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ディノル
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楽ドたちが見た光景は、神秘的で恐ろしかった。
稲と光陰は天に上り、白く巨大な魔法陣が街を覆い隠し空に浮かぶ。その白さはまるでオルトシアの魔術のようだった。
楽ドたちは照国町の超高層ビルの屋上に避難して血の媚りついた双眼鏡で一部始終を見ていた。
青い海は、何もかもを飲み込み、宙に浮かぶ稲の身体に戻り、吐き出されるように飛び出してきて、津波のように何もかも飲み込みを繰り返している。
「まさか、稲の血液なのか」
飲み込まれていく。何もかもが。このままでは、全てが無へと帰る。セイナが状況を見て言った。
「稲はイリオンスオーリア……オルトシアの力を奪ったんだ。それがあの白い魔方陣だ」
「イリオンスオーリア?」
茶飯が尋ねる。
「ディヴァート・ウェザでは人間をディノルと呼ぶ。彼らはディノルの始祖のことをイリオンスオーリアと呼んでいた」
「光陰は、あいつは何なんだよ、稲がイリオンスオーリアなら、光陰は!? あいつは人間だろ!?」
「イリオンスオーリアは万物を支配する力を持つ、神の力だ。最も、これは人間・ディノルの魔術だ。たった一人だけ、器として見出された者のみに与えられる白の魔力。神に愛された者にのみ与えられる力だ」
「オルトシアの次は稲って、神も面食いなのかよ!」
「乗り換えたんだろう、オルトシアに飽きたんだ、神……いやこの世界が選んだんだよ、人間最強の力を!」
セイナの言葉に、茶飯が言った。
「オルトシアがやたらと稲の力に魅入られてたのはそれも原因かもしれないな」
「光陰の力は私が小さな頃、育ての親に聞かされた話と似ている。神の子に選ばれた2人の男女に与えられる、大地から命を吸い上げる死神の力と、大地に命を与える女神の力。光陰の力は死神のそれだ。神の子が心臓なら2人は血管だ。命を循環させて万物の生きた状態を保っている」
それを聞いて、茶飯はディヴァート・ウェザが大事にしていた彼らのことを思い出す。
「神の子……女神、まさか、カナタと奏ですか!? あの子達なら光陰を止められるのですか!?」
「無理だろう。ただの暴走なら、あの子達の身体から自然と光陰の吸い上げた命が大地に戻される。イリオンスオーリアが利用しているのは三人ではなく死神一人だ。命を吸い上げ、イリオンスオーリアへ力として譲渡しているんだ。白の魔力は正しくそれだろう。つまり、イリオンスオーリアの力とはそもそも死神と二人で成り立つ力だと言うことだ」
「じゃあ死神を利用してイリオンスオーリアが生まれたってことなのか!?」
「違う、神が作り出したのがイリオンスオーリア、神の子を地上に産み落としたのも神だ。元々イリオンスオーリアの為に三人が生まれたのだ。つまり、イリオンスオーリアは本物の神そのものだと考えていい」
「そんなのどうやって止めるんだよ!」
「止める術などない。神にどうやって勝てと言うのだ。私達は死を待つしかない」
青い液体に飲み込まれ、ビル群が崩壊していく。更に光陰の力も働き、近づく者全ての命が白い魔方陣となり、死体の山が積み上げられていく。
液体はそれをも飲み込み、稲の身体の中へ引きずり込まれるように戻っていく。
「まるで、万物の破壊兵器だ」
「万物の……破壊兵器……」
この世界は、滅びるのだろう。
決して作動してはいけない兵器が発動し、暴走したのだ。
止める術は、ない。
助ける術が、ない。
幾万もの死体を血液に変えた――オルトシアの死体まで飲み込んだ稲に、何をしているんだと、叱責してやりたかった。
光陰に、バカなんじゃねえのと、いつの間にか彼の口癖が皆の口癖となってしまった言葉で一緒に奴に常識を教えてやらねばならなかった。
稲の中に流れる血液が、全てを飲み込み破滅に繋げる。
きっと、光陰がいなくても、奴一人で世界は滅ぼせるのだ。それを知っていて、稲は血液だけは決して流さなかったのだろう。
それとも、世界が世界を守る為に、稲を強くしたのだろうか。
それなら世界に、神に、言ってやりたい。稲を、何故普通の人間として産んでくれなかったのかと。
何故、神の力等彼等に与えたのかと。どうして友人二人を、オルトシアを、失わなくちゃならない。
何故、あの3人だったのだ。大事な人達が、世界に利用されている。そんなことが、許せるものか。
「……茶飯、セイナさん、妹達のこと、頼みます」
「何を言ってるんだ楽ド、話を聞いていなかったのか」
「無茶をするな、楽ド。お前は人間だろう。私が行こう」
「セイナさん貴方まで何を……!」
「オルトシアなら、迷わずあの子達の元へ向かうだろう。私はあいつにがっかりされたくないんだ」
「私が行きます、貴方のお腹には、そのオルトシアの子がいる。貴方はここで待っていてください」
「バカ言うな、茶飯はセイナさんを守れ。セイナさんは戦闘に参加しちゃダメだ。お腹の子はアンタしか守れないんだ。俺はあいつ等を止めに行く。俺は人間だし、この中で一番弱いけど、あいつ等は俺の友達だ。見捨てることなんて出来ない。助けたいんだ、茶飯。セイナさん」
「方法はあるのか」
「もちろん。一つ、考えがある」
稲と光陰は天に上り、白く巨大な魔法陣が街を覆い隠し空に浮かぶ。その白さはまるでオルトシアの魔術のようだった。
楽ドたちは照国町の超高層ビルの屋上に避難して血の媚りついた双眼鏡で一部始終を見ていた。
青い海は、何もかもを飲み込み、宙に浮かぶ稲の身体に戻り、吐き出されるように飛び出してきて、津波のように何もかも飲み込みを繰り返している。
「まさか、稲の血液なのか」
飲み込まれていく。何もかもが。このままでは、全てが無へと帰る。セイナが状況を見て言った。
「稲はイリオンスオーリア……オルトシアの力を奪ったんだ。それがあの白い魔方陣だ」
「イリオンスオーリア?」
茶飯が尋ねる。
「ディヴァート・ウェザでは人間をディノルと呼ぶ。彼らはディノルの始祖のことをイリオンスオーリアと呼んでいた」
「光陰は、あいつは何なんだよ、稲がイリオンスオーリアなら、光陰は!? あいつは人間だろ!?」
「イリオンスオーリアは万物を支配する力を持つ、神の力だ。最も、これは人間・ディノルの魔術だ。たった一人だけ、器として見出された者のみに与えられる白の魔力。神に愛された者にのみ与えられる力だ」
「オルトシアの次は稲って、神も面食いなのかよ!」
「乗り換えたんだろう、オルトシアに飽きたんだ、神……いやこの世界が選んだんだよ、人間最強の力を!」
セイナの言葉に、茶飯が言った。
「オルトシアがやたらと稲の力に魅入られてたのはそれも原因かもしれないな」
「光陰の力は私が小さな頃、育ての親に聞かされた話と似ている。神の子に選ばれた2人の男女に与えられる、大地から命を吸い上げる死神の力と、大地に命を与える女神の力。光陰の力は死神のそれだ。神の子が心臓なら2人は血管だ。命を循環させて万物の生きた状態を保っている」
それを聞いて、茶飯はディヴァート・ウェザが大事にしていた彼らのことを思い出す。
「神の子……女神、まさか、カナタと奏ですか!? あの子達なら光陰を止められるのですか!?」
「無理だろう。ただの暴走なら、あの子達の身体から自然と光陰の吸い上げた命が大地に戻される。イリオンスオーリアが利用しているのは三人ではなく死神一人だ。命を吸い上げ、イリオンスオーリアへ力として譲渡しているんだ。白の魔力は正しくそれだろう。つまり、イリオンスオーリアの力とはそもそも死神と二人で成り立つ力だと言うことだ」
「じゃあ死神を利用してイリオンスオーリアが生まれたってことなのか!?」
「違う、神が作り出したのがイリオンスオーリア、神の子を地上に産み落としたのも神だ。元々イリオンスオーリアの為に三人が生まれたのだ。つまり、イリオンスオーリアは本物の神そのものだと考えていい」
「そんなのどうやって止めるんだよ!」
「止める術などない。神にどうやって勝てと言うのだ。私達は死を待つしかない」
青い液体に飲み込まれ、ビル群が崩壊していく。更に光陰の力も働き、近づく者全ての命が白い魔方陣となり、死体の山が積み上げられていく。
液体はそれをも飲み込み、稲の身体の中へ引きずり込まれるように戻っていく。
「まるで、万物の破壊兵器だ」
「万物の……破壊兵器……」
この世界は、滅びるのだろう。
決して作動してはいけない兵器が発動し、暴走したのだ。
止める術は、ない。
助ける術が、ない。
幾万もの死体を血液に変えた――オルトシアの死体まで飲み込んだ稲に、何をしているんだと、叱責してやりたかった。
光陰に、バカなんじゃねえのと、いつの間にか彼の口癖が皆の口癖となってしまった言葉で一緒に奴に常識を教えてやらねばならなかった。
稲の中に流れる血液が、全てを飲み込み破滅に繋げる。
きっと、光陰がいなくても、奴一人で世界は滅ぼせるのだ。それを知っていて、稲は血液だけは決して流さなかったのだろう。
それとも、世界が世界を守る為に、稲を強くしたのだろうか。
それなら世界に、神に、言ってやりたい。稲を、何故普通の人間として産んでくれなかったのかと。
何故、神の力等彼等に与えたのかと。どうして友人二人を、オルトシアを、失わなくちゃならない。
何故、あの3人だったのだ。大事な人達が、世界に利用されている。そんなことが、許せるものか。
「……茶飯、セイナさん、妹達のこと、頼みます」
「何を言ってるんだ楽ド、話を聞いていなかったのか」
「無茶をするな、楽ド。お前は人間だろう。私が行こう」
「セイナさん貴方まで何を……!」
「オルトシアなら、迷わずあの子達の元へ向かうだろう。私はあいつにがっかりされたくないんだ」
「私が行きます、貴方のお腹には、そのオルトシアの子がいる。貴方はここで待っていてください」
「バカ言うな、茶飯はセイナさんを守れ。セイナさんは戦闘に参加しちゃダメだ。お腹の子はアンタしか守れないんだ。俺はあいつ等を止めに行く。俺は人間だし、この中で一番弱いけど、あいつ等は俺の友達だ。見捨てることなんて出来ない。助けたいんだ、茶飯。セイナさん」
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