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#02 夜事の饅頭怖い 前編(悪い女)

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     先日、ネットオークションを覗いているとクリスチャンルブタンのピンヒールが出品されていました。
 しかも、サイズは25.5センチ。
 入札金額が安かった事もあり、ユウリは反射的にオークションに参加していました。
 そしてユウリは定価が10万円以上するパンプスを格安の値段で落札する事に成功したのです。

    ユウリには宝くじで当てた10億という隠し金がありますから、パンプスなど新品の超高級品が買えるわけですが、お金は他に使い道がありますし、なによりもこのパンプスが何処かの女性の持ち物だったいう事が大切なのです。

 後日、家に届いたクリスチャンルブタンのパンプスは程度も良く、履いた形跡がほとんどない品物でした。
 出品者の説明によると、そのパンプスは貰い物でサイズが大き過ぎたので一度も履いていないとの事でした。
  一度も履いていないというのは嘘でしょうが、それはもちろん全然問題ではありません。

 仕事から帰ったばかりのユウリは、早速届いたばかりのパンプスを男物の靴下の上から履いてみました。
    まるでオーダーメイドの様にサイズがピッタリで、10センチ以上あるハイヒールなのに、いつも感じている女性物のつま先に感じる痛みもありませんでした。
 しかも、ソールの強度もしっかりしていて安物のハイヒールの様にヒールがグラグラして転びそうになる事もなく歩き易い靴でした。

 最近のユウリは、男運にも恵まれず、釣り餌としてのオンナノコにもなれず、結果、女装外出もストレス発散の為のショートタイムショーみたいな状況で、たまに靴等を新調しようと思っても市販されている女物の靴は24.5センチが最大サイズで、男にしては小さな25.5センチのユウリでも、普通に履ける靴はほとんどなく、いつも小さな靴を無理して履き特にヒールのある靴の場合は、つま先が痛くなり軽い拷問を受けている状態が続いていたのです。
 靴選びでも女装に時間がかけられていたすこし前の頃が懐かしくなるのです。

 ユウリは自分の足のサイズにピッタリのパンプスにテンションが上がり、エナメルの深い黒色とクリスチャンルブタン特有の真っ赤なソールの組み合わにセクシーさを感じ、直ぐにでも女装外出がしたくなりました。
    正確に言えば、このヒールを履いた自分を男達の目に晒したいという欲求ですね。
 ユウリは逸る気持ちを抑えてシャワーを浴び、『早く永久脱毛をしないと』と思いながら、ムダ毛の処理を済ませ女装準備を始めました。

 最近のユウリの場合、女装で注目を浴びる事をさけてます。
    沢山の男の目はいらない。
    ホンモノの"ユウリ"に辿りついてくれる男が私を見つけてくれればそれでいいのです。
    それともう一つの理由は、軽い気持ちで立ち上げた偽装会社がそれなりの軌道に乗ってしまった事もあります。
    せっかく社会のルールから外れ自由な生き方をしょうとしていたのに、その為の偽装が仇になったかたちです。

 なので安易に女装がバレる事を避ける為に、地味な格好を心掛けていて、近頃はスキニーパンツを穿く事が多いし、化粧はナチュラルメイクにして、靴はペッタンコ靴を履いているんです。
 でもその日だけは届いたばかりのピンヒールに合わせて洋服を選ぶ事にしました。

 まず、裸足にパンプスを履く訳にはいかないので、いつもの様にパンプス用の靴下を履きましたが、それはあまりもセクシーな靴とミスマッチなのでバレエ用のピンクベージュのタイツを着用する事にしました。
 バレエ用のタイツはデニールが高いので、ユウリの少しゴツゴツした脚を滑らかな女性らしい脚に変身させてくれます。
 タイツ生地は暑くるしく感じましたが、少し涼しい夜だったので我慢出来るレベルでした。
 それに、ピンクベージュのタイツは遠目には生足に見え、逆に良い感じの印象になるものだと思えました。

 ユウリは久しぶりの自分のタイツ姿を見て、脚を露出したくなり、普段のスキニーパンツではなくスカートを履く事にし、クールなピンヒールに合いそうなキャバ嬢風のスーツを着る事にしました。
 その日のコーディネートの方針を決めたユウリは、改めてボディメイクを始めます。

 一旦、全裸になった後、ベージュのショートガードルで股の下に折り曲げたペニスを潰して平らにし、太ももの側面にシリコン製のヒップパッドを貼り付けました。
 このヒップパッドは、最近のお気に入りで女性用のヒップパッドとは違い、お尻を丸くセクシーにすると言うより、骨盤が広がった状態に見せる効果が高く、付けると女性らしい下半身の印象になり横幅が広がったお尻のお陰で、ウエストも細く見えるんです。

 ユウリは、鏡の前でヒップパッドの位置を調節してから、バレエ用のタイツを穿きました。
    厚手のタイツのお陰でヒップパッドの継ぎ目も目立たなくなり、ユウリの下半身は、まるで何も穿いていないパイパン女性の下半身に見えました。

 続いて、上半身のボディメイクの為、ヌーブラとテープを使って脇の肉を胸に集めておっぱいの膨らみを作り、普段はアウターに響くので敬遠していた赤と黒のレースで出来た派手なブラを装着しました。
 厚めのパッドが入った派手なブラの内側からは、おっぱいの膨らみがはみ出し、胸の谷間が出来ていました。
 男性には分からないと思いますが、手間を掛け気合さえ入れれば、女性の胸の大きさは幾らでも大きくする事が出来ます。

 キャミソールを着たユウリは、顔のメイクに取り掛かりましたが、派手なメイクはナチュラルメイクよりも簡単でいつもより短時間でメイクを完成させる事が出来ました。
 最後の仕上げに、最近はお蔵入りさせていたままの明るいブラウンのロングウィッグを被り、水商売の女性風にセットし、派手目の付け爪を装着して最後にスーツを着ました。

 鏡に映ったユウリの姿は、少し気が強いキャバ嬢に見え、タイトスカートとウエストが絞られたジャケットが女らしい体形を強調していました。
 大きく開いた胸元が寂しかったので、大き目のネックレスをかけ、同じデザインモチーフのイヤリングを着けました。

 ジャケットを着ると後姿が男っぽくなるのが普通なので、ユウリは念の為にビデオカメラで自分の後姿を撮影して確認してみました。
 大きく広がったカールしたウィッグと、ヒップパッドで大きくなったお尻のお陰で、ユウリの後姿はセクシーな女性にしか見えませんでした。

 女装が完成したユウリは、お気に入りのシャネルのバッグから女物の財布を取り出し、お金やカードを男物の財布から移し替え、携帯用のメイクポーチの中身を今日のメイクに使った化粧品に移し替えました。
 そして、クリスチャンルブタンのピンヒールを履いて全身を鏡に映してみると、180センチ近くになったユウリの姿は、背が高いという印象ではなく、細くて長い脚が目立っていて、スタイルの良い30代前半の水商売風の女性に見えました。

 この格好は自宅付近の住宅街には不自然だと思ったユウリは、車で夜の繁華街に繰り出す事にし、体にシャネルのチャンスを振り掛け部屋を出ました。
 フローラルな香水の匂いに包まれ、心地良いピンヒールの靴音を響かせながらマンションの廊下を歩き、自動車に乗り込んだユウリは、運転がしにくい事と靴を傷つけないようにピンヒールを脱いで運転席に座りました。


 繁華街に到着したユウリは、久しぶりの派手目な女装に緊張していました。
    けれど、勇気を出して自動車から降り夜の繁華街を歩き始めたのです。

 普段の目立たない女装姿と違って道行く人の注目を多く浴び、結果すれ違う人から「変態の女装男」と思われているのではないかという不安に苛まれました。
    年齢から来る自信のなさと云うか、女装も「盛り」の時期というものがあるのかも知れませんね。
    妻と別れるのがもう少し早ければ、そしてこの世界、(女装の事ではありませんよ、)つまり男の身体を愛する世界の事を知るのが早ければ、"旬の女装"に溺れていたかも知れません。

 ユウリは通行人の視線から逃げるようにコンビニに入り、店内のガラスや鏡に自分の姿を映して、おかしな所がないか確認しました。
 鏡に映ったユウリの姿は、女性にしか見えませんでしたが、客観的な自分の見え方が知りたかったユウリは、買うつもりのなかったヘアピンをかごに入れ、レジに向かいました。

 レジには若い女性が二人いて、ユウリの姿を見ると不愛想に「いらっしゃいませ」と言うとレジを操作して、最後に「49」と書かれた青いキーを押しました。
 コンビニには性別と年齢を打ち込むキーがあり、「49」と書かれた青いキーは「30歳から49歳の男性」を表していて、それから考えるとユウリの女装はバレている様子でした。

 やはり、若い女性の観察眼は鋭く、男が気付かない変化や違和感を敏感に感じ取っていて、女装に対する若い女性のチェックをクリアーする事は困難だと痛感しました。
 ユウリは、自分の女装テクニックの未熟さを知り、恥をかいたついでに今後の勉強の為にと、レジの若い女性に「やっぱり、直ぐに男だと分かりましたか?」と聞いてみました。
 すると、レジの女性は驚いた表情をして、ワントーン高い声で「えっ!嘘っ!」と叫ぶと「いえ!いえ!全然気づきませんでした!背の高い綺麗な人だな~と思っていました!」と満面の笑顔で言いました。
 その後もレジにいたもう一人の女性と一緒になってユウリの見た目を褒めてくれた店員さんに、ユウリは青の「49」のキーを押した理由を聞いてみると、彼女はどんなお客さんでも青の「49」のキーを押す事が癖になっているだけだと言いました。

 そして彼女は「○○の人ですか?」と近所にある有名なゲイバーの店名を出し、ユウリがそのお店のニューハーフホステスなのか?と確認して来ました。
 ユウリは、例え女装がバレても、変態の女装男だとは思われず、ニューハーフさんだと思われるだけだと分かり自分の女装に自信が戻ってきて、レジの女性達に「今度、お店に遊びに来てね」と余裕の対応で別れる事ができました。

 自分の女装が客観的に見ても完成度が高い事を再確認出来たユウリは、胸を張って道を歩き、通行人達の視線を楽しむのでした。
 まだまだ女装でもいけるのだ思えたのは最高の収穫です。


 ユウリは男性からの熱い視線を感じながら、ナンパして来る男達を無視し、ユウリよりもオンナとしての派手さのレベルが見劣りする女性達を見ながら歩く事に優越感を覚えていました。
    これは不思議な感覚です。
 悪い男ですね。

 女装がバレるかもしれないという緊張感から解放されたユウリは、ゆっくりとセクシーに歩く余裕も出来て存分に自分の外国人モデルの様なスタイルを男性達に見せつけてやりました。
 カップルとすれ違う時に、ユウリを見て来る彼氏に微笑んだりもしました。

 そして、新しく買った靴が、幾ら歩いても痛くならない事もあってユウリは更なる刺激を求めて、この女装外出をもっと楽しんでやろうと思いました。

 閉店間際のファッションビルに入り、女子トイレで着ていたキャミソールを脱いで、ブラの上から直にジャケットを着て、ジャケットの一つしかない前のボタンを留めました。
 女子トイレの洗面台に自分の姿を映してみると、胸元が大きく開いたジャケットからは、苦労して作った胸の谷間が剥き出しになっていて、おっぱいの膨らみは動く度に波打つ様に揺れ派手なブラがチラチラと見えました。
 ユウリは女としての魅力が大幅にアップした事に満足し、少し控えめにしていたメイクを、更に派手目に直す事にしました。

 すると、トイレの個室から大学生くらいの可愛い女の子が出て来て、ユウリの隣で手を洗い始めました。
 鏡に映った女の子は、背が低く可愛い感じでしたが、顔の大きさはユウリと同じくらいだったので、スタイルが悪く見えました。
 特に彼女の足は短く、ユウリの腰の高さが彼女の胸の高さで、同じ鏡に映っているユウリのスタイルと比較すると、彼女が可愛そうに感じました。

 すると、手を洗い終わった女の子は逃げる様に女子トイレを出て行ったので、ユウリは視線を自分の顔に戻すと、鏡の中のユウリは意地悪そうな表情で微笑んでいました。
 男の格好の私をなら、彼女を単純に可愛い女の子だと思っていた筈ですが、女装をしてスタイルの良い女性に変身していたユウリは、無意識にその女の子を女として見下していて心の中で「勝った!」と思っていたのです。
 ユウリの精神状態は変化していて、心まで「女装」してるんです。
 それも性格の悪いオンナにです。

 化粧直しが終わったユウリは、女子トイレを出て女性客しかいないファッションビルを歩き、女として他の女性を値踏みして、自分より見た目が劣る女性を見て優越感に浸っているんです。

 やがて、ファッションビルに閉店のアナウンスが流れたので、ユウリは外に出て飲み屋街に向かいました。
 男の格好の時は、しつこい位に声を掛けて来る呼び込みの男達が、ユウリを無視する事が面白く思えましたが、その代わりキャバクラのスカウトの男が寄って来たり、ホストクラブの男に声を掛けられるのでユウリは飲み屋街を後にして、又、一般の繁華街に戻りました。

 駅前の歩道を歩いていると、やはり胸の谷間の魅力は絶大で、男達はユウリのおっぱいに視線を集中し女達は嫉妬と軽蔑の眼差しでユウリを見ていました。
 ユウリは自分の女としての魅力で男達が興奮している姿を見て誇らしく感じ、一部の女性の負け犬の様な表情を見ては優越感に浸っていました。

 特にユウリが気に入ったのは、カップルに見られる時で、同時に二つの優越感というか快感が得られました。
    これは不思議な感覚です。
    別にユウリは、女性としてみなされ男性に愛されたいとは思っていないからです。
 そうではなく、ユウリの胸元に釘付けになって鼻の下を長くしている彼氏に対して不機嫌になる彼女達の姿が楽しく、これは不細工な女性には一生味わえない感覚なんだだと思うと、余計に女装が楽しく感じるのです。

 やはり、女性は見た目が大きいなと、綺麗な女性と不細工な女性は全く違う人生を歩む事になるのかも知れないなと思いました。
    現に私の妻もそうでした。
   彼女とは大学時代の同棲から始まってケリをつける形での結婚だったのですが、もし妻が人並み以上の美貌を持っていたら、それはどうなっていたかはわかりません。

 私は、最近、女装がバレる事が怖くて地味な格好して来た事が愚かに思え、これからも女の魅力を全面に押し出した女装をしようと決意しました。
    ただしそれは気分転換の時の為、自分へのご褒美としてです。
 ユウリのお手本になる女性は山程います。
   なにしろ今のユウリは"化ける事"が簡単に出来るのです。
   その時々に感じた魅力を感じた女性像をなぞればいいわけですから。

    ………………………………………………………

 ここからの話は過日、仕事で名古屋に行った時の話です。
 名古屋にはよくお邪魔するんですが、ユウリとしはあまり縁のない場所なんですよね。

 先方とのアポの時間が朝早かったので、私は○○の自宅から打合せ場所の名古屋まで、電車で直行する事にしました。
 でも、前日の夜に先方から時間を二時間ずらして欲しいと私の携帯に連絡がありました。
 私は、仕事仲間にその旨を伝えましたが、彼は「会社に出勤しても、直ぐに出掛ける事になるから、予定通り直行していいよ」と言ってくれました。

 その頃、仕事が忙しくて女装をしていなかった私は、ストレス発散の為に衝動買いしたウィッグや女物の洋服が未着用の状態で溜まっていたので、久しぶりに女装をするつもりでした。
    早めに電車に乗り、OLさんの出勤気分も味わおうと思いたち、名古屋で男物のスーツに着替えて打合せする事にして早起きをして女装の準備を始めました。

 始めはOLらしい装いをしようと思いましたが、電車では他人に長時間至近距離で見られる事になるので、男だとばれない事に重点を置く事にしました。
 まず、ユウリの女らしい体の部分を強調する為に、パッドやテープで作った胸の谷間が見えるVネックのカットソーを着て、ムダ毛のないむっちりとした太ももを見せる為にフレアミニを履きました。

 そして、男っぽい体の部分を隠す為に、女にしては少しゴツゴツとした膝をニーハイソックスで隠し手の甲に浮き出た血管を、カーディガンを萌え袖にして隠しました。

 鏡で確認したユウリの姿は、OLにしてはかなり痛い格好になっていたので、パンツ姿に着替えようと思いました。
    けれど久しぶりの女装だったので、買ったばかりのスカートを履きたかったユウリは結局、OLになる事を諦め、学生風の派手で若いアイメークに落ち着きました。
 そして、男っぽい喉と額を明るめのカールしたウィッグで隠して、普段よりも多めのアクセサリーを着け、派手目のネイルを貼るとユウリの見た目は服飾系の専門学校生に見えるようになりました。いやそれっぽいという感じですね。

 新しく買ったウィッグは、髪型をセットした状態で販売されていた物で、ユウリが思っていたよりも可愛いくサイドのカールした髪の毛がフワッとしていて、小顔効果がありついでに買ったリボンも似合っていて、ユウリのテンションはかなり高くなりました。

 やはり、女装して可愛い女の子になれた事が嬉しくて、つい調子に乗って過剰なメイクやアクセサリーを付けたくなりましたがTPOを無視した女装は、悪目立ちして女装がばれる危険性が高くなります。 
   なのでいつも駅で見かける可愛い女の子を参考に、気持ちは服飾系の専門学校生になりきりキャリーバッグに男物のカバンとスーツと靴を詰めて駅に向かいました。

 特急の始発駅に到着したユウリは、久しぶりの早朝女装に緊張しながら、早朝なのに人が多い事に戸惑っていました。
 でもユウリの女装に気付いた人がいなかったので安心し、乗車率70%くらいの特急電車に乗り込み二人掛けのシートの窓際に座り膝の前にキャリーバッグを置きました。

 今度も久しぶりの女装でしたが、スカートで電車のシートに座ると、下着で直接シートに座る感じになり、又、忘れ掛けていた女装の感覚を思い出す事が出来ました。

 長時間見られる事で女装がばれない保険用にと、ユウリがマスクをつけていると電車の発車間際に若い女性が乗って来て、ユウリの席の横に立ってユウリを見下ろして来ました。
 ユウリは、いきなり女装がばれたのかと思い、彼女を見上げると、彼女はユウリに軽く会釈したので、彼女がユウリの隣の席に座りたいのだと分かり、ユウリは隣の席にまで広がっていたスカートの裾を直すと、彼女はユウリにもう一度会釈をして隣に座りました。

 ユウリの隣に来た女性は、ユウリとよく似た格好をした二十歳前後の学生風の女の子で、ユウリと違いスカートではなくデニムのショーパンを履いていましたが、それ以外は大きなキャリーバッグを持っている所まで、ユウリと良く似た格好をしていました。

 類は友を呼ぶと言いますが、彼女はユウリを自分と同類の「女の子」だと認識した様子でした。
 女装がばれやすいのは、圧倒的に若い女性で、彼女達は僅かな違和感も見逃さず、瞬時に女装を見破る事が出来るので、若い女性に女装がばれなければ、その女装は合格点だと言えます。
 ユウリは自分の女装がばれるレベルではない事に安心していると、その女性は持っていたキャリーバッグをシートの前の床に寝かせる様に置き、脚をキャリーバッグの上に乗せる様に座りました。

 彼女の膝を立てて座る格好はセックスを連想させるので女性としてかなりはしたない格好で、初対面の男の前では決してしない姿勢なので、彼女がユウリを完全に女だと思って油断している事は間違いないと思えました。

 男の格好で電車に乗っていると、隣に若い女性が座って来る事は滅多にありませんが、女装をしていると若い女性が寄って来る事が多く、ユウリは名古屋までの退屈な移動時間を、ユウリにお尻を密着させて座っている彼女を眺める事で解消出来て、嬉しい気分でいました。
    日常的な関わりで自然と女性の人肌が恋しくなるのは、それなりにあった妻との生活の名残でしょう。
 しかし彼女は、電車が最初に停車した駅で降りてしまいました。

 ユウリは、少しがっかりしましたが、隣に座って来る人がいなかったので、エコノミー症候群になりそうなくらい窮屈だった膝の前に置いたキャリーバッグを、先程の彼女を見習って床に倒して置き、キャリーバッグの上に脚を伸ばして乗せました。

 ところが、小柄でショーパンを履いた彼女とは違い、長身でフレアスカートのユウリは、膝を立てた姿勢のせいでスカートが捲くれ脚の隙間からスカートの中が丸見えになってしまったのです。

 慌てて元の状態に戻そうとしましたが、直ぐに電車は次の駅に到着し大量の乗客が乗って来て、おまけに隣に若いサラリーマンが座ってしまったので、ユウリはキャリーバッグを移動させる事が出来なくなってしまったのです。


                     


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