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 俺の飛び降りたい症候群を抑える為にと兄が用意したスポットがあるのだ。
 セーザを連れて、中庭の噴水が見えるテラスにやって来た。中の大広間では小さなパーティなども開かれる。
「あの中央の噴水から水が出て、真下のプールに続いているんだ。めちゃめちゃ深いんだぞ。さかし溺れないようにネットが貼ってあるから心配するな、絡まれば上手くいけるぞ」
「どこに!? 俺をどこに連れていく気なんだ!?」
 柵の上に乗って、セーザも上がるように促す。
「でも、ここから落ちたら痛いんじゃないか?」
 セーザもすぐに上がってきた。
「そうだな、痛いだけで悲しいことに転生出来ない! しかし代わりに全身を打ち付ける感覚が転生に似ていて楽しいんじゃないか! 入水も楽しいぞ。偶に海に行くんだ、今度また遊びに来た時は海に連れて行ってやろう」
「あはは、俺は3日海を渡って来たんだ。海はもういいかな」
「うぬぅ、船はつまらなくても、浅瀬は気持ちがいいのだ」
「じゃあ次は着替え持って来るよ」
 ぎゅっと前から抱き締めると、面白いくらい固まった。メドゥーサでもいるのか?
「何を言っている。今からあそこに飛び込むのだ!」
「え。うあ、ちょ!? ――わああああああ!?」
「ひゃっほおおおおおおうっ!!」
 ざっぶーんと水飛沫を立てて水の中に入る。ブクブクと鼻から息を吹き出して、水上に「ぷはっ」と顔を出した。
「セーザ! 気持ちいいだろう!」
 後から出てきたセーザに近付く。
 すると、セーザはしんそこ楽しそうな顔をして笑った。
「気持ちいいけど、服が重たいな、早く上がろう」
「スッキリするだろう?」
「そうだな。飛び降りは怖かったけど。水の中は気持ちいいや」
 プールから上がって、重た過ぎるドレスを脱ぎ捨てる。ドレスを絞っていれば、芝生に座り込んでしゅんとしているセーザの顔が目に入った。
「どうかしたか?」
「いや、本当に男の子なんだなって」
 おお、インナーで隠れているとはいえへばりついて男がありありと出ているな。
「……やっぱり、セーザは俺の事好きなのか?」
「ち、ちが、気になってた……だけで」
「気になった子にいきなりちゅーなんて随分と大胆なんだな」
 そういえば肉食系の積極的キャラなんだっけ。
「その件に関してはごめん。……嫌われたとか言うから、好きって気持ちを信じて貰うにはどうしたらいいか分かんなくなって、混乱して」
「……すまない。俺も動揺していた。セーザに嫌われるのが嫌だったみたいだ」
 手を差し出せば、セーザはその手に答えた。変わらず冷たい手だ。グイッと引けば、立ち上がるが、すぐにバランスを崩し、倒れ込んできたので慌てて支える。力を加え過ぎたか。
「あはは凄い力だね。やっぱり男の子か」
「何回目だ」
「だってシルは女の子みたいに可愛いから」
「……セーザも女の子みたいな顔してるけどな」
「うっ、まあ、俺もよく女の子に間違われるかな」
 2人して見つめ合う、プッと吹き出して、笑い合っていたら、メドゥーサやロー、他のメイド達もやって来て、「風邪を引きますよ!」「早く中に」なんて大慌てで身体を拭いて暖炉のある部屋に連れて行かれた。
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