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リョウゲ
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屋敷の一番上にある見張り兼囮役を兼ね備えたキョウダイ達、次世代の当主たちが住む屋敷には、それぞれに部屋が割り振られる。
黄泉がいつも滝を眺める部屋はみんなが使用できる空き部屋だった。
黄泉は自分の部屋で寝ていた……が、やはりいつも昼寝している部屋がいい。
黄泉は枕を持っていき、昼前まで空き部屋で過ごした。
そんな部屋に向かって、足音のドタドタドタと言う振動が廊下からやってくる。
スパァァンと開け放たれた襖の向こうに、顔だけがいい男が立っていた。白馬ではない。真黒の方だ。
「姉ちゃん聞いたぞ! 俺だけ除け者にして遊園地なんて狡いぞ! 酷すぎる!」
「ペアチケットなんだからしょうがないだろ。眠たい、邪魔するな」
白馬や青海に比べたら面倒率が低いが、またやっかいな面倒が来たものだ。
「姉ちゃん俺と行こう! 俺もチケット買ってきたから!」
「も? 赤鳥は買ったのか?」
「え、違うのか?」
怒りが満ち満ちた間があく。
「当てたと言っていたぞ紛らわしい」
「当てたの!? すっげぇな! って、そうじゃない、行くだろ!? 行くよな、素直じゃないんだから~」
「昨日行ったばかりで疲れてるんだ。それにお前と二人とか面倒臭過ぎて行きたくない……」
全然人の話を聞かない奴だな。眠いと言っているのに。
取り敢えずもう目が覚めてしまったから眠れる気がしないな、枕を戻しに行こう。
「行く気になってるじゃねえか姉ちゃん! よし、俺ともデートしよ!」
「部屋に行くんだ。枕を持って遊園地に行く奴がどこにいる」
「え、姉ちゃんならあり得る」
「オイ」
相変わらずうるさい奴だな。
黄泉は失礼な言い方をされたが、それよりも枕を自分の部屋に返すことに必死だ。
クッションや枕は宝だ。
黄泉は部屋に着くと大切に大切に万年床の布団へ戻し、真黒に振り返る。
「今すぐには無理だがいつか行ってやるから諦めろ」
「ちぇ~」
まあ、期間決まってないからいいけど、とチケットを裾の中に直す。向き直って両手を包んで言った。
「じゃあ少しだけ修行手伝ってよ。姉ちゃんが一番刀強いんだろ?」
「は? んなわけないだろ。誰から聞いた」
黄泉に自覚はなかった。
「青海兄さんだよ」
何故自分だけ『ちゃん』なのか問いたいが理由は何となく分かっているのでつっこまないでおく。
「知ってるだろう? 私は修行が大嫌いだ」
「姉ちゃんの修行じゃなくて俺の修行だってば。頼むよ、ね~ちゃん! 弟の世話しろよ~」
「……仕方がないな」
真黒は本当の弟みたいなものだ。少し甘やかしてしまうのは慕われているからか。
そう言って二人で廊下に出た時だった。真黒が森の方を見て言う。
「あ! 赤鳥姉さんだ! かっけー!」
「かっけー?」
黄泉も立ち止まり、不穏なオーラを放つ森の方を見る。
「な……」
真黒がかっこいいと言ったそれは、宙に浮いていた。
真っ白な翼。
真っ白な塊。
真っ白な尻尾。
赤の瞳孔と黒い網膜。
そんな小さな目が6つ、白い塊に付いている。ふさふさの尻尾はだらんと垂れ、元気がないように見えた。
真っ白で天使のような翼は、よく見ると触手で、空気に触れると少しずつ石化して最後にボロボロと崩れていく。だからだろう、新しい触手と常に生え変わる。
塊はまるで脳が巨大で手が小さくなったような……化け物の赤ちゃんのような形をしている。
「あ、あれが赤鳥姉さんだと? 何を考え……」
「負けてらんないぜ! 俺も変身しよ~!」
真黒はそう言って廊下から空中へと飛び去っていった。
一瞬にして真黒の姿が消え、黄泉は結構呆けてから、慌てて下を覗きにいく。
「真黒!!」
すると、ちょうど真黒の落ちた場所の下から黒い点が近づいて来て、だんだんとそれが大きくなっていく。
漆黒の翼に、漆黒の身体。
漆黒の爪に、漆黒の牙。
鱗の1つ1つが動き、呼吸しているように見える。
まるでドラゴンのような容姿の化け物。硬そうな外装。
「真黒……なのか?」
『どうしたの姉ちゃん。姉ちゃんも変身しなよ』
は?
は?
はあああああああああああああああああん!?
黄泉がいつも滝を眺める部屋はみんなが使用できる空き部屋だった。
黄泉は自分の部屋で寝ていた……が、やはりいつも昼寝している部屋がいい。
黄泉は枕を持っていき、昼前まで空き部屋で過ごした。
そんな部屋に向かって、足音のドタドタドタと言う振動が廊下からやってくる。
スパァァンと開け放たれた襖の向こうに、顔だけがいい男が立っていた。白馬ではない。真黒の方だ。
「姉ちゃん聞いたぞ! 俺だけ除け者にして遊園地なんて狡いぞ! 酷すぎる!」
「ペアチケットなんだからしょうがないだろ。眠たい、邪魔するな」
白馬や青海に比べたら面倒率が低いが、またやっかいな面倒が来たものだ。
「姉ちゃん俺と行こう! 俺もチケット買ってきたから!」
「も? 赤鳥は買ったのか?」
「え、違うのか?」
怒りが満ち満ちた間があく。
「当てたと言っていたぞ紛らわしい」
「当てたの!? すっげぇな! って、そうじゃない、行くだろ!? 行くよな、素直じゃないんだから~」
「昨日行ったばかりで疲れてるんだ。それにお前と二人とか面倒臭過ぎて行きたくない……」
全然人の話を聞かない奴だな。眠いと言っているのに。
取り敢えずもう目が覚めてしまったから眠れる気がしないな、枕を戻しに行こう。
「行く気になってるじゃねえか姉ちゃん! よし、俺ともデートしよ!」
「部屋に行くんだ。枕を持って遊園地に行く奴がどこにいる」
「え、姉ちゃんならあり得る」
「オイ」
相変わらずうるさい奴だな。
黄泉は失礼な言い方をされたが、それよりも枕を自分の部屋に返すことに必死だ。
クッションや枕は宝だ。
黄泉は部屋に着くと大切に大切に万年床の布団へ戻し、真黒に振り返る。
「今すぐには無理だがいつか行ってやるから諦めろ」
「ちぇ~」
まあ、期間決まってないからいいけど、とチケットを裾の中に直す。向き直って両手を包んで言った。
「じゃあ少しだけ修行手伝ってよ。姉ちゃんが一番刀強いんだろ?」
「は? んなわけないだろ。誰から聞いた」
黄泉に自覚はなかった。
「青海兄さんだよ」
何故自分だけ『ちゃん』なのか問いたいが理由は何となく分かっているのでつっこまないでおく。
「知ってるだろう? 私は修行が大嫌いだ」
「姉ちゃんの修行じゃなくて俺の修行だってば。頼むよ、ね~ちゃん! 弟の世話しろよ~」
「……仕方がないな」
真黒は本当の弟みたいなものだ。少し甘やかしてしまうのは慕われているからか。
そう言って二人で廊下に出た時だった。真黒が森の方を見て言う。
「あ! 赤鳥姉さんだ! かっけー!」
「かっけー?」
黄泉も立ち止まり、不穏なオーラを放つ森の方を見る。
「な……」
真黒がかっこいいと言ったそれは、宙に浮いていた。
真っ白な翼。
真っ白な塊。
真っ白な尻尾。
赤の瞳孔と黒い網膜。
そんな小さな目が6つ、白い塊に付いている。ふさふさの尻尾はだらんと垂れ、元気がないように見えた。
真っ白で天使のような翼は、よく見ると触手で、空気に触れると少しずつ石化して最後にボロボロと崩れていく。だからだろう、新しい触手と常に生え変わる。
塊はまるで脳が巨大で手が小さくなったような……化け物の赤ちゃんのような形をしている。
「あ、あれが赤鳥姉さんだと? 何を考え……」
「負けてらんないぜ! 俺も変身しよ~!」
真黒はそう言って廊下から空中へと飛び去っていった。
一瞬にして真黒の姿が消え、黄泉は結構呆けてから、慌てて下を覗きにいく。
「真黒!!」
すると、ちょうど真黒の落ちた場所の下から黒い点が近づいて来て、だんだんとそれが大きくなっていく。
漆黒の翼に、漆黒の身体。
漆黒の爪に、漆黒の牙。
鱗の1つ1つが動き、呼吸しているように見える。
まるでドラゴンのような容姿の化け物。硬そうな外装。
「真黒……なのか?」
『どうしたの姉ちゃん。姉ちゃんも変身しなよ』
は?
は?
はあああああああああああああああああん!?
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