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第五章 回想編
獣人少女 2
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征司の負った怪我はやはり重傷で、完治にはかなりの日数を要した。
その間、征司はリィズのもとでお世話になっていた。
まあ、お世話とはいっても、実際に世話を焼いてもらっているわけではない。
リィズは毎日、日が昇ると同時に朝早くから出かけ、夕方までは帰ってこない。日によっては、数日間も家を空けることも珍しくなかった。
そのため、雨露をしのぐために家を間借りしている程度だったが。
リィズが自らを奴隷と称した通り、彼女は戦奴だった。
獣人族は戦闘民族で戦いに長けており、それゆえ奴隷として戦に駆り出されているという。
敵は、なんと魔王。
魔族が存在するとの話なので、ゲームよろしくもしかしているかも、くらいに征司は軽く考えていたのだが、この世界の情勢は想像以上に逼迫していた。
太古より、この世界には人間族や魔族、獣人族をはじめとする亜人族、お馴染みエルフやドワーフなどの妖精族、6大系統に属する精霊族、古代よりの生神たる幻獣族など、多種多様な種族が混在していた。
もちろん、各種族は自然の流れにより棲み分けがなされており、種族間で多少の小競り合いはあるものの、各々の棲息地の中で独自に生の営みがなされていたという。
しかし、今から10年ほど前、魔族の王たる魔王が代替わりしたのを切っ掛けに、魔族は自らの眷属による統一支配を掲げ、全種族を相手取り全面戦争に打って出た。
もともと人間族と折り合いの悪かったこともあり、魔族はまず広大な土地と多大な人口を要する人間族の領地に侵攻してきた。
魔族は他種族の追随を許さない強力な魔法を操るが、種族的な特性として絶対数が少ない。
だからこそ、過去に起こった戦争では、個々の能力で勝る魔族に対して人間族が数で対抗することで、結果的に戦争が長引いて停戦がなされる、という歴史を繰り返してきた。
が、今生の魔王は、その歴史を踏まえて用意周到だった。
野生の獣を魔法で強化洗脳した魔獣の群れと、魔法で生み出した擬似生命体である魔物を率いて、満を持して襲い掛かってきたのである。
数の優位が覆されたことで、戦況は悪化の一途を辿るばかり。
この世界は、そんな戦争の真っ只中にあった。
とはいえ、なにせ世界を二分するほどの戦いなので、人間側が苦境にあるといってもそれは大局的なもので、各地域では一進一退を繰り返しているのが現状だ。
数年で決着のつくものではない――というのが、リィズの言だった。
獣人たちは、魔族との戦に破れて、部族の故郷を追われた身。
人間国家の庇護のもと、奴隷の身分に甘んじているという。
命じられている使命は、この辺境地区の死守。
人間の勢力下に侵攻してくる外敵の索敵と偵察、場合によっては殲滅までもが含まれる。
こういった他種族の奴隷を用いた用兵が各地で行なわれており、この辺境地区にはリィズたち獣人族が宛がわれているらしい。
「なるほどね。ときどき何日も家に戻らなくて、怪我して帰ってくるのは、そういう理由あってのことか」
征司は床の上に胡座をかき、正体不明の肉を焼いた串に齧りつきながら言った。
この肉は、リィズが仕留めてきた獲物をリィズ自ら調理したものだ。
時折、リィズはこうして獲物を持ち帰ってくる。
シンプルに串に刺して炙っただけのものだが、征司の療養生活の食料事情では、不足しがちな貴重な動物性蛋白質だった。
普段、リィズがいない間の征司の主食は、自生している野菜や森で拾った木の実だけ。
思い返すも、コンビニで食料を購入し忘れたのが悔やまれた。
「そう、ただ今回のは単なる威力偵察だ。魔族の指揮しない魔物と魔獣の混成軍程度なら楽でいい」
征司と向かい合わせに座るリィズは、ぶっきらぼうに答えて、同じように豪快に肉塊に齧りついていた。
(楽、ねえ)
リィズの身体のそこかしこに真新しい生傷が目立つ。
動きやすさを重視してか、露出が高い服装だけに隠しようがない。隠す気もないということだろうが。
征司は2本めの肉串に手を出す。
リィズもまた、遅れじと新たな串を手に取った。
「そーいや、リィズは何歳なんだ? 俺よか下?」
「17だ。それがどうした?」
「なんだ、タメか」
「タメ?」
「同い年ってことだ。そんな年で戦場にねえ」
征司がさらに肉串に手を伸ばすと、今度はリィズも同時だった。
「たとえ幼子だろうと、戦える者は戦うべきだ。ましてやそれが戦奴ならな」
「そんなもんかねえ」
最後の肉串を取ろうとしたところで、リィズに本気の殺気混じりに睨まれたので、征司は大人しく譲っておいた。
その間、征司はリィズのもとでお世話になっていた。
まあ、お世話とはいっても、実際に世話を焼いてもらっているわけではない。
リィズは毎日、日が昇ると同時に朝早くから出かけ、夕方までは帰ってこない。日によっては、数日間も家を空けることも珍しくなかった。
そのため、雨露をしのぐために家を間借りしている程度だったが。
リィズが自らを奴隷と称した通り、彼女は戦奴だった。
獣人族は戦闘民族で戦いに長けており、それゆえ奴隷として戦に駆り出されているという。
敵は、なんと魔王。
魔族が存在するとの話なので、ゲームよろしくもしかしているかも、くらいに征司は軽く考えていたのだが、この世界の情勢は想像以上に逼迫していた。
太古より、この世界には人間族や魔族、獣人族をはじめとする亜人族、お馴染みエルフやドワーフなどの妖精族、6大系統に属する精霊族、古代よりの生神たる幻獣族など、多種多様な種族が混在していた。
もちろん、各種族は自然の流れにより棲み分けがなされており、種族間で多少の小競り合いはあるものの、各々の棲息地の中で独自に生の営みがなされていたという。
しかし、今から10年ほど前、魔族の王たる魔王が代替わりしたのを切っ掛けに、魔族は自らの眷属による統一支配を掲げ、全種族を相手取り全面戦争に打って出た。
もともと人間族と折り合いの悪かったこともあり、魔族はまず広大な土地と多大な人口を要する人間族の領地に侵攻してきた。
魔族は他種族の追随を許さない強力な魔法を操るが、種族的な特性として絶対数が少ない。
だからこそ、過去に起こった戦争では、個々の能力で勝る魔族に対して人間族が数で対抗することで、結果的に戦争が長引いて停戦がなされる、という歴史を繰り返してきた。
が、今生の魔王は、その歴史を踏まえて用意周到だった。
野生の獣を魔法で強化洗脳した魔獣の群れと、魔法で生み出した擬似生命体である魔物を率いて、満を持して襲い掛かってきたのである。
数の優位が覆されたことで、戦況は悪化の一途を辿るばかり。
この世界は、そんな戦争の真っ只中にあった。
とはいえ、なにせ世界を二分するほどの戦いなので、人間側が苦境にあるといってもそれは大局的なもので、各地域では一進一退を繰り返しているのが現状だ。
数年で決着のつくものではない――というのが、リィズの言だった。
獣人たちは、魔族との戦に破れて、部族の故郷を追われた身。
人間国家の庇護のもと、奴隷の身分に甘んじているという。
命じられている使命は、この辺境地区の死守。
人間の勢力下に侵攻してくる外敵の索敵と偵察、場合によっては殲滅までもが含まれる。
こういった他種族の奴隷を用いた用兵が各地で行なわれており、この辺境地区にはリィズたち獣人族が宛がわれているらしい。
「なるほどね。ときどき何日も家に戻らなくて、怪我して帰ってくるのは、そういう理由あってのことか」
征司は床の上に胡座をかき、正体不明の肉を焼いた串に齧りつきながら言った。
この肉は、リィズが仕留めてきた獲物をリィズ自ら調理したものだ。
時折、リィズはこうして獲物を持ち帰ってくる。
シンプルに串に刺して炙っただけのものだが、征司の療養生活の食料事情では、不足しがちな貴重な動物性蛋白質だった。
普段、リィズがいない間の征司の主食は、自生している野菜や森で拾った木の実だけ。
思い返すも、コンビニで食料を購入し忘れたのが悔やまれた。
「そう、ただ今回のは単なる威力偵察だ。魔族の指揮しない魔物と魔獣の混成軍程度なら楽でいい」
征司と向かい合わせに座るリィズは、ぶっきらぼうに答えて、同じように豪快に肉塊に齧りついていた。
(楽、ねえ)
リィズの身体のそこかしこに真新しい生傷が目立つ。
動きやすさを重視してか、露出が高い服装だけに隠しようがない。隠す気もないということだろうが。
征司は2本めの肉串に手を出す。
リィズもまた、遅れじと新たな串を手に取った。
「そーいや、リィズは何歳なんだ? 俺よか下?」
「17だ。それがどうした?」
「なんだ、タメか」
「タメ?」
「同い年ってことだ。そんな年で戦場にねえ」
征司がさらに肉串に手を伸ばすと、今度はリィズも同時だった。
「たとえ幼子だろうと、戦える者は戦うべきだ。ましてやそれが戦奴ならな」
「そんなもんかねえ」
最後の肉串を取ろうとしたところで、リィズに本気の殺気混じりに睨まれたので、征司は大人しく譲っておいた。
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