……」
「別のエレベーターから行こう。あそこに突っ込んでいくのは莫迦だ。あのエレベーターは見た目からしてエレベーターだからな。俺達が隠されたエレベーターの存在を知らないと思われてるんだろう」

 ウォルズを先頭にその場から離れ、移動していく内に使おうとしているエレベーターの場所も分かって来る。俺の中でも候補は後4つ程ある。

 前使ったエレベーターは避けたほうがいいと考えていたからこの43層に降りる時も、ジノ達と脱走した時とは別のエレベーターを使ってやって来た。

 誰も知らないようなエレベーターを使わなければ、追っ手がある今、エレベーターの出口で待ち伏せなんかされたらおしまいだ。前世と違って行き先の階の番号も開閉ボタンもないからな。

 ただゲームではマップが開かれて全体の層が3Dで映し出され、選択した階層へ一気に行けた訳だが。

 ……ん、あれ? そう言えば今回俺の王族の指輪使ってないんだけど。

 ウォルズをちらりと見ると、ん? と首を傾げて来る。

「な、何でもない……」

 そう言えば、ウォルズの案内でエレベーターを使用してルーハンの城までやって来たと後からジノ達に聞いたっけ。

 それだけじゃない。幾ら魔獣狩りを頻繁にやったとしてもレベル70以上でランク200に達しそうになるなんてこと出来る訳がないんだ。

 つまり、ウォルズはエレベーターを使用して階層の行き来を可能にしていた……?

 そ、そりゃそうだよな。ストーリーでは侵入したウォルズを捕らえようとしたシストから父から貰った王族の証を使用して逃げ切った。しかしこれは序盤の話だ。王族の証は使用出来なくなって……あれ、どうして使えなくなるんだっけ。

 それからシストの指から王族の証を奪ってエレベーターを使用して逃げたんだから。

 でもシストの指輪はちゃんとシストの指にあったんだよな……。


 一体誰の王族の証を使用してるんだ……?


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