調子に乗りすぎた男

ゆきもと けい

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7章 正体バレる・・・

調子に乗りすぎた男

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 東京へ戻り、4日ほど過ぎ、インフルエンザが治ったということで会社へ出勤した。
 5日ほど休んだわけだが、自分の仕事は何も滞りなく、処理されていた。
 さらに心配されたような声もかけられなかった。
 それはそれで安心だが悲しい感じもある。

(自分はこの会社に必要な人材なのだろうか・・・)

 と・・・

 例の体験談は、自分の素性を明かしていないのだから、これ以上の発展性はないだろうと、もうテレビでは取り上げられてはいないのだと、観光案内所の菊池さんからメールが届いた。

(一瞬だけか・・・)

 なんとなく寂しい感じがしないわけでもない。

 あの不思議な体験をしたが、あの日以降は全くの普通の日常に戻っている。
 母親も今ではそれを話題にもしない。

 だが、今はSNSの時代・・・

 雄一郎が会社に復帰した数日後、

『不思議な体験をした男の勤めている会社が判明・・・』

 とSNSで話題になり始めた。

 そこには、面白がるコメントや否定的なコメントなど、様々な意見が寄せられている。

 なぜバレたかというと、テレビの取材の際、気にもせず会社の社バッチをしていたからだ。
 とは言え、普通見ただけでは殆ど見えない程度、しかも一流会社のバッジではない。
 強いて言えば、東京辺りの会社だろうと想像がつくくらいだ。

 だが、世の中には物好きなものがいるものだ。
 画像を拡大し、画像の荒い社バッジを鮮明化し、それを元に会社を探し出した人間がいたのだ。
 ただ、自分の氏名まではわからなかったようだが・・・

 雄一郎がその情報を得た翌日、社内は大変な事になった。

 今度は大手の雑誌社や全国放送の民放局から、取材申し込みがきたからだ。

「本人に取材させて欲しい」

 と・・・

 当初、会社側は、誰のなんのことかわからなかったようだが、あの取材の録画を見て、誰かはすぐにわかったようだ。
 そして、何があったのかも・・・

 雄一郎は総務部に呼ばれた。年配の総務部長はデスクに座っている。その前に立って雄一郎は事情を説明する。大企業とは違い、広報課などという部署は存在しない。
 嘘をついて休みを使った理由は、本当の事を言っても、信じてもらえるわけがないと思ったからだと説明した。

 最初は総務部長も、

『面倒な事をしてくれた』

 というような雰囲気を十分に醸し出していたが、それを一変させたのは若い総務課の男子社員だった。
 自分の椅子からおもむろに立ち上がると、部長の方へ向き、

「でも部長、ここは考えどころですよ。前口さんは時の人になるかもしれないんですよ。
我が社を世間に知ってもらえる絶好のチャンスかもしれません・・・」

 椅子に座っている他の社員たちも、確かに・・・というようにうなずく。

 なるほど・・・というように部長もうなずく。

 忘れ物を取りに帰ったのは、今回、新商品として売り出した【冷却ハンディクールファン】に関する情報が必要だったからだ・・・ということにした。

 こうして、雄一郎は取材を受けることになった。



  7章 正体バレる・・・ 完 続く
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