魔術師長様はご機嫌ななめ

鷹月 檻

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第三章

16審問会の役割

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 私とレイジェス様は食堂で朝食を取っていた。今は朝の7の刻。
今日は午前中はスライム狩りをして、午後はワイナリーの見学に行こうとレイジェス様とお話しをいていた。
食堂の扉からガチャリと音がしてコモン様とシエラ様が現れた。

「ごきげんよう、アリア様、公爵様」

 シエラ様がにこやかに挨拶する。

「ごきげんよう、シエラ様、コモン様」

 私もを挨拶した。

「やぁレイジェス、君達軽装だな? どこに行くんだ?」
「ああ、またスライムを倒しに行きたいとリアに言われて、午前中はスライム狩りだ」
「お、じゃあ、俺とシエラも一緒に行っていいか?」
「うむ、前の所はグランドグロウが出て危なかったので、今日行く所は違う所だがいいか?」
「ああ、シエラが安全に狩れる所なら」
「スライムしか出ない場所だから大丈夫であろう」
「昼食はワイナリーでするから弁当はいらない」
「お、ワイナリーにも行くのか。楽しみだ」

 エドアルドとセバスがコモン様とシエラ様の朝食を運んできた。

「シエラ、食事が終わったら軽装に着替えよう」
「ええ、わかりましたわ」

 シエラ様はコモン様に微笑んで、私にも微笑んだ。
うん、やっぱ可愛い、天使みたい。

「セバス、ワイナリーの帰りにオーギュストの所に寄りたい、お前も一緒に来い」
「承知しました」

 セバスが食事を終えたレイジェス様にブラウンティを出し、私には紅茶を出した。

「ねぇ、レイジェス様、オーギュストって?」
「セバスの父だ」
「セバスの?」
「うむ、セバスの父は昔この城で家令をしていた。セバスが家令になるまでな」
「へ~」

 私はセバスを見てからレイジェス様に聞いた。

「何か御用事でもあるのですか?」
「ああ、ちょっと昔の出来事で聞きたい事があってな」

 私がお茶を飲んでいるとまた食堂の扉がガチャリと開いた。
レンブラント様とヒューイット様だった。エドアルドとセバスが二人の料理を取りに厨房に消え、二人共自分の席に着いた。

「おはようございます、皆様」

 ヒューイット様が挨拶をし、食堂にいる皆が、ヒューイット様とレンブラント様に朝の挨拶をする。

「レイジェス様の軽装からするとまた狩りにでも行くのですか?」

 ヒューイット様がレイジェス様に聞いて来た。
レイジェス様の眉間に皺が寄る。

「ああ、コモン達とスライム狩りに行こうかと思っている」
「でしたら、わたくしとレンブラント様も連れて行って下さいませ!」

 それを聞いてコモン様が不思議そうに言った。

「君達二人共そこそこレベルが高いじゃないか、スライムなんかやっつけても今更経験地なんて入らないだろう?」
「入らなくても行きたいのです! ねぇ、レンブラント様?」

 レンブラント様に甘えた声を出すヒューイット様。
コモン様はこの前私が攫われそうになった事を知らない。レンブラント様が私を見つめる視線が痛い。私が苦い顔をしたせいかレイジェス様が私をひょいっと抱き上げて自分の膝に乗せた。

「レ、レイジェス様?」

 レイジェス様は私を抱きしめてレンブラント様を睨んだ。そしてその様子をヒューイット様が見ている。私はヒューイット様とレンブラント様の視線が怖くなって、レイジェス様にぎゅっと抱きついた。

「俺は別に、来るって言うの構わないけど……」

 コモン様は私の様子を見て、何となく何かあったと悟ったのかも知れない。
レイジェス様や私の様子を少し伺うような態度を取った。
もしかして、コモン様はレンブラント様が私に魅了されている事を分かってしまったのか? この人は空気を読まないので、ヒューイット様の前でおかしな事を言わないかと、私は内心冷や冷やしていた。

 エドアルドとセバスが料理を二人に運んでいると、ハンスとユリウス様が一緒に入って来た。珍しい組み合わせだ。
ユリウス様がレンブラントを見つけて一瞬顔を顰める。

「皆さん、おはようございます。朝から集まりがいいですね? 今日は」

 さっき顰めた顔が嘘のように爽やかな笑顔で言う。
食堂にいる皆がユリウス様とハンスに挨拶した。

「ああ、ハンス、私の隣にすわればいい、クロエは少し調子が悪くて朝食は要らないと言っていたからね、席が空いてる」
「では、お言葉に甘えます」
「なんだ二人で、どうした?」

 レイジェス様がその組み合わせを不思議そうに聞いた。

「ああ、ユリウス様に妹のクロエ様を描いて欲しいと絵画の仕事を依頼されまして」
「ほぅ、そうか良かったじゃないか」

 レイジェス様が言うとハンスは首を振った。

「クロエ様を今描くことは出来ないのです、何故なら……インスピレーションが泉のように湧いてくるのです、後から後へと。こんな事今まで無かった! 私はアリア様を描きたい! 気の済むまで! 描き尽くしたいのです!」

 私はハンスを見て、あんぐりと口が開いてしまった。呆れたというか、描く意識が凄いなとか。
サーシャと似たような意識を感じる。サーシャの場合はBLに懸ける情熱が半端ない、あれと一緒の熱だ。ハンスをある意味尊敬。
レイジェス様はハンスを見てくすくす笑っていた。

「で、結局どうすんの?」

コモン様がせかす様に言ったので、ユリウス様が反応した。

「何かあったんですか?」
「いや~午前中スライム狩りして、午後はワイナリーに行こうか? ってレイジェスと話しをしていたら、ヒューイットとレンブラントも来るって言うからさ? スライムしか出ないから経験地なんか入らないし、来るだけ時間の無駄じゃない? って話ししてた訳」
「まぁ、そうですよね。ヒューイットさんもレンブラントもレベルが高いですしね?」

ユリウス様がコモン様の言った事に頷いた。

「あ! 俺、いいこと考えた! 午後にワイナリーで合流すればいんじゃ? そしたらみんなハッピーじゃないか!?」
「そうですね! それがいいですわ」

シエラ様はコモン様の提案に同意した。皆が丸く上手く行くように考える辺り、コモン様はやっぱり社交性が高い。
当然、シエラ様も私が攫われそうになった事を知らないから、丸く収まるように同意する。
ワイナリーで、少しの間一緒になるだけなら……問題ないか……。
私はレイジェス様を見て頷いた。

「では、そのようにしよう、スライム狩りは私とリア、コモン、シエラ様で行って、それ以外の者は昼にワイナリーで合流。ということでエドアルド、ワイナリーに昼食の用意をさせてくれ」
「護衛も連れて行きますか?」
「そうだな、ユリウスもワイナリーで合流でいいか? 今更スライムでもないだろう君は。クロエ様はどうする?」
「ああ、ワイナリーでお願いします。クロエも午後には体調も良くなるでしょう、連れて行きます」
「ではエドアルド、、使用人含めて食事は16名分用意させてくれ」
「承知しました」

エドアルドが言って厨房に消えた。厨房の方に外部と連絡の取れる通信室があるからだ。
そこからワイナリーに連絡を入れている。

「じゃあ、俺達は軽装に着替えてくる」
「では、中庭で待っている」
「ああ、分かった」

コモン様とシエラ様は着替えをしに部屋へ向かった。
私とレイジェス様も席を立った。

「では、またあとで師長様、アリア様」
「ああ、また後で」

レイジェス様がユリウス様に言った。
私は席を立ったときレンブラント様の視線が痛くて息苦しかった。
そんな、穴が開くほど見つめられても私には何も出来ない。
私とレイジェス様、セバス、ハンスが中庭に行くとアーリンとアランが風竜を出して待っていた。

「ハンスは俺の後ろに乗るといい」

 アランがハンス言った。ハンスは貴族だけど召喚獣を出せない。
学生時代は召喚獣を出す授業はいつも赤点だったらしい。
そもそも、絵を描く事意外に興味を見出せない、召喚獣を出す訓練をする位なら、ひとつでも多くデッサンをした方が自分にとっては幸せだと言っている。

 セバスも風竜を出した。
私はレイジェス様にシリルに乗せられた。
レイジェス様が私の後ろに乗り皮ベルトで自分の体ごと私を締める。

「苦しくないか?」
「はい」

 コモン様とシエラ様にメルヴィルとベティも付いて来た。
コモン様の執事のルイはお留守番らしく、皆の用意を手伝っている。コモン様が青い竜を出してシエラ様を前に乗せている。前回は気付かなかったけど、青竜に付いている鞍が私と同じで一人半用だ。
コモン様も特注したんだ~。
メルヴィルは先に竜に乗り、後ろにベティを乗せている。

「皆、準備は出来たようだな? では行くぞ!」

 フェンリルと青竜が飛び立ち、その後ろを4匹の風竜が追う。
今日も天気が良くて空は水色で、流れるような薄い細長い雲が幾つか掛かっているだけだった。

「今回は前回よりもう少し西に行く、小さいスライムしか出ないから安全だ」
「は~い」

 西に5分も飛ぶと長い草丈の草むらと平野が広がる所が見えた。

「ほら、もう着いた。近いだろう?」

 今上空から見た平野にレイジェス様は降りた。それに皆さんが続く。
皮ベルトを外してレイジェス様が先にシリルから降りると私を抱き上げて降ろした。
そしてシリルを影にしまう。皆さんも召喚獣を消していた。

 執事のセバスとメルヴィンが中心になって、休憩地点を作るために床に敷物を敷いていて、ベティとアランがそれを手伝っている。
コモン様がシエラ様を連れてこちらに来た。

「どうする? 一緒に狩るか?」

 とレイジェス様に言って、レイジェス様は私とシエラ様を見た。

「シエラ様はレベルは今いくつなんだ?」
「8だよ」

 とコモン様が言う。

「じゃあ、リアとシエラ様でパーティをした方が良さげだな」
「アリアちゃんはいくつなんだ?」
「この前グランドグロウを仕留めて18になった」
「え!? この前ってあの時だよな?」
「ああ、お前達がいなくなってから出たんだ」
「仕留めたって……凄いな! そっか、レベル8と18なら俺達と組むよりいいな」
「じゃあ二人でパーティを組みなさい」

 レイジェス様に言われて戸惑う。パーティした事無いのですがっ!
やり方わかんないよぅ!

「アリア様? まず、こうお互い向き合うのです、そしてパーティに入りますか?と聞かれたら『はい』って言うのですよ。そうすると音が聞こえます」

 私が『はい』というとシャキンという音がした。
ステータスを見るとパーティに入っていた。

「へ~ありがとうございます! シエラ様」
「じゃあ、あちらで戦いましょう?」

 意外と戦闘モードなシエラ様。
レイジェス様とコモン様は会話しながら私達を見ている。アーリンは私の護衛に付いて来て、ハンスもスケッチブックを持って付いて来た。

「あ、5匹います!」

 シエラ様が草むらを見て言った。
私はクリエイトホールで少し浅めの穴を作ってそのスライム達を落とした。

「あら、穴に嵌ってますわ?」
「一緒にファイアしちゃいましょ?」
「ええ!」
「「ファイア!!」」

 シエラ様と一緒にファイアするとスライム達は燃え尽きた。

「あ、レベルが9になりましたわっ!」

 シエラ様が喜んでいる。

「あら、おめでとうございます」

 ふふっと私は微笑んだ。

「クリエイトホールも意外と使えるのですね」

シエラ様がそう言うので、グランドグロウを落とし穴で足止めした事を言ってみた。

「凄いですね。わたくし実を言うと、こんないたずら系の魔法なんて使う事があるのかと不思議でしたわ」
「ああ、わたくしもです! わたくしも! レイジェス様を落とす位しか思い付きませんでしたわ?」
「まっ、アルフォード公爵様を?」

 シエラ様が目を見開いてそのあと笑う。

「怒ったら怖そうですわ?」
「あ、でも、コモン様を落とそうとか思いませんでした?」

 私が聞いてみると想像した事があるっぽい、シエラ様の目が泳いでいた。
二人で、てくてく歩きながらスライムを探していると、草むらに縦にトーテムポールの様に重なっている6匹のスライムを見つけた。

「シエラ様、いましたわ!」
「今度はわたくしにクリエイトホールをやらさせて下さいませ」
「ええ、どうぞ!」

 私はシエラ様の横でじっと呪文を待った。

「クリエイトホール!」

 シエラ様が呪文を唱えると、ズモモモモと言う音と共に浅いけれど広範囲な穴が出来て、そこにスライム6匹がばらばらと落っこちた。

「あら、穴が大きすぎたみたい! 難しいですわね」

 シエラ様が言う。

「じゃ、一緒に燃やしましょ?」

 と私が言って、二人で一緒に呪文を唱えた。

「「せーのっ、ファイア!!」」

 スライム達は一瞬で消し炭となった。

「楽勝ですわね!」

 シエラ様が天使の笑顔をする。めっちゃ可愛い。

「シエラ様って意外と活動的なのですね? 驚きましたわ?」
「それはアリア様もでしょ? 剣のお稽古を頑張っているじゃないですか? 素敵でしたわ」

 うふふふと私達は笑った。
レイジェス様とコモン様は何やら魔道具についてお話ししている。通信系の魔道具についてのお話しっぽい。ハンスは私に付いて来てデッサンを描いているし、アーリンは辺りを注意深く観察しながら私達のすぐ後ろで警戒している。
丈の高い草むらに、てくてくと歩いていくと甘い匂いがしてきた。
どこからするんだろう? くんくん匂いを嗅ぐ。

「さっきから何をしていますの? アリア様」
「なんだが甘い匂いがしてきて……」
「甘い匂い?」

 シエラ様も私と同様にくんくん匂いを嗅ぐ。

「本当ですね、微かに甘い香りがします」

 とシエラ様。私ももう一度くんくん匂いを嗅いでから考える。
この甘い匂いは丈の高い草むらから匂う気がするのだ。私はその丈の高い草を見上げた。
あれ?これ、どこかで見たことあるような……?
もしかして……!!
私は空間収納からミスリルの剣を出して手に持った。

「どうしたんですの? アリア様!?」
「わたくし、もしかしたらお宝発見してしまったかもしれません!!」
「ええ?」

 シエラ様が不思議がりながら私に付いて来た。
私は丈の高い草をミスリルの剣で切り倒した。

「とりゃっ!」

 途端にその草が自分目掛けて落ちてくる。

「きゃぁっ!」

 それをアーリンが見ていたのだろう、落ちてきた草を手に持って私を庇った。

「何をやっているんです、危ないではないですか! 姫様」
「それが欲しかったんですぅ」

 アーリンが持ってる草を指差すと、アーリンは不思議な顔をする。

「これがどうしたんです? 欲しかったとは?」
「その切った所から私にも持ちやすいような大きさで切ってくださる?」

アーリンは理解不能だわ? とでも言うような顔をして、腰のナイフで切り分けてくれた。
それを受け取って私はちゅうちゅうと吸ってみる、やっぱり甘かった。
私はそれを半分に折ってシエラ様に渡す。

「吸ってみて?」

 シエラ様は私がしたようにちゅうちゅうとそれを吸った。

「甘いわ!?」

 私はシエラ様に頷いてからレイジェス様を大声で呼んだ。

「レイジェス様あ~!お宝発見しましたあ~!」

アーリンはまだ分かっていない、シエラ様はなんとなく分かったようだ。
レイジェス様が私に気付いて寄って来た。

「どうした? 何かあったか?」
「お宝を発見しました!! この草です!」

 レイジェス様は目を丸くする。

「ん? この草が宝?」
「これを吸って下さい?」

 さっき私が吸っていた草の茎を渡す。レイジェス様がそれを吸うと驚いた顔をした。

「甘い!!」
「これは【さとうきび】と言ってお砂糖の原料なのです! お宝発見ですよ!」

周りを見ると自生しているさとうきびだらけだった。
コモン様もこちらに来て驚いている。

「公爵邸でも少ししか手に入らない、ってセバスが言ってたけど、これだけあればお菓子が沢山作れそうですわ」

 私はにまにまする。

「自生しているが畑を作ればもっと取れそうだな」
「ですね~!」
「しかし、良く分かったな? こんな所にこんな物があるとは、自分の領地ながら私は知らなかったぞ?」
「甘い匂いがしたんです!」
「君は犬か」

 レイジェス様が呆れていた。
その後暫くスライム狩りを頑張って、休憩地点で皆でお茶をすることになった。
レイジェス様だけがブラウンティで、他の方達は皆紅茶を飲んでいる。
お茶の用意はセバスとメルヴィンとベティでやった。アーリン、アラン、ハンスも紅茶を飲んでいる。

「そう言えば、レンブラントとユリウスの様子がおかしかったけど、あの二人って何かあったのか?」

 レイジェス様に聞くコモン様。
コモン様って、チャライし能天気だし爆弾発言ばっかりするけど、人の気持ちに敏いんだよなぁ。だから色々人間関係が分かっちゃって弄りたくなるんだろうけど。
なんて答えるんだろう? とレイジェス様を見ていたら話してしまった。

「……レンブラントがリアを攫おうとした」
「ええっ!?」

 コモン様が驚いた。シエラ様が目を見開いて私を見る。

「それをユリウスが助けた」
「まじか……あれ? でも、番所に届けなくていいのか?」
「リアが事を荒立てたくないと、そのまま過ごすことになった」
「え!? それはまずくないか? ……また攫われることになるかも知れないだろう? レンブラントは魅了されているんじゃないか?」
「ああ、魅了されている」

 レイジェス様が答えてシエラ様が不思議そうな顔をする。

「魅了? って何ですの?」

 目をぱちぱちさせている。

「えっとですね、シエラ様、わたくし変な特殊スキルって言うものがございまして、殿方を魅了という異常状態にしてしまうのです。自分でもどうにも出来ないスキルで困っているのです」
「あら? でも……コモン様はアリア様と普通に接していますわ? どうして?」

 シエラ様がコモン様を見つめる。

「コモンもシエラ様に出会う前はアリアに魅了されていました。けれど、シエラ様に会ってから、シエラ様を愛してしまい魅了が解除されたと思われます。アリアの魅了は他に本当に愛する者がいればかからないのです」

 レイジェス様が説明してからシエラ様が不思議そうな顔をする。

「では、アルフォード公爵様も魅了に掛かっていないのですか?」

 とシエラ様が言った。

「は? 私ですか? 魅了に掛かっておりますが……」
「……おかしくないですか? 本当に愛すれば魅了に掛からないのですよね? だったらアリア様への想いが本物なら魅了されないのでは?」

 そこにいたレイジェス様、私、コモン様にとってそれは爆弾発言だった。
私を本気で愛しても魅了は解除されないと、シエラ様以外の全員が思っていたからだ。

 でも、シエラ様が言った事が本当だとすると……私はちらっとレイジェス様を見た、レイジェス様は本当の意味で私を愛していない事になる。
今までの全ての事は魅了のせいだった?
私は頭を振った。そんな事ない!
レイジェス様は私を愛してくれている! ……はず。

「申し訳ありません! シエラ様が不躾な事を発言してしまったようで、お詫び申し上げます!」

 シエラ様の執事であるメルヴィンが汗を拭きながら謝罪しだした。

「わたくし、あとひとつ疑問があるのです」

シエラ様は更に続けた。レイジェス様と私、コモン様を見て言う。

「昔まだ、プリストン王国に小さな領地が沢山あって戦国時代だった頃、プリストン王国では淑女の結婚年齢は決まっていませんでしたわ? 9歳で結婚していた方や、11歳で結婚して12歳で子供を産んだ方もいたと歴史の本には書いてありました。淑女の結婚年齢が15歳成人済みになったのは二百年位前に決まったみたいで、その頃に未成年の蜜花を奪ってはいけないという法律が出来たそうです。でも、……この蜜花の法律は黙っていればわからないのでは?」

 シエラ様の発言は、また爆弾発言だった。
でも、私もそれ、思ったことある。
黙ってたら分からないじゃない? って。
だって、閨事って二人きりでする事じゃない。
黙っててもわからないでしょ?

「失礼だが、その知識はどこで? シエラ様」

 レイジェス様が聞いた。

「お屋敷の図書室の歴史本を読んだのと、上の……3人のお姉さま達が言ってました、蜜花を散らしても分からないって」
「あの偽令嬢共がっ!!」

 メルヴィンが怒りを露にして、隠そうともしない。

「シエラ様……それは審問会があるから無理だ」

 レイジェス様が即答して、コモン様も頷いている。

「え? 審問会って清いお付き合いをしている同志が相手が浮気したかも? と疑った時に使う機関ではありませんでした?」

 と私が言うとシエラ様が驚いていた。
シエラ様は審問会の存在を知らなかった様だ。

「審問会がするのはそれだけではない。親からの以来で娘の体を調べることもある。
さっきシエラ様が言った、成人結婚年齢が15歳と決められた時にその審問会という機関も出来た。それ以前がシエラ様も言っていたように幼くして性行為をするから、体が未熟であるため結婚しても生まれた子が未熟児で早く亡くなったり、無理やり子供と致すため精神的な問題が起きたりと色々弊害が多かったそうだ。
それで未成年を保護する流れになり蜜花の法律が出来、15歳成人してからの結婚という事になった。その際15歳以下の年齢の者が婚約し、結婚するにあたり法律を守っているかどうかということで、審問会が体を検査することになっている。成人してから婚約したり結婚する者にはそんな検査はない。その検査の時に蜜花が失われていると分かれば、相手の婚約者は逮捕され死刑になる。これはプリストン王国の法律で決まっている」

 その話を聞いたシエラ様は目を見開いていた。

「ではわたくしもアリア様も、いずれは審問会に検査されるのですね?」
「うむ」

 レイジェス様が頷いた。今知った事実に私は目が点になった。

「……そんな事聞いて無かったんですけど?」

 私はレイジェス様を睨んだ。

「う、言えば君は私と婚約してくれないかと……」
「大事な事はちゃんと教えて欲しいです」

 私は頬を膨らませてぷんとした。
お茶を飲み終えた私達は昼食の時間も迫っていたし、この場所を片付けてワイナリーへ向かうことにした。

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