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バシリアス ※BL
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身体が操られた様に一瞬で立ち上がっていた。いつの間にか、手術室へ入っていた。
其処には、何も存在していなかった。
羅聖の身体も、先程まで切磋琢磨して動き回っていた機械達も、打ち込まれ続けていた文字達も。
俺は、幻覚でも見ていたのだろうか。羅聖は、俺の作り出した人格で。俺の中だけの存在で。まさか、まさかまさかまさか、彼は存在していない人物で。そんなそんなそんな、いやだいやだいやだいやだ。
「羅聖は存在している…………俺が、俺が知っている」
彼の温もりも声も顔も全部覚えている。だから、だから――……
「羅聖は何処にいるんだ」
パッと、空中に赤い画面が浮かぶ。
〝蘇生中〟
『全工程が完了いたしました。ラセイサマは只今、〝βασιλιάς(バシリアス)〟の液中に入っておられます。蘇生の完了は5分程掛かる事がございます』
「……彼に会いたい」
『ご案内いたします』
プシュウウッと音がして、壁だと思っていた場所が開く。
奥から冷たい空気が入ってきて、行先を示す矢印が空中にパパパパパと映し出された。
どうやら奥に続いているらしい。
真っ暗な室内だった。其処へ、緑色の光が舞っている。蛍の樣だ。
羅聖は部屋の中央の筒状の機械の中に入っていた。
緑色の液中に、両足と両手首を上下で固定してベルトで吊られている。
「ら、せい……」
良かった。
良かった、彼は存在していた。
俺の目の前にちゃんと。
ああ。
駄目だ。
もう、君の傍にいられるだけで、いいと思えたんだ。
羅聖、俺の夢は君の傍にい続ける事だ。
『蘇生が完了いたしました(100%)』
目の前の長い睫毛が震える。
ゆっくりと、瞼が開かれて、美しい瞳が此方をまっすぐ見つめる。
ただそれだけだと言うのに、見惚れてしまった。
彼は俺に気が付いたのか、鈍い動きでベルトに締められた手を動かした。
『身体の動きを察知しました。〝βασιλιάς〟を排水します』
緑色の液体が彼の白い肌にに纏わり付きながら水位を下げていく。ぼこぼこと下方で音がしているが私の目は羅聖の姿に釘付けだった。
元々人間離れした容姿だとは思っていたが、機械に捕らわれた今の彼はまるでそのまんまだった。
『固定を解除します』
ベルトがプシュッと音を立てて一瞬で外れる。羅聖は簡単に着地して見せた。もし俺だったならガラスに顔面を強打した後尻もちをついていただろう。
『扉を開きます。お疲れ様でした』
プシュウウッと扉が開き、首を軽く回しながら怠そうにして羅聖が出てくる。
全裸の彼に、上から機械が降りてきて、高そうなローブを差し出した。
羅聖は一言も発しないままそれを受け取りはおる。咲路はずっと彼に見惚れたままだった。
「まさか兄さんに殺されて、兄さんに助けられるなんてな」
「お、俺じゃない。全部お前の作った機械がしてくれたんだ」
「でも此処に運んだのも、機械をそう操作したのも兄さんじゃないか。――――……しかし、怠いな。これは改良が必要だ」
「血液を抜いたからかも……」
「つまり今の俺の血液はβασιλιάςで出来てるのか……。血液に浸透しないように作ったのに、意味がなかったな」
「あ、あの緑色の液体は何なんだ?」
「βασιλιάςだ。どんな形にも変化する。草にも鉄にもなれる特殊な液体さ。万物の万能細胞のようなものだ。まあ、これを最新医療として世に出すつもりもないが」
「え。どうしてだ、これさえあれば皆元気になるんだろ?」
「壁の外の奴等を気にしたところで俺になんのメリットがある? 俺は兄さんと生き続ける為にこれを作ったんだ。兄さんが言ったんだろう。兄さんの夢は死ぬ迄俺の傍にいる事だって」
いや、まあ言ったけど。
「そんなのあったら死ねないじゃないか……」
「ふふ。簡単に死なせる訳がないだろ。莫迦だな」
咲路ははあ、と溜息をつく。
その溜息には安心した、呆れたと言う意味もあったが。何より。
容姿や仕草が美しくても此奴の性格が台無しにしている事に気が付いてがっかりした事がメインだった。
其処には、何も存在していなかった。
羅聖の身体も、先程まで切磋琢磨して動き回っていた機械達も、打ち込まれ続けていた文字達も。
俺は、幻覚でも見ていたのだろうか。羅聖は、俺の作り出した人格で。俺の中だけの存在で。まさか、まさかまさかまさか、彼は存在していない人物で。そんなそんなそんな、いやだいやだいやだいやだ。
「羅聖は存在している…………俺が、俺が知っている」
彼の温もりも声も顔も全部覚えている。だから、だから――……
「羅聖は何処にいるんだ」
パッと、空中に赤い画面が浮かぶ。
〝蘇生中〟
『全工程が完了いたしました。ラセイサマは只今、〝βασιλιάς(バシリアス)〟の液中に入っておられます。蘇生の完了は5分程掛かる事がございます』
「……彼に会いたい」
『ご案内いたします』
プシュウウッと音がして、壁だと思っていた場所が開く。
奥から冷たい空気が入ってきて、行先を示す矢印が空中にパパパパパと映し出された。
どうやら奥に続いているらしい。
真っ暗な室内だった。其処へ、緑色の光が舞っている。蛍の樣だ。
羅聖は部屋の中央の筒状の機械の中に入っていた。
緑色の液中に、両足と両手首を上下で固定してベルトで吊られている。
「ら、せい……」
良かった。
良かった、彼は存在していた。
俺の目の前にちゃんと。
ああ。
駄目だ。
もう、君の傍にいられるだけで、いいと思えたんだ。
羅聖、俺の夢は君の傍にい続ける事だ。
『蘇生が完了いたしました(100%)』
目の前の長い睫毛が震える。
ゆっくりと、瞼が開かれて、美しい瞳が此方をまっすぐ見つめる。
ただそれだけだと言うのに、見惚れてしまった。
彼は俺に気が付いたのか、鈍い動きでベルトに締められた手を動かした。
『身体の動きを察知しました。〝βασιλιάς〟を排水します』
緑色の液体が彼の白い肌にに纏わり付きながら水位を下げていく。ぼこぼこと下方で音がしているが私の目は羅聖の姿に釘付けだった。
元々人間離れした容姿だとは思っていたが、機械に捕らわれた今の彼はまるでそのまんまだった。
『固定を解除します』
ベルトがプシュッと音を立てて一瞬で外れる。羅聖は簡単に着地して見せた。もし俺だったならガラスに顔面を強打した後尻もちをついていただろう。
『扉を開きます。お疲れ様でした』
プシュウウッと扉が開き、首を軽く回しながら怠そうにして羅聖が出てくる。
全裸の彼に、上から機械が降りてきて、高そうなローブを差し出した。
羅聖は一言も発しないままそれを受け取りはおる。咲路はずっと彼に見惚れたままだった。
「まさか兄さんに殺されて、兄さんに助けられるなんてな」
「お、俺じゃない。全部お前の作った機械がしてくれたんだ」
「でも此処に運んだのも、機械をそう操作したのも兄さんじゃないか。――――……しかし、怠いな。これは改良が必要だ」
「血液を抜いたからかも……」
「つまり今の俺の血液はβασιλιάςで出来てるのか……。血液に浸透しないように作ったのに、意味がなかったな」
「あ、あの緑色の液体は何なんだ?」
「βασιλιάςだ。どんな形にも変化する。草にも鉄にもなれる特殊な液体さ。万物の万能細胞のようなものだ。まあ、これを最新医療として世に出すつもりもないが」
「え。どうしてだ、これさえあれば皆元気になるんだろ?」
「壁の外の奴等を気にしたところで俺になんのメリットがある? 俺は兄さんと生き続ける為にこれを作ったんだ。兄さんが言ったんだろう。兄さんの夢は死ぬ迄俺の傍にいる事だって」
いや、まあ言ったけど。
「そんなのあったら死ねないじゃないか……」
「ふふ。簡単に死なせる訳がないだろ。莫迦だな」
咲路ははあ、と溜息をつく。
その溜息には安心した、呆れたと言う意味もあったが。何より。
容姿や仕草が美しくても此奴の性格が台無しにしている事に気が付いてがっかりした事がメインだった。
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