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第四章
出会えないふたり? 3
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「その話は、わたしも詳しく聞きたい」
ドアのベルの音とともに登場したのは、その共闘した人のひとり、デジーだった。
いつものとんがり帽にローブ姿。昨日のぼろぼろになってしまった格好ではなく、服装だけは新品に着替えられてはいたが、手に巻いた包帯や頬に残る真新しい傷跡が痛々しい。
「デジー、もう起きて大丈夫なの?」
「ん。さっきまで寝てたから、もう平気。でも、途中で気絶したから、昨日の最後のほうの記憶が曖昧。勇者が現れて、すごい魔法を使ったと聞いた。その辺りをぜひ詳しく知りたい。切に」
鼻息荒く、病み上がりを感じさせない勢いで詰め寄ってくる。
魔法というのは、きっとラスクラウドゥさんの魔法のことだろうが、あの状況下では勇者のしわざだと情報が錯綜しても無理はない。
すごい魔法と聞いて、居ても立ってもいられずに飛び起きてくるのがデジーらしい。
「こんちわ~。あら、なんか大勢?」
リコエッタまでやってきて、結局いつものメンバーが全員集合してしまった。
なんにせよ、お互いに無事でなによりだ。
「もしかして、ちょうどよかったかもしれないね。よかったら、これどーぞ」
リコエッタは抱えていた大きめのバスケットを重そうにテーブルに置いた。
中身は大量のパンで、焼いてからそれほど時間が経っていないのか、まだほんのりと温かく、いい匂いが立ち昇っていた。
「ウチの店から炊き出しで用意したんだけど、焼きすぎて余っちゃって。今、近所にお裾分けしてるとこなの」
「あ、それ、すごくありがたい!」
美味しそうな匂いがしている時点で、俺の空腹も限界に達した。
皆で貪るようにパンを手に取って齧っている。
あのデジーすらも、一心不乱にパンを頬張っていた。
彼女は特に昨日からなにも食べてないはずなので、無理ないだろう。
「たはは。いや~、なんか壮絶だったねえ。ま、そこまで喜んでもらえると、パン屋冥利に尽きるけど」
差し入れてくれたリコエッタも呆れ気味だった。
瞬く間にパンを食べ尽くしたところで、ようやく一息ついた。
まだ、やるべきことは残っている。
「俺、またそろそろ出ないと」
「慌しいけど、どうしたの? 急ぎの用?」
どこまで話していいものか、としばし考えて、
「ちょっと野暮用ってとこかな。人捜し」
とだけ答えておいた。
「あたしも手が空いたところだし、手伝おうか?」
「いや、いいよ。皆それぞれ忙しくて、疲れているだろうし。店は開けたままにしておくから、くつろいでいってよ。珈琲だったら、ナツメに言ってね。任せた、ナツメ」
「はいさ~」
ナツメは言われるまでもなく、食後の珈琲ブレイクに入っていた。
「あ、だったらアキト! もうひとり、知り合いの子を呼んでもいいかな? 珈琲に興味持ってたみたいで、別のところにパンを配りに行ってるから、もう少ししたら戻ると思うから」
「もちろん、いいよ。じゃあ、俺はもう出るから。あとよろしく!」
返事もそこそこに、店を出ることにした。
さて、腹ごなしも終わったところで妹捜しの再開だ。日が暮れる前に、できるだけのことはやっておきたい。
叔父から春香と出くわした場所を、もっと詳しく聞いていればよかった。
まずは人通りの多い、大通り付近を中心にあたってみたほうがいいかもしれない。
小走りで大通りの方向へと駆け出したとき、背にした店の入り口のほうからベルの音が聞こえた。
先ほどリコエッタの言っていた知り合いの子とやらが来たらしい。
異世界での貴重な新しい友人になれるかもしれないので、できれば出迎えたかったが――状況が状況なだけに、今回は諦めるしかない。
「あ」
10メートルほど走ってから、すぐにUターンする羽目になる。
(そうだった! 店に着替えに帰ったんだった、俺!)
本来の店に戻った目的を思い出した。
度重なる来客と食欲が満たされたことで、きれいさっぱりと忘れてしまっていた。
出かけた途端に忘れ物をして戻るのは若干気恥ずかしくもあったが、汗だくのまま放っておくのも生理的に我慢できない。
汗臭く汚い身なりで方々を訪ね回るのも失礼だろう。
ただでも今日は長丁場になりそうだけに、余裕がある内に備えておいたほうがいい。
「いやー、忘れ物しちゃって」
店内に駆け込むと、たった今入店したばかりのリコエッタの知り合いとやらが振り向いて、至近距離で目が合った。
黒髪で黒目の小柄な少女。
きれいにカットされた髪、気の強そうな眉、その下で驚きに見開かれた大きな目。
小さな鼻、ぽかーんと開けられた口。
どこか懐かしい雰囲気、見覚えがある容貌。
――というか。
突如、少女の目尻が下がったかと思うと、整った顔立ちがくしゃくしゃになり、滝のごとく目の幅いっぱいの涙が溢れ出した。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~!! に゛い゛ち゛ゃ゛ん゛た゛ぁ゛~~~! う゛え゛~~ん゛~~!!!」
なんかもう、この世の終わりとばかりの大泣きだった。
こうして、ようやく俺たち兄妹は、異世界での再会を果たしたのだった。
ドアのベルの音とともに登場したのは、その共闘した人のひとり、デジーだった。
いつものとんがり帽にローブ姿。昨日のぼろぼろになってしまった格好ではなく、服装だけは新品に着替えられてはいたが、手に巻いた包帯や頬に残る真新しい傷跡が痛々しい。
「デジー、もう起きて大丈夫なの?」
「ん。さっきまで寝てたから、もう平気。でも、途中で気絶したから、昨日の最後のほうの記憶が曖昧。勇者が現れて、すごい魔法を使ったと聞いた。その辺りをぜひ詳しく知りたい。切に」
鼻息荒く、病み上がりを感じさせない勢いで詰め寄ってくる。
魔法というのは、きっとラスクラウドゥさんの魔法のことだろうが、あの状況下では勇者のしわざだと情報が錯綜しても無理はない。
すごい魔法と聞いて、居ても立ってもいられずに飛び起きてくるのがデジーらしい。
「こんちわ~。あら、なんか大勢?」
リコエッタまでやってきて、結局いつものメンバーが全員集合してしまった。
なんにせよ、お互いに無事でなによりだ。
「もしかして、ちょうどよかったかもしれないね。よかったら、これどーぞ」
リコエッタは抱えていた大きめのバスケットを重そうにテーブルに置いた。
中身は大量のパンで、焼いてからそれほど時間が経っていないのか、まだほんのりと温かく、いい匂いが立ち昇っていた。
「ウチの店から炊き出しで用意したんだけど、焼きすぎて余っちゃって。今、近所にお裾分けしてるとこなの」
「あ、それ、すごくありがたい!」
美味しそうな匂いがしている時点で、俺の空腹も限界に達した。
皆で貪るようにパンを手に取って齧っている。
あのデジーすらも、一心不乱にパンを頬張っていた。
彼女は特に昨日からなにも食べてないはずなので、無理ないだろう。
「たはは。いや~、なんか壮絶だったねえ。ま、そこまで喜んでもらえると、パン屋冥利に尽きるけど」
差し入れてくれたリコエッタも呆れ気味だった。
瞬く間にパンを食べ尽くしたところで、ようやく一息ついた。
まだ、やるべきことは残っている。
「俺、またそろそろ出ないと」
「慌しいけど、どうしたの? 急ぎの用?」
どこまで話していいものか、としばし考えて、
「ちょっと野暮用ってとこかな。人捜し」
とだけ答えておいた。
「あたしも手が空いたところだし、手伝おうか?」
「いや、いいよ。皆それぞれ忙しくて、疲れているだろうし。店は開けたままにしておくから、くつろいでいってよ。珈琲だったら、ナツメに言ってね。任せた、ナツメ」
「はいさ~」
ナツメは言われるまでもなく、食後の珈琲ブレイクに入っていた。
「あ、だったらアキト! もうひとり、知り合いの子を呼んでもいいかな? 珈琲に興味持ってたみたいで、別のところにパンを配りに行ってるから、もう少ししたら戻ると思うから」
「もちろん、いいよ。じゃあ、俺はもう出るから。あとよろしく!」
返事もそこそこに、店を出ることにした。
さて、腹ごなしも終わったところで妹捜しの再開だ。日が暮れる前に、できるだけのことはやっておきたい。
叔父から春香と出くわした場所を、もっと詳しく聞いていればよかった。
まずは人通りの多い、大通り付近を中心にあたってみたほうがいいかもしれない。
小走りで大通りの方向へと駆け出したとき、背にした店の入り口のほうからベルの音が聞こえた。
先ほどリコエッタの言っていた知り合いの子とやらが来たらしい。
異世界での貴重な新しい友人になれるかもしれないので、できれば出迎えたかったが――状況が状況なだけに、今回は諦めるしかない。
「あ」
10メートルほど走ってから、すぐにUターンする羽目になる。
(そうだった! 店に着替えに帰ったんだった、俺!)
本来の店に戻った目的を思い出した。
度重なる来客と食欲が満たされたことで、きれいさっぱりと忘れてしまっていた。
出かけた途端に忘れ物をして戻るのは若干気恥ずかしくもあったが、汗だくのまま放っておくのも生理的に我慢できない。
汗臭く汚い身なりで方々を訪ね回るのも失礼だろう。
ただでも今日は長丁場になりそうだけに、余裕がある内に備えておいたほうがいい。
「いやー、忘れ物しちゃって」
店内に駆け込むと、たった今入店したばかりのリコエッタの知り合いとやらが振り向いて、至近距離で目が合った。
黒髪で黒目の小柄な少女。
きれいにカットされた髪、気の強そうな眉、その下で驚きに見開かれた大きな目。
小さな鼻、ぽかーんと開けられた口。
どこか懐かしい雰囲気、見覚えがある容貌。
――というか。
突如、少女の目尻が下がったかと思うと、整った顔立ちがくしゃくしゃになり、滝のごとく目の幅いっぱいの涙が溢れ出した。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~!! に゛い゛ち゛ゃ゛ん゛た゛ぁ゛~~~! う゛え゛~~ん゛~~!!!」
なんかもう、この世の終わりとばかりの大泣きだった。
こうして、ようやく俺たち兄妹は、異世界での再会を果たしたのだった。
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