魔術師長様はご機嫌ななめ

鷹月 檻

文字の大きさ
85 / 190
第三章

10痛みと快感

しおりを挟む

 部屋の寝台に入ると、私は体中にぎゅうっと縛るような食い込むような痛みを感じた。
これが位階痛というものなのか……もっと刺すような痛みだと思っていたから、同じ痛みでもこれなら我慢が出来るかも知れないと思った。
アーリンが痛いより苦しいと言った意味がなんとなく分かった。

「始まったか」
「たぶん?」
「痛いか?」

 レイジェス様が私を心配そうに見るから私は首を振った。

「痛いというより苦しいです」

 レイジェス様は私に口キスをした。
舌を吸って唇を離す。

「私は今日、リアを愛するつもりでいた、だが…止めた方がいいな」

 私はレイジェス様の寝巻きを袖を引っ張って、首を振った。

「愛して下さると言ったのは嘘ですか?」

 レイジェス様は驚いたように私を見た。

「でも、リア、苦しいのだろ?」
「大丈夫、お願い? レイジェス様が欲しいの」

 レイジェス様は部屋の鍵と防音を掛けて魔石灯を消した。
サイドテーブルのテーブルランプだけが部屋を心もとなく照らしている。
レイジェス様は自分の寝巻きを脱ぎ裸になった。彼は下着を履いてなかった。
そして私の寝巻きも脱がした。私もまた下着を着ていない。
レイジェス様はぎゅっと私を抱きしめたあと、乳首を強く吸った。
ぎゅっと縛られるような位階の痛みと乳首を強く吸われる痛みが重なり合って気持ちいい。

「痛くて……でも、気持ちいい」
「痛いのが気持ちいいなんて、リアは被虐趣味の傾向があるようだな」

 あれは昔見たテレビだったか? いや、映画だったか? ああ、小説だったかも知れない。その中で痛さと快感は紙一重だという言葉があったのを思い出す。なんとなく印象に残っていたその言葉。
今の私にはその言葉の意味が分かる……痛みの中の快感。

 レイジェス様が唇を離すと私の乳首はぷっくりと赤味を帯びて立ち上がっていた。
反対の乳首も同じように吸われる。すぅっと指先で体を撫でられ、その指はぴたりと閉じた割れ目を伝って、秘所で蕾を探している。
レイジェス様が唇を離すと、また乳首は赤味を帯びてぷっくり立っている。
レイジェス様は指先で乳首を転がしたり摘んだりして弄んでいる。
私はそうされて蕾がじんじんしているのを感じてレイジェス様にそこを弄って欲しくてしょうがなかった。

「レイジェス様、舌で…して欲しいの」
「ん? ちゃんと言わないと聞こえない」

 絶対聞こえてると思う。

「リアの……蕾を舐めて?」

 言ってて恥ずかしくなって顔を隠した。それを力強く剥がされてしまった。
思わず恥ずかしくて涙目になる。

「こんな顔で言うのだな」

 レイジェス様はそう言って私の蕾を舐め始めた。
欲しかった所に欲しい快感が与えられて私は思わず声がでる。

「あっ、ん」
「可愛い声だ」

 レイジェス様の舌が蕾の周りを蠢く。ぺちゃぺちゃと音がしてぎゅうううっと締め付ける痛みが自分を興奮させるのを感じていた。

「はっ、うっ、んん……」

 すうっと愛液が垂れる感覚があった。それをじっと見ているレイジェス様の息がお股に当たる。

「わかるか? 今、リアの液が垂れた」
「わかります……もうレイジェス様が欲しいってここが言ってる。……ここをぐちゅぐちゅにして欲しいのに、まだダメなの?」

 レイジェス様は苦い顔をして言った。

「まだダメだ。まだ始まったばかりだぞ?」
「じゃあ、わたくしが舐めます」

 私は寝ていた状態から起き上がって、レイジェス様に下に寝てもらった。そしてレイジェス様のお顔にお股を向けて私はレイジェス様の陰茎を両手で持ち、亀頭をぺろぺろ舐めた。

「これは良い……リアに舐められながらリアを舐めれる」

 レイジェス様が私の閉じたすじめに両手を充てて、くぱぁっと花びらを両手で広げる。そして蕾を舌先でれろれろと舐めて吸う。
私はレイジェス様の亀頭を口の中に目一杯入れて、しゃぶりながら陰茎を両手で擦った。ぎゅうううっと体中を縛り上げる様な位階の痛みが体のあちこちに走る。

「レイジェス様、もっと痛くして? もっと吸って? 痛いくらいして欲しい」

 レイジェス様は私の蕾を痛いくらいきつく吸った。

「あっ、あっ、痛い、苦しいぃ、ああああぁ、気持ちいっ、ああ」

 私は一心不乱にレイジェス様の愛しい物をしゃぶった。
舐めて、擦って、ちゃぷちゃぷと口の中で可愛がっていると、レイジェス様が声を出した。

「んっ、リア、そんなにしたら、私が先に果ててしまう……うっ」

レイジェス様が私をひょいっと持ち上げて、寝かせてから私の上になる。
ぬるぬるになったそれを私の秘所に充てた。
途端に私の秘所はひくひくとする。

「リアが喜んでいるな」
「ずっと、待ってたから……」

 レイジェス様は私に口付けをした。
舌を絡めて吸って、秘所にもレイジェス様の亀頭が私にぴたりとくっ付いて、まるでここもキスをしているみたいだ。
口付けをしながらレイジェス様は自分の物を私に擦りつける。
じゅぷじゅぷと液の擦りあう音がする。レイジェス様の熱くて硬い物が私の秘所や蕾に充てがわれ、擦られて、溢れる液でぬるぬるとして……たまらない快感が体を走る。気持ちが良くて足がぴんと張ってしまう。
その足の片方をレイジェス様が折らせる。

「足を折って快感を覚えた方がもっと気持ち良くなれる、このままの体勢で果てなさい」

 レイジェス様にそう言われて、私は頷いた。レイジェス様は私の秘所を自分の肉棒で強くこすり付けてぐちょぐちょにした。蕾にもあたって凄く気持ちがいい。
その反面、位階の痛みで首を締め付けられているように息がしずらい……苦しい。レイジェス様も気持ちが良かったのか私の足を閉じた。そして股で擦る。それがいい角度で私のいい所にあたり肉棒を動かされるたびに快感の波が押し寄せてきてもう我慢してるのは無理だった。

「レイジェス様、いきそう……」
「ああ、一緒に行こう」

 レイジェス様は激しく腰を動かして私を極みへ導いた。

「はぁああああ! んっんっ、ああぁ、き、きもちいぃ、ぃいっちゃう! いっちゃうああ、もうだめえええ!」
「ああ、リア、私もいくっ! 愛してるリア!!」

 レイジェス様は果てる瞬間私をぎゅっと抱きしめた。
私もレイジェス様にぎゅっと抱きついた。
果てた後も私の体は何かにぎゅうぎゅうに縛られたみたいに痛くて苦しかった。
レイジェス様はアクアウォッシュをして綺麗にしてくれた。

「位階痛はどうだ?」

 レイジェス様が私を心配しているんだろう、不安そうな顔で聞いて来る。

「もっともっとして欲しいです。痛くて苦しいのが、気持ち良いと薄れている気がするんです」
「リアのやってることは……痛みを快感で打ち消しているんだな、きっと」
「あの時のように、わたくしをどろどろにしてくださいませ」

 レイジェス様は暫く固まった。そして我に返る。

「リアが望むなら、いや……リアが望まなくてもそうしたい」
「いっぱい愛してくださいませ」
「ああ!」

そのあと3回目くらいまでは私は起きていた。
酷い位階の痛みを快感で耐えていた。でも4回目くらいから位階痛が無くなったのか、ただただ気持ちよくて……そのまま眠ってしまった。
どろどろのべたべたになってたのは最初のうちはわかってて、アクアウォッシュするとレイジェス様が言っていたけど、私は後でまとめてして欲しいと言った。
私はなんだかんだ言いつつも、レイジェス様の液にまみれてどろどろになっているのが好きなんだと、分かってしまったから。
最初はべたべたして、どろどろして、気持ち悪いなぁ……って思ってたのに、不思議だ。




 朝目覚めると位階痛は無くなっていた。
もちろんどろどろにもなって無かった。
レイジェス様は気持ち良さそうにすやすや眠っている。
私はレイジェス様を起こさないように寝台からでた。
自分を見ると裸だった、しかもあちこちキスマークがある。

 私はタンスから装飾下着と部屋着を出して着た。薄い黄色の部屋着でレースのひらひらが沢山付いている。時計を見ると朝の6の刻を少し過ぎていたくらいだった。
髪がそのままだったので結って欲しかったけど、サーシャを今ここに呼んでしまうとレイジェス様が目覚めてしまう。私は食堂でお茶を飲んでから結ってもらおうと思い食堂へ向かった。
食堂へ行くとエドアルドがいた。

「ごきげんよう、エドアルド」
「ごきげんよう、姫様。お食事をなさいますか?」
「いいえ、紅茶だけで結構ですよ」
「あと、サーシャがいたら髪を結って欲しいと言って」
「承知しました」

 エドアルドが厨房に行って、厨房からセバスがワゴンにお茶セット乗せて持ってきた。
手際良くお茶を入れて私に差し出す。

「サーシャがまだ来ておりません、髪結いは私でも良いですか?」

 セバスが私に聞いてきて、私がお願いと答えるとセバスは髪を結ってくれた。
ギイッと音がして食堂のドアの開ける音がした。そちらを見るとレンブラント様とヒューイット様だった。

「ごきげんよう、レンブラント様、ヒューイット様」
「ごきげんよう、アリア様」

 レンブラント様の機嫌が良い、二人は仲直りしたのかな? 一緒に朝食に来るってことはそうだよね? ケンカしてたら来ないよね? と考える。

「ごきげんよう……アリア様」

 ヒューイット様はぶすっとしていた。
セバスが私の髪にブラシを通していて首や胸元のキスマークに気付いて小声で言った。

「姫様、これは隠したほうが……」
「セバス、セバスの気持ちは分かるし、有り難いのですけれど、この前スカーフをしていて怒られてしまったの。見せなさいって、隠しちゃダメって。だから、これで良いのです」
「でも、それでは姫様の品位が…」

 私は首を振った。

「レイジェス様のお望みは、わたくしが隠さないことです。だから良いのです」

 私はセバスの瞳を見て頷いた。そして私の髪を結う、いつものハーフアップ。
けれど首周りがすっきりとして、首や胸元のキスマークが見えてしまう。
ヒューイット様がそれを目ざとく見つけてしまった。

「昨夜はお楽しみだったようですね?」

 話をいきなり振られる。
その言葉を聞いてレンブラント様も私を見て首の印に気付いた。

「でも、そんな事くらいまでしかできないわよね? 子供相手では」

 私に挑むようにヒューイット様が言い、セバスがそれを聞いて髪を結う手を止めた。そして何か言い返そうとして、私はそれを手で制止する。

「わたくしはアリア様、あなたを超えましたのよ?」

 私に勝ち誇ったように言うヒューイット様。
私はなんの事だか分からない。

「やはり、子供だと鈍いのですね。わたくしが本当の女になったと言う事ですよ」
「それが、どうしてわたくしを超えたことになるのです?」

 女になったということは蜜花を失ったという事だ。ヒューイット様がそれを失ったからといって何故私を超えたことになるのか、さっぱり分からない。

「だって、アリア様はまだ密花を経験してらっしゃらないし、蜜花での極みを知りませんよね? わたくしは今まで極みという物を知りませんでした。8歳のあなたより劣っていたのですよ。それが今はあなたの一歩先を行っている、あなたに勝っているのです。この嬉しさ、わかります?」

 私にはさっぱり分からなかった。蜜花は誰かと競争したり優越感で失う物じゃないと思ってたから。隣でセバスの手が震えているのが見えた。顔を見上げると怒りを我慢しているのが分かった。

「セバス、わたくし、冷たいお茶を飲みたいわ?」
「でも、姫様!」

 私は首を振って厨房を指差した。セバスは厨房に消えた。入れ替わりでエドアルドが二人の料理を使用人と一緒に運んできてテーブルに置く。
そして私の所に近寄ってきて耳元に小声で言った。

「セバスから状況を聞きました。アリア様、あなたの方が身分が上なのですから、あれを叱っても良いのですよ? 自分の身分も考えず、図に乗りすぎです」

 珍しくいつも無表情のエドアルドの顔に怒りが滲み出ていて少し驚いた。
私は首を振った。問題だと思うならレンブラント様が止めると思ったから。
二人が食事を始めて剣呑な雰囲気が和らいだ時の事だった。
バン! と音がして食堂のドアが開いた。レイジェス様だった。

「ここにいたか!」

 ほっとした顔をする。

「どこかに行くなら私に必ず言いなさい。目覚めてリアがいないのは私がきつい」

 そう言って、レイジェス様は私に舌を絡める口付けをしてから自分の席に座った。

「体はどうだ? 大丈夫か?」
「ええ、もうすっかり、だるくもないし、苦しくも痛くもありません」
「なら良かった」

 エドアルドが厨房にレイジェス様の分の食事を持ってくるように指示し、セバスが冷たいお茶を持ってきた。

「レイジェス様、冷たいお茶はいかがです?」
「ああ、いいな、丁度喉が渇いていた」
「セバス、レイジェス様にもね」

 セバスがグラスを二つだし、そこにお茶を注いだ。
ヒューイット様がレイジェス様に話しかけた。

「レイジェス様、一緒にお庭を散歩しませんか? 門前のお庭の花が素晴らしく咲き乱れております」

 レイジェス様はそれを聞いてこめかみを押さえる。

「何故、私がお前と庭を歩かねばならん? 大体、レンブラントの前で他の男を誘うなど有り得ない。今一度、貞淑さの意味を考えた方が良いのではないか? レンブラント、お前もだ。自分の婚約者である女が自分の目の前で他の男を誘ったのだぞ? 何故何も言わない! お前達は本当にその仲を改善するつもりがあるのか? 私はあると思ったからこの城に誘った。しかし、そんな気持ちがないのであれば時間の無駄だ。とっとと去れ!」

 レイジェス様のお叱りの言葉を受けてレンブラント様は一瞬小さくなった。
けど、ヒューイット様には堪えていないようだった。

「わたくしはきちんと仲直りしていますわ、わたしくしはレンブラントに蜜花を捧げました。わたくしたちは上手く行ってます」

 ヒューイット様は自信ありげに言ったが、レイジェス様は訝しげに眉を寄せ、レンブラント様に聞く。

「本当に、ヒューイットの言う通りなのか? レンブラント、正直に言え」

 レンブラント様の額に薄っすらと汗が見えた。

「ヒューイットは気が強く活発な所があり、私も時にはその態度に怒りを感じる事もありますが、基本は優しい女です。私達の仲は修復されたと私も思っています」
「ふむ、わかった」

 レイジェス様がお茶を飲んでいると食事が運ばれてきた。レンブラント様とヒューイット様は食事を終えて食堂を出た。

「リア、私はこれからタウンハウスの屋敷に用事があって戻る。今からここにアーリンがくる。アーリンと共に行動するように」
「はい」

 レイジェス様は食事を終えてゲートでお屋敷に戻った。暫くしてアーリンが現れた。

「お待たせしまして申し訳ございません」

 とアーリンが言い、私の斜め後ろに立つ。

「アーリン、大広間に行きます」
「はっ」

 私はアーリンを連れて大広間に向かった。
途中、中庭沿いのベランダ廊下でユリウス様と会った。

「今日は師長様とご一緒じゃないのですね? 珍しい」
「用事が有ると、タウンハウスのお屋敷に向かいました。ユリウス様はこれからお食事ですか?」
「ええ、あとからクロエも来ます。アリア様は?」
「大広間で涼もうかと。あちらは涼しいですから」
「はぁ、なるほど。あとで私も伺うかもしれません」

 とユリウス様が言った。私は頷いて、ではまたあとで、と言って大広間へ向かった。大広間に着くとピレーネや楽器が置いてある奥の方、左の壁の鏡に向かう。
そしてそこで神呪で大きな紫と濃い紅赤の玉虫色に輝く布を出した。

「綺麗な布ですね。何をするのです?」
「前に見た踊りが素敵だったのですが、もっとしなやかに動ければ凄く良くなるのではないかと挑戦してみようかと思って」
「踊りですか、へ~」

 アーリンは後ろで腕組をして私を見ている。私は鼻歌を歌いながら、口ずさみ、北の城での音楽や踊りを思い出しながら布をひらひらとなびかせて踊ってみる。腰を振って体をゆする。子供がするのは良くないと言われてしまいそうな動きばかり。
ひらっと布を放ってたんたんと足をリズムよくきざみ、寝転ぶようにポーズを取って終了した。アーリンが拍手をしてくれた。

 私は少し汗ばんでいたのでアクアウォッシュをして長椅子に座った。
お茶を持ってくれば良かった。いくらここが涼しいといえ体を動かすと熱い。昨日愛されすぎてあまり寝ていなかったせいか急激に眠くなる。
長椅子に横たわると瞼が自然に閉じて行った。




 私は唇に柔らかくて温かい物を感じた。これはキス?
レイジェス様はお屋敷に行ったはずよね? 帰ってきたのかしら? とまだ浅い眠りの中で考えていると体をふわっと持ち上げられた。抱き上げ方がレイジェス様じゃなかった。
じゃあ、これは誰? 私は重い瞼を開いた。

「…レンブラント様!?」
「やぁ、目が覚めてしまいましたか」

 レンブラント様は私を縦抱きにしているのでその手がお尻の割れ目にぐいっと入り込む。

「あ、あの? これは?」
「師長様にアリア様を連れてくるように言われました」

 レンブラント様が部屋着の裾から手を入れる。
そして、その手は私のお尻をショーツの上から触っていた。

「レイジェス様が帰ってきたのですか?」

私のお尻をまさぐる手が気になる。
これって……絶対魅了されてない? レイジェス様に連れてこいって言われたのって本当? 私、このまま連れられて行っても……いいの?
護衛のはずのアーリンは何故かいない。眠る直前まで私を見守っていたのに。

「では、行きましょう」

 私は不安な顔でレンブラント様を見つめた。
前とは明らかに違うレンブラント様を信じても……大丈夫なのか?
不安で鼓動が早くなる。そして、レンブラント様は何故か急ぎ足で大広間を出ようとしている。レンブラント様は私の顔を見て言った。

「大丈夫ですよ、そんな不安そうな顔をしなくても」

大広間の出口へ歩いて行ったその時、大広間のドアが開いてユリウス様が入って来た。
ユリウス様はすぐにレンブラント様の手が私の部屋着の中に入っているのに気付いた。

「レンブラント! アリア様をどこに連れて行く気だ!?」
「師長様に連れてくるように言われました」

 レンブラント様は淡々と言った。

「師長様に? 今日はお見かけしていないが?」
「私は言い付けられただけですから。急ぎますのでもう行っても良いですか?」

 レンブラント様が先を急ぐ。私はレイジェス様のいない所に連れて行かれるのが怖かった。助けて欲しくてユリウス様に手を伸ばして、小さな声で呼ぶ。

「ユリウス様」

 それを聞いたユリウス様がレンブラント様から私を取り上げ抱き寄せた。私はほっとした。これでどこにも連れて行かれないと。

「何をするユリウス!」
「レンブラント、お前は明らかに魅了に掛かっている! いい加減に嘘で身を固めるのはやめろ! 恥ずかしくないのか!? 師長様の婚約者を攫うなど、犯罪だぞ!?」
「攫おうとしたわけではない! 私は師長様に頼まれただけだ!」
「ならあとで師長様に確認してもいいのだな?」

 レンブラント様が顔を歪める。

「私は……魅了されただけだ! 私は悪くない!!」
「私の前から消えろ! お前など見たくもない!」

 レンブラント様は走って自分の部屋の方に消えた。
私は自分でも気付かないうちに震えがきていた。
ぷるぷると小刻みに震える肩をユリウス様が力強く抱きしめる。
私がユリウス様の瞳を見つめるとユリウス様は頬を赤く染めて私から目を逸らした。

「レンブラントは嘘をついてあなたを連れ去ろうとしていました。危ない所でしたね、大丈夫ですか?」
「なんだか、腰が抜けたみたいで力が入りません」
「このまま抱き上げてますがいいですか?」
「はい」

 不思議だった。
私はユリウス様に抱き上げられて何故か嫌じゃなかった。
セバスと一緒の感覚に陥っている…セバスじゃないのに。
レンブラント様の時はあんなに嫌だった。全身の毛穴から嫌な汗が出ていたのに。
この人は……。

「ねぇ、あなたは一体……何者なの?」

 私が言った何気ない一言にユリウス様が焦っていた。

「な、何者とは? 私はただの辺境伯爵、ユリウス=レーヴェンですよ……?」
「そう……」

 大広間の外廊下からアーリンが走ってくるのが見えた。

「貴様何をしている!?」

 ユリウス様に抱き上げられている私を見て勘違いをしている。

「アーリン、違うの、わたくし、ユリウス様に助けて頂いたのです」
「ええ? 私が花摘みに行ってる間に何が……」
「アリア様にはもう一人護衛が必要だな。護衛一人では隙が出来てしまう」

 そういって、ユリウス様はアーリンに私を渡した。

「腰が抜けておられます。力が入らないようですから抱きかかえてあげていてください」

 とアーリンに言いった。

「私は師長様とお話をいたします。レンブラントはあのままにしておけない」
「アリア様を襲ったのはレンブラント様なのですか!?」
「襲ってはいませんが、連れ去ろうとしていました」
「師長様は今タウンハウスのお屋敷に戻られています」
「では、執事達にだけでもお話しておきましょう。そして、師長様が戻られたら直接お話いたします」

 そう言ってユリウス様は行った。
アーリンが私の顔を心配そうに覗き込む。

「大丈夫ですか? 姫様、申し訳ありません、私が花摘みに行ったばかりに……!」
「アーリン、あなたのせいじゃないわ。それに、ユリウス様がすぐ助けてくれたから、何もされてないわ?」

 アーリンはぎゅっと私を抱きしめた。

「……疲れちゃった。お部屋に連れて行って? アーリン」
「はい、姫様」

アーリンは私を北の棟の部屋に連れて行った。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...