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ディノル
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別の超高層ビルへ魔術を使い避難した茶飯とセイナは楽ドの様子を眺める。
楽ドは移動した超高層ビルの頂上に立ち、仁王立ちしていた。
「稲ッ見ろ、俺は今裸だぞッ!! 今なら好きにしてもいいぞおおおおおおおおッ!!」
茶飯とセイナは頭を抱えた。
「何をしてるのだあいつは……」
「……効果はありそうだが、駄目か。今の稲には意志がないのかもしれない。もっと早めに手を打っていればもしかしたら……今更考えても仕方がないか」
「何故平然としているのですか!」
楽ドの考えとやらが通じなかったことに対し、残念がるセイナを叱る茶飯。しかしよくよく考えれば、確かに。稲なら楽ドの裸を見たとたん敏感に反応しそうだ。いつも風呂の時は必ず楽ドと稲が全裸で戦場を疾走していた。もちろん稲が襲おうとしていたのだが。そう言えばその後をオルトシアが、その後をセイナが、流石に女性がタオル一枚で走るのは不味いと茶飯と光陰が、皆で走り回っていることにチビたちが追っかけっこだと勘違いして付いてきて、結局皆で肌色のまま戦場を駆け抜けるのが日常になっていた。
あまりいい思い出とは言えないが、この状況を考えれば幾分かマシだ。
茶飯はそんなことを考えて思い出が飲み込まれてしまった周囲を見渡す。そんな時、ゼルベイユの姿を別の超高層ビルの屋上に発見した。
茶飯は魔術を駆使しそこに駆け付け、彼の喉元に刀を突きつける。
「お前は一体。何者だ。ただの研究員じゃないだろう」と茶飯が尋ねると、「僕は稲くんや空中都市・ユヤについて研究を続けて来た」とゼルべイユは白状した。
「地球延命システム=ィヴァ・クィナ。ユヤによる攻撃により人類滅亡と共に星の滅亡が進み、我々の組織ング・エンタは星の命のコントロール実験を開始した。その実験で、人工生命体3体を使った星の命のコントロールを実現可能にする。物質を操るイダと言う力を管理出来、心臓の役割を果たす神の子《ヴァシティリア・イグオンワィヴァ》。その管理システムからイダと緑龍子を放出する、大地を癒す女神《シガシィヴァ・イリオンテス》。管理システムからイダと白龍子を注ぎ込む、大地に死をもたらす死神《クォリィヴァ・アルカナティア》。緑龍子と白龍子を放出することで星を回復し延命するが、どちらかの機能が停止すると星は滅亡への道を進む。緑龍子は星を複製させ続け滅亡を生み、白龍子は星を吸収し続け滅亡を生む。3体で共に行動することを義務付け、1体でも欠ければ負担を多く受けた者が機能を停止する。その際は、自動的にイリオンス ・オーリアとの連携に切り替えられる。そのどちらも制御する為には神の子が必要だが、それに加え人類が反旗を翻した時の為にある兵器の機能として、イリオンス・オーリアと言う切り替えも用意した。これは白龍子を別の方法で星へ与えつつ、人類を攻撃できると言う優れものだった。モデルになったのは第一研究室に眠る見本だった。なお、この実験はゼルベイユ・ラウグストゥスの監修により行われた……」
「ゼルベイユ……ラウグストゥス……!」
「知ってみようと思ったんだ。絆について、気まぐれだけど」
「……っ、このまま刺し殺されたくなかったら私の言うことを聞け!」
茶飯は彼を恐喝し、情報を得た。そして緑龍子の液体で稲の血液から身を守ることが出来るかもしれないと知る。茶飯はゼルベイユを脅し、セイナと自分の分の緑龍子の液体を回収してセイナの元へ戻った。茶飯は魔術で別のビルに跳躍したが、楽ドは魔術が使えない。茶飯は、そういえば、楽ドはどうやって超高層ビルへ移動したのだろうと、考える。
血液の海が楽ドの上に飛沫を上げるが、楽ドはびくともしなかった。楽ドのみが吸収されていないと知り、茶飯は楽ドの元へ向かった。
楽ドはそれをさっき知ったと言い、二人を助けに行くと言う。
彼らの近くに到着できる超高層ビルに茶飯が楽ドを連れてくる。
楽ドは超高層ビルの屋上から稲に向かって走って勢いをつけ空中を飛んだ。下は青い血液が渦を巻いている。楽ドは吸収されないと分かったが、超高層ビルの屋上から落ちたら楽ドの身体は無事ではないだろう。楽ドは震える身体にバシバシと拳を叩き入れ、気合を入れて、勇気を振り絞って飛んだのだった。
楽ドは稲の身体を抱きしめる。
「ごめんな」
楽ドはそう言って、南栄軍から回収してからずっと使わなかったナイフを、カプセルに入った緑龍子へ漬け、そのナイフをかかげ、稲の胸に突き刺した。
抉るように必死にナイフを動かし、歯を食いしばりながら、ナイフを捨てた手を彼の胸に突っ込んで、心臓を引っ張り出す。
緑龍子の液体が入ったカプセルに稲の心臓を入れる。これもゼルベイユから茶飯が奪ったらしかった。
血液の循環機能がなくなり辺り一面を飲み込んでいた血液は動きを鈍くする。
稲は下に降りていき、茶飯が慌てて手を差し出す。魔術で足場を作った茶飯に、「さっき飛ばなくてよかったじゃん!」と楽ドが文句を言った。稲と光陰を救出し、楽ドは稲の穴の開いた胸を見て涙を流す。
「ごめんな。ごめんな、稲」
「――ありがとう、楽ド」
そう言って、ぎゅっと抱き着いてきたのは稲だった。
「え……」
「何故動けるのだ!」
茶飯を無視して、稲は自分の心臓をカプセルから取り出し、元の位置に戻した。町中にあふれたままだった血液が動き出し、茶飯と楽ドが恐怖の顔を浮かべる。しかし、血液は元に戻ろうとするだけで飲み込もうとすることはなかった。
血液はほとんどが稲の中へ戻り、傷口も塞がっていく。
――ゼルベイユはいつの間にか姿を消していた。脅されていろいろ盗られたから仕方がない。
長らく続いていた人々の戦いはその事件で終わったと言っていい。鹿児島市を含む多くの町は廃都市となり、人っ子一人、超高層ビルを除く、建物一つなくなってしまったのだ。
楽ドは移動した超高層ビルの頂上に立ち、仁王立ちしていた。
「稲ッ見ろ、俺は今裸だぞッ!! 今なら好きにしてもいいぞおおおおおおおおッ!!」
茶飯とセイナは頭を抱えた。
「何をしてるのだあいつは……」
「……効果はありそうだが、駄目か。今の稲には意志がないのかもしれない。もっと早めに手を打っていればもしかしたら……今更考えても仕方がないか」
「何故平然としているのですか!」
楽ドの考えとやらが通じなかったことに対し、残念がるセイナを叱る茶飯。しかしよくよく考えれば、確かに。稲なら楽ドの裸を見たとたん敏感に反応しそうだ。いつも風呂の時は必ず楽ドと稲が全裸で戦場を疾走していた。もちろん稲が襲おうとしていたのだが。そう言えばその後をオルトシアが、その後をセイナが、流石に女性がタオル一枚で走るのは不味いと茶飯と光陰が、皆で走り回っていることにチビたちが追っかけっこだと勘違いして付いてきて、結局皆で肌色のまま戦場を駆け抜けるのが日常になっていた。
あまりいい思い出とは言えないが、この状況を考えれば幾分かマシだ。
茶飯はそんなことを考えて思い出が飲み込まれてしまった周囲を見渡す。そんな時、ゼルベイユの姿を別の超高層ビルの屋上に発見した。
茶飯は魔術を駆使しそこに駆け付け、彼の喉元に刀を突きつける。
「お前は一体。何者だ。ただの研究員じゃないだろう」と茶飯が尋ねると、「僕は稲くんや空中都市・ユヤについて研究を続けて来た」とゼルべイユは白状した。
「地球延命システム=ィヴァ・クィナ。ユヤによる攻撃により人類滅亡と共に星の滅亡が進み、我々の組織ング・エンタは星の命のコントロール実験を開始した。その実験で、人工生命体3体を使った星の命のコントロールを実現可能にする。物質を操るイダと言う力を管理出来、心臓の役割を果たす神の子《ヴァシティリア・イグオンワィヴァ》。その管理システムからイダと緑龍子を放出する、大地を癒す女神《シガシィヴァ・イリオンテス》。管理システムからイダと白龍子を注ぎ込む、大地に死をもたらす死神《クォリィヴァ・アルカナティア》。緑龍子と白龍子を放出することで星を回復し延命するが、どちらかの機能が停止すると星は滅亡への道を進む。緑龍子は星を複製させ続け滅亡を生み、白龍子は星を吸収し続け滅亡を生む。3体で共に行動することを義務付け、1体でも欠ければ負担を多く受けた者が機能を停止する。その際は、自動的にイリオンス ・オーリアとの連携に切り替えられる。そのどちらも制御する為には神の子が必要だが、それに加え人類が反旗を翻した時の為にある兵器の機能として、イリオンス・オーリアと言う切り替えも用意した。これは白龍子を別の方法で星へ与えつつ、人類を攻撃できると言う優れものだった。モデルになったのは第一研究室に眠る見本だった。なお、この実験はゼルベイユ・ラウグストゥスの監修により行われた……」
「ゼルベイユ……ラウグストゥス……!」
「知ってみようと思ったんだ。絆について、気まぐれだけど」
「……っ、このまま刺し殺されたくなかったら私の言うことを聞け!」
茶飯は彼を恐喝し、情報を得た。そして緑龍子の液体で稲の血液から身を守ることが出来るかもしれないと知る。茶飯はゼルベイユを脅し、セイナと自分の分の緑龍子の液体を回収してセイナの元へ戻った。茶飯は魔術で別のビルに跳躍したが、楽ドは魔術が使えない。茶飯は、そういえば、楽ドはどうやって超高層ビルへ移動したのだろうと、考える。
血液の海が楽ドの上に飛沫を上げるが、楽ドはびくともしなかった。楽ドのみが吸収されていないと知り、茶飯は楽ドの元へ向かった。
楽ドはそれをさっき知ったと言い、二人を助けに行くと言う。
彼らの近くに到着できる超高層ビルに茶飯が楽ドを連れてくる。
楽ドは超高層ビルの屋上から稲に向かって走って勢いをつけ空中を飛んだ。下は青い血液が渦を巻いている。楽ドは吸収されないと分かったが、超高層ビルの屋上から落ちたら楽ドの身体は無事ではないだろう。楽ドは震える身体にバシバシと拳を叩き入れ、気合を入れて、勇気を振り絞って飛んだのだった。
楽ドは稲の身体を抱きしめる。
「ごめんな」
楽ドはそう言って、南栄軍から回収してからずっと使わなかったナイフを、カプセルに入った緑龍子へ漬け、そのナイフをかかげ、稲の胸に突き刺した。
抉るように必死にナイフを動かし、歯を食いしばりながら、ナイフを捨てた手を彼の胸に突っ込んで、心臓を引っ張り出す。
緑龍子の液体が入ったカプセルに稲の心臓を入れる。これもゼルベイユから茶飯が奪ったらしかった。
血液の循環機能がなくなり辺り一面を飲み込んでいた血液は動きを鈍くする。
稲は下に降りていき、茶飯が慌てて手を差し出す。魔術で足場を作った茶飯に、「さっき飛ばなくてよかったじゃん!」と楽ドが文句を言った。稲と光陰を救出し、楽ドは稲の穴の開いた胸を見て涙を流す。
「ごめんな。ごめんな、稲」
「――ありがとう、楽ド」
そう言って、ぎゅっと抱き着いてきたのは稲だった。
「え……」
「何故動けるのだ!」
茶飯を無視して、稲は自分の心臓をカプセルから取り出し、元の位置に戻した。町中にあふれたままだった血液が動き出し、茶飯と楽ドが恐怖の顔を浮かべる。しかし、血液は元に戻ろうとするだけで飲み込もうとすることはなかった。
血液はほとんどが稲の中へ戻り、傷口も塞がっていく。
――ゼルベイユはいつの間にか姿を消していた。脅されていろいろ盗られたから仕方がない。
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