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11 指導期間の終了
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応接室の長椅子に伯爵様は一人で腰掛けた。私はテーブルを挟んだ向かい側の長椅子の左側に、エドアルドさんは私の右に座った。セバスさんは長椅子の隣にあったスツールを少し動かして、テーブルの横に座った。
「さて、結局、バークリー伯爵様はどういったご用件で、うちの屋敷のオーティスに会いに来たのでしょうか?」
エドアルドさんが意地悪そうな口調で言ったので、思わず隣を見た。
やっぱり相変わらず表情は変わってない。
「……その子は以前、うちで働いてまして……、その、急に思い出して、会いたくなってしまったんです……」
「本当にそうなんですか?」
セバスさんが厳しい表情で追求するように聞いた。
「だったら、もう顔も見ましたし、お引取り願っても構いませんね?」
エドアルドさんがまた冷たく言い放つ。
「君も……、オーティス……、君も、私に会いたかったろ……?」
やつれた情けない顔で私に問う。その顔は40代よりもっと上の年齢に見えた。
「……あんな酷い別れをして、私はそれでも貴方の事を忘れかけてたんです。……今更私に会いたい? 会ってどうするんです? 奥様に私と会う許可は頂いたんですか?」
「ロ……ロジータとは別れる……! オーティス、君を愛してるんだ……どうしようもないくらい、好きで……」
伯爵様は子供のように泣きじゃくった。
「皆さん聞いてますよ? ずっと隠してたのに……いいんですか?」
「もう、いいっ、自由になりたいっ! もう縛られてるのは嫌だ! 苦しいんだ……今まで誰を愛しても、あの女の影に怯えていた! いつか私が愛した者を殺すんじゃないかと! そう思ったら、怖くて、恐ろしくて、いつも私から関係をを終わらせていた……! あの女のせいで……誰とも結ばれない! 私が男だからという理由のせいだけじゃない! あの女が……、あの女が私の全てを汚してぐちゃぐちゃにした! 君とも……、一番愛している君とも……ううっ!」
私は従者服のポケットからハンカチを取り出して、伯爵様の涙を拭いた。
そのハンカチを伯爵様の手に握らせる。
「あっ、うっ、ぅぅううっ! 君は優しすぎる……! 私はあんなに酷いことをしたのに……! すまない……すまない! ……許してくれえええっ!」
伯爵様はテーブルに頭を擦り付けるようにして私に謝った。
執事の二人は伯爵様を哀れな目で見ていた。
「イアン、私は貴方の事を怒ってもいないし、恨んでもいませんよ。あなたは結局奥様を選んだ、でもあの時も……本当に私の事を愛してくれていたんですよね。私には分かってます。あの時私を守るために奥様に愛を語った事。ちゃんと分かってますから」
「ぅぅっ、……では、私とやり直してくれるのか……?」
「それは無理です。私達の道はもう分かれてしまったんです。あの時に……。私はイアンの事が本当に好きで、大好きで、貴方の事を忘れるのが凄く辛くて、悲しかった。でも、時が経つにつれて、その傷も癒えてきた。『時の薬』って凄いですね……ふふっ」
「……私にも『時の薬』は作用するんだろうか……」
不安げに呟いた伯爵様にエドアルドさんが言った。
「大丈夫、貴方にもちゃんと作用します」
私の拒絶の言葉が効いたのかは分からないが、伯爵様は自宅へ帰った。
セバスさんも応接室をすぐに出て行って、私も出ようと立ち上がろうとしたらエドアルドさんに話しかけられた。
「本当に君はあの方が好きだったんですね」
どういう意味で言ってるのか、表情が読めなくて頭を傾げた。
「ええ、もちろん。初めての男でしたし、私の事を愛してくれて……、贈り物も沢山頂きました。まぁ、ひとつを残して全て返しましたけどね」
「ひとつ残した? 何を?」
「えへへ、この指輪です」
私はエドアルドさんに左手の薬指に嵌めた指輪を見せた。
「誕生日に貰ったんです。私の瞳の色の指輪。これ『約束の指輪』なんですよ」
「『約束の指輪』?」
「そう、永遠に君を愛するっていう約束の指輪なんです」
エドアルドさんは私を残念な子を見るような憐れんだ目で見て言った。
「永遠に愛する約束って……とっくに破局してるじゃないですか」
「そうだけど! 記念です、これは。イアンとは青い空の下で手を繋げるような関係じゃなかったけど、愛情はお互い本物でしたからね!」
私が笑ってそう言うと、不意にエドアルドさんが私に自分の唇を重ねて来た。ただ重ねるだけの、柔らかな優しいキス……。
私の頭の中はパニックになっていた。
な、何が原因でスイッチが入ったんだ? 今、キスするシーンじゃないでしょうがっ!? 何で!? 意味が分からないっ!
唇が離れると私は我に戻って叫んだ。
「なっ、何をしてくれてんですかっ!? あんたっ!?」
「何か、腹が立ちまして」
「腹が立ったらあんたはキスすんのかよっ!? 変態!」
「……素は結構、口が悪いんですね?」
「口が悪くて結構ですよ! あんたも、ちょっとは表情変えろっ!」
ふと見ると、エドアルドさんは微笑んでいた。
その顔は凄く良い笑顔で……悔しいけど素敵だった。
夕方の休憩の時にリリーさんと一緒になった。
厨房脇の小さな休憩室でリリーさんと話をする。
「オーティス君って、エドアルドさんにセクハラされてるって本当?」
「ブッ!」
思わず飲んでた紅茶を噴出した。
「え、……えっと、まぁ、……」
「嫌だったらちゃんとセバスさんに報告した方がいいですよ?」
嫌だったらって……。急にさっきのキスの事を思い出した。
顔がカァッと熱くなる。キス、されても全然嫌じゃなかった。
寧ろ優しすぎて物足りなかった。
私は両手で自分の顔を抑えて悶えた。リリーさんからしたら『何やってんの? こいつ』って感じか? でもリリーさんはサーシャと違って性格が良いからそんな事思わないと思うけど。
「エドアルドさんも明後日には居なくなってしまうから、少し寂しくなりますね」
「え? 明後日?」
「エドアルドさんは元々一週間だけの教育指導でこちらの屋敷に来ていたんだけど、姫様誘拐救出事件で少し日にちが延びてたんですよ。あの二人の指導も終わって、明後日には北の領地に戻る予定ですよ?」
「……そんなの……聞いてない!」
つい声が大きくなってしまった。
「オーティス君、大丈夫……?」
「す、すいません、大丈夫です」
慌てて取り繕った。
エドアルドさんが明後日でいなくなると聞いて、途端に落ち着かなくなった。そわそわした感覚が自分を襲う。
夜になって寮の寝台で横になるけど眠れない。
なのに身体の中心は熱くなって、その熱を放出したかった。私はワンピースの寝巻きの裾を捲って自分の陰茎を軽く握った。亀頭の先を親指の腹でぐりぐりと撫で回すと、とろみのある先走り汁がじんわりと出てきた。カリ首を手のひら全体で包むように擦り、手のひらに液を付けてそのまま陰茎を撫でるように擦ると、体がぴくぴくと動いた。
「あの人がいなくなるなんて……」
私はエドアルドさんを夢想して、自分のそれを弄った。
彼の唇の感触を思い出して陰茎を優しく愛撫する。彼に触られているような感覚を覚える。私の乳首を弄ぶように舐め転がす彼、私の大事な所にそれを突っ込んで善がる彼、私の想像の彼は厭らしくて、快感へ導く存在だった。
「あっ、あっ、んぁあああっ!」
片手で口を押さえて達した。私は自分の手のひらに飛び散った白濁の液を見て、アクアウォッシュした。
達して射精したけど、たぶん、後ろの穴でイった方が気持ち良いだろうなと思ってしまった。『彼に後ろの穴を突かれたい』そんな淫らなことを考えて溜息が出た。
私はたぶん、エドアルドさんの事を好きになっている。
あんな風変わりで、何考えてるのか分かんないような人のことを好きになってしまった。何だか凄く、何かに敗北した感覚に陥った。
大体、自慰のおかずはずっとイアンだった。別れた後も、自慰する時は何となくイアンを想像して出していた。なのに、昨日から私はエドアルドさんをおかずにしている。だからか、日中に彼と顔を合わすのが凄く恥ずかしい。
『付き合いたい』と、告白するか? でも、もし嫁に来い発言が、からかいや冗談で、それを本気にした変態と思われたら……?
いや、私にキスした時点であっちも同類だろ? 男が好きだからキスしたんだろ……? でも、舌は入れなかった。本気じゃないから舌は入れなかった?
ただ、からかうためにキスをした?
表情が読めないだけに彼が何を考えているか分からなくて、一人悶々とした。
そんな夜を過ごしたせいか、寝坊して遅刻しそうになった。
「時間がぎりぎりですよ? もう少し早く来るように。時間に余裕を持って下さいね」
優しくセバスさんに注意を受けた。
「申し訳ございません!」
深く頭を下げて謝った。
セバスさんが食堂から去ると、エドアルドさんが私に近寄って聞いた。
「夜中に自慰でもしてたんですか?」
「はっ!?」
朝っぱらからそんな単語を口にするエドアルドさんに少々腹が立った。
すると、私に意地悪するように、エドアルドさんは私に一歩一歩近づいて来た。そんな風にされるので、私は後ずさるしかない。気がついたら食堂の壁に追い詰められていた。両手を壁に付いて私を逃げられないように囲い込むと耳元で囁いた。
「する時は私をネタにして下さい」
私はくすぐったくて、思わず耳を押さえた。顔が熱くなって湯気が出そうだった。
信じられないこの人! こんな皆が来る様な場所で! 何やってんだよ、あんた!?
言いたくても澄んだ青い瞳に見つめられて、声が出なかった。
そんな時、食堂の扉の開く音がした。見ると姫様だった。
「あっ! 姫様!」
私がそう言うと、エドアルドさんが姫様に視線を移した。
その瞬間、私は走って食堂から逃げた。
心臓のどきどきが止まらない。
……静まれ心臓!
「さて、結局、バークリー伯爵様はどういったご用件で、うちの屋敷のオーティスに会いに来たのでしょうか?」
エドアルドさんが意地悪そうな口調で言ったので、思わず隣を見た。
やっぱり相変わらず表情は変わってない。
「……その子は以前、うちで働いてまして……、その、急に思い出して、会いたくなってしまったんです……」
「本当にそうなんですか?」
セバスさんが厳しい表情で追求するように聞いた。
「だったら、もう顔も見ましたし、お引取り願っても構いませんね?」
エドアルドさんがまた冷たく言い放つ。
「君も……、オーティス……、君も、私に会いたかったろ……?」
やつれた情けない顔で私に問う。その顔は40代よりもっと上の年齢に見えた。
「……あんな酷い別れをして、私はそれでも貴方の事を忘れかけてたんです。……今更私に会いたい? 会ってどうするんです? 奥様に私と会う許可は頂いたんですか?」
「ロ……ロジータとは別れる……! オーティス、君を愛してるんだ……どうしようもないくらい、好きで……」
伯爵様は子供のように泣きじゃくった。
「皆さん聞いてますよ? ずっと隠してたのに……いいんですか?」
「もう、いいっ、自由になりたいっ! もう縛られてるのは嫌だ! 苦しいんだ……今まで誰を愛しても、あの女の影に怯えていた! いつか私が愛した者を殺すんじゃないかと! そう思ったら、怖くて、恐ろしくて、いつも私から関係をを終わらせていた……! あの女のせいで……誰とも結ばれない! 私が男だからという理由のせいだけじゃない! あの女が……、あの女が私の全てを汚してぐちゃぐちゃにした! 君とも……、一番愛している君とも……ううっ!」
私は従者服のポケットからハンカチを取り出して、伯爵様の涙を拭いた。
そのハンカチを伯爵様の手に握らせる。
「あっ、うっ、ぅぅううっ! 君は優しすぎる……! 私はあんなに酷いことをしたのに……! すまない……すまない! ……許してくれえええっ!」
伯爵様はテーブルに頭を擦り付けるようにして私に謝った。
執事の二人は伯爵様を哀れな目で見ていた。
「イアン、私は貴方の事を怒ってもいないし、恨んでもいませんよ。あなたは結局奥様を選んだ、でもあの時も……本当に私の事を愛してくれていたんですよね。私には分かってます。あの時私を守るために奥様に愛を語った事。ちゃんと分かってますから」
「ぅぅっ、……では、私とやり直してくれるのか……?」
「それは無理です。私達の道はもう分かれてしまったんです。あの時に……。私はイアンの事が本当に好きで、大好きで、貴方の事を忘れるのが凄く辛くて、悲しかった。でも、時が経つにつれて、その傷も癒えてきた。『時の薬』って凄いですね……ふふっ」
「……私にも『時の薬』は作用するんだろうか……」
不安げに呟いた伯爵様にエドアルドさんが言った。
「大丈夫、貴方にもちゃんと作用します」
私の拒絶の言葉が効いたのかは分からないが、伯爵様は自宅へ帰った。
セバスさんも応接室をすぐに出て行って、私も出ようと立ち上がろうとしたらエドアルドさんに話しかけられた。
「本当に君はあの方が好きだったんですね」
どういう意味で言ってるのか、表情が読めなくて頭を傾げた。
「ええ、もちろん。初めての男でしたし、私の事を愛してくれて……、贈り物も沢山頂きました。まぁ、ひとつを残して全て返しましたけどね」
「ひとつ残した? 何を?」
「えへへ、この指輪です」
私はエドアルドさんに左手の薬指に嵌めた指輪を見せた。
「誕生日に貰ったんです。私の瞳の色の指輪。これ『約束の指輪』なんですよ」
「『約束の指輪』?」
「そう、永遠に君を愛するっていう約束の指輪なんです」
エドアルドさんは私を残念な子を見るような憐れんだ目で見て言った。
「永遠に愛する約束って……とっくに破局してるじゃないですか」
「そうだけど! 記念です、これは。イアンとは青い空の下で手を繋げるような関係じゃなかったけど、愛情はお互い本物でしたからね!」
私が笑ってそう言うと、不意にエドアルドさんが私に自分の唇を重ねて来た。ただ重ねるだけの、柔らかな優しいキス……。
私の頭の中はパニックになっていた。
な、何が原因でスイッチが入ったんだ? 今、キスするシーンじゃないでしょうがっ!? 何で!? 意味が分からないっ!
唇が離れると私は我に戻って叫んだ。
「なっ、何をしてくれてんですかっ!? あんたっ!?」
「何か、腹が立ちまして」
「腹が立ったらあんたはキスすんのかよっ!? 変態!」
「……素は結構、口が悪いんですね?」
「口が悪くて結構ですよ! あんたも、ちょっとは表情変えろっ!」
ふと見ると、エドアルドさんは微笑んでいた。
その顔は凄く良い笑顔で……悔しいけど素敵だった。
夕方の休憩の時にリリーさんと一緒になった。
厨房脇の小さな休憩室でリリーさんと話をする。
「オーティス君って、エドアルドさんにセクハラされてるって本当?」
「ブッ!」
思わず飲んでた紅茶を噴出した。
「え、……えっと、まぁ、……」
「嫌だったらちゃんとセバスさんに報告した方がいいですよ?」
嫌だったらって……。急にさっきのキスの事を思い出した。
顔がカァッと熱くなる。キス、されても全然嫌じゃなかった。
寧ろ優しすぎて物足りなかった。
私は両手で自分の顔を抑えて悶えた。リリーさんからしたら『何やってんの? こいつ』って感じか? でもリリーさんはサーシャと違って性格が良いからそんな事思わないと思うけど。
「エドアルドさんも明後日には居なくなってしまうから、少し寂しくなりますね」
「え? 明後日?」
「エドアルドさんは元々一週間だけの教育指導でこちらの屋敷に来ていたんだけど、姫様誘拐救出事件で少し日にちが延びてたんですよ。あの二人の指導も終わって、明後日には北の領地に戻る予定ですよ?」
「……そんなの……聞いてない!」
つい声が大きくなってしまった。
「オーティス君、大丈夫……?」
「す、すいません、大丈夫です」
慌てて取り繕った。
エドアルドさんが明後日でいなくなると聞いて、途端に落ち着かなくなった。そわそわした感覚が自分を襲う。
夜になって寮の寝台で横になるけど眠れない。
なのに身体の中心は熱くなって、その熱を放出したかった。私はワンピースの寝巻きの裾を捲って自分の陰茎を軽く握った。亀頭の先を親指の腹でぐりぐりと撫で回すと、とろみのある先走り汁がじんわりと出てきた。カリ首を手のひら全体で包むように擦り、手のひらに液を付けてそのまま陰茎を撫でるように擦ると、体がぴくぴくと動いた。
「あの人がいなくなるなんて……」
私はエドアルドさんを夢想して、自分のそれを弄った。
彼の唇の感触を思い出して陰茎を優しく愛撫する。彼に触られているような感覚を覚える。私の乳首を弄ぶように舐め転がす彼、私の大事な所にそれを突っ込んで善がる彼、私の想像の彼は厭らしくて、快感へ導く存在だった。
「あっ、あっ、んぁあああっ!」
片手で口を押さえて達した。私は自分の手のひらに飛び散った白濁の液を見て、アクアウォッシュした。
達して射精したけど、たぶん、後ろの穴でイった方が気持ち良いだろうなと思ってしまった。『彼に後ろの穴を突かれたい』そんな淫らなことを考えて溜息が出た。
私はたぶん、エドアルドさんの事を好きになっている。
あんな風変わりで、何考えてるのか分かんないような人のことを好きになってしまった。何だか凄く、何かに敗北した感覚に陥った。
大体、自慰のおかずはずっとイアンだった。別れた後も、自慰する時は何となくイアンを想像して出していた。なのに、昨日から私はエドアルドさんをおかずにしている。だからか、日中に彼と顔を合わすのが凄く恥ずかしい。
『付き合いたい』と、告白するか? でも、もし嫁に来い発言が、からかいや冗談で、それを本気にした変態と思われたら……?
いや、私にキスした時点であっちも同類だろ? 男が好きだからキスしたんだろ……? でも、舌は入れなかった。本気じゃないから舌は入れなかった?
ただ、からかうためにキスをした?
表情が読めないだけに彼が何を考えているか分からなくて、一人悶々とした。
そんな夜を過ごしたせいか、寝坊して遅刻しそうになった。
「時間がぎりぎりですよ? もう少し早く来るように。時間に余裕を持って下さいね」
優しくセバスさんに注意を受けた。
「申し訳ございません!」
深く頭を下げて謝った。
セバスさんが食堂から去ると、エドアルドさんが私に近寄って聞いた。
「夜中に自慰でもしてたんですか?」
「はっ!?」
朝っぱらからそんな単語を口にするエドアルドさんに少々腹が立った。
すると、私に意地悪するように、エドアルドさんは私に一歩一歩近づいて来た。そんな風にされるので、私は後ずさるしかない。気がついたら食堂の壁に追い詰められていた。両手を壁に付いて私を逃げられないように囲い込むと耳元で囁いた。
「する時は私をネタにして下さい」
私はくすぐったくて、思わず耳を押さえた。顔が熱くなって湯気が出そうだった。
信じられないこの人! こんな皆が来る様な場所で! 何やってんだよ、あんた!?
言いたくても澄んだ青い瞳に見つめられて、声が出なかった。
そんな時、食堂の扉の開く音がした。見ると姫様だった。
「あっ! 姫様!」
私がそう言うと、エドアルドさんが姫様に視線を移した。
その瞬間、私は走って食堂から逃げた。
心臓のどきどきが止まらない。
……静まれ心臓!
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