リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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ヴァラヴォルフ

21

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 あの夜から少し経ち、朝を迎えた頃だった。
 一族と集団は拠点を捨て森の中に潜んでいた。
 火を囲み、食事をする。
 炎さえつけていれば成れの果ては近づいてこないからだった。
 躾は食事もせずにティーネを心配して彼女を探しに行こうとした。それを銀杏が見つけて付いてくる。
「…………」
「連れてきてはダメです。あなたまで追放されますよ」
「…………」
「それにあの子のためです。もし戻ってきたら次はどんな目に遭わされるか」
「…………っ、くそっ」
 ガッと廃墟の壁を殴る躾を銀杏は微笑んで見つめる。
「きっと一人の方が安全です」
 躾の頭を撫でて慰めようとするが、それを躾は叩き落として拒絶する。
「躾様!」
「放っておいてくれ」
 躾は去っていく。
 銀杏が悲しんでいると、気まずそうに真黒がやってきて言う。
「姉さん。砂金姉さんが通信機借りて来いって」
「ええ。これね。何に使うの?」
「船を呼ぶんだ。脱出する」
 通信機を受け取り、真黒が砂金のもとへ行こうと回れ右した時だった。
 ちょうど躾を探しに来た鵺トとぶつかり、通信機が地面に落ちる。真黒が鵺トを責めようとした時だった。
「ひっ……」
 炎から少し遠ざかっただけで、奴らはやってくる。
 全長6米はある漆黒の毛の狼――の成れの果てが仲間を引き連れて現れた。鵺トとともに躾を探しに来ていた胚邪が言った。
「ぞ、族長……」
「族長って、まさか躾の父親の!?」
「躾様の……父、親」
「ああああああああっ!?」
 その場にいたみんながその最後の悲鳴に近い声に身体をビクつかせた。
「お前通信機! 踏んでんじゃねえよ! って言うか今不穏な音が聞こえただろ! ジジッて!」
「ご、ごめん」
 鵺トが右足を退けると直ぐ様真黒が通信機を回収して、カチッカチッとボタンを押して動作を確認する。
「だ、だめじゃねえか……これじゃ船が呼べねえ……」
「真黒あんまり大きな声出さないで。これ以上増えたらもう逃げ場が……」
 銀杏が言った傍から、成れの果て達は増え続けた。導がとどめと言わんばかりに遠吠えを上げ、周囲は完全に囲まれてしまった。
 銀杏と真黒は刀を抜き、鵺トは歌う準備をする。
 背中を合わせ、刀で牙を弾いたり、飛び掛かってくる際に見えた腹に刀を突き刺したりするが、胚邪は狼に変身し、相手に飛び掛かっていくことしかできない。
「胚邪さん……! 貴方は下がって」
『大丈夫ですよぉ鵺ト坊ちゃん、鵺ト坊ちゃんは俺の後ろに』
「わかった」
 真黒はその会話を聞いていてゾッとする。
「うええ、狼になっても話せんのかよ。こえええ」
「黙れ! 前の敵に集中しろ!」
「うるっせぇなぁ。それはてめえがだろ、さっきから狼のおっさんに気ぃ取られすぎだろ」
 真黒のような奴に注意されて自分が嫌になる鵺ト。
 それでも胚邪を気にしないことなどできない。
 躾にとって彼は一番傍にいてくれた家族の一人だ。それにもう躾には彼らしか家族は残っていないのだから、鵺トが彼を守らなければならなかった。
「胚邪さん……?」
「ハッ、あの野郎何処まで行きやがった。化け物にでもなってんじゃねえだろうな!?」
 そんな……と鵺トが思っていると、それらしき姿が奥の方で見えてショックを受ける。
「胚邪さん……!」
「呼ぶんじゃねえよクソ。姉さん、木の上に登ろう」
「ええ、その方が良さそうね」
 銀杏と真黒は跳躍し、巨大な木の上――太い木の枝に乗って避難する。しかし、鵺トの跳躍ではそんなところまで行けない、鵺トは置いてけぼりにされた。
「嘘だろ……」
 鵺トはそう思ったが、直ぐに歌を歌った。



 滅びが来た

 我々の滅び

 滅びの歌を歌おう



 余話の余興となりすまし

 滅びを願って歌おう

 滅びの歌を歌おう



 避難した先に成がいて真黒は一瞬驚いたが、彼女の背に手を回して横胸を鷲掴みにする。そのまま揉みしだきながら言った。
「成じゃねえか! お前どうしてこんなん所にいるんだ? そんなに俺のことが好きか? ん? かわいいなぁ」
「ち、違います! 私は安全に移動しようと思ってここにいたら襲われているのを見つけて……」
「そう言うのいいからいいから。…………ん~……」
「ひええええ!?」
「こらそんな状況じゃないでしょ。やめなさい真黒」
「姉さんが言うなら……な~んて」
「ひっ!?」
 真黒は成を抱き締め、口付けを交わす。銀杏は呆れ返った。



 滅びが来た

 我々の滅び

 滅びの歌を歌おう


 余話の余興となりすまし

 滅びを願って歌おう

 滅びの歌を歌おう



「うっ頭が…………!」
 鵺トの歌声は三人にも酷い影響を与えた。
なぜなら彼が歌に集中出来ていないからだ。
「しん、ぞうがあああ……!!」
 銀杏がそう叫ぶと真黒は先ほどまで深い口付けを交わしていた成を離して、自分自身も苦しみながら銀杏の元へ行こうとする。
 鵺トはと言うと、数百匹と導の成れの果てに囲まれた状態で汗を滝のように流しながら歌を歌っていた。
 もう、声が枯れる――と言う所だった。
『鵺ト……!』
 赤毛の狼に変身した躾がやってきて、身体と尻尾で鵺トの身体を支えた。
『大丈夫か、いったん引くぞ。俺の背中に乗れ!』
「う、うん……」
 疲れ切った鵺トと、目の前の実の父の成れの果てを見て、躾は今すぐには戦えないと判断する。
「躾様……!」
 銀杏たちが鵺トを置いて行ったように躾も彼女たちを置いて行った。
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