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第一章
15一週間の冬休みの始まり
しおりを挟む誰かの話し声で私は目覚めた。レイジェス様とコモン様だった。
レイジェス様はベッドで本を読みつつコモン様と話をしてる。
まだ頭がぽや~っとしてて、うとうとしてレイジェス様にくっついて寝巻きの胸元をちょっと掴む。ああ、落ち着く。
「本当に君達一緒に寝てるんだね。やけちゃうなぁ、俺」
「何しに来た? 部屋までくるな」
「アリアちゃんの顔見てから帰ろうかと思って」
思いっきりレイジェス様の眉間に皺が寄った。
「いや、まじ、こんなに嵌ると思わなかった。昨日の夜ずっとアリアちゃんが頭の中から離れなくて。一緒に暮らしてるレイジェス、君が羨ましいよ」
「自分にミドルキュアは掛けたのか?」
「さっき掛けたばっかりでこれだよ。どうなってんだ俺?」
「好きになるのは自由だが、無体な真似だけは止めてくれ」
「わかってる。俺は絶対酷いことなんかしない」
「ならば良い」
コモン様は私の寝顔を見て微笑んだ。
「寝顔まで可愛いや」
そう言って自宅に帰った。
眠ってる私の口の中に何かぬるっとしたものが入ってきた。何?
薄目を開けるとレイジェス様の舌だった。いつものしゅわしゅわしたキスじゃなくて、もっと生々しい舌の感触。
私は目を閉じてそれを味わっていた。近づいてるレイジェス様の首にするりと腕を絡めてぎゅっとした。起きてると思ってなかったのかレイジェス様がびくっとして、右手で空を書こうとしたので私はそれを小さな手で掴んで押さえ込んだ。
レイジェス様は抵抗せずに私に手を握られていた。
キスは生々しいまま終わって、レイジェス様と私の唇に唾液の糸が繋がっていた。私はその糸をたどった先のレイジェス様の顔を見つめた。頬が赤く染まっている。
「今日は何故しゅわしゅわじゃなかったのですか?」
「……君は、私に色々されても嫌じゃないって言っただろ?」
「はい」
「だから、そのまました」
私は目を瞬いた。受け入れられると思ったから普通のキスをした。
ってことかな?
じゃあしゅわしゅわのキスは、受け入れられないと思ってたからしてたってこと?
もしくはしゅわしゅわなら受け入れられる的な考え?
分かりにくいよ、レイジェス様。
「もう皆さん帰ったのですか?」
「ああ」
「気になるのか?」
「何がです?」
「コモンが君に嫁に来いと言ってたし、ザイードも似たようなことを言ってた」
「気になるのですか?」
と逆に聞いてみる。
私が見つめるとレイジェス様は目を逸らして、「気になる」とばつが悪そうに言った。
私は自分の寝巻きの裾を捲くった。
レイジェス様の寝巻きを着ているので裾が長い。
レイジェス様の手を掴んで裾から寝巻きの中に入れた。レイジェス様の大きい手が私の体に触れ、私は心臓までその手を導いた。
「どきどきしているのがわかりますか?」
「……うむ」
「こうして、私の体に触れて良いのは貴方だけです。わかりました?」
と微笑んでみる。
俯いたレイジェス様の顔を覗き込んだら照れたように微笑んでいた。
「……わかった」
私は起きてお風呂に入った。
昨日入ってなかったので、一緒にはいりますか? と聞くと怒られた。
あ~いい湯だわ。
ここのお風呂は24時間循環してて綺麗なのでいつでも好きなときに入れたりする。お風呂循環魔術具なるものを使っている。魔石に魔力を補給して使うタイプで。
温室にもある温度調整のものと理論は一緒。
ちなみに湯船が広いからちょっと泳ぐことも出来る。
ばしゃばしゃ! ほらね! 幼女の特権だよ! お風呂で泳ぐの!!
お風呂にある呼び鈴を押したらすぐにリリーがきた。
「頭を乾かして欲しいの。あと、お部屋にいくのに部屋着を持ってきてくださる?お部屋でドレスに着替えます」
「はい姫様」
そうだそうだ、中身が大人だから色々考え込んじゃうだけで、子供として生きれば何て事はないんだよ。
もっと子供らしくていいんだ。
脱衣所で部屋着に着替えて髪を乾かしてから自分の部屋に行ってまたドレスに着替えた。
「淑女は家の中でもドレスで過ごさなければいけません」
とセレネに教えられて、なるべくドレスで過ごしてる。
本当は部屋着とか寝巻きの方が楽だけど。
今日は肩が目立たないタイプのエンパイアドレスなので上にシュミーズ、下には紐ショーツである。ドレスの色は薄い水色。ドレッサーがあるのでその前に座って髪を整えて、ハーフアップにしてもらう。
「そういえば、リリーはいい人ができたのですか?」
「それが残念ながらいなくて……」
「舞踏会とかには行かないのですか? 貴族はそういう所でお知り合いになる方もいると伺いましたけど」
「毎回同じドレスでは行けませんから」
「リリーは結婚したら仕事をやめてしまうのですか?」
「いえ、私はずっと働きたいと思ってます。子供ができた時だけはお休みが欲しいですけどね」
リリーはふふふっと笑った。
「好みの方はどのような?」
「最初は、旦那様に憧れてたんですけど、先日いらしたお客様のコモン様が素敵でした」
「え~!! あの方は見た目詐欺ですよ? すごい意地悪ですよ? わたくし泣かされましたもの!」
「姫様は大変可愛らしいので意地悪をしたくなるのですよ」
「リリーは騙せてもわたくしは騙されませんわっ!」
「さぁ、できました。可愛らしいですよ、姫様」
「ありがとう存じます」
私は自分の部屋をでてゼフィエルもしくはオーティスを探す。一階をうろうろしてたらオーティスがいたので呼び止める。
「オーティス、ちょっとよろしくて?」
「はい? 姫様?」
「これくらいのサイズの板が欲しいのです、正方形の」
と手で空に枠を作る。
「厚みは2センチくらいで。誰に頼めばいいのかわからなくてオーティスでよかったのかしら?」
「大丈夫ですよ、姫様」
「ではよろしくね」
談話室に向かおうと、すすすっと歩いていると腕を掴まれた。
振り向いたらレイジェス様で、オーティスと何を話してたと言われたので板が欲しいから注文してもらったと言った。
「何に使うんだ?」と聞かれたので、出来てからのお楽しみです。と答えた。
そして、セレネにちょっと厚みのある布地で黒と白の生地を欲しいと言ったらすぐくれた。
コートの生地のあまりなのでウールだと思われる。これで駒を作る。リバーシだ。異世界定番のボードゲーム。こっちの世界は娯楽が少なくてたまに何かいい遊びがないかな? って考えてた。で、リバーシに行き着いたわけだ。
すぐ出来そうだし。
談話室に行ってさっそくちょきちょき布を切る。型紙は小瓶の口からとった64枚をつくるのは大変だ。木のほうがいいのだろうか?
段々面倒に感じはじめた。
レイジェス様なら色々わかるかもしれない。と思って聞きにいく。
今日は私が色々動いてて傍にいないのでご機嫌ななめだ。
談話室の長椅子で本を読んでたのですすっと長椅子にのっかって首にぎゅっと抱きついて、ほっぺにちゅっとしてみる。
むすっとしてたけど、ちょっとはましになった。
「レイジェス様、わたくしさっき作ろうとしたもので躓きましたの。わたくしが作ろうとしてた物お教えしますからアドバイスをいただきたいのです」
「うむ。では説明してみなさい」
「黒板ありますか?」
「ほら」
パン屋のトレー位の大きさの黒板を渡された。
正方形の8マス×8マスの板を作ること。それをオーティスに頼んだこと。
そのゲーム板に乗せる駒を、木にするか布にするかで悩み中だと説明。
どっちがいいか聞く。
「君の性格だと、布でちまちまやってて嫌になったんだろう?」
「そうですそうです!」
「じゃ、木でやればいい。木なら加工できそうに思うし工房に頼めば出来上がり品を待つだけだ」
「誰に言えばいいのです?」
「ゼフィエルかオーティスにだな」
私は呼び鈴を押した。暫くしてセレネが着たので、オーティスに追加で駒の注文をと言伝を頼んだ。
ああ、そうだ私も作ろうと思ってた物が、と行ってしまった。
レイジェス様は何を作るんだろう。
お昼にはトウミを食べて、午後はピレーネを弾く。ハノンから始まって、今日は何を弾こうか。3刻位ピレーネを弾いて結構疲れた。気がついたらレイジェス様がぱちぱち拍手してた。
「今の曲はなんという?」
「12のエチュードといいます音がきらきらして綺麗でしょ?」
そこらかしこに落ちてる花が邪魔なので踏み潰す。
走って踏み潰す! きゃははは! くるくる走ってたらどきどきしてきた
はぁはぁ言ってたらレイジェス様にひょいっと抱き上げられた。
「走るな、鼓動がはやい」
大きな手が私の胸を覆う。鼓動が一層早くなる。
私は体の正面を横向きにしてレイジェス様の首に腕を絡めた。
「レイジェス様は何を作ってたのですか?」
「ダイヤの加工と君の薬を作ってた」
「ダイヤって加工できるんですの?」
「魔法で穴をあけるだけだ」
「すごい魔法です。驚きですわ」
レイジェス様に頬をすりすりする。
夕食の時間になったので食堂に行く。
今日のメインは鶏肉のソテー、塩のみのシンプルな物だけど美味しかった。
「今日は珍しく食が進んだな」
「大変おいしゅうございました」
食事が終わったら談話室に行く。レイジェス様も一緒。
「ねぇねぇ、レイジェス様?」
「ん?」
「リリーに良いお方はいませんか?」
「君は随分リリーを気にしているのだな?」
「わたくしのお世話をよくしてくださいますから、色々お話もするんです。最初はレイジェス様がお好みだったようですが、先日いらしたコモン様が素敵だとおっしゃってました」
「コモン? 彼はあれでも伯爵家の人間だし、リリーは子爵家の人間だからな、家格が合わない。無理だろう」
「そうなんですか」
「どなたか、家格の合う方、いらっしゃったら紹介してくださいませ」
「うむ、考えておこう」
長椅子の隣に座ってまったりしてたけど、ふいに膝に乗りたくなってもぞもぞとする。
「どうした?」
「お膝に乗せてくださいませ」
手を差し出され膝に乗りやすいようにしてくれた。
「わたくし重くございません?」
「君は軽すぎると思うぞ」
レイジェス様の脇に両手を入れてぎゅうっと抱きつく。
そして見上げる。ふふふっと私は笑う。
レイジェス様にキスされた。大きな両手で顔を包み込まれる。
そのまま右手が頬にふれて首すじ、服の上の胸、お尻とそよかぜのように触れていく。唇の端から唾液が流れる。生々しい舌の先が生き物みたいに口の中で暴れる。私は激しく彼の首に腕を絡めた。私の丁度、股の下で熱くて硬いものを感じ始めた時、レイジェス様は唇をそっと離した。
「ミドルキュア!」
私は談話室でいつの間にかレイジェス様に抱っこされながら眠っていた。
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