リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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ディノル

32 ※BL?あり

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 楽ドたちはディヴァート・ウェザの上へやって来ていた。ゼルベイユがいるだけでディヴァート・ウェザの門から橋を下ろすことが出来たのだ。ゼルベイユはまだ信用できないが、なかなか役に立っている。ディヴァート・ウェザの中枢へ潜入するのも楽々で、稲が扉に手を翳しただけでそれらは開かれていく。
 光陰の妹を探している時だった。さすがに監視カメラなどで侵入がバレ、警戒態勢を強めていた奴らはある実験体を放った。
 その扉が開く時のメロディを聞いて、ゼルベイユが言った。
「イルヴルヴが来る」
「イルヴルヴ……?」
 5人の研究員たちがやって来て、楽ドたちの進む方向の廊下側に立ちはだかる。その後ろから、色素の薄い金の髪のこの世のものとは思えないほど美しい女性が現れた。スタイルも抜群で、顔には常に柔らかい微笑みを浮かべている。
「イルヴルヴ、大人は殺せ。子供を捕まえろ」
 イルヴルヴと呼ばれた女性は攻撃を仕掛け、研究者たちの言いなりにされている。
 イルヴルヴの七色に光る瞳が開眼し、戦闘態勢に入る。彼女は楽ドたちに飛び掛かったが、稲が彼女を圧倒的な力でねじ伏せる。地面に押し付けられ動きを封じられた彼女にゼルベイユが駆け寄って彼女の唇に無理やり小さな瓶の口を押し付け、中身を飲ませた。その薬で彼女の洗脳が解け、彼女は稲と一緒に背後にいた研究員たちを八つ裂きにし、研究員たちはあっという間に地面に倒れ伏した。
 楽ドが彼女に近づき、疑問と名前を問う。
「なんで味方になってくれたんですか? あなたの名前は?」
「気まぐれさ。そこの坊やが私の洗脳を解いてくれたようだしな」
 女性はゼルベイユに視線を向ける。
「さっきの瓶が……洗脳を解く薬だったのか」
「君は本当に頭がいい。噂に聞いていた通りだよ楽ドくん」
 ゼルベイユが顔をズイと近づけてきて観察してくる。楽ドは後方に背を反らして避けつつ、女性に尋ねた。
「あの……俺は楽ド、名前は……?」
「ああ、すまない。セイナだ。よろしく、少年」
「よろしくお願いします」
 セイナは真っ先に稲に名前を聞こうとしたが、その前に楽ドが「稲だ」と紹介する。その後も簡潔に仲間たちを紹介し、光陰の妹を助けるために廊下を走る。案内はゼルベイユがした。セイナが走りながら稲に近づき、話しかける。
「強いんだな、君は」
 そう言って頭を撫でる。稲は安心するように微笑んだ。
 それを見て、楽ドは珍しいなと思う。
 光陰の妹のいると言う部屋に辿り着くと、彼女はぼうっと真上を見上げて椅子に座っていた。真っ白な部屋に真っ白な椅子が置かれており、彼女はぽつんとだだっ広い部屋の真ん中で、だらんと腕を垂らしていた。瞬き一つせず天井を眺めている。
 ゼルベイユが部屋の扉を開けてもそれは変わらなかった。
 真っ赤な髪と七色に光る茶色の瞳の持ち主の少女だ。ラ矢と同い年くらいか?
そう!!」
 光陰は妹――幡多奏に向かって走る。奏を椅子からおろして自分もしゃがみ床に座らせ、奏を揺する。彼女はまだ天井を見ている。
「ふ……」
「ふ?」
 ふんふ~んと鼻歌を歌い始める奏。恐ろしいその歌声に、光陰と聖唖、楽ド以外の人間が悲鳴を上げて頭を抑え付けた。尋常でないほど悶え苦しむ彼らを見て、稲がナイフを取り出し、彼女に切りかかろうとする。
「傷つけないでくれ! 妹なんだ! 家族なんだ!」
 その言葉を聞いて楽ドは稲を止める。奏はと言うと、今度こそ光陰の背を見つめた。光陰は振り返り、奏のことを抱きしめた。
「ごめんな。俺がお前を守らなきゃいけなかったのに。ごめんな、奏」
 楽ドは光陰に共感していた。無事ラ矢や鵺トを助けられはしたが、実験されたことは確かだったからだ。ラ矢の真っ白な髪を見る度に自分を責める。
 奏の髪は徐々に茶髪に変化していく、元の紫がかった茶色ではなかったため、まるで色素を失っていくようだと光陰は思った。
「お……兄ちゃん?」
「奏!!」
 奏は正気に戻ったようで、兄の胸で泣いていた。セイナはその様(さま)に微笑み、そしてハッとする。
「奏ちゃんを操っている者がいる」
 彼女がそう言ったとたん、壁の扉が開き、一人の男の子が出てくる。奏と同い年くらいか、銀の髪と澄んだ青い瞳の子供だった。稲は武器を構え、セイナがそれを見て言った。
「よしなさい。あの子も洗脳されているだけだ」
「分かった」
 楽ド以外の言うことを聞いた稲が珍しく、茶飯は口をぽかんと開ける。
「美人の言うことは聞くのか……」
 奏が男の子に近づていき、己の兄がしたように抱きしめる。
『カナタ。もうだいじょうぶだから』
すると、男の子は眼の光を取り戻し、奏のことを見つめた。どうやら正気に戻ったようだ。
 奏や男の子――カナタには何かの力があるらしかった。だから一人だけこれほど広い部屋に閉じ込められていたのだ。それを操るカナタも同じくだ。
 ゼルベイユが逃げ道を教え、無事、全員が逃げ出すことが出来る。
 楽ドは勝手に皆のことを仲間だと思っていると理解していた為、光陰や奏、ゼルベイユやカナタ、セイナが去ってしまったことについて、楽ドはショックを受けていなかった。
 しかし次の日になると彼らはやってくる。いつの間にか毎日何も言わずに集まってくるようになり、結局一緒に旅することになったのだ。
 楽ドたちは泉町いずみちょうに来ていた。目的地の照国町まであと少しだ。
 オルトシアと茶飯、セイナは狩りに出かける。軍人や組織、グループに戦いを挑み、食料を奪っていく。自然からとれるものはもちろん自然から手に入れた。
 戦いの最中、セイナは敵に不意を突かれ殴られそうになった。それをオルトシアが止め、相手を吹っ飛ばす。セイナは頬を赤く染め、オルトシアにお礼を言った。
 彼らが帰って来た時だった。楽ドが稲に懐かれており、ぎゅぅぎゅぅと抱きしめられている。楽ドの顔は真顔だ。
「もういい加減離れてくれない?」
「……いやだ。だめ?」
「だめ」
「…………楽ド」
「そんな寂しそうな目で俺を見ないで!!」
 ゼルベイユが帰って来た彼らに「ずっとこうなんだ」と教える。
 チビたちも真似して楽ドを抱きしめ始めた。
「寒くはなって来たけどさすがに暑苦しい……」
 楽ドは稲の顔が真正面……のやや下にあることに動揺していた。キスできる距離……OTITUKE。相手は男の子だから! ローストファーストは無事だから!
 楽ドは瞳の中ををぐるぐるさせて、頬を赤く染めている稲を見つめる。次の瞬間、その顔が近づいてきて、長いまつげが徐々に降りていく。
 ゼルベイユと大人たちは「あ……」と思った。
 ちゅむ、と楽ドの唇に稲の唇が押し付けられる。
 その場にいた全員が「WOW……」と思った。
 楽ドは石のように固まった。
「いやああああああ! えっち!!」
「……楽ド、好き」
「何ですとおおおおおお!?」
「好き。愛してる」
「Oh、NOOOOOOOOOO!!」
 すりすりと楽ドの胸に頬を寄せる稲をセイナが解説する。
「稲、楽ドに惚れているようだな。私もオルトシアに惚れているぞ」
「急に告白した! 初耳なんですけど!?」
「すまんが俺は稲が好きだ」
「それはうすうす気づいてた!! そして俺は女の子が好きです!!」
 それから楽ドは稲を盛大に避けるようになり、チビたちに「真っ赤~」「たこさんみたい~」といじられるようになった。
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