魔術師長様はご機嫌ななめ

鷹月 檻

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第二章

38閑話 北の飛び地の視察 後編

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 私が言う。「鮎を! 鮎を!」
私が必死に言うのが可笑しかったのか店主が

「お嬢ちゃんは鮎の塩焼き1匹だね? 他のお二人は?」
「何がある?」
「山菜の煮しめとか、山キジの香草焼きとか、お勧めは鮎の塩焼きだね。竹の子の茶碗蒸しもある」
「茶碗蒸し!!」
「レイジェス様、わたくし、茶碗蒸しも食べたいです!」
「では茶碗蒸し3つと鮎の塩焼き3つで頼む」
「あいよ、まいど!」

 店主は注文を取ると厨房に戻った。

「こんな田舎にリアの食べれそうな物があるとは驚きだ」
「ここら辺りに海はないですが、もしかして川魚ですか?」
「そうですよ、鮎は川魚ですけど、小さい頃は海で育って大きくなると川に戻るのです。神前にて捧げられ贄とも呼ばれていました」

 と私が説明するとやはり神饌か、とレイジェス様が言った。

「おまち!」

お皿の上に乗せられた棒に刺さった姿焼きを、二人共見たこと無かったらしく驚いている。
カトラリー入れの籠の底を見るとお箸が入っていたので、私はそれを使った。
二人共ナイフとフォークを使っていて器用だなぁと思った。
私はお祈りをして頂きますをすると、ぺろっとその魚を食べた。
鮎はあっさりしてるからもう一匹食べれそう。

「おまち!」

 茶碗蒸しが来た、それぞれの茶碗蒸しが、触ると熱くない様にだと思うが、別のお皿に乗っていて、スプーンが乗っている。店主はその皿の部分を持って三人に配った。

「熱いから気をつけてな、お嬢ちゃん」

 店主がそう言ったので、私はふぅふぅしてから食べた。
めちゃめちゃ美味しい! だしの旨みと玉子のバランスが絶妙だ。
竹の子も香りがいい。
レイジェス様も茶碗蒸しが気に入ったようで美味しいなと言っている。
アーリンもだ。
二人がこれを美味しいと言ってくれてなんだか嬉しくなった。

「もう一本鮎が食べたいです!」

 とレイジェス様に言うとお腹をまさぐられた。

「大丈夫か? 入るのか?」
「余裕です!」

 笑顔で答えるとレイジェス様はあと1本追加した。そして店主に尋ねる。

「この店は神饌の料理が多いが何故だ?」

店主は驚いていた。

「なんで神饌だってわかった? 大抵の者は気付かないんだがなぁ」
「うちのリアが食べれるのは神饌だけだからだ、他の物は少ししか食べられぬ。」
「え? ってことはお嬢ちゃん、神様なのか!?」

 店主に見つめられたので頷いた。

「歌とピレーネの女神の任についております、アリア=アズライル、8歳でございます」

 立ってスカートの裾を持って優雅にお辞儀する。冒険服なのでズボンが見えちゃうけど仕方ない。

「アズライル?」
「父神様がアズライル神です。母神様はベテル様と言います」
「夫婦神で生まれたとすると…神界ではアズライル神様に次ぐ高位じゃないか!」

 ははぁ~と地面に伏して拝まれた。
話を聞くとこのお店はもう500年ほど細々と代替わりをし経営が続いていたらしい。500年前はまだ降臨する神様もいたそうで、食べるものを作るために店を出したのが始まりだったそうな。時代と共に神様はいなくなり、神ではなく人の客が増えたけれど、創業者が味を変えるなと遺言を残したため、材料やレシピがずっと昔から変っていなかったらしい。

 店主も自分の家に色々古い文献があるが、神の降臨など半信半疑だったみたいでまさか自分の代で降臨した神に会えると思ってなかったという。
私は2本目の鮎を食べ、かなり満足した。ご馳走様をする。
お店を出る時に店主さんが言った。

「またおいで、お嬢ちゃん! 昼ならプリンも出せるぜ! うちのプリンはヤマキジの玉子を使ってるからな! 絶品だ!」
「はい! また伺います!」

 私は手を振って店をでた。
レイジェス様が店を出てからすぐ杖を出して空に魔方陣を書いている。

「何をやってるんですか? レイジェス様?」

 私が聞くと、この店が気に入ったんだろう? プレイスマークを付けていたと言う。レイジェス様に両腕を広げる、抱っこのポーズだ。レイジェス様が私を抱き上げだので私は首に腕を絡めてその頬にちゅっとした。
そして自分の頬をすりすりする。

「レイジェス様、大好き!」

 レイジェス様はフッと笑って頭を撫でた。
来た道を少し戻って広い田舎道に戻るとレイジェス様はシリルを出した。
アーリンもフライを出す。
いつものように私を先に乗せ、レイジェス様が後に乗り、皮ベルトで体を締める。そして飛び立った。

 まだ昼前で明るい、雲が少なくて空が青い。飛ぶにはいい時間帯だ。
鳥がシリルとフライをよけて飛んで行く。
頬にあたる風が気持ち良かった。
夕日が沈みきるぎりぎりで私たちは北の領地のお城に着いた。
城の者が出迎えに出ていた。

 北の城の家令で執事のエドアルド=ゼーゼマン、35歳。その他使用人10名。
執事のエドアルドは金髪のオールバックに瞳は青で、その顔は無表情だ。
エドアルドが言うには、客人扱いのリッツ伯爵から派遣された技術指導者は今部屋で、視察の書類をまとめているという。

 私は空を飛んで埃っぽかったし、昨日お風呂に入ってなかったので、お風呂に入りたいとレイジェス様に小声で言った。それを執事のエドアルドに言うと旦那様もご一緒にどうぞ、と言う。まだ夕食まで時間があるのと、技術指導者の書類がまとまってないようでお風呂へ促しているようだった。

 私とレイジェス様とアーリンは部屋へ案内された。私とレイジェス様が一緒の部屋でアーリンは隣だった。ここの執事は昨日の屋敷の執事よりマシかも知れないと思った。

 部屋に案内されて私は鞄を2個空間収納から出した。
そしてお風呂へ案内してもらう。レイジェス様も一緒に付いてきた。お風呂は1階の西の回廊を行った所にあった。脱衣所が広くて、アルフォード公爵家のお屋敷の脱衣所より広いかも知れないと思った。
床に薄いカーペットが引いてある。水で濡れたら変えるための物だと思われる。

 私は解除の神呪を唱えて下着だけになった。それを脱ごうとしたらレイジェス様が私がやると言って脱がされた。
レイジェス様はもう全部脱いでいて早く行くぞと私の背中を押した。
お風呂はUの字型で、壁に大きな獅子が口を開けて湯がでてくる湯口があった。

「うおおおお、なんか豪華」
「この程度でか」
「え? あ、そっかレイジェス様はお金持ちですもんね、もっとすごいお風呂を知ってますよね」

 私は急いで体を洗おうとしたけど、レイジェス様が洗うというからまかせた。念のため、エロい事しないでくださいね、と言っておく。
「なぜだ!?」

 と真顔で怒るので

「早くお風呂に入りたいから」

 エロい事をしないで洗ってくれた。
私がお風呂に入ってばちゃばちゃ泳いでいる間レイジェス様は体を洗っていた。

「お背中、洗いますよ」

 声をかけたのにリアは風呂で遊んでなさいと言われた。なのでばちゃばちゃまた遊ぶ。ちなみにクロールで泳いでる。平泳ぎもしているとレイジェス様が入ってきて、なんて格好で泳ぐんだ! と何故か怒られた。お股見えちゃったか?
なのでクロールでばちゃばちゃやる。飽きたので背泳ぎしてみた。天井に絵が描いてある。夜空を白鳥が飛んでいる絵だった。

「レイジェス様。天井の絵が綺麗です」
「ああ? 気付かなかったな、リアの言うとおり綺麗な絵だ」

 レイジェス様は足を伸ばして湯船の中で座っている。私はそこに背泳ぎですぅっと泳いで行った。

「仰向けで泳ぐとは器用な」
「えへへへ~」

私はふにゃりと笑った。そしてレイジェス様に捕まえられた。

「リアはどこもかしこもすべすべだな」
「子供ですからね、大人になったらざらざらですよ」
「ちゃんと手入れはするようにな?」
「大人になったらね?」

 私は笑う。ぎゅうっと後ろから抱きしめられてレイジェス様を跨いで座っていた間からにょきっとレイジェス様の物が顔をだした。
にょきっと出た時に私のいい所にあたってしまい、「あっ」と声がでた。
レイジェス様が私が今どんな顔をしているのか見ようとして私の頬に手を添えて後ろへ向かせようとする。

「恥ずかしいです」

 と私が言うと、もっと恥ずかしい事をいつもしているのにと言う。

「もう上がって、夕食にしましょう? きっともう出来てますよ」

私が先に出ようとすると腕を掴まれた。

「今日は先に寝るなよ? 分かっているな?」

 逃げ場を与えない肉食獣の様な瞳で見つめられた。
私はこくりと頷いてから先にお風呂をでた。脱衣所にはバスタオルの棚があり、備え付けのドライヤーもあった。私はバスタオルを一枚取り、頭をふいてから体を拭いた。けれど頭から雫が垂れて拭いても拭いても雫が切れない。なのでもう一枚タオルを持って来て頭に巻いたら雫が垂れなくなった。

 ドライヤーを使って乾かしているとレイジェス様がお風呂から上がってきた。
私は着替えを持ってこなかったので着衣の神呪でエンパイアドレスに着替えた。淡い黄色のドレスで後ろに薄絹のマントが肩からひらひら流れるようになっている。裾はトレーンが少し長くなっている。お風呂へ入るときに脱いだ下着は空間収納へ入れた。今は神呪でドレスの下にも下着を着ている。レイジェス様が興味深そうに私の胸元に指を突っ込んで本当に下着を着ているのか確認した。
確認するならせめて声を掛けて欲しい。いきなり指を突っ込まれてどきっとした。

「あ、レイジェス様、服を着ないで。わたくしが着衣の神呪で着せます」
「お、わかった」

 レイジェス様がじっと立っているので、取り敢えずトランクスを着衣させた。

「服は今デザインを考え中です。少しお待ちください」

 私はグルジアの民族衣装をイメージした。チョハは黒で肩に金色の刺繍が入っていて、ウエストに皮ベルトが巻かれているのを想像した。中に着るシャツは立ち襟で、ブーツはシュッと長くて黒い。

「スァビジィエル!」

ボン! って音はしない。シュッと小さな乾いた音がするくらいだ。
あっという間に着衣してたのでレイジェス様は少し驚いた。

「ふむ、なかなか良いな」

 気に入ってくれたようである。やっぱりレイジェス様の髪が黒くて長いからか?肌の色も白いし、黒い服が似合う。
レイジェス様はエアで髪を乾かしたあといつも使っている白い紐で髪を縛った。
そして二人で食堂へ行った。

 食堂へ付くとそこはごく普通の食堂だった。前回の謁見の間みたいな王座は無い。
横に長い部屋でテーブルが中央に置いてある。
入り口から向かって奥がレイジェス様でその左が私の席だ。テーブルを挟んで向かい側にあるのが技術指導者さんの席だ。
レイジェス様が先に座り、私はその次に座りアーリンは私の後ろに立っている。私達の夕食が終わったら使用人達が一斉に食事をするので、その時に一緒にどうぞと執事に言われたそうだ。
私達が座ってから数分して技術指導者さんが来た。

「初めまして、技術指導を致しております、ローラント=フェリンガー、22歳です。どうぞよろしく」

 右腕を開いてから胸に折り、お辞儀をする。

「君と会うのは初めてだな。私はレイジェス=アルフォード24歳、爵位は公爵だ。君には大変期待している、これからも頑張ってくれ」

 珍しくレイジェス様がテーブル越しに握手の手を求めた。ローラントはその手を出してがっちり二人で握手を交わす。

「灌漑施設は終わったのか?」
「もうとっくに終わりました。それとは別に種籾から苗を作っていて、昨日ちょうど田植えが終わった所です」

 私はその言葉に驚いた。

「田植え!?」

 私は思わず大声を出した。
だって、田植えって……私はレイジェス様の顔を見上げた。

「明日現地を見せて喜ばせようとしてたんだがなぁ……」

 レイジェス様はじと目でローラントを見た。

「あっ……!! 申し訳ありません!!」
「よいよい、もうばれてしまった」

 諦めたように目を閉じて腕を組んだレイジェス様に、行儀が悪いけど椅子に立って、私はレイジェス様のほっぺにちゅっとした。そして言った。

「大好き」

 ローラントが目をぱちぱちさせていて、執事のエドアルドは知らぬ素振りで使用人もエドアルドと同じで知らぬ素振りだった。
ローラントだけがまだ目をぱちぱちさせている。これは自己紹介したほうがいいだろう。わたしはゴホンと咳払いをし、椅子にきちんと座った。

「はじめまして、ごきげんよう、わたくしはアリア=アズライル8歳です。神籍で歌とピレーネの女神の任についております。隣のアルフォード公爵様の婚約者です」

 一気に言ってにっこり微笑んだ。

「ええと……親に決められたのですか?」
「父神様には庇護者だと言われただけです。結婚相手とは聞いてませんが?」

 普通に答えたつもりだけれどローラントには伝わっていない。

「父神様……とは?」
「この大陸の守護者であり最高神、創造神であるアズライル様の事です」

そう言うと何言ってんの? って顔で見られた。

「ローラント様は戴冠式にはお出にならなかったのですか?」
「私は平民ですから」

 なるほど、私の事を知らなかったはずだ。
レイジェス様を見ると説明するのが面倒だ、って顔をしていた。
そして、仕方ないなぁって顔で言い始めた。

「ああ、ローラント、私が何故水田を作ろうとしたか、その理由はリアだ」
「彼女は神なので人の食べる物は食せぬ。私達に主食としてパンがあるように、神にも主食がある、それが米だ。私は彼女の為に米畑を作ると約束して今に至る」

 話をするとまだ納得いかないようだ。

「しかし、苗を植えるまでに灌漑施設などを作り、種籾の品種改良、土づくり、相当な資金を湯水のようにつぎ込みましたよ? そんなにまでして何故? おかげで、作業は進みましたが」

 ローラントは不思議そうな顔をした。

「それは……」

と言ったあとレイジェス様は私をちらりと見る。

「……からだ」

声が小さくて聞こえない。

「今何と言いました? アルフォード公爵様」

 ローラントが問う。

「それは私がリアを愛しているからだ!!」

 ローラントが目を丸くする。執事のエドアルドと使用人達は表情がぴくりとも動かない。プロだ! しかしローラント様は訝しげな目でレイジェス様を見る。
あ~幼女趣味の変態だって思われてるよ……ローラントのあの目は。

「まさか、アルフォード公爵様が私と同じ趣味とは思いませんでした!」

 ローラントがレイジェス様の手を握る。

「私は見る専門ですがね」

と言う。え? てことは? ローラントは幼女趣味? 見る専の?

「私は幼女趣味ではない!」

 レイジェス様がローラントの言葉を否定する。

「え? でも、今愛してるって言いましたよね?」
「うむ」
「では幼女趣味なのでは?」
「違う! 私はリアが好きなだけで……好きだった者が、たまたま幼女だっただけだ!」
「それはおかしいですよ、アルフォード公爵様」
「何がだ?」
「本当に幼女趣味でないのなら大人になるまで待ってから婚約しませんか? 8歳児と婚約しませんよ……。それに、アリア様が頬にキスをした所を見ると、他にもいやらしい事をアリア様にしていませんか?」

 そしてレイジェス様は固まった。身に覚えありすぎますものね。

「私も幼女に触りたいと思う欲望は山程あります。けれど、へたしたら犯罪ですからね、見るだけに留めているのですよ……でも、アルフォード公爵様のその反応からすると、結構触っていますね? いや、全くもって、あなたが羨ましいですよ…」
 ローラントは鋭い。

「別に私はアルフォード公爵様を責めているわけじゃないですよ? ただ同じ趣味を持つ同志であるのに、否定されるのが悲しいのです。まぁ、自覚するというのは大変な所業でした、私の場合。なのでアルフォード公爵様もこれから自覚の波に襲われることになると思いますが…」
「その波ならもう来た。それ以上言うな」

 ローラントは目を見開いた。

「では、私はアルフォード公爵様を勝手に同志と思います」

 ローラントは私を見て言った。

「大変可愛らしいですね」

 そう言った瞬間レイジェス様が私を抱きしめて隠した。
それを見ていた執事のエドアルドがゴホンと咳払いをした。

「ローラント、雇用主に対してそのような無礼な態度を取るとは、派遣元のリッツ伯爵にこのことはきちんと伝えなければいけませんね? ローラントは幼女趣味と。確かリッツ伯爵家にも8歳のお嬢様がいらっしゃったと思うのですが? 父としては君みたいなのには屋敷に出入りして欲しくないだろうね。……やるべき事だけやりなさい、消されたくなければね。アリア様関連で7人の処刑者が出ています。君は8番目になりたいですか?」

 エドアルドは無表情に言った。
ローラントはエドアルドを見た後、私を見て身震いをぶるっとしてから自分の両肩を抱いた。そして失礼しました、と言って仕事の話をしだした。

 なんて出来る執事なんでしょう? エドアルド、あなたの名前、覚えましたよ?私は心の中でエドアルドを褒めた。

 レイジェス様はなんだかちょっと落ち込んでいた。
仕事の話を聞いていても少し上の空だった。食事は終わって私たちは部屋に戻った。
エドアルドが気を利かしたのかこの部屋の寝台は大きいのが1つのみ。私は寝台の足元にあるオットマン風のフットスツールに座りその前にあるテーブルにお神酒をだした。杯も二つ空間収納からだす。
そして私の隣の座面をたんたんと平手で叩いてレイジェス様を呼ぶ。

「飲みましょう?」

 レイジェス様は座った。黙ってしまっているとあの晩餐会の夜を思いだす。

「どうぞ」

 私は杯に酒を注いだ。自分のにも注ぐ。そして乾杯と言ってカチンを杯を鳴らす。
ぐっと一杯飲んだあと私は言った。

「レイジェス様は考えすぎなんですよ、あんな少し言われた位でぐらついて。そうだ! 私は変態だ! って言い切る位、振りきっちゃってくださいよ? レイジェス様は私が男でも選んでくれたんだから、そもそも幼女とか関係ないでしょ? 年齢も性別も関係無く、私が私だから好いていてくれてるんでしょ?」

 レイジェス様が私を見つめる。
黙っているとあの晩餐会の日を思い出した。

「……何か……言って?」

 私の瞳からぽろっと涙が落っこちた。それはぽたりと私のドレスに落ちて水の染みを作った。別に泣くつもりじゃなかったのに。

「…私には年端もいかぬリアを極みに導いたり、リアに触れたりと罪悪感がある。ローラントの言うようにまともな男なら……大人になるまで待てるはずだ。それなのに私は…幼いリアの体を愛してしまっている。それは罪だと思っている……」

 私から顔を背けて言うレイジェス様を見て、苦しんでいるんだなって思う。
だけど違うよ?

「罪なんて何処にもないわ? レイジェス様はまともな男です! 辛くても私の蜜花を散らさないじゃないですか。あの状況で我慢できる殿方を探すほうが難しいのでは? ……幼いわたくしを愛しても良いと、わたくしが言いました。レイジェス様が…あなた自身をわたくしに充てるとおっしゃった時、わたくしは頷いたでしょ? 一体、わたくしを愛するのに誰の許可がいるのです? わたくしが良いというのに? もしこの愛が許されないなら父神様の天罰が下っているはずです」

 レイジェス様は杯をぐっと飲み干した。

「私は間違ってないと思うか?」
「ええ、あなたは間違っていません」
「間違っていたら天罰が下ります。父神様はいつもわたくしを見守っていますから。今もです……」
「酒を注いでくれ」

 私はレイジェス様の杯にお酒を注いだ。レイジェス様も私にお酒を注ぐ。

「乾杯」

 私はそう言って杯をカチンと合わせた。そしてごくごくと飲み干す。

「…絶対幸せにするから、罪悪感なんて感じないで」

 私は笑って言ったつもりだったのに、やっぱり少し涙が零れたようだった。
レイジェス様が私の涙を人差し指で掬い、親指で目元を拭き取った。

「私は間違っていない。…もし、私が間違っているとしたら、それはリアの蜜花を散らした時だ」

 レイジェス様が自分に言い聞かせる様に言ったので、私は頷いた。
レイジェス様は私を抱き上げて寝台に連れて行った。私を寝かせて、そして自分も寝台にあがる。

「解除の神呪を」
「リィリィベファジション」

 私とレイジェス様が一瞬で裸になった。
いきなり二人素っ裸になったので、私は笑ってしまった。
でも、レイジェス様は笑ってない。

「私は間違っていない」

 そう言って私に口付けをする。
舌が口の中一杯に入ってきて息苦しい、鼻でも息をするが空気が足りない。
レイジェス様の舌がぐるぐると動き回り、息苦しいけど気持ちいい。

 その手は胸をまさぐって乳首を弄る。私はぐるっと向きを変えられ胡坐をかいたレイジェス様の膝に乗せられた。私の股の間にレイジェス様の物が顔を出す。レイジェス様は背後から私の乳首を両手で弄ぶ。股がじゅんとして思わず膝を閉じてしまった。閉じた股の間からレイジェス様の物がそそり立っている。私は太ももを締めたままその大きな物を両手で擦った。

「私は間違ってない」

 私に擦られながら私の肩におでこを乗せるレイジェス様の耳元で私は言った。

「ええ、あなたは間違ってない。だから罪悪感なんて持っちゃダメ」

 こんな事を何回も言って説得するなんて、洗脳みたい。
と思いつつ本当に罪悪感なんて持って欲しくなかった。
私はレイジェス様の膝を降りて髪を耳にかけてから肉棒を舐め始めた。座って陰茎を両手で持って擦りながら亀頭をぺろぺろ舐める。レイジェス様がそれを見ている。

「飴を舐めているみたいだ」
「そう?」

 レイジェス様の物を、ぺろぺろ舐めたりちゅうちゅう吸ったり、口の中に入れる。大きすぎて先しか入らないけど出し入れしてみる。陰茎はこしこし擦ったまま。すると、レイジェス様は私をひょいっと持ち上げてこてんと寝かせて足を開いた。そして私の股に顔を埋めて匂いを嗅ぐ。

「リアの匂いがする」

 鼻が蕾に当たってひくひくした。秘書はもうぐちゅぐちゅに濡れていた。
レイジェス様が指で花びらを広げて蕾を探す。隠れていた蕾を探し当てて舐める。少し被っている皮を舐め上げて敏感な所を出した。敏感な所を舐められるともうダメだった。蕾が硬くなって蜜花がひくひくする。

 レイジェス様の指がそっと蜜花を撫でるのがくすぐったい。指をにゅっと押して肉に弾かれる。傷つけないように優しく私に触れる。指で蜜花の入り口を弄られながら蕾を舐められて私の体はぴんと弓のように張ってしまってもう達しそうになっていた。レイジェス様がそれを見て私の股に自分の物をあてた。

 レイジェス様の硬くて熱い肉棒が私の股でぬちゃぬちゃと生々しい音を立てている。亀頭はもう濡れて艶が出ている。私の足を閉じて股にレイジェス様の物を挟んだまま激しく腰を動かした。

「あっ、あん」

 いい所に当たって声が出る。

「リア、ここは屋敷ではない。声は控えよ」

と言って左手で口を押さえられた。音声遮断の魔法を掛けれる癖に! ……これってどう考えても、こう言うプレイだよね? 右手は私の足を閉じさせたままで、私に体重をかけて力強くピストン運動をする。私はいい位置に当たっていきそうだったけど、口が大きな手で押さえられて叫べない。

「ん、んんん、んん!!」

 レイジェス様の体が重くて苦しくて気持ちいい。私は持ち上げられた足を痙攣させながら達していた。レイジェス様もすぐそのあとに果てた。

「うっ、いくっ!」

 私の口を押さえていたのでレイジェス様にも飛んだ液が掛かってしまった。レイジェス様はすぐアクアウォッシュを自分と私に掛けてぱたっと倒れた。
横になったレイジェス様が私を見つめる。

「重くなかったか? 苦しかったであろう?」
「重かったし苦しかったです。でも、気持ちよかった」

 私も横になってレイジェス様を見つめた。

「わたくしが貴方の物なら、貴方はわたくしの物ですよね?」
「ああ、もちろんそうだ」
「じゃあ、いつまでもわたくしの物でいて?」

 私がそっと手を伸ばすとレイジェス様は私の手を両手で握り締めた。

「神に誓って、私は永遠に君の物だ…リア」

 私は微笑んでそのまま眠りについた。




 次の日、私は冒険服でシリルにレイジェス様と乗っていた。アーリンはフライにローラントを乗せている。アーリンがローラントに道を聞いて先導する。
低い位置を飛んでいるので領民達が空を見上げる声が聞こえる。

「大きな狼が飛んでるぞ!」
「あの竜はなんだ!?」

 しゅっと風を切る速さで飛んでいくと大きな山の麓に開けた平野が見えた。
そこに降り立つと召喚獣を閉まってから、ローラントが先導して私達3人を連れて行くと、そこには私の見た事のある景色が広がっていた。
遠くて、信じられなくて、本当にそうなのか分からない。
何も無い田舎のよくある景色、なのに……。

 私は気が付いたら、レイジェス様もアーリンもローラントも追い越して走っていた。走って、早く近くでその景色を確認したかった。
走るとどきどきして胸が苦しくなる。
だけど、見たい気持ちで一杯になって胸を押さえながら走った。

 レイジェス様が走るな! と言っている声も遠くに感じる。
はぁ、はぁ、はぁ、足が絡まって、地べたに転んだ。
私は地面に手をついてそれでも前に広がるその景色をちゃんと本物だと確認して涙がぽろぽろ出た。

 転生前、日本でおじいちゃんとおばあちゃんの家に行った時に見た、田舎の風景。水田がそこに一面に広がっていた。私は懐かしくなって両手で顔を押さえた。
涙がとめどなく溢れてくるから。

「うっ、ひっく、ううぅ、うああぁあああ、うっ、ひっく」

 言葉にならない。
もう二度と見られない景色だと思っていた。

「ほら、走るから転ぶんだ」

 レイジェス様が屈んで私の膝にヒールを掛ける。

「ちが、うううぅ、ひっく、か、かんど、ひっく、して、うああああぁぁん!!」

 私はレイジェス様にしがみついて泣いた。いつも大人な態度の私が大声で泣いてるからかアーリンが驚いている。

「…泣かせるつもりはなかった、すまぬ」

 私は首を目一杯横に振った。
レイジェス様の首に腕を絡めて力強くぎゅっと抱きしめた。
色んな想いが込み上げて、何かを言いたくても言葉が浮かばない。
水田を良く見ると、植えたばかりの苗が順序良く並んでいる。どの田んぼにも苗が植えられていて此処から見える辺り一面の景色が全て水田だった。

「ちゃんと水も溜まってるし、このまま順調にいけば秋には収穫できますよ」

ローラントが言った。私は嬉しくてまたどきどきして胸を押さえた。
でも、収まりきらなくて苦しくなった。

「レイジェス様…ありがとぉ、大好き……」

そんな、普通の言葉しか出なかった。

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「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

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