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1章 プロローグ(夢か現実か・・・)
イジメの代償は、想像を絶する現実だった・・・
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学校でのイジメが社会的問題として大きく取り上げられるようになったのは、いつ頃からだろうか・・・?
今から15年ほど前、とある中学校でいじめだと思われる生徒の自殺があった。
当時中学3年生の男子生徒はいじめられての自殺だと遺書を残したが、学校側はその因果関係は認められないと、かたくなに事なかれ主義を貫いた。
いじめたと思われる生徒は同学年の3人。しかし3人ともいじめていないと素知らぬフリを貫いた。
他の生徒も口をつぐみ、誰も彼らを正すものはいなかった。
30歳になったその当事者の一人、坂本卓也は今、都内の大きな総合病院で医師として働いている。
専門は整形外科。患者さん思いの評判の良い先生になっているのだから皮肉なものである。
確かに、中学校時代は不良とは言わないまでも、あまり素行の良い生徒ではなかった。先生にかみつくこともしばしばあった。いじめもしていた。
それでも父親が医者ということもあり、高校から一念発起し、医大に入学、現在に至っている。
坂本はその事件のことなど、なかったかのように忘れてしまっている。
直接、殺したわけでもなく、誰にも咎められなかったのだから、ある意味当然かもしれない。罪の意識などまるでない。
ちなみに他の2人とは中学卒業以来、全く連絡を取り合っていない。
何をしているのかも知らない。
坂本の一日は、外来患者の診察から始まる。時には当直もあるので、そんな日は長時間労働が続く。
最も、坂本は一次救急か二次救急担当なので、重篤な患者を診ることはないが・・・
今日はその当直明けでわずかな仮眠で外来患者を診る。夏が近づいてくると、人々の動きも活発になり、怪我人も増える傾向にある。
最初の患者さんはお母さん付き添いの小学校3年生の男子だった。
昨日、自転車で転んで腕を怪我したらしい。手首の辺りが少し腫れている。
坂本はペンでレントゲン写真を指しながら、母親と子供に説明する。
「骨は折れていないようですね。強度の打撲と手首の捻挫ですかね。湿布薬を出しておきますね。痛いようなら痛み止めも出しますが、どうしますか?」
子供を安心させるように2人に向かって優しい口調で言う。
「いえ、大丈夫です」
子供に代わり、母親が答える。
「わかりました。もし、一週間経っても良くならないようでしたら、もう一度受診して下さい。ハイ、いいですよ」
こんな調子で午前中の外来が終わる。午前中といっても終わるのは毎回午後2時を過ぎだ。
それでも、患者さんが安心してくれれば、それが一番嬉しい。
「今日の外来はこれで終了です」
若い看護師が淡々と松本に向かって言う。
「ご苦労様でした」
坂本が看護師にひと声かける。
坂本は看護師からも評判が良い。分け隔てなく平等に応対し、クレーマ的な患者に対しても適切に対応しているからだ。
声を荒げることなど決してしない。
午後は入院患者の診察にまわる。
整形外科なので、入院患者の多くは骨折の手術者が多い。
そうして今日の長い1日の勤務が終わった。
坂本は都内のマンジョンで一人暮らしをしている。恋人はいる。来年あたりに結婚しようかと思っている。
マンションに帰ったのは午後7時過ぎ。30時間振りの帰宅である。
まずは入浴し、夕食は帰りがけに買ったコンビニ弁当と500mlの缶ビール1本で済ませ、そそくさとベッドに入る。
すぐに寝付いた。
変な夢を見た。
『坂本君、久し振り・・・思えている?・・・僕のこと・・・』
それは中学生の子供だった。一見、おとなしそうに見える。
だが、坂本はそれが誰なのか即座には思い出せないでいた。
すると、
『なんだ、死んだヤツのことなんか思い出せねえか・・・』
突然、顔の表情が豹変し、口調も荒くなった。
(死んだヤツ・・・)
この時、ハッと気づいた。
(本条か・・・)
『そうだよ。思い出してくれたか・・・
お前たちにいじめられて自殺した本条さ。
思い出してくれてありがとう・・・
今日はほんのご挨拶・・・
これから長い付き合いになるからな・・・
よろしく頼むぜ・・・
ハハハ・・・』
そう言うと不気味に笑う。遠い記憶の本条とは明らかに違う表情だ。
坂本はハッと夢から覚め、ムクッと上半身を持ち上げた。
時間は夜中の1時を少し過ぎた頃だ。
上半身が汗で濡れている。
(疲れているせいか・・・
嫌なことを思い出してしまった・・・
本条・・・か・・・)
忘れていた記憶が今、蘇った・・・
いじめていたことも・・・
それはこれから始まる、恐怖の前触れでしかなかった・・・
1章 プロローグ(夢か現実か・・・) 完 続く
今から15年ほど前、とある中学校でいじめだと思われる生徒の自殺があった。
当時中学3年生の男子生徒はいじめられての自殺だと遺書を残したが、学校側はその因果関係は認められないと、かたくなに事なかれ主義を貫いた。
いじめたと思われる生徒は同学年の3人。しかし3人ともいじめていないと素知らぬフリを貫いた。
他の生徒も口をつぐみ、誰も彼らを正すものはいなかった。
30歳になったその当事者の一人、坂本卓也は今、都内の大きな総合病院で医師として働いている。
専門は整形外科。患者さん思いの評判の良い先生になっているのだから皮肉なものである。
確かに、中学校時代は不良とは言わないまでも、あまり素行の良い生徒ではなかった。先生にかみつくこともしばしばあった。いじめもしていた。
それでも父親が医者ということもあり、高校から一念発起し、医大に入学、現在に至っている。
坂本はその事件のことなど、なかったかのように忘れてしまっている。
直接、殺したわけでもなく、誰にも咎められなかったのだから、ある意味当然かもしれない。罪の意識などまるでない。
ちなみに他の2人とは中学卒業以来、全く連絡を取り合っていない。
何をしているのかも知らない。
坂本の一日は、外来患者の診察から始まる。時には当直もあるので、そんな日は長時間労働が続く。
最も、坂本は一次救急か二次救急担当なので、重篤な患者を診ることはないが・・・
今日はその当直明けでわずかな仮眠で外来患者を診る。夏が近づいてくると、人々の動きも活発になり、怪我人も増える傾向にある。
最初の患者さんはお母さん付き添いの小学校3年生の男子だった。
昨日、自転車で転んで腕を怪我したらしい。手首の辺りが少し腫れている。
坂本はペンでレントゲン写真を指しながら、母親と子供に説明する。
「骨は折れていないようですね。強度の打撲と手首の捻挫ですかね。湿布薬を出しておきますね。痛いようなら痛み止めも出しますが、どうしますか?」
子供を安心させるように2人に向かって優しい口調で言う。
「いえ、大丈夫です」
子供に代わり、母親が答える。
「わかりました。もし、一週間経っても良くならないようでしたら、もう一度受診して下さい。ハイ、いいですよ」
こんな調子で午前中の外来が終わる。午前中といっても終わるのは毎回午後2時を過ぎだ。
それでも、患者さんが安心してくれれば、それが一番嬉しい。
「今日の外来はこれで終了です」
若い看護師が淡々と松本に向かって言う。
「ご苦労様でした」
坂本が看護師にひと声かける。
坂本は看護師からも評判が良い。分け隔てなく平等に応対し、クレーマ的な患者に対しても適切に対応しているからだ。
声を荒げることなど決してしない。
午後は入院患者の診察にまわる。
整形外科なので、入院患者の多くは骨折の手術者が多い。
そうして今日の長い1日の勤務が終わった。
坂本は都内のマンジョンで一人暮らしをしている。恋人はいる。来年あたりに結婚しようかと思っている。
マンションに帰ったのは午後7時過ぎ。30時間振りの帰宅である。
まずは入浴し、夕食は帰りがけに買ったコンビニ弁当と500mlの缶ビール1本で済ませ、そそくさとベッドに入る。
すぐに寝付いた。
変な夢を見た。
『坂本君、久し振り・・・思えている?・・・僕のこと・・・』
それは中学生の子供だった。一見、おとなしそうに見える。
だが、坂本はそれが誰なのか即座には思い出せないでいた。
すると、
『なんだ、死んだヤツのことなんか思い出せねえか・・・』
突然、顔の表情が豹変し、口調も荒くなった。
(死んだヤツ・・・)
この時、ハッと気づいた。
(本条か・・・)
『そうだよ。思い出してくれたか・・・
お前たちにいじめられて自殺した本条さ。
思い出してくれてありがとう・・・
今日はほんのご挨拶・・・
これから長い付き合いになるからな・・・
よろしく頼むぜ・・・
ハハハ・・・』
そう言うと不気味に笑う。遠い記憶の本条とは明らかに違う表情だ。
坂本はハッと夢から覚め、ムクッと上半身を持ち上げた。
時間は夜中の1時を少し過ぎた頃だ。
上半身が汗で濡れている。
(疲れているせいか・・・
嫌なことを思い出してしまった・・・
本条・・・か・・・)
忘れていた記憶が今、蘇った・・・
いじめていたことも・・・
それはこれから始まる、恐怖の前触れでしかなかった・・・
1章 プロローグ(夢か現実か・・・) 完 続く
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