転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)

文字の大きさ
73 / 293
第五章 前編

70話 呪いのフロア


 目星をつけた別のエレベーターは42層の森の奥にひっそりと存在しているエレベーターと繋がっている。つまり、このエレベーターの行き先は42層、43層、44層である。

 42層の魔獣の森に存在するエレベーターだ。

 ルーハンの城の森にもエレベーターがあるように、森のある各階層には大半エレベーターが潜んでいる。

 42層なら先刻も言った通り、魔獣の森にある。

 見た目は大木だが木の根の隙間に入り口があり、隠し通路みたいに、獣や兵士から追われている時使用出来た。

 ただ王族の証を持っていないと使用出来ない点は一緒で、回収された時の魔獣狩りは苦労した。

 お金稼ぎには魔獣狩りが一番だが、序盤だと報酬の価値が低い。貰えるお金は少ないし、魔獣の素材を売るにも所謂ザコキャラだから安い。中盤辺りならまだほんの少し価値が上がるが、終盤に入った辺りの魔獣でないとお金は溜まらないだろう。

 しかしそうなると魔獣が大量に出現するし、レベルは高いしでポーションを使う暇もなく、死にかけることが多い。だから大木の付近のエリアを選び、死にかけたら一旦エレベーターに避難してポーションを使って回復して。もう一度森に戻り、戦闘を再開する。

 それを幾度となく繰り返して討伐数を達成することが金稼ぎの基本だった。

 故に自分達はどこにその入り口があるのか熟知しているのだ。

 止まっている白い鳥が鳴いてる真下。もちろん奴は近付くと飛んで逃げてしまう。最初は探すのに苦労したが、もう木の根の重なり方で鳥さえ見ずとも分かるだろう。

 ——これが43層では壁の隙間だ。

 こちらは似たような場所が多く、迷いがちだが、熟知している俺達に取っては簡単だった。

 牢屋と牢屋の壁の隙間に人一人分通れるくらいの空洞がある。そこから落ちると45層へ真っ逆さまに落ちて、バッドエンドを迎える。

 ただ、エレベーターへと繋がるその一つだけは、ウォルズの思考で『奥に繋がっている。壁を使えば行けるかもしれない』とルートが確約される。

 ウォルズの身体能力を持ってすれば、壁を蹴って移動して崩れかけの床へ降り立つことが出来る。そうやって道無き道を進まされたことがよくあったな。

 着くと、エレベーターへ行ける隙間をウォルズとともにすぐに発見する。

「本当にこんなところにあるのか?」
「……凄いな。お前達は」

 ジノもイルエラもこんなところにあったんだと驚く。
 ウォルズがぴょんぴょん壁を蹴って向こう側に着いて、おいでおいでと手を招いている。

 よくよく考えたら……ジノとイルエラならいけるだろうが。

 ザコキャラのヴァントリアに行ける筈ないじゃないか……。

 ど、どうしたら……。チャレンジして見てもいいが。

 失敗して45層に落ちてバッドエンドを迎えてもコンテニューは出来ない……。

「……腕」
「え?」

 ジノがあらぬ方向を向きながら言った。

「かせよ」

 え、俺にお前を担いで飛べと? 無理無理無理無理無理。

「ごめん俺じゃお前を持ち上げることも出来ない」

 真剣に答えたのに、阿呆か! と怒鳴られてしまった。

「いや、お前が莫迦なのは承知だけど、まさか莫迦な上に阿呆だとは。……もはや成す術がねえな」

 莫迦な上に阿呆とまで認定されてしまったみたいだ。真剣に答えたのに。

「……ハァ、僕が引っ張ってやるって言ってんだよ」

 手を差し出されて、ポカンとする。

 そう言えば、博士から逃れる時も俺の腕を引っ張って高い跳躍を見せてくれたんだっけ。

「……ありがとう。ジノ」

 そんなに時が経ってないのに、何だか懐かしいな。

 ジノに腕を引かれ、——と言うかぶん投げられて、向こう側の床へずっこけ。

 それから少し歩いて、ようやくエレベーターの入り口まで辿り着くことができた。

 俺一人じゃこのエレベーター使えないって覚えとこ……。

 ——エレベーターを使用する時、ウォルズの様子を観察していると、彼は手首をエレベーターの窪みに近付けた。

 白い光が走り、エレベーターの扉が開く。

 ウォルズの手首にあったのは、王族の証であるブレスレットだった。

 どっかで見たことがあるが……誰のものか分からん。

 ウォルズがゲームの序盤に使用していた父の王族の証とはずいぶん形が違う。元はチェーンが主の筈だが、今ウォルズが付けているのはどう見てもバングルだ。

 44層に降りてみると、扉が開いた途端、エレベーター内に黒い霧が潜り込む。ウォルズから貰った靴の石の周辺の呪いは吸い込まれているようだ。ただこの量は吸収しきれないらしい。

 44層は呪いが蔓延していた——しまった、そうだ。俺とイルエラで45層の呪いの蓋を開けてしまっていたんだった……!

「一体何が起きてるんだ……」

 ウォルズが呟いて、俺とジノやイルエラは知っていたことだが彼が知らなかったことを今更ながら思い出す。

「ご、ごめん……。俺とイルエラが脱出する時に45層の天井を壊したんだ。それで45層の呪いが溢れ出して……」
「そうだ……よく考えたら。ジノもイルエラもヴァントリアも……皆囚人じゃないか。俺と会う前に起きたイベントあらいざらい話して欲しい……」
「また今度な」
「でも一体どうやったらこんなことになる訳。何で壁壊しちゃったのイルエラ。ヴァントリアの力があれば壁なんて……いやあんまり使って欲しくないからいいのか」
「ん? 何の話だ?」

 それにしても……確かイルエラが壊した所以外にも、床が脆くなり、殆ど床抜け状態だったからな。ここまで呪いが溢れていてもおかしくはないけど。

 エレベーターを降りることもままならず、イルエラとジノは膝をつく。ウォルズは立っているが苦しそうだ。ゲームなら体力ゲージが少しずつ減っていっている最中だろう。

「皆大丈夫か? 43層へ戻ろうか?」
「大規模な研究室はこの層しかない。ヒオゥネが実験をしていると言うなら、彼はこの呪いを注ぎ込むことに特化した層を大層気に入っている筈だ。」
 とウォルズが言うので、少し考えてみる。
「なら俺一人で……」
「————だめだッ……! ヒオゥネは万を狙ってるんだ。ホイホイ現れたら実験してくださいって言ってるみたいなもんじゃないか!」

 珍しく声を荒げるウォルズの気迫に思わず怯む。しかし皆の苦痛に歪んだ表情を見てこの儘44層に居続けるのは耐えられない。

「……この層は危険だ。皆で行動しよう」

 ウォルズが壁を使って立ち上がろうとした時、そうだ、と思い付いてエレベーターを飛び出した。

「ちょっと待っててくれっ」
「万ダメだ……!」
「大丈夫、なんかよくわかんないけど呪いは効かない!」
「そうじゃない一人じゃ危険だ!」

 廊下を走っている頃、エレベーターの中でイルエラが言った。

「大丈夫だろう。同胞の気配はしない。兵士もいないだろう。例え薬があったとしても人の生活出来る場所ではないからな。」

 それに納得出来ていない顔をするウォルズに、イルエラに便乗してジノが言った。

「あれで動揺してたら一緒に暮らしていけないよ。あいつはウサギみたいにすぐ飛び出していくんだ」



 
感想 23

あなたにおすすめの小説

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話

鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。 この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。 俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。 我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。 そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。

転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!

梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。 あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。 突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。 何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……? 人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。 僕って最低最悪な王子じゃん!? このままだと、破滅的未来しか残ってないし! 心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!? これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!? 前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー! 騎士×王子の王道カップリングでお送りします。 第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。 本当にありがとうございます!! ※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました! 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。

零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。 鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。 ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。 「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、 「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。 互いを想い合う二人が紡ぐ、溺愛と溺愛の物語。 幼馴染み組もなんかしてます。 ※諸事情により、再掲します。

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

黄金 
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻! だったら離婚したい! ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。 お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。 本編61話まで 番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。 ※細目キャラが好きなので書いてます。    多くの方に読んでいただき嬉しいです。  コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。    

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません

カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」 ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。 (これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!) 妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。 スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。 スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。 もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます? 十万文字程度。 3/7 完結しました! ※主人公:マイペース美人受け ※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。 たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)