72 / 293
第五章 前編
69話 一体誰の
一度43層へ行き、それから他のエレベーターに移動して44層に降りることになった。
本軸のエレベーター以外のエレベーターは一人分くらいの広さしかない上、移動出来る階層も細かく分断している。
エレベーターの場所や何の階層へ向かうのかも全て把握している俺たちだからこそここまで逃げ切れているのかもしれない。
まあもし捕まっても俺の脱獄系魔法があれば何とかなるかもしれないけど。
……でもまたシスト様が現れたら絶対逃げられないよなぁ。
ルーハンから逃げられたのも皆が助けに来てくれたお陰だし。
ウォルズと俺を先頭にジノとイルエラが後を付いてくる形で移動していたが、やはり俺が脱獄した43層。見廻りの数が増えている。
俺だけじゃない。44層に落とされ実験室に連れていかれたジノも、更には45層にいたイルエラさえも脱獄している。一気に3人も脱獄すれば見廻りの数が増えてもおかしくない。
……こんなことなら見廻りの服着ときゃ良かったかな。
この層の見廻りなら俺でも頑張れば倒せる程度のレベルしかない筈だ。
…………でもなんか、前より数が増えてる上に、強そうに見えるのはもしかして…………此奴ら、シストの命令で上階からやって来たんじゃないか……?
「うわ、何じゃこりゃ」
ウォルズの声に、イルエラとジノが顔を覗かせる。俺も一緒に覗いて目を見張った。
俺達が使用しようとしていたエレベーターの前を大勢の兵士が見張っていたのだ。
……それにしても、何か服の作りが一般の兵士と違うな。どこかで見たことあるような気がするけど……。
ウォルズがブルブルと震え出し、うおおおお、と唸るように声を潜めながら興奮する。
「本物……!? まじで本物!? あのお二人はどこですか……!」
ジノとイルエラが、ウォルズが大声をあげないかヒヤヒヤしながら見守る中、彼が何を興奮してるんだろうと不思議に思う。
「いたああああ! やばあああい本物まじヤバいイケメンんんん!」
鼻血でも吹き出さんばかりに真っ赤になりブルブル震えるウォルズを見て、何なんだ、何が、え。ゲームのブランクってこんなに差が出るもの?
興奮のポイントが俺全く分かんないんだけど!
ウォルズが拳を握り締めて、口元を押さえて感極まり言った。
「リアルエルデきたぁぁー……——っ!」
エルデって。
あああああああああああ——ッ!!
エルデ! エルデ・ロン・フォング!
え、どこッ!? どこにいるの!? 俺も見たい!
エルデ・ロン・フォング——シストの直属の騎士団ビレストの団長の名前だ。
ビレストは上層部で初めて現れる難関レベルの敵で、全ての騎士達がレベル45以上はある最悪に出くわしたくない集団だった。
その最強騎士団ビレストの団長——エルデはレベル88。副団長はレベル90くらいだった気がする。
ウロボスの層より上の階で出てきた兵士だから、ウロボスの兵士より強い者が殆どだろう。
「ダンデシュリンガーは!? ああ、いない、二人でいるところが見たかったのに! こんな機会滅多にないのにぃ!」
「エルデどこ! エルデどこ!?」
「あそこあそこ、エレベーターの入り口の前すぐ。一番奥の」
「あ! いたいたいた、本当だいた! か、かっこいい。もう佇まいからして正にエルデ!」
「だよね! もうエルデでしかなくてエルデと叫んで此方見て欲しいくらいだけど……! ——あれって俺達が来ること見越して見張ってるよね……」
「そ、そうだな……」
興奮状態も現実に引き戻されてようやく収まり、そっと覗き込んでいた角から身を引いて壁際に隠れる。
追われる身でさえなければ握手を要求してたのに。
「見廻りといい、シストも本腰入れてるみたいだな……」
「別のエレベーターから行こう。あそこに突っ込んでいくのは莫迦だ。あのエレベーターは見た目からしてエレベーターだからな。俺達が隠されたエレベーターの存在を知らないと思われてるんだろう」
ウォルズを先頭にその場から離れ、移動していく内に使おうとしているエレベーターの場所も分かって来る。俺の中でも候補は後4つ程ある。
前使ったエレベーターは避けたほうがいいと考えていたからこの43層に降りる時も、ジノ達と脱走した時とは別のエレベーターを使ってやって来た。
誰も知らないようなエレベーターを使わなければ、追っ手がある今、エレベーターの出口で待ち伏せなんかされたらおしまいだ。前世と違って行き先の階の番号も開閉ボタンもないからな。
ただゲームではマップが開かれて全体の層が3Dで映し出され、選択した階層へ一気に行けた訳だが。
……ん、あれ? そう言えば今回俺の王族の指輪使ってないんだけど。
ウォルズをちらりと見ると、ん? と首を傾げて来る。
「な、何でもない……」
そう言えば、ウォルズの案内でエレベーターを使用してルーハンの城までやって来たと後からジノ達に聞いたっけ。
それだけじゃない。幾ら魔獣狩りを頻繁にやったとしてもレベル70以上でランク200に達しそうになるなんてこと出来る訳がないんだ。
つまり、ウォルズはエレベーターを使用して階層の行き来を可能にしていた……?
そ、そりゃそうだよな。ストーリーでは侵入したウォルズを捕らえようとしたシストから父から貰った王族の証を使用して逃げ切った。しかしこれは序盤の話だ。王族の証は使用出来なくなって……あれ、どうして使えなくなるんだっけ。
それからシストの指から王族の証を奪ってエレベーターを使用して逃げたんだから。
でもシストの指輪はちゃんとシストの指にあったんだよな……。
一体誰の王族の証を使用してるんだ……?
あなたにおすすめの小説
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話
鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。
この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。
俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。
我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。
そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。
転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!
梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。
あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。
突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。
何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……?
人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。
僕って最低最悪な王子じゃん!?
このままだと、破滅的未来しか残ってないし!
心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!?
これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!?
前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー!
騎士×王子の王道カップリングでお送りします。
第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。
本当にありがとうございます!!
※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました!
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。
零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。
鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。
ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。
「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、
「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。
互いを想い合う二人が紡ぐ、溺愛と溺愛の物語。
幼馴染み組もなんかしてます。
※諸事情により、再掲します。
氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います
黄金
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻!
だったら離婚したい!
ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。
お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。
本編61話まで
番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。
※細目キャラが好きなので書いてます。
多くの方に読んでいただき嬉しいです。
コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません
カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」
ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。
(これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!)
妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。
スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。
スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。
もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます?
十万文字程度。
3/7 完結しました!
※主人公:マイペース美人受け
※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。
たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)