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第三話
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「この者の罪は何か?」
大王がそうおたずねになると、人の善悪を記録する神・倶生神がそそくさと現れ、調子よくこの者の罪をならべはじめた。
「ハイハイ、この坊主は大日本国、江戸の修行僧です。これが堺町(芝居と男色の街)の女形、瀬川菊之丞という若衆(男娼)の色に染められまして、師匠の財産に手をつけるわ、寺宝の錦の戸帳を道具市に横流しするわ、果ては行基の作の阿弥陀如来は質屋の蔵へご来迎──と、若衆の恋のしくじり、尻のつまらぬ尻が割れ(バカな目をみて悪事がばれ)、座敷牢に押し込められてしまえば愛しい人にも逢えず、これを苦にしてあの世(人間界)を去って、めでたく地獄へやって参りました。しかし、死んでも忘れられぬは菊之丞の面影、肌身離さず腰につけたのは、当代きっての絵師・鳥居清信が画いた菊之丞の絵姿です。まあ、師匠や親の目をごまかして盗みを働いた罪はありますが、今どきの坊主ときたら表向きは抹香クサい顔してますが、ウラでは遊女狂いに浮かれのぼせて、鴨を明神、葱を神主などとカモネギ食らうナマグサばっかり。それに比べたら優童(男娼)狂いは、まだかわいいほうで、そのバツは剣の山の責め苦からは少し減刑して、彼も大好きなお釜ゆでの刑あたりでどうでしょう。」
「イヤイヤ。」
大王が不機嫌そうに答える。
「こいつの罪は軽いようにみえて、軽くない! シャバ(人間界)では男色というものがあるらしいが、私にはこれがさっぱりわからん。男女の道は陰陽にもとづく自然なことだが、男と男が交わることはありえん!唐土(中国)では、昔から『頑童(その道の少年)を近づけることなかれ』といましめている。まあ、それでも周の穆王が慈童を愛して菊座(肛門)の誉れとなったり、ほかにも、いろいろあやしいヤツはいるがな。日本でも、弘法大師が流水に文字を書いたときに文殊と契り、文殊は師利菩薩となってしまい、弘法は『若衆の開祖』と恥ずかしい称号を得てしまった。熊谷直実は、須磨の浦で敦盛を引き倒して『ハリハドッコイなされける♪』と歌われ、牛若丸は天狗にシメられ、後醍醐帝の阿新丸、信長の蘭丸、その名も高尾の文覚は、平家の遺児の六代御前にうつつをぬかしていらぬ謀反に巻きこまれ、頼朝のとがめを受けて『尻が来る(責任をとらされる)』という言葉を残した。
但馬の城崎温泉や箱根の底倉温泉へ多くの者が湯治に行くのも、みなこの男色が目当てだ。
むかしは、坊主だけが遊んだから『痔』という字は『⽧に寺』なのに、最近では僧も俗も関係なく、みんな引っくるめて楽しむこと、入れ込むこと、ハマること──まったくもってフラチである! 今後シャバ世界では男色を禁止するよう申し渡せ!!」
この、やけに男色に付いての知識が偏重した大王の怒りにみながザワついたが、そのうち十王のひとりである転輪王が、おずおずと前に進み出た。
「大王のご命令にさからうのは恐れ多きことですが、『思ってることを言わないと腹がふくれます』ので、私も言わせていただきます。仰せのとおり、男色に害がないとはいえませんが、その害は女色に比べればたいしたものではありません。たとえれば、女色は『甘き蜜』ですが、男色は『淡き水』のようなもの……無味の味は、佳境に入った者しか味わうことができません。大王は若衆がお嫌いなので酒好きに甘い餅をすすめるようなものですが、菊之丞の評判、その絶色さは、この地獄にまで聞こえてきます。坊主がこの世の思い出にと抱いてきたその絵姿を私も一目見たくてたまりません。どうかこの願い、かなえさせてください、ぜひ!ぜひ!」
何故か目を血走らせて迫ってくる転輪王に、大王も少しひるんだようす。
「蓼食う虫も好き好きとはおまえのことだ。そこまで願うなら、絵姿を見るのは勝手にしろ。だが、私は見ないぞ。若衆など見たくもないから、私は目をつぶる。さあ、目を閉じてるあいだにサッサと絵を開け。」
大王がギュッと目をつぶると、転輪王は急いで絵姿を柱にかけた。
清きこと春柳の初月を含むがごとく
艶なること桃花の暁烟(朝もや)を
帯びるに似たり
みながゾロゾロ集まって来て絵をのぞきこんだが、その姿の艶やかさ──なんとも言葉にもならず、誰もが「はっ」と息をのんで魅入るばかり。
人間界では天から降臨した天女を美しいというが、それは遠くの手の届かない花に憧れるようなもの。
この国では、極楽の天女はいつも凧のように飛びまわっていて珍しくもないから、むしろ人間界の美しさにこそ惹かれるのである。
菊之丞と見飽きた天女とを比べたら、まるで閻魔王の冠と餓鬼のフンドシのようなものだ。
聞きしにまさる菊之丞の姿、天下無双の美しさかな──と、十王をはじめ、見る目は目ん玉光らせ、かぐ鼻は鼻の穴ふくらませ、牛頭馬頭などは額の角をいきり立たせて興奮し、そこら中から感嘆の声が鳴りやまない。
まわりのどよめきに、さすがの大王もガマンできなくなったのか、コッソリ薄目を開けてのぞいて見る──と、たちまち目がまん丸になって、その艶やかさから目がはなせない!
さっきまでバカにしていたことも忘れ、魂の抜けがらのように呆然と見惚れて、思わず身を乗り出した拍子に高い玉座から転げ落ちてしまった。
あわててみなで抱き起こしたが、大王は目もウツロに、しどろもどろだ。
「……みなの前で面目ないが……私は、この絵姿の可愛らしさに胸が締め付けられる思いとなった。まるで遍昭の詠む歌のような気持ちだ。昔から美人と聞こえが高いものは大勢いたが、そんなものとは比べものにならん。西施の目もと、小町の眉、楊貴妃の唇、かぐや姫の鼻、飛燕の腰つき、衣通姫の着こなし──すべて引っくるめたこの姿、花にも月にも菩薩にさえかなうものはない。まして、 唐土でも日本でも、こんな美しいものが二度と生まれてくるとは思えんから、私は冥府の王位など捨てて、これからシャバに行ってこの若衆と枕を共にする……。」
「大王にありながら、けしからん!」
ところが、大王がのぼせてフラフラ出て行こうとすると、 "邪淫の罪"を裁く宗帝王が立ちはだかって、しかめっ面で怒鳴りつけた。
「色に溺れて冥府の王位を捨て、シャバで男と交わるなど言語道断! そんなことでは地獄、極楽の政を執り行うものもなくなり、善悪を正すこともできん。三千世界の民は何をもって教えを乞うのか!貴い、御身が男娼買いなんぞになり果てたら、極楽に満ち満ちている金の砂はたちまち堺町にぼったくられ、それでも足りずに『金のなる木がわしゃ欲しい…』と、極楽のセンセイ、お釈迦さまの黄金の肌までつぶして売っ払うハメになる。地蔵菩薩は長太郎坊主(盲目の乞食)のように子どものなぶりものにされ、びんが鳥(半人半鳥)は両国の見世物となり、天女も女衒に売られ、三途の川の婆は海苔売り婆、仁王などは駕籠かきになるしかあるまい──これでは、地獄の破滅である!
それに、たとえ大王が今どきの息子衆を見習って、短羽織に長脇差、髪は本田(オシャレマゲ)に銀ギセル──と、粋な男娼買いを気取ってみても、とてもごまかせるようなお顔ではない。歌舞伎で海老蔵がそのお姿に似せて舞台に立っただけで、シャバの者はビックリして怖がった。もし、そのお顔で江戸の町をウロついたら、あっという間にウサンくさいヤツと召し捕られ、どこの者だと調べを受ければ『大家は釈尊、名主は大日です』とすっトボけても、どうせ相手にもされず無宿人扱いされてヒドい目みることまちがいなし!これだけ言ってもまだわからぬなら、この宗帝王、この場で腹かっさばいてご覧にいれる。サァ、ご返答いかに!」
宗帝王が顔を真っ赤にして迫ると、後ろから平等王が、今こそ俺の出番と現れた。
「まあ、まあ、宗帝王さんのおっしゃることは、ごもっとも──まさに、木曽の忠太が義仲をいさめて腹を切ったような立派なご意見──ですが、大王さまは意固地なお方、いったん口にしたことはテコでも曲げねぇときた。どうせ何を言ったって、馬の耳に念仏、牛の角のハチときて聞きゃしません。おとこおんなのアヤシげな魅力に取りつかれて王位を捨てるたぁ、俗世の息子衆のやるこってす。地獄、極楽のヌシたる大王さまのやるこっちゃありません。どうでやす、そんなに菊之丞がお望みなら、俗世に誰ぞ使いをやって、菊之丞めをとっ捕まえて来るほうが手っ取り早くすみやすよ。」
平等王の思わぬ提案に「そうだ、それがいい!」と、みなが賛同した。
この案には大王も納得し、さっそくみなで顔つきあわせて菊之丞をさらう作戦を練りはじめた。
まず泰山王が、人の寿命が書いてある定業帳を取り出して調べだす。
「宝暦十二年十一月、佐野川市松、病死……宝暦十三年七月、中村助五郎、病死……。どうも菊之丞の記録はありませんね。まだ命が尽きるときではなさそうです。そうなると、誰かをやって無理やりさらうにしても、あの国には伊勢や八幡をはじめ菊之丞の氏神の王子の稲荷など、この地獄すら見下して屁とも思わない、おっかない姉御や親父連中がついています。表立って事を運べば、やっかいなことになりましょう。」
「なに、そんなことは簡単だ。」
盗みにくわしい初江王が口をだした。
「愛宕山の太郎坊や比良山の次郎坊なんかの天狗連中にやらせれば、誰にも知られずとっ捕まえて来るなどたやすいこと。おい、誰か天狗どもを呼んで来い。」
しかし、五官王が反論する。
「イヤイヤ、それは駄目ですよ。情け知らずで乱暴者の天狗なんかにまかせると、力づくでひっつかまれて、せっかくのかわいいお顔がキズだらけにされてしまいますよ。ここは疫病神を向かわせてはどうでしょう。」
こんどは変成王が、かぶりを振った。
「イヤイヤイヤ、疫病神じゃ、素早く殺すことはできん。少しずつ身体を弱らせ、のんびり殺していては、大王も待ち遠しくてたまらんだろう。それより手っ取り早いのは、俗世に大勢いる医者どもを使うことだ。ヤツらなら疫病神なんかより、はるかに殺しがうまい。」
「そりゃ、もっとも」と、全員がうなずく。
さっそく、よく人を殺す医者は誰だと相談をはじめた。
「まず、まったくの無学な医者はダメだ。ヤツらは怖がって、まともな薬はめったに盛らない。どんな病気だろうとロクに診もせず、当たりさわりのない薬をほんのちょっと使うだけで、これじゃただの白湯だ。一服いくらの謝礼のことしか頭になく、毒にも薬にもならなきゃ人を殺すこともできん。」
「それはそうですが、ちょっと学んだだけのエラそうな医者なら人を殺すのが商売ですよ、たった一服でも効果バツグン。」
「イヤイヤ。それは駄目だろう。」
玉座で黙って聞いていた大王が首を振った。
「最近の医者どもは書物を拾い読みするだけでまともに学ぶ気もなく、古医書の会にいっぺん行っただけで、自分から古方家(古医術家)や儒医(儒学者でもある医者)などと名乗りだすしまつ。病は見えず、薬は覚えず、やたらとキツイ薬を処方して殺すもんだから、ここへ送られて来たときには、もう青白くヤセこけて地獄の亡者どもと見分けがつかん。最近の医者は、おのれの無学もかえりみず、昔の唐土の名医にでもなったつもりでエラそうにしているが、しょせん鵜のマネをするカラスだ。こんなヤツらにまかせたら、かわいい菊之丞も薬毒にあたって花の姿も変わり果て、ヤセおとろえて火箸に目鼻になっちまう。……どうか無事に取り寄せ、ふたり仲良く手枕かわしてシャバと冥土の恋物語……ああ、早く日本の若衆の柔肌に触れてみたい。どんな手を使ってもいいから、サッサと連れて来て私の願いをかなえてくれ。」
遠い目をして菊之丞を想う大王だが、さすがの十王たちも万策つきたのか、いい手が浮かばない。
「どうも、われらは悪事には向いてないらしい。ここは修羅道へ使いを立てて、その道の専門家の手を借りたらどうだ。あそこには、太公望、孔明、韓信、張良、孫子、呉子、 義経、正成、 道鬼、 武則──と、手練れの軍師がゴロゴロいる。」
すると、今まですみっこでジッとしていた──色赤く眼光って鏡のごとく、口は耳までさけた──首だけの者がフワフワと飛んできた。 これは、人の一生を見届けて善悪を監視する「見る目」である。見る目はゆっくりと大王の前に進み出た。
「こんなことで修羅道の手を借りたら、この地獄界の恥ですよ。そんなことをしたら、ヤツらの知略、計略で、たちまちこっちの腹の底まで見透かされ、どんな謀をされるかわかられませんよ。小夜嵐の騒動のあと、ずっと太平の地獄界が再び乱世になったら、閻王から獄卒にいたるまで、たいへんな目に合う。この平和な地獄に軍者を引き入れては絶対だめです。オイラは人の肩にとまって善悪を正すのが役目だから、人の思っていることがわかるのですが、菊之丞は、近いうちに役者仲間と連れだって舟遊びに行くようです。この機を狙えば、ラクに菊之丞が手に入りますよ。」
「それは好都合だ。」
この進言には大王も納得したようす。
「川の中ならコッソリ連れ去ることもできよう。よし、急ぎ竜宮へ使いを出して龍王を呼んでこい!」
大王の命令で、地獄で一番足の速い足疾鬼が駆け出す。
足疾鬼はあっという間に千里進んで千里戻り、まもなく八大龍王の頭領、難陀龍王が参内した。
龍王は、頭に金色の竜をいただき、瑪瑙の冠に瑠璃の飾り、珊瑚・琥珀の石の帯、玻璃の笏持ちタイマイ(亀)の沓はいて、まわりに異形の魚たちを従えてやって来た。
玉座の前でウヤウヤしくひれ伏す龍王に大王が声をかける。
「しばらくだ、龍王。今回呼び出したのは、正式な沙汰ではない。じつは…恥ずかしい話だが、私が想いを寄せる恋人が日本の江戸にいる。瀬川菊之丞という美少年だが、これを手にするためにいろいろ手立てを考えてみたが、どうもうまくない。だが、この菊之丞が近いうちに舟遊びに出るらしい。水の中ならおまえの領分だ。急ぎ召し捕ってこい。」
「ご命令、かしこまりました。私の配下には、ワニやサメをはじめ、カッパ、カワウソ、海坊主など、人をさらうのが得意な者がいくらでもいます。この者どもへ申しつけて、さっそくその若衆を召し捕り、大王の願いをかなえて差し上げましょう。」
「それはよかった。」
大王は大いに喜んだ。
「それなら菊之丞が来るまで私は奥に引っこんで、天人どもの三味線でも楽しむとしよう。今後罪人が来ても、そこそこ罪の軽いヤツは追い返して、重いヤツらは六道の辻の牢にでもぶち込んでおけ。そういえばさっきの坊主だが、菊之丞の色香に溺れたことは、はじめはとんでもないと思ったが、若い者にはありそうなことだ。私も人のことは言えなくなったし、罪は問わずにシャバへ返してやれ。しかしそやつが今後、菊之丞を買うことはまかりならんぞ。弁蔵、松助、菊次あたりでがまんしろ。…そうだな、湯島天神や芝の神明宮でならいくらでも遊ぶがいい。」
そう言って大王が奥に引っこむと、玉座の幕がサッと下りた。
みなも退出して、龍王も竜宮へ帰っていく。
大王がそうおたずねになると、人の善悪を記録する神・倶生神がそそくさと現れ、調子よくこの者の罪をならべはじめた。
「ハイハイ、この坊主は大日本国、江戸の修行僧です。これが堺町(芝居と男色の街)の女形、瀬川菊之丞という若衆(男娼)の色に染められまして、師匠の財産に手をつけるわ、寺宝の錦の戸帳を道具市に横流しするわ、果ては行基の作の阿弥陀如来は質屋の蔵へご来迎──と、若衆の恋のしくじり、尻のつまらぬ尻が割れ(バカな目をみて悪事がばれ)、座敷牢に押し込められてしまえば愛しい人にも逢えず、これを苦にしてあの世(人間界)を去って、めでたく地獄へやって参りました。しかし、死んでも忘れられぬは菊之丞の面影、肌身離さず腰につけたのは、当代きっての絵師・鳥居清信が画いた菊之丞の絵姿です。まあ、師匠や親の目をごまかして盗みを働いた罪はありますが、今どきの坊主ときたら表向きは抹香クサい顔してますが、ウラでは遊女狂いに浮かれのぼせて、鴨を明神、葱を神主などとカモネギ食らうナマグサばっかり。それに比べたら優童(男娼)狂いは、まだかわいいほうで、そのバツは剣の山の責め苦からは少し減刑して、彼も大好きなお釜ゆでの刑あたりでどうでしょう。」
「イヤイヤ。」
大王が不機嫌そうに答える。
「こいつの罪は軽いようにみえて、軽くない! シャバ(人間界)では男色というものがあるらしいが、私にはこれがさっぱりわからん。男女の道は陰陽にもとづく自然なことだが、男と男が交わることはありえん!唐土(中国)では、昔から『頑童(その道の少年)を近づけることなかれ』といましめている。まあ、それでも周の穆王が慈童を愛して菊座(肛門)の誉れとなったり、ほかにも、いろいろあやしいヤツはいるがな。日本でも、弘法大師が流水に文字を書いたときに文殊と契り、文殊は師利菩薩となってしまい、弘法は『若衆の開祖』と恥ずかしい称号を得てしまった。熊谷直実は、須磨の浦で敦盛を引き倒して『ハリハドッコイなされける♪』と歌われ、牛若丸は天狗にシメられ、後醍醐帝の阿新丸、信長の蘭丸、その名も高尾の文覚は、平家の遺児の六代御前にうつつをぬかしていらぬ謀反に巻きこまれ、頼朝のとがめを受けて『尻が来る(責任をとらされる)』という言葉を残した。
但馬の城崎温泉や箱根の底倉温泉へ多くの者が湯治に行くのも、みなこの男色が目当てだ。
むかしは、坊主だけが遊んだから『痔』という字は『⽧に寺』なのに、最近では僧も俗も関係なく、みんな引っくるめて楽しむこと、入れ込むこと、ハマること──まったくもってフラチである! 今後シャバ世界では男色を禁止するよう申し渡せ!!」
この、やけに男色に付いての知識が偏重した大王の怒りにみながザワついたが、そのうち十王のひとりである転輪王が、おずおずと前に進み出た。
「大王のご命令にさからうのは恐れ多きことですが、『思ってることを言わないと腹がふくれます』ので、私も言わせていただきます。仰せのとおり、男色に害がないとはいえませんが、その害は女色に比べればたいしたものではありません。たとえれば、女色は『甘き蜜』ですが、男色は『淡き水』のようなもの……無味の味は、佳境に入った者しか味わうことができません。大王は若衆がお嫌いなので酒好きに甘い餅をすすめるようなものですが、菊之丞の評判、その絶色さは、この地獄にまで聞こえてきます。坊主がこの世の思い出にと抱いてきたその絵姿を私も一目見たくてたまりません。どうかこの願い、かなえさせてください、ぜひ!ぜひ!」
何故か目を血走らせて迫ってくる転輪王に、大王も少しひるんだようす。
「蓼食う虫も好き好きとはおまえのことだ。そこまで願うなら、絵姿を見るのは勝手にしろ。だが、私は見ないぞ。若衆など見たくもないから、私は目をつぶる。さあ、目を閉じてるあいだにサッサと絵を開け。」
大王がギュッと目をつぶると、転輪王は急いで絵姿を柱にかけた。
清きこと春柳の初月を含むがごとく
艶なること桃花の暁烟(朝もや)を
帯びるに似たり
みながゾロゾロ集まって来て絵をのぞきこんだが、その姿の艶やかさ──なんとも言葉にもならず、誰もが「はっ」と息をのんで魅入るばかり。
人間界では天から降臨した天女を美しいというが、それは遠くの手の届かない花に憧れるようなもの。
この国では、極楽の天女はいつも凧のように飛びまわっていて珍しくもないから、むしろ人間界の美しさにこそ惹かれるのである。
菊之丞と見飽きた天女とを比べたら、まるで閻魔王の冠と餓鬼のフンドシのようなものだ。
聞きしにまさる菊之丞の姿、天下無双の美しさかな──と、十王をはじめ、見る目は目ん玉光らせ、かぐ鼻は鼻の穴ふくらませ、牛頭馬頭などは額の角をいきり立たせて興奮し、そこら中から感嘆の声が鳴りやまない。
まわりのどよめきに、さすがの大王もガマンできなくなったのか、コッソリ薄目を開けてのぞいて見る──と、たちまち目がまん丸になって、その艶やかさから目がはなせない!
さっきまでバカにしていたことも忘れ、魂の抜けがらのように呆然と見惚れて、思わず身を乗り出した拍子に高い玉座から転げ落ちてしまった。
あわててみなで抱き起こしたが、大王は目もウツロに、しどろもどろだ。
「……みなの前で面目ないが……私は、この絵姿の可愛らしさに胸が締め付けられる思いとなった。まるで遍昭の詠む歌のような気持ちだ。昔から美人と聞こえが高いものは大勢いたが、そんなものとは比べものにならん。西施の目もと、小町の眉、楊貴妃の唇、かぐや姫の鼻、飛燕の腰つき、衣通姫の着こなし──すべて引っくるめたこの姿、花にも月にも菩薩にさえかなうものはない。まして、 唐土でも日本でも、こんな美しいものが二度と生まれてくるとは思えんから、私は冥府の王位など捨てて、これからシャバに行ってこの若衆と枕を共にする……。」
「大王にありながら、けしからん!」
ところが、大王がのぼせてフラフラ出て行こうとすると、 "邪淫の罪"を裁く宗帝王が立ちはだかって、しかめっ面で怒鳴りつけた。
「色に溺れて冥府の王位を捨て、シャバで男と交わるなど言語道断! そんなことでは地獄、極楽の政を執り行うものもなくなり、善悪を正すこともできん。三千世界の民は何をもって教えを乞うのか!貴い、御身が男娼買いなんぞになり果てたら、極楽に満ち満ちている金の砂はたちまち堺町にぼったくられ、それでも足りずに『金のなる木がわしゃ欲しい…』と、極楽のセンセイ、お釈迦さまの黄金の肌までつぶして売っ払うハメになる。地蔵菩薩は長太郎坊主(盲目の乞食)のように子どものなぶりものにされ、びんが鳥(半人半鳥)は両国の見世物となり、天女も女衒に売られ、三途の川の婆は海苔売り婆、仁王などは駕籠かきになるしかあるまい──これでは、地獄の破滅である!
それに、たとえ大王が今どきの息子衆を見習って、短羽織に長脇差、髪は本田(オシャレマゲ)に銀ギセル──と、粋な男娼買いを気取ってみても、とてもごまかせるようなお顔ではない。歌舞伎で海老蔵がそのお姿に似せて舞台に立っただけで、シャバの者はビックリして怖がった。もし、そのお顔で江戸の町をウロついたら、あっという間にウサンくさいヤツと召し捕られ、どこの者だと調べを受ければ『大家は釈尊、名主は大日です』とすっトボけても、どうせ相手にもされず無宿人扱いされてヒドい目みることまちがいなし!これだけ言ってもまだわからぬなら、この宗帝王、この場で腹かっさばいてご覧にいれる。サァ、ご返答いかに!」
宗帝王が顔を真っ赤にして迫ると、後ろから平等王が、今こそ俺の出番と現れた。
「まあ、まあ、宗帝王さんのおっしゃることは、ごもっとも──まさに、木曽の忠太が義仲をいさめて腹を切ったような立派なご意見──ですが、大王さまは意固地なお方、いったん口にしたことはテコでも曲げねぇときた。どうせ何を言ったって、馬の耳に念仏、牛の角のハチときて聞きゃしません。おとこおんなのアヤシげな魅力に取りつかれて王位を捨てるたぁ、俗世の息子衆のやるこってす。地獄、極楽のヌシたる大王さまのやるこっちゃありません。どうでやす、そんなに菊之丞がお望みなら、俗世に誰ぞ使いをやって、菊之丞めをとっ捕まえて来るほうが手っ取り早くすみやすよ。」
平等王の思わぬ提案に「そうだ、それがいい!」と、みなが賛同した。
この案には大王も納得し、さっそくみなで顔つきあわせて菊之丞をさらう作戦を練りはじめた。
まず泰山王が、人の寿命が書いてある定業帳を取り出して調べだす。
「宝暦十二年十一月、佐野川市松、病死……宝暦十三年七月、中村助五郎、病死……。どうも菊之丞の記録はありませんね。まだ命が尽きるときではなさそうです。そうなると、誰かをやって無理やりさらうにしても、あの国には伊勢や八幡をはじめ菊之丞の氏神の王子の稲荷など、この地獄すら見下して屁とも思わない、おっかない姉御や親父連中がついています。表立って事を運べば、やっかいなことになりましょう。」
「なに、そんなことは簡単だ。」
盗みにくわしい初江王が口をだした。
「愛宕山の太郎坊や比良山の次郎坊なんかの天狗連中にやらせれば、誰にも知られずとっ捕まえて来るなどたやすいこと。おい、誰か天狗どもを呼んで来い。」
しかし、五官王が反論する。
「イヤイヤ、それは駄目ですよ。情け知らずで乱暴者の天狗なんかにまかせると、力づくでひっつかまれて、せっかくのかわいいお顔がキズだらけにされてしまいますよ。ここは疫病神を向かわせてはどうでしょう。」
こんどは変成王が、かぶりを振った。
「イヤイヤイヤ、疫病神じゃ、素早く殺すことはできん。少しずつ身体を弱らせ、のんびり殺していては、大王も待ち遠しくてたまらんだろう。それより手っ取り早いのは、俗世に大勢いる医者どもを使うことだ。ヤツらなら疫病神なんかより、はるかに殺しがうまい。」
「そりゃ、もっとも」と、全員がうなずく。
さっそく、よく人を殺す医者は誰だと相談をはじめた。
「まず、まったくの無学な医者はダメだ。ヤツらは怖がって、まともな薬はめったに盛らない。どんな病気だろうとロクに診もせず、当たりさわりのない薬をほんのちょっと使うだけで、これじゃただの白湯だ。一服いくらの謝礼のことしか頭になく、毒にも薬にもならなきゃ人を殺すこともできん。」
「それはそうですが、ちょっと学んだだけのエラそうな医者なら人を殺すのが商売ですよ、たった一服でも効果バツグン。」
「イヤイヤ。それは駄目だろう。」
玉座で黙って聞いていた大王が首を振った。
「最近の医者どもは書物を拾い読みするだけでまともに学ぶ気もなく、古医書の会にいっぺん行っただけで、自分から古方家(古医術家)や儒医(儒学者でもある医者)などと名乗りだすしまつ。病は見えず、薬は覚えず、やたらとキツイ薬を処方して殺すもんだから、ここへ送られて来たときには、もう青白くヤセこけて地獄の亡者どもと見分けがつかん。最近の医者は、おのれの無学もかえりみず、昔の唐土の名医にでもなったつもりでエラそうにしているが、しょせん鵜のマネをするカラスだ。こんなヤツらにまかせたら、かわいい菊之丞も薬毒にあたって花の姿も変わり果て、ヤセおとろえて火箸に目鼻になっちまう。……どうか無事に取り寄せ、ふたり仲良く手枕かわしてシャバと冥土の恋物語……ああ、早く日本の若衆の柔肌に触れてみたい。どんな手を使ってもいいから、サッサと連れて来て私の願いをかなえてくれ。」
遠い目をして菊之丞を想う大王だが、さすがの十王たちも万策つきたのか、いい手が浮かばない。
「どうも、われらは悪事には向いてないらしい。ここは修羅道へ使いを立てて、その道の専門家の手を借りたらどうだ。あそこには、太公望、孔明、韓信、張良、孫子、呉子、 義経、正成、 道鬼、 武則──と、手練れの軍師がゴロゴロいる。」
すると、今まですみっこでジッとしていた──色赤く眼光って鏡のごとく、口は耳までさけた──首だけの者がフワフワと飛んできた。 これは、人の一生を見届けて善悪を監視する「見る目」である。見る目はゆっくりと大王の前に進み出た。
「こんなことで修羅道の手を借りたら、この地獄界の恥ですよ。そんなことをしたら、ヤツらの知略、計略で、たちまちこっちの腹の底まで見透かされ、どんな謀をされるかわかられませんよ。小夜嵐の騒動のあと、ずっと太平の地獄界が再び乱世になったら、閻王から獄卒にいたるまで、たいへんな目に合う。この平和な地獄に軍者を引き入れては絶対だめです。オイラは人の肩にとまって善悪を正すのが役目だから、人の思っていることがわかるのですが、菊之丞は、近いうちに役者仲間と連れだって舟遊びに行くようです。この機を狙えば、ラクに菊之丞が手に入りますよ。」
「それは好都合だ。」
この進言には大王も納得したようす。
「川の中ならコッソリ連れ去ることもできよう。よし、急ぎ竜宮へ使いを出して龍王を呼んでこい!」
大王の命令で、地獄で一番足の速い足疾鬼が駆け出す。
足疾鬼はあっという間に千里進んで千里戻り、まもなく八大龍王の頭領、難陀龍王が参内した。
龍王は、頭に金色の竜をいただき、瑪瑙の冠に瑠璃の飾り、珊瑚・琥珀の石の帯、玻璃の笏持ちタイマイ(亀)の沓はいて、まわりに異形の魚たちを従えてやって来た。
玉座の前でウヤウヤしくひれ伏す龍王に大王が声をかける。
「しばらくだ、龍王。今回呼び出したのは、正式な沙汰ではない。じつは…恥ずかしい話だが、私が想いを寄せる恋人が日本の江戸にいる。瀬川菊之丞という美少年だが、これを手にするためにいろいろ手立てを考えてみたが、どうもうまくない。だが、この菊之丞が近いうちに舟遊びに出るらしい。水の中ならおまえの領分だ。急ぎ召し捕ってこい。」
「ご命令、かしこまりました。私の配下には、ワニやサメをはじめ、カッパ、カワウソ、海坊主など、人をさらうのが得意な者がいくらでもいます。この者どもへ申しつけて、さっそくその若衆を召し捕り、大王の願いをかなえて差し上げましょう。」
「それはよかった。」
大王は大いに喜んだ。
「それなら菊之丞が来るまで私は奥に引っこんで、天人どもの三味線でも楽しむとしよう。今後罪人が来ても、そこそこ罪の軽いヤツは追い返して、重いヤツらは六道の辻の牢にでもぶち込んでおけ。そういえばさっきの坊主だが、菊之丞の色香に溺れたことは、はじめはとんでもないと思ったが、若い者にはありそうなことだ。私も人のことは言えなくなったし、罪は問わずにシャバへ返してやれ。しかしそやつが今後、菊之丞を買うことはまかりならんぞ。弁蔵、松助、菊次あたりでがまんしろ。…そうだな、湯島天神や芝の神明宮でならいくらでも遊ぶがいい。」
そう言って大王が奥に引っこむと、玉座の幕がサッと下りた。
みなも退出して、龍王も竜宮へ帰っていく。
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