11 / 190
第一章
10手袋完成
しおりを挟む事件から3日経った。
あの後ラシェはレイジェス様が番所に連絡し、城から役人が来て連れて行った。
尋問することになったけど、ラシェの顔にはスティグマが浮かび上がっていて罪人であることは明白だ。
スティグマとは罪人の烙印の事で、これを持つものは皆過去に何らかの犯罪を犯している。神からの啓示と言われていて、それが浮かび上がった者は番所で拘束され、取調べを受けなければいけないと法律で決まっている。
あの日レイジェス様が仕事の時間なのにお屋敷に来たのは偶然だった。商会の専属契約書類がレイジェス様の鞄に他の書類と間違えて入ってたので、必要だった書類を取りに来たそうだ。
で、私がいなかったので使用人にどこに行ったか聞いたら、温室に花を見に行ったと言うので、自分も一緒に見ようと思って温室に来たとの事。
温室のドアを開けたら私があんな状態だったので愕然としたらしい。
事件の日レイジェス様は城に戻らず、ずっとお屋敷にいて私を抱っこしていた。要するに、仕事をさぼった。さすがに次の日はちゃんとお城に出仕したけど、首になっちゃいますよ? と言ったら、魔術師団で一番高位なのは自分だから大丈夫とさっくり返された。
あ、そうそう、新しいフットマン見習いの男の子が入った。オーティス君16歳。16歳でもこちらの世界ではもう大人なんだよね。薄い水色の髪で金色の瞳の美少年って感じ。ラシェのことがあったから採用面接はレイジェス様も一緒にすることになって、私とレイジェス様とゼフィエルが並んでテーブルの向こうにオーティス、だったんだけど、面接される側としたら圧迫感すごいよね。
16歳男子ってことでレイジェス様は乗り気じゃなかったけど、オーティスが自分は【衆道です】とカミングアウトしちゃったので採用になった。レイジェス様は自分が好かれるかも? とは考えなかったのかな? オーティスとしては長く勤めることになるんだったら自分の事を理解して欲しいって思ったらしい。
まぁ、男色くらいでどうこう言う使用人はいないでしょ。公爵様が毎日幼女抱っこして過ごしてるようなお屋敷ですから。
そして私はさっきレイジェス様の手袋を完成させた!いや~頑張ったわ、私。
編み物は元々好きだったから全然苦じゃないけど。
試着をゼフィエルにしてもらったらはめれたから、多分大丈夫だよね~。
さて、包装はどうしようか? 包装紙ってあるのかな? まだまだ紙は貴重な世界だから布でまいてリボンする? そうしよう。
談話室から出て使用人控え室の方に行くと廊下にセレネがいた。
「手袋が完成したので包装したいのですけど、薄い布とリボンてあるかしら?」
「少々お待ちください」
セレネが布製品が置いてある部屋に行っていくつか見繕って籠に入れてきた。
私が選んだのは白い光沢感のある布と青い色に銀色の線が入ったリボンだった。私がそれだけ選ぶとセレネは残りを返しに行った。うきうき気分で談話室に戻るとオーティスとゼフィエルがいた。
「姫様にはこれからオーティスが付きますので」
「わかりました。オーティス、よろしくね」
オーティスは跪いて礼をした。私はいつもの長椅子に座ってふんふふ~んと鼻歌を歌いつつ包装を始める。白い布で包んで青いリボンでりぼん結びをする。形良くふんわり作るのがちょっと難しい。
「できた!!」
私はできたプレゼントを自分の部屋に隠してきた。そしてまだ残っていたピンクの毛糸と編み棒を返しに行こうとして気付いた。あ、オーティスにお願いしよっと。
「こちら返したいんですが」
「はい、わかりました」
「オーティス待ちなさい。君が返しに行ってはいけない。側仕えを呼びなさい。そこに呼び鈴があるだろう? 使用人控え室に音が届くようになっているから。君は姫様から絶対目を離しては行けない。最重要任務はそれだからね」
ずっと監視が付くことになってしまった……はぁ。
そういえば談話室の部屋の隅にある呼び鈴使ったことがない。
プレゼントは夕食が終わったら渡そうっと。楽しみだぁ!
レイジェス様、早く帰って来ないかな。
図書館から本を借りて談話室で読んでたらいつのまにか寝てしまったようだ。
目をこすっていたら隣にレイジェス様が座っていた。
「あ! おかえりなさいませ! お迎えしてなくて申し訳ございません!」
「よいよい」
「今日は何の本を読んでいる?」
「プリストン王国の歴史という本で」
「そんなもの読んで面白いのか?」
レイジェス様は私がテーブルに置いた本をパラリと捲った。
「ん~。戦争ばっかりしてるんですね、この国は。戦争すると人が減るから生産力が上がらなくなるし、お金が無くなるから生活も貧しくなるのに。領土を増やすために戦争するよりも内需拡大して豊かな国づくりを目指した方がいいと思いました。前王がその方向性で政治政策してたのは画期的だったと思いますが、惜しい方を病で亡くしましたね」
「君は賢いな」
レイジェス様が驚いた目で私を見て頭を撫でる。オーティスが夕食の時間を知らせに来た。レイジェス様が私を抱き上げ連れて行く。
「わたくし自分で歩けますよ?」
「君の歩くのが遅いから待ってられない」
「待たなければいいじゃないですか?」
「私がこうして連れて行った方が早いだろう?」
「それはそうですけど……オーティスが変な目で見てますよ?」
そう言うとレイジェス様はオーティスを睨んだ。
「じき慣れるだろう?」
今日の夕食のメインは羊の肉のライチェ煮込み。あとサラダとパン。私はあまり食べれないからライチェ煮込みを少しとパンを少しだけにしてもらった。
「相変わらず食が細いな」
美味しいと思ってるけど食べられないんです。
ぷぅっと頬を膨らましていると今日の私の報告がオーティスから報告される。
今日は本を読んでまったりしてたくらいで何もやってない。報告することなんて何もないのに。変なの? と思ったら掃除してたらあちこちでダイヤが落ちてたらしい。回収して袋に入れた物がレイジェス様の前に置かれる。
「君は私に隠れて泣いていたのか……?」
レイジェス様が悲しそうな顔になる。
「違います。たぶん……どこかに頭をぶつけた時に涙が出てしまったのかも知れません」
「ああ、確かに、狭い所で見つけたと使用人たちが申しておりまし」
とオーティスが言う。
「君は猫か? まったく、狭い所に入り込むのはやめなさい」
「はい……」
しょぼんとしてたら食事の終わったレイジェス様が私を抱っこしにきた。
そのまま談話室に連れて行かれる。長椅子に座るとぎゅっとされた。
「ちょっと待っててください。わたくし、レイジェス様にお渡ししたい物があるのです。取りに行ってきますね」
「ん? 何だ?」
「ふふっ、お楽しみです」
私は急いで自分の部屋に取りに行って戻ってきた。はぁはぁと息が荒れる。
「そんなに急がなくても良いのに大丈夫か?」
「大丈夫です。これです、どうぞ」
私はレイジェス様にプレゼントを渡した。レイジェス様はそれを膝の上に乗せて開けてゆく。レイジェス様が目を見開いた。
「これは?」
「ミトンという手袋で、私が作りました。レイジェス様はいつもわたくしの手の暖かさを気にして下さってましたけど、わたくしの手よりレイジェス様の手の方が冷たかったので作ったのです。出仕の行き帰りで使ってくださると嬉しいです。今はめて下さいますか? サイズが合うかどうか心配なのです」
レイジェス様は手袋をはめて握ったり開いたりしていた。
「サイズは丁度良い。色もいいな」
「レイジェス様の瞳の色に合わせました」
ふにゃっと私は笑った。
「ありがとう」
と言った後、ぎゅっと抱きしめられた。
なんだか今日は凄く眠たくて二人ともアクアウォッシュで眠った。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる