リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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リョウゲ

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 ――唇に触れるモノが離れたとたん、喉の奥から迫り上がる感覚を覚え、その儘吐き出した。口端から生暖かい液体が零れ落ちる。
「――黄泉」
「青海、ここは。一体何が」
 呼吸を整えて問う。
 私達は滝壺の側の洞窟へいるらしい。私の修行の隠れ家だ。第二の家のようなモノだ。
 どうやら青海が引き上げてくれたらしい。あの滝に飲まれて生きれるのは私達が化け物であることと、兄が何やら魔術を駆使した結果なのだろう。
「滝に落ちれば翠王でも一たまりがないからね。追って来ないみたいだよ。怪我はない?」
「平気だ。青海こそないのか」
「ありがとう。心配はいらないよ」
「聞いてもいいか」
「何かな」
「何故私達は裸なんだ」
「私が脱がせたからだよ。暖めないと風邪を引くと思ってね。燃やせるモノもないし」
「……このドスケベ」
「今更だろう」
「人工呼吸もしただろう」
「それも今更だよね」
 にこにこ笑う青海の頰をぶっ叩いて、濡れた儘の服を羽織る。青海の上着の方が大きいからそれを使った。これであいつはすっぽんぽんの儘だ。
「黄泉それ私の……」
「付いて来い」
「はあ。悪かったよ。少し下心があった」
「少し?」
「かなりあった」
「馬鹿め」
「少しじゃ足りないんだろう」
「黙れ」
 こいつの面倒は本当に面倒で面倒だから面倒なんだ。
 やや早歩きで歩いていた。水気を含んだ足と地面が接触する度にペタペタと音がなる。
「黄泉、ここに奴は来ない。慌てなくていいよ」
「寒いから早く暖かい処に行きたいだけだ」
「どこを練り歩いたってあまり変わらないよ」
「風が吹かないよりはマシだ」
「暖を取るならもっといい方法を知っているよ」
「嫌だ」
「なるほど。早歩きはその所為か。何もしないからおいで」
 行くか。貴様の言葉ほど信じられないモノはない。
 あのファーストキスの時だって愛し合った覚えはないし、助けてくれたのは分かっていたが、その後が問題だ。
 青海は部屋に入ってくるなり……
「と、とにかくお前は私に近付くな」
「そうじゃなくて」
 青海は横穴を指差して言った。
「こっちに暖を取れる部屋があるんだ」


        ◇◇◇



「青海ぃ、お前なぁ。ここはアタシの部屋だって何度言えば分かるのさぁ」
「いいじゃないか。秘密にしてあげてるんだから」
「ったくよぉ。お前一人ならまだしも裸のお前と裸の妹って、明らかに何かあった後じゃんかぁ」
「違う! 変な誤解をするな姉さん」
「でもお前ら両想いっしょぉ?」
 んな訳あるか!

 ――横穴を抜け、青海に手を引かれる儘進めば狭い穴の道を四つん這いになったり匍匐前進させられたりした。その時は青海が後ろで。度々視線で撫で付けて来るものだから足で蹴って。
 そうしているうちに見つけたのがこの部屋だった。
 明らかに周囲から浮いた扉が存在し、驚いて側まで寄ろうと穴から出ようとすればハマってしまい、それに気付かなかった青海には変な処に顔を突っ込まれるわ。押し出す為に尻は揉まれるわで最悪の面倒だった。一番面倒なのが青海の何ごとも無かったような余裕の表情だ。
 故意のスケベを連発しておいて興奮しないとは何ごとか。
「それで、何故追放された筈の砂金さきん姉さんが高級ホテルにいるのですか」
 滝壺の傍の洞窟は確かに長い。龍の如く長く蟻の巣位複雑に入り混じっている。
 そんな洞窟に我々は罪を犯した者を収監してきた。だと言うのに、扉を開けた先には楽園が広がっていて。
 エントランスらしき場所には立派な噴水があり、見える限り奥にキッチンやシャワー室。シアタールームまである。
「何言ってるのさぁ。追放中だよもちろん。ただ少し改装しただけだよぉ~。居心地いいしぃ一人になれるしぃ。さいっこうのアタシの部屋にさぁ。なのに青海には見つかるわ妹はよくサボりに来るわで大変だったんだからぁ」
「元々は私の住処だ」
「右腕のメンテナンスしなくていいのかなぁ?」
「うぐ」
 いつも通り洞窟でサボっていた時いろいろあった私に姉が取り付けたのがこの腕だ。姉がいなければ骨に直接取り付けたこの兵器は私の身を滅ぼす。何ごとにもリスクがあると言うモノだ。
「それにしても、この大量のディスプレイは何なんだ」
 一部の壁が何十ものディスプレイで覆われ、屋敷の外観だけでなく内部、周辺の森までもが映し出されている。
「姉さんは大量の監視カメラで敷地内を監視しているんだよ。タフィリィ依存症の人物をリストアップして私に提出させている」
「最初は暇つぶしの観察として始めたのにこいつの所為でさぁいあくよぉ。全く最低な弟だよねぇ~」
「……随分と仲が良いんだな」
「拗ねるな拗ねるなぁ」
 砂金姉さんは茶王と共に暮らしていた時期が長かった所為もあって、彼の作られた言葉遣いに染められている。少し安心する。
「青海ぃ、お前もシャワー浴びて来なよぉ。匂う」
「一緒に入ろう黄泉」
 さらりと言うな。
「じっくり見ていただろう私はもう入った。いつまで裸でいるつもりだ。風邪をひくぞ」
「心配してくれるのかい? 黄泉になら看病されたいな」
「いいから早く入れ」
 視界にチラつく卑猥な身体をどうにかしろ。
「今更照れなくてもいいんじゃないかな?」
「いい加減にしないと右腕で破壊するぞ」
「ええ、触ってくれるのかい? 嬉しいなぁ」
 本当に面倒だな貴様は。
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