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第一章 少年は旅立つ
4.少年の苦悩4
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ぐるぐると考えていた。
ドリーに言われた言葉やアンのあの目。
冒険者の態度。
里の人たちの視線。
そういうものから逃れるように走り出して、林に入った。
夢中になって走っていたら、いつの間にかいつも通る林道じゃなくて獣道に入っていた。
あたりを見渡したけれどなにも目印になるようなものはない。
伸び放題の木々たちが僕の視界を奪っていた。
高く伸びた枝と青々とした葉は、まだ日が高かったはずなのにあたりを薄暗く隠している。
里林に入ったのは確かなはずなので、あまり人の手が入っていない森に来てしまったらしい。
そこに一陣の風が吹く。
ごうごうと唸るそれは、僕の体に打ち付けるように過ぎていった。
ぞくり、と体を震える。
今のは本当に風だったのだろうか。
とにかく、なんでもいい。
早くわかる場所に戻ろうと思った。
幸運なことに来た方向はわかる。
だから、僕は戻るように進むことにした。
ドリーやアンと顔を合わせるのはいやだけど、このまま迷子になるよりずっとましだから。
里に戻って、父さんの言いつけどおり宿屋で待たせてもらおう。
来た方向はわかっていたはずだった。
それなのにいくら歩いても道はおろか里林にすらたどり着かない。
それどころかどんどんと緑が深く、暗くなっていった。
「完全に迷った……」
日も落ちかけて薄暗くなり始めた森で独りつぶやく。
どうにも方角を間違えて森に入っていたらしい。
途中見つけた猟師達が使う目印も見つからなくなり、それを探してさらに迷うという始末。
あっという間に暗くなった森は、凍えるような冷たさが立ち込めて、そこかしこでよくわからない音がして、今にも何かに食い殺されそうで。
そう考えていた矢先に声が聞こえた。
「ウィダ!いるかー!?」
ドリーの声だ。
「ウィダー!返事してー!」
「おーい!」
アンと、あの冒険者もいるらしい。
何がどうなっているのかわからないけど、どうにも僕を探しているらしい。
なので僕は声のするほうに走りながら返事をした。
「ドリー!アン!みんな!こっちだよ!」
「ウェダ!よかった……」
すぐにドリーが走ってきて、僕の顔を見て泣きそうな声をあげた。
続いてアンと冒険者が一緒に来た。
アンは恐る恐るといった様子で、それでも僕の顔を見てドリーと同じ反応をする。
冒険者はそろりそろりと、周囲を軽快していた。
冒険者の足運びにはどこか見覚えがあったけど、今はそれよりドリーたちのほうが気にかかった。
「どうしてこんなところに」
「バカ!こっちの台詞だ!」
息切れしたドリーから叱責を受ける。
「ウィダが泣きながら走っていったって人から聞いて……」
そう言い出したのはアンだった。
どうやら僕が俯きながら走って林に入るところを冒険者の仲間の人が見て、なにかあったのかとアンのところの宿屋に行ったらしい。
ドリーもアンも、それを聞いて僕がいなくなると思って追いかけてきたのだという。
宿屋の女将さん――アンのお母さんが反対したそうだが、僕たちに話をしてくれていた冒険者が護衛を買ってでてくれたので、里林に残る僕の足跡を頼りに来たらしい。
泣いてなんていない、と訂正しようとするとドリーが割り込んできた。
「ウィダ、ごめん!ひどいこといって……」
ドリーは、まっすぐに僕の目を見て言った。
その目には怯えも憐れみも怒りもなくて、ただ僕の許しだけを待っていた。
すっと胸が落ち着いて、目頭が熱くなる。
「ドリー……僕こそごめんよ、ドリー。アンも。心配かけて、ごめん」
「心配するわよ。だって、友達だもん」
アンは辛坊たまらずと言った様子で泣き出した。
僕とドリーはそんなアンを見てつられて泣きそうになりながら、二人でアンの背中を撫でた。
ドリーに言われた言葉やアンのあの目。
冒険者の態度。
里の人たちの視線。
そういうものから逃れるように走り出して、林に入った。
夢中になって走っていたら、いつの間にかいつも通る林道じゃなくて獣道に入っていた。
あたりを見渡したけれどなにも目印になるようなものはない。
伸び放題の木々たちが僕の視界を奪っていた。
高く伸びた枝と青々とした葉は、まだ日が高かったはずなのにあたりを薄暗く隠している。
里林に入ったのは確かなはずなので、あまり人の手が入っていない森に来てしまったらしい。
そこに一陣の風が吹く。
ごうごうと唸るそれは、僕の体に打ち付けるように過ぎていった。
ぞくり、と体を震える。
今のは本当に風だったのだろうか。
とにかく、なんでもいい。
早くわかる場所に戻ろうと思った。
幸運なことに来た方向はわかる。
だから、僕は戻るように進むことにした。
ドリーやアンと顔を合わせるのはいやだけど、このまま迷子になるよりずっとましだから。
里に戻って、父さんの言いつけどおり宿屋で待たせてもらおう。
来た方向はわかっていたはずだった。
それなのにいくら歩いても道はおろか里林にすらたどり着かない。
それどころかどんどんと緑が深く、暗くなっていった。
「完全に迷った……」
日も落ちかけて薄暗くなり始めた森で独りつぶやく。
どうにも方角を間違えて森に入っていたらしい。
途中見つけた猟師達が使う目印も見つからなくなり、それを探してさらに迷うという始末。
あっという間に暗くなった森は、凍えるような冷たさが立ち込めて、そこかしこでよくわからない音がして、今にも何かに食い殺されそうで。
そう考えていた矢先に声が聞こえた。
「ウィダ!いるかー!?」
ドリーの声だ。
「ウィダー!返事してー!」
「おーい!」
アンと、あの冒険者もいるらしい。
何がどうなっているのかわからないけど、どうにも僕を探しているらしい。
なので僕は声のするほうに走りながら返事をした。
「ドリー!アン!みんな!こっちだよ!」
「ウェダ!よかった……」
すぐにドリーが走ってきて、僕の顔を見て泣きそうな声をあげた。
続いてアンと冒険者が一緒に来た。
アンは恐る恐るといった様子で、それでも僕の顔を見てドリーと同じ反応をする。
冒険者はそろりそろりと、周囲を軽快していた。
冒険者の足運びにはどこか見覚えがあったけど、今はそれよりドリーたちのほうが気にかかった。
「どうしてこんなところに」
「バカ!こっちの台詞だ!」
息切れしたドリーから叱責を受ける。
「ウィダが泣きながら走っていったって人から聞いて……」
そう言い出したのはアンだった。
どうやら僕が俯きながら走って林に入るところを冒険者の仲間の人が見て、なにかあったのかとアンのところの宿屋に行ったらしい。
ドリーもアンも、それを聞いて僕がいなくなると思って追いかけてきたのだという。
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泣いてなんていない、と訂正しようとするとドリーが割り込んできた。
「ウィダ、ごめん!ひどいこといって……」
ドリーは、まっすぐに僕の目を見て言った。
その目には怯えも憐れみも怒りもなくて、ただ僕の許しだけを待っていた。
すっと胸が落ち着いて、目頭が熱くなる。
「ドリー……僕こそごめんよ、ドリー。アンも。心配かけて、ごめん」
「心配するわよ。だって、友達だもん」
アンは辛坊たまらずと言った様子で泣き出した。
僕とドリーはそんなアンを見てつられて泣きそうになりながら、二人でアンの背中を撫でた。
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