A.W.O~忘れ去られた幻想世界を最強と最弱で席巻します~

まはぷる

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第1章 アバター:シノヤ

第10話 レベルカンストの謎

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 千年後の世界ということで、同時にレベルカンストの謎も解けた。

 シノヤの持つスキルの中に<経験増加>というものがある。
 ゲーム初心者用のスキルで、A.W.Oのサービス開始時、初回登録先着1000名に贈与されたおまけのパッシブスキルだ。
 効果はゲーム内時間の5分ごとに経験値が1貰えるだけのささやか過ぎる効果で、このスキルを所有していると、戦闘で勝てなくても初日にレベル2になれる。
 しかし、レベルが5くらいからは次のレベルアップの必要経験値が4桁くらいになるため、単なるネタスキルに成り下がり、初回記念以外の何物でもなかった。
 むしろ、なにもしていないのに突然レベルアップすることもあるので、一部には嫌われていたほどだ。

 ちなみにシノヤの場合だと、イベント中の罠解除の緊迫した場面で突如レベルアップのファンファーレが鳴り響き、驚いてイベント失敗した上に、解除中の罠は運悪く即死系だった。そのときのデスペナルティーで、苦心して集めていたコレクターズアイテムの数点をロストしたのは、苦い思い出だ。
 他に印象深いのは、たしかレベル上限の制限があるイベントで、クリア直前にレベルアップしてしまったなど。

(塵も積もればなんとやらか……さすがに千年分も経験値が積み重なるってーのは、運営も想定してなかったんだろうなぁ)

 レベル制のRPGでは、1レベル違うだけでもかなり能力に差が出るため、今のシノヤは以前のシノヤとはまったくの別物だろう。飛躍どころか飛翔くらいの違いがある。
 中学時代にあれだけ頑張って上げたレベルを、放置だけで20倍も超過とは、微妙に切ない気がしないでもない。

 図らずも労せずチートになってしまったわけだが、サービスもとっくに終了して他のプレイヤーがいない以上、誰に責められるわけでもなし、それはいい。

 問題は『知覚アクセラレーターシステム』のほうだ。
 この機能こそ、一時期、VRMMOの存在を危うくさせた技術で、もとは医療方面からの技術流用だったらしい。

 簡単に言うと、VR内で起こるすべての現象を加速させ、時間経過を擬似的に短縮するというものだ。仮に加速度を倍にすると、リアルでの1時間はVR内での2時間に相当する。

 これだけなら、従来の開発系SLGにもあるような単なる倍速機能に過ぎないが、このシステムを用いることで、VR内にいる人間の思考反応速度まで加速できるようになった。
 仮に知覚アクセラレーターを10倍に設定すると、VR内での体感で10時間経過したとしても、実際には1時間しか経っていないことになる。
 リアルを追求するあまり、行動ひとつにも時間経過があるVRMMOとの相性も抜群で、以前には『ゲームは1日30時間まで』なんてキャッチフレーズが流行したほどだ。

 しかし、夢のような新技術も欠陥が露見し、このシステムを用いたVRは法令で一部を除いて全面禁止となってしまった。
 A.W.Oもその煽りを受け、サービス開始後わずか1年にて、停止する羽目になってしまったのだ。
 そして、あれから10年が経過した現代においても、依然としてその法令は継続されている。

 シノヤがログインしてから、なんだかんだで軽く1時間は経過していた。
 にもかかわらず、現在、コンソールでのリアルの時間表示では、23:45。ログインする際に腕時計で確認した時間も、23:45だった。1分も経っていない計算になる。

(ってことは、知覚アクセラレーターが100倍くらいに設定されているってことか……)

 リアルでの10年という歳月がゲーム内で千年になっていることにも合致している。
 中学時代のA.W.Oは3倍くらいだったはずだ。100倍というと最大値だろう。

 こうなってくると、このA.W.Oサーバーが稼動し続けていたのが、偶然だったとは考えづらい。

 おおかた途中で停止することを惜しんだ当時の担当だった社内の誰かが、ゲーム内の加速を最大設定にして、人知れず三界戦争の結果を見届けようとでも思ったのだろう。
 いまだ放置しているのは、戦争の結果が確定していないからか、本人が忘れてしまったのか、それともすでに会社に在籍していないのかはわからないが。
 年明けにでも、こっそりと社内で聞き取りしてみるのも面白いかもしれない。

「……シ、シノヤ様ぁ~」

 目の前にしゃがみ込むエリシアが、涙目で情けない顔になっていた。
 いろいろ黙考するあまり、すっかり存在を忘れてしまっていた。

「あ! ごめん、つい考え込んじゃってて……面目ない。はは」

 なんにせよ、今のシノヤはレベル999。ラスボスよりも遥かに強い存在だ。
 しかも、知覚アクセラレーターシステムのおかげで、時間の猶予もたっぷりある。

(これは、本気で神族側を逆転勝利させて、英雄になれるかもな)

 エリシアのふわふわの金髪頭に、ぽんっと手を置いてから、シノヤはほくそ笑んだ。

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