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第一章
はじめてのお使い 2
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「もちろん、それなりの対策はしてやるから、安心しろ」
と言って、奥の部屋に下がった叔父が持ってきたのは、幅広で大型の剣と例の全身鎧だった。
「いやいや、叔父さんは俺になにを期待してるの?」
試しに装着してみると、一歩も動けなかった。
辛うじて持ち上げた剣も、伸びきった肘が曲がらなかった。
総重量は、俺の体重よりも確実に重い。
「……冗談だ」
言葉通りとは思えないような切ない表情で、叔父は再び奥の部屋に下がっていた。
装備一式をひょいと片手で担ぎ上げていったのが驚嘆だった。
先ほどよりは少し時間をかけてから、叔父が戻ってきた。
今度は手ぶらに見えたがそうではない。いくつかのペンダントを握っており、それを差し出してきた。
「こっちが身体強化の魔石で、こっちの赤いほうが炎の魔法石。これなら大丈夫だろ」
(魔法きたー!)
テンションがにわかに上がる。
炎の魔法となれば、それすなわち攻撃魔法。世のあらゆる夢見がちな青少年が抱く憧れでもある。
主立ったゲームでも真っ先に覚える魔法だけに、これぞ魔法の世界の登竜門、これから輝かしい魔法人生?の第一歩と心逸っても無理ないというものだ。
ただし、それを澄まし顔のままでおくびにも出さないのは、仮にも成人した男性だけに、一応ながら世間体も考えてのことである。
「ちょっと実演な」
勝手口から連れ出されて、庭先に移動した。
最初に魔石と呼ばれた黒っぽい鉱石のペンダントを首に掛けられ、叔父に言われるまま全力疾走してみる。
たしかに身体が軽い――気がする。
体感的に、100メートル走なら1秒ほどは速くなっているのではあるまいか。
さすがに運動神経を2倍にも3倍にも、というわけではなかったが、競技選手からすると信じられないほどの能力向上だろう。
それより目を見張るのは、スタミナのほうだった。
調子に乗って全力疾走を3本4本と続けていたのだが、息切れや疲労感がない。
これは身に着けているだけで効果があるそうで、常時発動の使用期限なし、という優れものだった。
キャッチフレーズは『旅のお供に』らしい。
ちなみに、叔父が普段からこれを使っているかの問いには、答えは『ノー』だった。
それであれとは、あらためて恐ろしい叔父である。
そして、お待ちかねの炎の魔法石!
手本を見せると言って、叔父は自分の首にペンダントを下げた。
両足を肩幅に広げ、胸を張る。
真っ直ぐに正面を見つめる表情が、真面目過ぎて怖いほどだった。
おもむろに両手を突き出し――
「炎よ! 深永なる太古より紡がれし、死と再生を司る炎よ! 集い給え、寄り添い給え! 我は乞い願う、大いなる力がこの手にあらんことを!」
大声で叫び、なんとかライダーの変身ポーズのように身構える。
「顕現せよ! ~~~~怒れる炎女神の一撃!!」
”顕現せよ”の後でたっぷりとタメを作った後、くるりと一回転して手を振り下ろすと、その前方に小規模な炎の壁が瞬間現われて消えた。
(えええ~~っ!?)
炎は出た。
思ったほどではない威力だったが、たしかに魔法だ。
摂理を捻じ曲げる脅威の御技。驚くべきことだ。
だが、問題はそこではない。
なんというか、そう……人目を憚らずにというには難度が高すぎる。
「ふ~~~。どうだ?」
やり遂げた感満載に微笑む叔父に、問わずにはいられなかった。
「すごいけど……その呪文みたいの唱えないとダメなの?」
「もちろんだ、ポーズも込みでだ!」
「どうしても? ど~~しても?」
「どうしてもだ! はっはっ!」
豪快に笑う叔父に、俺は諦めた。
試してみたら、同じように炎が出せた。
しかし、恥ずかし過ぎて顔からも炎が出る勢いだった。
与えるダメージと受ける精神的ダメージ、どちらが大きいかは微妙だった。
何回か試してみてから炎の魔法石を確認すると、これもまた最初の青紫の鉱石と同じように、中の赤っぽい液体が多少減っていた。
それでも、後十数回分はありそうだ。
「上等、上等! これで、獣程度なら出くわしても問題ないな! ひとつだけ欲を言えば、ポーズを取ったときの腕の角度を、もう少し上げたいところだ」
体力的な原因以外で汗だくになった俺に、叔父がタオルを放ってきた。
辛い、21にもなって中二をやるのは辛い。
「それでお待ちかねの散歩のコースだが、ここから北に2時間ほど行ったところに人間の街がある。往復4時間なら、観光しても日の高いうちにゆっくりと帰ってこれるだろ?」
叔父が地面に木の枝で地図を描く。
簡雑に書いているように見えるが、やたらと精密でわかりやすい。
なるほど、距離こそそれなりにありそうだが、道はほぼ真っ直ぐの平原の縦断で、迷う心配もなさそうだ。
人里に近いということもあって、野盗や外敵の心配もほとんどないらしい。
魔石の力もあれば、体力的な問題もないだろう。
「あと、ついでに買い物と、ある手紙を届けてくれると助かる」
さらっと流した叔父の台詞に、思わずじと目になった。
「ついで? もしかしてそっちがメイン?」
「そうとも言うな。はっはっ!」
異世界4日目、『異世界ではじめてのお使い』イベントが開始された。
と言って、奥の部屋に下がった叔父が持ってきたのは、幅広で大型の剣と例の全身鎧だった。
「いやいや、叔父さんは俺になにを期待してるの?」
試しに装着してみると、一歩も動けなかった。
辛うじて持ち上げた剣も、伸びきった肘が曲がらなかった。
総重量は、俺の体重よりも確実に重い。
「……冗談だ」
言葉通りとは思えないような切ない表情で、叔父は再び奥の部屋に下がっていた。
装備一式をひょいと片手で担ぎ上げていったのが驚嘆だった。
先ほどよりは少し時間をかけてから、叔父が戻ってきた。
今度は手ぶらに見えたがそうではない。いくつかのペンダントを握っており、それを差し出してきた。
「こっちが身体強化の魔石で、こっちの赤いほうが炎の魔法石。これなら大丈夫だろ」
(魔法きたー!)
テンションがにわかに上がる。
炎の魔法となれば、それすなわち攻撃魔法。世のあらゆる夢見がちな青少年が抱く憧れでもある。
主立ったゲームでも真っ先に覚える魔法だけに、これぞ魔法の世界の登竜門、これから輝かしい魔法人生?の第一歩と心逸っても無理ないというものだ。
ただし、それを澄まし顔のままでおくびにも出さないのは、仮にも成人した男性だけに、一応ながら世間体も考えてのことである。
「ちょっと実演な」
勝手口から連れ出されて、庭先に移動した。
最初に魔石と呼ばれた黒っぽい鉱石のペンダントを首に掛けられ、叔父に言われるまま全力疾走してみる。
たしかに身体が軽い――気がする。
体感的に、100メートル走なら1秒ほどは速くなっているのではあるまいか。
さすがに運動神経を2倍にも3倍にも、というわけではなかったが、競技選手からすると信じられないほどの能力向上だろう。
それより目を見張るのは、スタミナのほうだった。
調子に乗って全力疾走を3本4本と続けていたのだが、息切れや疲労感がない。
これは身に着けているだけで効果があるそうで、常時発動の使用期限なし、という優れものだった。
キャッチフレーズは『旅のお供に』らしい。
ちなみに、叔父が普段からこれを使っているかの問いには、答えは『ノー』だった。
それであれとは、あらためて恐ろしい叔父である。
そして、お待ちかねの炎の魔法石!
手本を見せると言って、叔父は自分の首にペンダントを下げた。
両足を肩幅に広げ、胸を張る。
真っ直ぐに正面を見つめる表情が、真面目過ぎて怖いほどだった。
おもむろに両手を突き出し――
「炎よ! 深永なる太古より紡がれし、死と再生を司る炎よ! 集い給え、寄り添い給え! 我は乞い願う、大いなる力がこの手にあらんことを!」
大声で叫び、なんとかライダーの変身ポーズのように身構える。
「顕現せよ! ~~~~怒れる炎女神の一撃!!」
”顕現せよ”の後でたっぷりとタメを作った後、くるりと一回転して手を振り下ろすと、その前方に小規模な炎の壁が瞬間現われて消えた。
(えええ~~っ!?)
炎は出た。
思ったほどではない威力だったが、たしかに魔法だ。
摂理を捻じ曲げる脅威の御技。驚くべきことだ。
だが、問題はそこではない。
なんというか、そう……人目を憚らずにというには難度が高すぎる。
「ふ~~~。どうだ?」
やり遂げた感満載に微笑む叔父に、問わずにはいられなかった。
「すごいけど……その呪文みたいの唱えないとダメなの?」
「もちろんだ、ポーズも込みでだ!」
「どうしても? ど~~しても?」
「どうしてもだ! はっはっ!」
豪快に笑う叔父に、俺は諦めた。
試してみたら、同じように炎が出せた。
しかし、恥ずかし過ぎて顔からも炎が出る勢いだった。
与えるダメージと受ける精神的ダメージ、どちらが大きいかは微妙だった。
何回か試してみてから炎の魔法石を確認すると、これもまた最初の青紫の鉱石と同じように、中の赤っぽい液体が多少減っていた。
それでも、後十数回分はありそうだ。
「上等、上等! これで、獣程度なら出くわしても問題ないな! ひとつだけ欲を言えば、ポーズを取ったときの腕の角度を、もう少し上げたいところだ」
体力的な原因以外で汗だくになった俺に、叔父がタオルを放ってきた。
辛い、21にもなって中二をやるのは辛い。
「それでお待ちかねの散歩のコースだが、ここから北に2時間ほど行ったところに人間の街がある。往復4時間なら、観光しても日の高いうちにゆっくりと帰ってこれるだろ?」
叔父が地面に木の枝で地図を描く。
簡雑に書いているように見えるが、やたらと精密でわかりやすい。
なるほど、距離こそそれなりにありそうだが、道はほぼ真っ直ぐの平原の縦断で、迷う心配もなさそうだ。
人里に近いということもあって、野盗や外敵の心配もほとんどないらしい。
魔石の力もあれば、体力的な問題もないだろう。
「あと、ついでに買い物と、ある手紙を届けてくれると助かる」
さらっと流した叔父の台詞に、思わずじと目になった。
「ついで? もしかしてそっちがメイン?」
「そうとも言うな。はっはっ!」
異世界4日目、『異世界ではじめてのお使い』イベントが開始された。
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