リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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ディノル

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 楽ドのつぶやきを聞いたゼルベイユが言った。
「帰ってきたらいきなり襲いだしたんだ。戦っている最中の姿が美しいとかなんとか」
「そんな変態じゃなかったのに! 俺の憧れバックオーライヘルプミー!」
 楽ドは赤い子供の会話を思い出し、疑問に思ったことをゼルベイユに尋ねる。
「実験体はすべて逃がしたんだよな?」
「ディヴァート・ウェザからは全部逃がしたよ。ただ他の基地はさすがに逃がせない」
「ほかにも基地があるのか!?」
「うん。他にも基地がある」
「それはどこに……」
「南栄軍の基地だよ。つい先日機械や実験体を運び出していた」
「そんな……」
 楽ドが沈んでいると、稲がオルトシアから逃れ楽ドの背に抱き着いてくる。ゼルベイユは目を見開いた。
「何だよ」
「また死ななかった……。元気がないようだが大丈夫か?」
「平気だよ」
 楽ドが稲を離そうとした時、稲が自ら離れ、楽ドは稲がナイフを構えようとしていることに気が付く。稲は楽ドの目の前――ゼルベイユの後ろ――の人影に反応していた。
 真っ赤な服のあの子供だった。やって来たのだ。
 稲はおそらく荷物を盗んだ犯人だと警戒しているのだ。しかし警戒をしただけで彼は人を殺してしまう。
「待ってくれ稲! 俺が呼んだんだ!」
 切りかかろうとする稲に静止を掛ける。稲の動きが止まり、楽ドは怯えている子供の隣に立ち、彼の紹介を行う。
「一人で暮らしてるんだ、ご飯の件は大目に見てやってくれ。それから妹を探しているらしい、おそらくゼルベイユがさっき言っていたもう一つの連中の基地、南栄軍の基地に妹さんはいる」
 子供が驚いたような顔をする。
「お前……」
「俺は楽ド、お前は?」
 楽ドのまっすぐな目を見つめて、赤い子供は言った。
「俺は幡多はた光陰こういん
「これからよろしくな光陰。一緒に行動しようぜ」
 同年代の仲間が増えてチビたちは喜んでいる様子だった。しかし、それに意を唱える男が一人。
「保護されるべきだ。オルトシア、我々に責任が取れるのか」
 ラ矢や鵺トや自分の子供が攫われたこと、妻のこともあったのだろう。
「でも妹が攫われて……」
 光陰が切羽詰まったように言うと、ゼルベイユが「あ、その子なら知ってるよ。幡多って名前に聞き覚えがある。居場所も分かる。楽ドくんの言った通り南栄軍の基地に連れていかれたね」と言った。光陰が弾かれたように言った。
「俺を連れて行ってくれ!」
「ダメだ!!」
 茶飯が言い張る。それを聞いたオルトシアが「俺が行く」と言った。それを見た茶飯が言った。
「君が行くと言うのなら私も行く。安心したまえ君ら。必ず助け出す」
ゼルベイユが手を上げようとしたのを見て、茶飯は「君もダメだ」と言う。しかしゼルベイユは手を上げるのをやめなかった。
「あの基地は複雑だから僕がいないと無理だよ。それから……稲くんも」
「何故……」
「南栄軍の基地は思ったより狭いと実験体たちは連れ戻されている筈だ。もう一つの基地は――空の楽園・ディヴァートウェザの中枢、ユヤにある」
 楽ドはまたふりだしに戻るのか、と胸をもやっとさせる。
「中枢・城内に入るには稲くんの存在が必須だ」
「何故だ」
 茶飯が問う。
「稲くんも昔研究されていたから、あそこが真の家と言ってもいい」
「子供を危険にさらせない!!」
 茶飯の猛反対を聞いて、楽ドは彼が稲を守るべき存在であると考えるようになったことに感動する。しかし、稲自身は守られ助けられる対象だとは思っていない。
「一人でも大丈夫だ」
 なんて言う。ゼルベイユはそれを聞いて、「僕が案内しよう。組織だけが知っている近道がある」と案内をしようとしたが、光陰が稲に「連れていけ」と掴みかかる。それに対し、ナイフを持って切りかかる稲。
「やめろ!!」
 首に刃が当てられた状態でピタリと止まり、光陰はごくりと喉を動かした。
その際、やいばに喉が擦れる。
「おうええええええ」
 光陰は首からだらだらと血を流す。
「何してんのッ!? バカなの!?」
「ふん。俺はもともと頑丈だからこれくらいの傷……おえええええええなんでえええええ」
 血がだらだらと流れ白目をむいてしまっている。オルトシアが光陰の首に手を振れると、首から傷がなくなっていく。
「あ、ありがとうございます」
「安心しろ。妹は俺が助けてやるからな!」
「俺が止めなかったらざっくりいってたぞ……」
 楽ドはあきれ返る。自分のことは棚に上げて。これ以上バカが増えたら困る……と。
ゼルベイユは光陰が無事だったのを確認して茶飯に忠告する。
「子供達の中から適正者が選ばれ、軍から横流されているんだ。子供は売られ、大金を手に入れた軍は戦争のための武器や食事を得ている。軍は信用できないよ」
 茶飯はその話を聞き、彼をまだ信用できていない様子で渋々だが光陰を武軍で保護すべきでないと了承した。茶飯の子供は信用できる人物に預けたため、大丈夫だろう。
行動は早いに越したことはない。その日のうちに旅立つこととなった。
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