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第5章 侵犯
31: 五目いなり
勤務が終わった後、神無月の足は自然にまほろば食堂に向いていた。
キチとの喧嘩から二日経っている。
後遺症が残るような深いダメージは負っていなかった。
島育ちだからというワケでもないのだろうが神無月の身体は丈夫だった。
なんというのか、身体の"芯"が強い。
岩田の件は柏崎を通じて少年課に連絡が行っているし、彼の失踪が現在進行中の商店街の買い占めとなんらかの形で関わっている事も報告してあるから、警察としても本腰を入れるだろう。
そうなれば教師側としては、後は待つしかない。
今、まほろば食堂に行けば又、キチらと鉢合わせする可能性があったが、神無月はキチとの関係だけで考えると食堂の方が反って安全なのだということを、あのカラオケ居酒屋の騒動で新たに知った。
今まで思いもよらなかった事だが、まほろば食堂は、あの片桐を含めて、彼らがそっとしておきたい場所の一つなのかも知れない。
例えば、あのカラオケ居酒屋での片桐などは、正真正銘の極道の貌をしていた。
まほろば食堂では、その貌がない。
極道の貌をして、オムライスを食べても美味くはないのだろう。
それに神無月はキチにやられたからといって、キチから逃げ回るような事はしたくなかったのだ。
自分でも大人げないとは思ったが、それが自分という男なのだと神無月は思っていた。
まほろば食堂には一番乗りだった。
この前、加賀美を連れてきたようにのれんが上がる前というような無粋な事はしないが、食堂が空くのを、今か今かと待ち望んで行ったことに違いはない。
「おっ、久しぶりだね。」
「よして下さいよ。何ヶ月も顔を出さなかったわけじゃあるまいし。」
親父は神無月の顔の絆創膏を見てもなにも言わない。
肌色のテープ状のものでパッと目には目立たないが、面と顔をつき合わせれば直ぐに判る。
「だな、毎日のように顔を見せてくれるお客が来ないとな。商売抜きに、なんとなく心配になるんだよ。ああそれと、今日はキョウが来てるぜ。今、奥で仕込みをやってる。呼ぼうか?」
「いや、待ってますよ。でもどうしたんです?」
神無月が笑いながら言った。
もちろん、内心では早くキョウの顔が見たかった。
「アイツもあんたに会いたがってるのさ。いやさ。あんまりこの店に顔を出さないと、自分の顔を忘れられるからってな。、、、まぁたぶん言い訳だろう。アイツなんか悩んでるんじゃないかな。」
「悩んでるって、それは親父さんが相談に。」
「いや、俺はそんな柄じゃねえ、第一、アイツの親父がしてこなかった事を、なんで俺が代わりにやるんだよ。」
親父が珍しく不機嫌な顔を見せた。
「、、、それもそうか。あっ、今日のお勧めは?」
「あんたなぁ、、、。」
「あっ、そうだっけ、紙に書いてありましたよね、、。」
「そうだよ。いい加減覚えなよ。今日は五目いなりだ。そういう気分だったんで作ってみた。自分なりに良くできたと思ってる。揚げに味がよくしんで、中の五目飯とのバランスが絶妙だ。揚げは甘いがしつこくない。」
「いいですねぇ。小さい頃、婆さんが何か良いことがあったら良く作ってくれたもんだ。でも婆さんのは揚げが無茶苦茶甘くてね。子どもの頃は美味かったけど、大人にはアレ、一つか二つでギブアップだろうな。」
親父が神無月の反応を嬉しそうに聞いている。
味付けの考慮を喜んでいるのか、良いことがあった日に作るに反応しているのか、神無月には判らなかった。
「苦いお茶も入れてやるからさ。酒を飲む前に試してくれよ。いっとくけど、大きいからな。けっこう腹がふくれるぞ。」
親父が準備の為に、店の奥に引っ込んだ。
こういう店で出す五目いなりなら、小さく作って体裁良く皿に盛って出す方が利が上がるだろうにそうしない。
この親父は、そういうところに商売気がなかった。
こうやって毎日を楽しんでいるのだろうと神無月は思った。
「カムイっち!今晩わ!」
神無月の横手から声がかかった。
いつ準備に入ったのか、タコ焼き台の横にキョウがいた。
カムイの下の「さん」付けがとれていて、「カムイっち」に変わっているのが嬉しかった。
いつものジーンズ姿だったが、何か雰囲気が違っていた。
呼び方もそうだったが、色々なものが明るく艶やかになっている気がした。
今すぐ、キョウの側に行って話したかったが、何も出来なかった。
考えてみれば、話すことなどなにもないのだ。
神無月はただの客だ。
もちろん、用もなく側に近寄る事も、呼びつける事も出来ない。
だがそうしたい。
神無月は自分でもその気持ちが説明できなかった。
「あっ、久しぶりに、キョウ君のタコ焼き食べたくなったな。親父さんのを食べ終わったら、ビールと一緒に食べるから焼いてくれる?」
「アイヨ~♪タコ焼き一丁、」
神無月は、昔、耳に馴染んだ、インスタントラーメンのTVCMを思い出した。
可愛らしいマスコットボーイが登場してこれをやる。
「あ~らよ♪ 出前一丁!」
もちろんキョウがそれをリアルタイムで知っているはずがない。
しばらくして親父が、大降りの五目いなりが二つと、綺麗なピンクのガリが乗った長方形の皿と熱いお茶が入った湯飲みをカウンターの上に置いた。
「このショウガの甘酢漬けも色がきれいだね。これも親父さんの?」
「ああ。こういうのは全部自前でやる。自分で作れて味が納得できるものに調整できるんだ。作らない方がおかしいやろ。」
確かに、親父の作った五目いなりは美味いと神無月は思った。
祖母が作ってくれた味を思い起こさせたが、ただ闇雲に甘辛いわけでもなく、具になっているゴボウや鶏肉が作り出す味わいと美味く融和していた。
「、、あんたにアレを頼んでみるか、、センセーだしな」
親父が五目いなりを美味しそうに食べている神無月を、見ながら小声で言った。
つい先程、自分は他人の息子の面倒等みないと言ったばかりなのにだ。
しかも、キョウ自身の思惑を飛び越えてだ。
「えっ、何を?」
「キョウの事だよ。ホントはあのお釜が責任とらないとダメなんだがな。」
「えっ、えぇ、ホントに何の事言ってるんですか?」
「しゃぁない、思い切って言うよ。お役さんあんたキョウの事気に入ってるだろ?」
「ええっ、まあ」
「でキョウもあんたの事の気にってる。こういうのはさ、肉親とか親戚とか、かえってそういうのじゃないほうが上手く行くときがあるんだよ。、、、キョウがオカマぽいのは気がついてるだろ?」
「あっ、はい。」
「そこに王が目を付けやがったんだ。他の野郎なら、何もいわんさ。何をやろうが、キョウの人生だからな。俺もキョウの親父も、そうやって生きていた人間だから、人には偉そうな事は言えた柄じゃない。でも王はダメだ。いやほんと男同士だからって事じゃない。王だからだ。」
神無月は思わぬ展開に口が渇いた。
いや五目いなりで口が乾いたのかも知れないが、同じ事だった。
思わず、湯飲みに手が伸びそうになったが、我慢した。
どうも話のレベルが、そんな場合ではないという感じだった。
「あのオカマが責任をとるべきって言いましたよね。あのって、誰です?その人の方が適任なら、その人がやった方がいいと思いますけど。門外漢の俺よりマシだし」
思わず門外漢という言葉を使って、しまったと神無月は思ったが、親父はその事については何も言わなかった。
「あのおかまってのは、この近所で店やってる手枷足枷っていうオカマバーのママの事だよ。そいつがキョウの事を、王に紹介しやがったんだ。てめえ自身が、王が危ない野郎だって判ってるくせにな。俺はキョウが、あそこのママと親しくする分については、黙ってるつもりでいた。あいつもそれなりの苦労人だからな。それを裏切りやがって。」
親父は本気で悔しそうに言った。
こういう姿を、この親父が見せるのは始めてだった。
「カムイさーん。そろそろ、焼こうかな?」
横からキョウの声が聞こえた。
「ああ、頼むよ!」
神無月は、こんな場面で、そう普通に答えられる自分に驚いていた。
「そういう事でな、お客さん、頼むぜ、単純な事だよ。男が好きでもいい、だが"女の気持ちでヤバイ奴とは、つき合うな"って事だ。男は男として、まっとうに男を好きになれって事だ。」
神無月には、親父の言っている意味が皆目判らなかった。
そして同時にこの端折った言い方では、この親父がもしキョウに話をしたとしても埒が明くとはとても思えなかった。
だからと言って、自分がそれをやって、上手く行くとも思えなかったのだが…。
キチとの喧嘩から二日経っている。
後遺症が残るような深いダメージは負っていなかった。
島育ちだからというワケでもないのだろうが神無月の身体は丈夫だった。
なんというのか、身体の"芯"が強い。
岩田の件は柏崎を通じて少年課に連絡が行っているし、彼の失踪が現在進行中の商店街の買い占めとなんらかの形で関わっている事も報告してあるから、警察としても本腰を入れるだろう。
そうなれば教師側としては、後は待つしかない。
今、まほろば食堂に行けば又、キチらと鉢合わせする可能性があったが、神無月はキチとの関係だけで考えると食堂の方が反って安全なのだということを、あのカラオケ居酒屋の騒動で新たに知った。
今まで思いもよらなかった事だが、まほろば食堂は、あの片桐を含めて、彼らがそっとしておきたい場所の一つなのかも知れない。
例えば、あのカラオケ居酒屋での片桐などは、正真正銘の極道の貌をしていた。
まほろば食堂では、その貌がない。
極道の貌をして、オムライスを食べても美味くはないのだろう。
それに神無月はキチにやられたからといって、キチから逃げ回るような事はしたくなかったのだ。
自分でも大人げないとは思ったが、それが自分という男なのだと神無月は思っていた。
まほろば食堂には一番乗りだった。
この前、加賀美を連れてきたようにのれんが上がる前というような無粋な事はしないが、食堂が空くのを、今か今かと待ち望んで行ったことに違いはない。
「おっ、久しぶりだね。」
「よして下さいよ。何ヶ月も顔を出さなかったわけじゃあるまいし。」
親父は神無月の顔の絆創膏を見てもなにも言わない。
肌色のテープ状のものでパッと目には目立たないが、面と顔をつき合わせれば直ぐに判る。
「だな、毎日のように顔を見せてくれるお客が来ないとな。商売抜きに、なんとなく心配になるんだよ。ああそれと、今日はキョウが来てるぜ。今、奥で仕込みをやってる。呼ぼうか?」
「いや、待ってますよ。でもどうしたんです?」
神無月が笑いながら言った。
もちろん、内心では早くキョウの顔が見たかった。
「アイツもあんたに会いたがってるのさ。いやさ。あんまりこの店に顔を出さないと、自分の顔を忘れられるからってな。、、、まぁたぶん言い訳だろう。アイツなんか悩んでるんじゃないかな。」
「悩んでるって、それは親父さんが相談に。」
「いや、俺はそんな柄じゃねえ、第一、アイツの親父がしてこなかった事を、なんで俺が代わりにやるんだよ。」
親父が珍しく不機嫌な顔を見せた。
「、、、それもそうか。あっ、今日のお勧めは?」
「あんたなぁ、、、。」
「あっ、そうだっけ、紙に書いてありましたよね、、。」
「そうだよ。いい加減覚えなよ。今日は五目いなりだ。そういう気分だったんで作ってみた。自分なりに良くできたと思ってる。揚げに味がよくしんで、中の五目飯とのバランスが絶妙だ。揚げは甘いがしつこくない。」
「いいですねぇ。小さい頃、婆さんが何か良いことがあったら良く作ってくれたもんだ。でも婆さんのは揚げが無茶苦茶甘くてね。子どもの頃は美味かったけど、大人にはアレ、一つか二つでギブアップだろうな。」
親父が神無月の反応を嬉しそうに聞いている。
味付けの考慮を喜んでいるのか、良いことがあった日に作るに反応しているのか、神無月には判らなかった。
「苦いお茶も入れてやるからさ。酒を飲む前に試してくれよ。いっとくけど、大きいからな。けっこう腹がふくれるぞ。」
親父が準備の為に、店の奥に引っ込んだ。
こういう店で出す五目いなりなら、小さく作って体裁良く皿に盛って出す方が利が上がるだろうにそうしない。
この親父は、そういうところに商売気がなかった。
こうやって毎日を楽しんでいるのだろうと神無月は思った。
「カムイっち!今晩わ!」
神無月の横手から声がかかった。
いつ準備に入ったのか、タコ焼き台の横にキョウがいた。
カムイの下の「さん」付けがとれていて、「カムイっち」に変わっているのが嬉しかった。
いつものジーンズ姿だったが、何か雰囲気が違っていた。
呼び方もそうだったが、色々なものが明るく艶やかになっている気がした。
今すぐ、キョウの側に行って話したかったが、何も出来なかった。
考えてみれば、話すことなどなにもないのだ。
神無月はただの客だ。
もちろん、用もなく側に近寄る事も、呼びつける事も出来ない。
だがそうしたい。
神無月は自分でもその気持ちが説明できなかった。
「あっ、久しぶりに、キョウ君のタコ焼き食べたくなったな。親父さんのを食べ終わったら、ビールと一緒に食べるから焼いてくれる?」
「アイヨ~♪タコ焼き一丁、」
神無月は、昔、耳に馴染んだ、インスタントラーメンのTVCMを思い出した。
可愛らしいマスコットボーイが登場してこれをやる。
「あ~らよ♪ 出前一丁!」
もちろんキョウがそれをリアルタイムで知っているはずがない。
しばらくして親父が、大降りの五目いなりが二つと、綺麗なピンクのガリが乗った長方形の皿と熱いお茶が入った湯飲みをカウンターの上に置いた。
「このショウガの甘酢漬けも色がきれいだね。これも親父さんの?」
「ああ。こういうのは全部自前でやる。自分で作れて味が納得できるものに調整できるんだ。作らない方がおかしいやろ。」
確かに、親父の作った五目いなりは美味いと神無月は思った。
祖母が作ってくれた味を思い起こさせたが、ただ闇雲に甘辛いわけでもなく、具になっているゴボウや鶏肉が作り出す味わいと美味く融和していた。
「、、あんたにアレを頼んでみるか、、センセーだしな」
親父が五目いなりを美味しそうに食べている神無月を、見ながら小声で言った。
つい先程、自分は他人の息子の面倒等みないと言ったばかりなのにだ。
しかも、キョウ自身の思惑を飛び越えてだ。
「えっ、何を?」
「キョウの事だよ。ホントはあのお釜が責任とらないとダメなんだがな。」
「えっ、えぇ、ホントに何の事言ってるんですか?」
「しゃぁない、思い切って言うよ。お役さんあんたキョウの事気に入ってるだろ?」
「ええっ、まあ」
「でキョウもあんたの事の気にってる。こういうのはさ、肉親とか親戚とか、かえってそういうのじゃないほうが上手く行くときがあるんだよ。、、、キョウがオカマぽいのは気がついてるだろ?」
「あっ、はい。」
「そこに王が目を付けやがったんだ。他の野郎なら、何もいわんさ。何をやろうが、キョウの人生だからな。俺もキョウの親父も、そうやって生きていた人間だから、人には偉そうな事は言えた柄じゃない。でも王はダメだ。いやほんと男同士だからって事じゃない。王だからだ。」
神無月は思わぬ展開に口が渇いた。
いや五目いなりで口が乾いたのかも知れないが、同じ事だった。
思わず、湯飲みに手が伸びそうになったが、我慢した。
どうも話のレベルが、そんな場合ではないという感じだった。
「あのオカマが責任をとるべきって言いましたよね。あのって、誰です?その人の方が適任なら、その人がやった方がいいと思いますけど。門外漢の俺よりマシだし」
思わず門外漢という言葉を使って、しまったと神無月は思ったが、親父はその事については何も言わなかった。
「あのおかまってのは、この近所で店やってる手枷足枷っていうオカマバーのママの事だよ。そいつがキョウの事を、王に紹介しやがったんだ。てめえ自身が、王が危ない野郎だって判ってるくせにな。俺はキョウが、あそこのママと親しくする分については、黙ってるつもりでいた。あいつもそれなりの苦労人だからな。それを裏切りやがって。」
親父は本気で悔しそうに言った。
こういう姿を、この親父が見せるのは始めてだった。
「カムイさーん。そろそろ、焼こうかな?」
横からキョウの声が聞こえた。
「ああ、頼むよ!」
神無月は、こんな場面で、そう普通に答えられる自分に驚いていた。
「そういう事でな、お客さん、頼むぜ、単純な事だよ。男が好きでもいい、だが"女の気持ちでヤバイ奴とは、つき合うな"って事だ。男は男として、まっとうに男を好きになれって事だ。」
神無月には、親父の言っている意味が皆目判らなかった。
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