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第一章 少年は旅立つ
24.正気と狂気7
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レヴィさんの目は氷のように冷ややかだった。
ただ、その奥で炎が燃え盛っているのがわかった。
怒っている。
なににだかはわからないけれど、レヴィさんは怒っていた。
「……ふう。いいかい、ウェダ」
ひとつ大きくため息を吐くとレヴィさんは言葉を続ける。
「その話はまた今度詳しくしよう。私はとりあえずジェダをぶん殴ろう」
今度、なんてあるのだろうか。
もう為す術もななく、硬直状態の中でひとり、またひとりと人が倒れていく。
「大丈夫。そろそろあっちも片付いたろう」
そう言って、レヴィさんは空を見上げた。
「魔物の種類はオオカミ。オオカミは群れで行動し、集団の長を作る性質がある。長には番でなる。一夫一妻制で群れの規模はだいたい十から二十組。子どもはだいたいイヌと同じと考えていいだろう。多くても五から七匹。魔物化しているとはいえ、サイズと戦い方にばらつきがある。我々が遭遇したのは若い個体を中心としたグループ。つまり狩りの練習をしている奴らだ。では問題なのは一番強い個体はどこにいるか。少なくとも私たちは遭遇していない。これだけの数を屠っているのに、出てこない」
レヴィさんはつらつらと語る。
そして、空を指さした。
「足止めを食らっているからだ。そしてそろそろそれも終わる」
レヴィさんの指が示した方向を見る。
赤々と燃える民家の先。
月明かりに照らされる空。
満月の真下。
その方向は、僕が里に入った方向だった。
「あっ」
思わず声が漏れる。
見えた。
夜空を切り裂く、風の刃。
空間が歪むような、ゆらぎ。
小さな竜巻。
僕らが今いる場所からも風は巻き込まれるようにそこに向かって吹いている。
「もう終わる」
竜巻が消える。
ゆらぎは見えなくなった。
そして風が止んだ。
「ウェダ、おいで」
立ち上がったレヴィさんは僕を抱き寄せるとローブに包んでくれた。
なすがまま、それに包まり、僕はなんとなくレヴィさんの腕にしがみついた。
「これで、みんな助かる」
瞬間。
暴風が拭き上げる。
周りの人々は、その暴風に立ちすくみ、しゃがみ込み、身動きが取れなくなる。
荒れ狂う嵐のように風は人々の隙間を縫い上げるかの如く拭き上げる。
薄目を開けて見ていた僕の目に映るのは、その人々を狙って襲いかかる体勢を取った魔物たちが次々と切り裂かれ、血飛沫をあげながらばらばらに解体されていく様子だった。
あたりから魔物の断末魔が聞こえ、その声はひとつ、またひとつと増えてやがて消えていった。
しんと静まり返り、ただ風の吹き荒ぶ音だけが残った。
やがてその風の音も止み、静寂だけ包む。
なにが起こったかわからない人々は少しづつ正気を取り戻し、現状を目の当たりにして驚きと戸惑いの声をあげる。
そして、その人はそこにいた。
「遅いぞ」
「間に合ったさ」
表情ひとつ変えずにそう答えるのは、父だった。
勇者、ジェダ・イスカリオテがそこにあった。
レヴィさんは、悪びれない父に対して舌打ちをしていた。
ただ、その奥で炎が燃え盛っているのがわかった。
怒っている。
なににだかはわからないけれど、レヴィさんは怒っていた。
「……ふう。いいかい、ウェダ」
ひとつ大きくため息を吐くとレヴィさんは言葉を続ける。
「その話はまた今度詳しくしよう。私はとりあえずジェダをぶん殴ろう」
今度、なんてあるのだろうか。
もう為す術もななく、硬直状態の中でひとり、またひとりと人が倒れていく。
「大丈夫。そろそろあっちも片付いたろう」
そう言って、レヴィさんは空を見上げた。
「魔物の種類はオオカミ。オオカミは群れで行動し、集団の長を作る性質がある。長には番でなる。一夫一妻制で群れの規模はだいたい十から二十組。子どもはだいたいイヌと同じと考えていいだろう。多くても五から七匹。魔物化しているとはいえ、サイズと戦い方にばらつきがある。我々が遭遇したのは若い個体を中心としたグループ。つまり狩りの練習をしている奴らだ。では問題なのは一番強い個体はどこにいるか。少なくとも私たちは遭遇していない。これだけの数を屠っているのに、出てこない」
レヴィさんはつらつらと語る。
そして、空を指さした。
「足止めを食らっているからだ。そしてそろそろそれも終わる」
レヴィさんの指が示した方向を見る。
赤々と燃える民家の先。
月明かりに照らされる空。
満月の真下。
その方向は、僕が里に入った方向だった。
「あっ」
思わず声が漏れる。
見えた。
夜空を切り裂く、風の刃。
空間が歪むような、ゆらぎ。
小さな竜巻。
僕らが今いる場所からも風は巻き込まれるようにそこに向かって吹いている。
「もう終わる」
竜巻が消える。
ゆらぎは見えなくなった。
そして風が止んだ。
「ウェダ、おいで」
立ち上がったレヴィさんは僕を抱き寄せるとローブに包んでくれた。
なすがまま、それに包まり、僕はなんとなくレヴィさんの腕にしがみついた。
「これで、みんな助かる」
瞬間。
暴風が拭き上げる。
周りの人々は、その暴風に立ちすくみ、しゃがみ込み、身動きが取れなくなる。
荒れ狂う嵐のように風は人々の隙間を縫い上げるかの如く拭き上げる。
薄目を開けて見ていた僕の目に映るのは、その人々を狙って襲いかかる体勢を取った魔物たちが次々と切り裂かれ、血飛沫をあげながらばらばらに解体されていく様子だった。
あたりから魔物の断末魔が聞こえ、その声はひとつ、またひとつと増えてやがて消えていった。
しんと静まり返り、ただ風の吹き荒ぶ音だけが残った。
やがてその風の音も止み、静寂だけ包む。
なにが起こったかわからない人々は少しづつ正気を取り戻し、現状を目の当たりにして驚きと戸惑いの声をあげる。
そして、その人はそこにいた。
「遅いぞ」
「間に合ったさ」
表情ひとつ変えずにそう答えるのは、父だった。
勇者、ジェダ・イスカリオテがそこにあった。
レヴィさんは、悪びれない父に対して舌打ちをしていた。
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