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第四章
叔父が異世界から里帰りします 2
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ついに、叔父の里帰りする日がやってきた。
神域の森でリィズさんとリオちゃんに見送られ、俺たちはふたり連れ立って祖父母宅に足を踏み入れた。
「おっそーい!」
押入れから出たところを、仁王立ちで出迎えたのは春香だった。
「おう。春香じゃねーか。朝から元気だな! はっはっ!」
「あ、おはようございます、叔父さん!」
「3日ぶり、春香。でも、まだ朝の9時だよ? そんなに遅い?」
「わたしは5時起きの6時出でした!」
なぜかどや顔で春香が踏ん反り返る。
「だから、向こうの駅待ちでいいって言ったのに」
「いいじゃない、わたしの勝手でしょ」
その理論に若干の理不尽さを覚えないわけでもないが、いつものことなので気にしない。
「それよりも、アレ受け取ってきてくれた?」
「もっちろん」
春香がトートバッグから取り出したのは小さな箱だ。
「じゃ~ん!」
大仰な身振りで箱を開けて見せびらかしたのは、真新しい1台のスマホだった。
「おおっ! 助かるぜ!」
あの日、叔父に頼まれたのがコレだった。
日本に戻るのに先立って必要になるとかで、ネットを通じて用意したものだ。
身分証もなく、戸籍すらどうなっているか不明な叔父での登録が難しかったので、俺のセカンドフォンとして申し込んである。
本体の色は、先の戦闘での鎧が印象的だったため、クリアブルーにしてみた。
ちなみに、申し込みや支払いはじめ、一切合財は俺がやったはずだが、持ってきただけの春香がどうして自慢げなのかはわからない。
それはさておき、春香に視線で合図を送る。
「それからこれは、わたしとにいちゃんからです」
春香が次いでバッグから取り出したのは、長方形の薄い箱が数個ばかり。
「おおっ? これは――スーツか」
叔父は、日本で着れるような一般的な服は持っていない。
祖父母宅に残されている服も15年前の学生当時のもので、現状、筋骨隆々とした叔父が着れるはずもない。ということで、春香と相談して選んでおいたものだ。
サプライズにしたいと考え、叔父に内緒でサイズは事前にリィズさんから聞き出しておいたので、問題はないだろう。
「んじゃ、さっそく」
いそいそと叔父がその場で着替えはじめた。
春香は咄嗟に顔を逸らしつつも、横目でさり気なく様子を窺っていた。
なにやってんだか。
「上下白のスーツに、黒シャツ。どこぞの組のもんみたいだな。だが気に入った! はっはっ! ありがとうよ、おふたりさん」
たしかに似合うとは思っていたが、想像以上に怖いくらいの風格だった。
胸回りや腕回りの筋肉の付き具合が半端でなく、サイズも特注になってしまったため、なんだか重量格闘系のアスリートが正装したような威圧感がある。
春香とふたり、あれこれ話し合っているうちに盛り上がってしまい、このコーディネイトとなったのだが……若干、はしゃぎ過ぎたと思わなくもない。
でもまあ、喜んでくれているので、よしとしよう。
叔父は嬉しそうに俺たちの頭にそれぞれ手を置き、そのままぐわしぐわしと豪快に撫でてきた。
成人してまで頭を撫でられるのは気恥ずかしかったが、この叔父に褒められるのは決して悪い気はしない。
むしろ、ちょっと誇らしさを覚える。
「一応、前もって言っとくが……たぶん、いやきっと、なにかしらあって汚れるかもしれないが、それは勘弁な!」
なぜか、叔父から両手を合わせて拝まれた。
「なにかしらって?」
「説明するより見たほうが早い。いやなに、後でわかるさ。はっはっはっ」
「……?」
よくわからないが、叔父の最後の笑いはちょっぴりやけくそ気味だった。
「じゃあ、そろそろいったん解散だな。次は15時に現地の駅前に集合だ。よろしく頼むぜ」
「叔父さん、スマホ貸して。現地までのナビアプリと、乗り換え案内のアプリを入れておくから」
「なにからなにまですまないな、秋人。へえ、なるほどね。便利な時代になったもんだ」
興味深げにアプリを眺めた後、叔父はスマホをポケットに突っ込んだ。
「あれ? 家まで一緒に行くんじゃなかったの? 一緒に行こうよ~!」
春香が不満げに訴えかけているものの、これは別に今いきなり決まったわけではない。
叔父との事前の打ち合わせでそうなっていた。
ただ俺が、春香に伝え忘れていただけで。
「悪いな、俺のちょっとした野暮用でな。なんせ、15年ぶりの日本だ。いろいろあってよ」
「え~。まあ、叔父さんがそう言うんだったら、仕方ないですけど……」
叔父に謝られてしまっては、春香も納得するしかないだろう。
「……せっかく早起きしてきたのに……ぶつぶつ」
その代わりとばかりに、ものすごく恨めしそうな目を向けられた。
なにやらすまない、妹よ。
「また後でな! 出発するか!」
叔父が新品のジャケットの襟を引き締めて玄関を出る。
こうして、15年ぶりの日本となる叔父の里帰りがはじまった。
神域の森でリィズさんとリオちゃんに見送られ、俺たちはふたり連れ立って祖父母宅に足を踏み入れた。
「おっそーい!」
押入れから出たところを、仁王立ちで出迎えたのは春香だった。
「おう。春香じゃねーか。朝から元気だな! はっはっ!」
「あ、おはようございます、叔父さん!」
「3日ぶり、春香。でも、まだ朝の9時だよ? そんなに遅い?」
「わたしは5時起きの6時出でした!」
なぜかどや顔で春香が踏ん反り返る。
「だから、向こうの駅待ちでいいって言ったのに」
「いいじゃない、わたしの勝手でしょ」
その理論に若干の理不尽さを覚えないわけでもないが、いつものことなので気にしない。
「それよりも、アレ受け取ってきてくれた?」
「もっちろん」
春香がトートバッグから取り出したのは小さな箱だ。
「じゃ~ん!」
大仰な身振りで箱を開けて見せびらかしたのは、真新しい1台のスマホだった。
「おおっ! 助かるぜ!」
あの日、叔父に頼まれたのがコレだった。
日本に戻るのに先立って必要になるとかで、ネットを通じて用意したものだ。
身分証もなく、戸籍すらどうなっているか不明な叔父での登録が難しかったので、俺のセカンドフォンとして申し込んである。
本体の色は、先の戦闘での鎧が印象的だったため、クリアブルーにしてみた。
ちなみに、申し込みや支払いはじめ、一切合財は俺がやったはずだが、持ってきただけの春香がどうして自慢げなのかはわからない。
それはさておき、春香に視線で合図を送る。
「それからこれは、わたしとにいちゃんからです」
春香が次いでバッグから取り出したのは、長方形の薄い箱が数個ばかり。
「おおっ? これは――スーツか」
叔父は、日本で着れるような一般的な服は持っていない。
祖父母宅に残されている服も15年前の学生当時のもので、現状、筋骨隆々とした叔父が着れるはずもない。ということで、春香と相談して選んでおいたものだ。
サプライズにしたいと考え、叔父に内緒でサイズは事前にリィズさんから聞き出しておいたので、問題はないだろう。
「んじゃ、さっそく」
いそいそと叔父がその場で着替えはじめた。
春香は咄嗟に顔を逸らしつつも、横目でさり気なく様子を窺っていた。
なにやってんだか。
「上下白のスーツに、黒シャツ。どこぞの組のもんみたいだな。だが気に入った! はっはっ! ありがとうよ、おふたりさん」
たしかに似合うとは思っていたが、想像以上に怖いくらいの風格だった。
胸回りや腕回りの筋肉の付き具合が半端でなく、サイズも特注になってしまったため、なんだか重量格闘系のアスリートが正装したような威圧感がある。
春香とふたり、あれこれ話し合っているうちに盛り上がってしまい、このコーディネイトとなったのだが……若干、はしゃぎ過ぎたと思わなくもない。
でもまあ、喜んでくれているので、よしとしよう。
叔父は嬉しそうに俺たちの頭にそれぞれ手を置き、そのままぐわしぐわしと豪快に撫でてきた。
成人してまで頭を撫でられるのは気恥ずかしかったが、この叔父に褒められるのは決して悪い気はしない。
むしろ、ちょっと誇らしさを覚える。
「一応、前もって言っとくが……たぶん、いやきっと、なにかしらあって汚れるかもしれないが、それは勘弁な!」
なぜか、叔父から両手を合わせて拝まれた。
「なにかしらって?」
「説明するより見たほうが早い。いやなに、後でわかるさ。はっはっはっ」
「……?」
よくわからないが、叔父の最後の笑いはちょっぴりやけくそ気味だった。
「じゃあ、そろそろいったん解散だな。次は15時に現地の駅前に集合だ。よろしく頼むぜ」
「叔父さん、スマホ貸して。現地までのナビアプリと、乗り換え案内のアプリを入れておくから」
「なにからなにまですまないな、秋人。へえ、なるほどね。便利な時代になったもんだ」
興味深げにアプリを眺めた後、叔父はスマホをポケットに突っ込んだ。
「あれ? 家まで一緒に行くんじゃなかったの? 一緒に行こうよ~!」
春香が不満げに訴えかけているものの、これは別に今いきなり決まったわけではない。
叔父との事前の打ち合わせでそうなっていた。
ただ俺が、春香に伝え忘れていただけで。
「悪いな、俺のちょっとした野暮用でな。なんせ、15年ぶりの日本だ。いろいろあってよ」
「え~。まあ、叔父さんがそう言うんだったら、仕方ないですけど……」
叔父に謝られてしまっては、春香も納得するしかないだろう。
「……せっかく早起きしてきたのに……ぶつぶつ」
その代わりとばかりに、ものすごく恨めしそうな目を向けられた。
なにやらすまない、妹よ。
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こうして、15年ぶりの日本となる叔父の里帰りがはじまった。
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