15 / 38
第一章 少年は旅立つ
幕間 冒険者の意地
しおりを挟む三人、やられた。
子どもたちを護衛したやつは、犠牲になって三人を逃した。
逃げてきた三人のうち一人を救おうと、一人は盾になった。
三人のうち二人を、一人が逃した。
仲間を守ろうと攻撃に集中した一人は、その隙をついて噛みつかれた。
そして俺は、三匹を相手におそらく死ぬ。
回らない頭で考える。
これでも代々狩人の家の生まれで、小さな頃から親父や祖父に鍛えられた。
三本打ちだってできる。
風を読むことだって、魔法で操ることだってできる。
離れた的にだって寸分狂いなく当てることができる。
今だって、奴らの目を貫いてやった。
でも、勉強は苦手だ。
簡単な計算くらいしかできないし、読み書きだって最低限だ。
それでもわかる。
俺たちは五人しかいなかった。
最初に一人倒れ、もう一人は子どもを連れて村に向かった。
敵は何匹いる?
少なくとも五匹だ。
俺は今、一人だ。
助けたのは何人だ?
最初に連れられていった二人はきっと無事だろう。
今さっき逃した一人も、無事であってほしい。
なんだ。
簡単な計算じゃないか。
守らなきゃいけないのが三人、俺たちは五人、敵は五匹。
三人とも守れたんなら、俺たちの勝ちだ。
自分の考えに自嘲する。
何が勝ちだ。
死んでいる。
死んでいるんだ。
死んだら帰ってこないんだ。
だから、殺す。
差し違えてでも、こいつらを、殺す。
ちくしょう。
俺の仲間を食いやがって。
あいつらはいい奴だった。
いい奴だったんだ!
だから、俺がここで、こいつらを殺す。
「風よ!我が矢をなぞり、切り裂け!」
わかってる。
勝てないのはわかっている。
ちくしょう。
怖い。
死ぬのが怖い。
あいつらのように、貪り食われるのが、怖い。
のうりからあの魔物の笑みが消えない。
あいつは確かに笑っていた。
俺たちを嘲笑っていた。
効かぬ攻撃を受け、足止めして――もしかしたら足止めすらする必要がなくて、俺たちで遊んでいたのかもしれない。
大型の肉食獣が時折そうするように。
弱肉強食とはこのことだ。
飛びかかってくる魔物を転がるように避ける。
避けた先でまた別の魔物が口を開く。
そいつの口内に矢を撃ち込んでやる。
怯んだ隙に体制を立て直しながら、矢筒に手を伸ばした。
そこで、手首をぞぶりと噛まれる。
ごきごきと骨が砕かれる。
このままでは食われると、力任せに引き抜くと、それはあっさりと抜けた。
俺の左手首から先を、魔物の口内に置き去りにして。
咄嗟に反対の手で、ナイフを抜く。
所詮、解体用のナイフだ。
こんなもので、何ができる。
痛い。
熱い。
怖い。
ちくしょう。
ちくしょう。
ちくしょう。
「ちくしょおおおおおおお」
目の前には三体の魔物。
あたりでは咀嚼音が響く。
「ああ……母さん……」
やっぱり、こういうときは母親を求めるもんなんだな。
その時だった。
風が、一閃。
二閃。
三閃。
四。
五。
六。
数えきれないほどの風の刃。
嵐のように、荒れ狂う。
「ぐるるううううあああああ!」
目の前の三体の魔物は叫び声を上げる。
そして血飛沫をあげて崩れ落ちる。
木陰から、ざくざくと足音を立てて誰かが近づいて来る。
仲間たちを貪り食っていた魔物たちが、警戒の声をあげる。
月明かりに照らされ見えたその姿。
まず目に入ったのは無造作に持たれた装飾の派手な剣。
次に、簡素などこにでもあるチュニックとズボン。
男にしては少し長めのその髪は、漆黒の闇の如く黒々としている。
そして、煌々と輝く首飾り。
その男は、魔王を倒した、勇気ある者。
「ゆ、勇者、ジェダ・イスカリオテ……」
その人だった。
勇者はため息をするように息を吐くと言った。
「息子は、ウェダはどこへ行った?」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる