異世界の叔父のところに就職します

まはぷる

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第四章

出会えないふたり? 2

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 まずは、街に点在する臨時の避難所を当たってみることにした。

 家屋の修繕や、健康上の理由から、昨日から引き続き一時避難している住民が集まっている場所だ。
 ここなら水や食料も出るし、住む場所のない春香が身を寄せている可能性は高い。
 なにより人数が集まっているため、まとめて確認しやすいのがある。

 そう思って、午前中いっぱいと午後も半分を費やして、数十ヶ所はある避難所を駆けずり回り――

 で、結果は惨敗。
 妹のいの字も見つけることは出来なかった。

 混乱の最中だったこともあり、家族とはぐれた者、逃げ遅れた者、迷子なども数多くいたらしいので、行方不明や身元不明の掲示板がある役所や大きな集会所も訪れてみたが、やはり手がかりはなし。
 よくよく考えると、街に身寄りのない(と思っているだろう)妹が、掲示板を当てにする理由がないことに、行ってみてから気がついた。
 俺自身、自覚している以上に焦っているらしかった。

 残る手立てはローラー作戦、よそ者の春香でも身を寄せられそうな場所を一軒一軒訪問して回るしかない。
 ただし、春香がどこかにご厄介になっているとは限らないだけに、最悪は街中の路地裏、空き家、橋の下など、雨露をしのげる場所すべてを捜索するしかないだろう。

 先は長い。それでもなにもできずにやきもきして、店で待つだけだったときに比べると遥かにマシだ。
 叔父も言っていた通り、『妹のお迎えは兄貴の務め』なんだから。

 俺は走り詰めで汗だくになった服を着替えるため、いったん店に戻ることにした。
 服の替えも置いてあるし、店のすぐ向かいにはリコエッタのパン屋がある。

 昼もとっくに過ぎたどころか夕刻近くなった今になって、今日は朝からなにも食べていないことを思い出した。
 まだ暗いうちから家を出発したため、朝飯はおろかいつものリィズさん特製の弁当もない。気が逸っても腹は減る。

 シラキ屋の前に戻ると、ちょうどナツメと出くわした。
 予想通りに朝一から強制作業に駆り出されていたらしく、疲れ果てていつもの元気はない。
 それでもウチの店に来るあたり、まだまだ余力はあるといえるのだろうか。

「お~、あんちゃ~ん! ナイスタイミングっすよ~。あんちゃんとこの珈琲飲まないと、どうも落ち着かなくって。ダメ元で来てみてよかったっす~」

 カフェイン中毒か、インスタントなのに。あとウチは別に、無償で珈琲を提供する店じゃないんだが。

 まあ、ツッコミたいことはいろいろあったが、相手がナツメなのと俺も疲れていたので、大人しくナツメを店内に招くことにした。

 ナツメはふらふらとした足取りながらも勝手知ったるなんとやらで、店の奥に珈琲を求めて消えていった。

「あ、開いてるよ~?」
「お昼に来たときには閉まってたのにね」
「「お邪魔しま~す」」

 入り口のほうから声がしたと思うと、ペシルとパニムの双子がやってきた。

「ああ、ふたりとも! 昨日は大丈夫だった?」

 大事ないのは昨日人づてに聞いていたが、元気なふたりを間近に見れて、嬉しくなって聞いてみた。

「ペシルが逃げるときにこけちゃって怪我した」
「うん、ちょっぴり擦りむいた」

 見ると、たしかに双子の片割れが、膝小僧に絆創膏を貼っている。
 痛がる素振りはないので、ほんの軽傷だろう。

 うん、絆創膏を貼ってるほうがペシルね。
 しばらくは見分けがつきそうだ。

「宿屋のほうは無事だった?」

「お店は無事」
「無事だけど、開けてないから」
「「ボクたち暇なの」」

 相変わらず、息ぴったりだ。

 現在『朝霧の宿屋』は、一時的に怪我人の保護施設として貸し出されていて、開店休業中とのことらしい。

「怪我人のおじさんたちから聞いた」
「警備のおじさんたちも言ってた、アキトがすごかったって」

 双子から飛び出た意外な言葉に、思わず目を丸くしてしまう。

 思い返せば、たしかに昨日は人生かつてないほど頑張った自覚はある。
 詳細な記憶は薄いが、とにかくアドレナリンとドーパミンがどぼどぼ出ていたほどには奮戦した。

「でもまあ、最後には勇者に救ってもらったんだしさ。はは」

 最終的には叔父の登場ですべて持っていかれた形だが、俺はそれでよかったと思っている。
 下手に騒がれて注目を浴びるのはよろしくない。特に勇者の甥で、異世界人だということは極秘にしないと。

 ただそれでも、街の人やあの場で命がけで共闘した人たちから、頑張りを評価してもらえるのは素直に嬉しい。
 感謝してもらえるのは慣れていないので、照れてしまいそうだ。
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