魔術師長様はご機嫌ななめ

鷹月 檻

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第三章

23成長と監禁

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 私は朝目覚めると何故か体がズキズキして痛かった。
特に体の関節が。以前から少し軋む様な痛みはあったけど、少しだけだから放っておいたのがいけなかったのか?
私、何かの病気になった?
心配なのでレイジェス様に言うとキョトンとした顔をした。
そして寝台から降りて立つ。

「リア、こちらへおいで。私の隣に立ってみなさい」

 私はとととっと移動してレイジェス様の隣に立った。

「うむ、分かった、君のは成長痛だ。骨が育っているから軋んで痛く感じる」

 私はレイジェス様と自分の身長差を確認した。前はレイジェス様の腰をちょっと超える位に頭があったのが腰中央位の位置になった。これは5センチ位伸びているのではないか?

「ねぇねぇ、レイジェス様、身長を測って欲しいです。今わたくし何センチでしょう?」
「なら屋敷から体重計を持ってくるか。あれは確か身長も測れたはずだ」
「ええ」
「ではちょっと行って来る」
「はい、行ってらっしゃいませ」

 レイジェス様はゲートを開いてお屋敷に行った。何だか朝早くから面倒な事をお願いして申し訳無く思ってしまった。
5分程してレイジェス様が戻ってきた。

「お帰りなさいませ」
「うむ」

 レイジェス様は早速体重計を床に置いて1番のスイッチを押した。
1番には私のデーターが記録されている。レイジェス様は2番目に登録されている。

「あ! 身長が伸びてる! 109センチになっています!」

 私がにこにこ喜んでいるとレイジェス様は渋い顔をした。

「体重は17キロしか無いじゃないか。前は16キロだ。1キロしか増えていない。身長が6センチも伸びたにも関わらずだ」
「え? おデブにならなくていいじゃないですか?」
「成長盛りなんだぞ? 全く君は。もっと食べないと……」
「ちゃんと食べてるつもりなんですけどね?」
「7の刻だし、朝食に行こう。リアには魚を出して貰おう」
「お魚さんは大好きです!」

 私はレイジェス様と食堂へ行った。
食堂にはユリウス様とクロエ様がいて仲良く話をしながら食事をしていた。
私は二人に朝の挨拶をして席に着いた。

「何かあったのです? とても嬉しそうな顔をしてらっしゃいますね?」

 クロエ様が聞いて来たのでえっへんと胸を張って言う。

「身長が6センチも伸びていたのです! 嬉しくて!」
「あら、それはおめでとうございます。良かったですね」

 クロエ様が喜んでくれている。

「そんなに急に伸びたらあちこち体が痛いのでは?」

 とユリウス様が言うので私はきょとんとする。

「ええ、あちこち痛いです。でも、何故分かるのです? レイジェス様もすぐ成長痛だって分かりましたよね?」

 ユリウス様もレイジェス様も何故気が付かない? と苦笑いをする。

「多分、師長様もだと思うのですが、私と師長様は背が凄く高いですからね。私には成長痛が有りましたから、師長様にもあったのでしょう? それで分かってしまったのですよ」

 とユリウス様が微笑んだ。
私はレイジェス様の顔を見て聞いた。

「そうなの?」
「うむ」

 話しているとエドアルドがレイジェス様に朝食のプレートを持ってきた。
私には小さな焼き魚と紅茶を持って来てくれた。トウミが小さなお皿に2切れ乗っている。

「姫様はその小さな焼き魚を食べてから紅茶をどうぞ。トウミは紅茶に入れて召し上がってくださいませ? 体重が増えて無かったそうですからね? 栄養を取らないといけません。量が少ないですから、これくらいなら食べれますよね?」

 と有無を言わせない表情で迫る。

「……は~い」

 私はしょんぼり答えた。レイジェス様が朝食を取り、私がささっと魚を食べ終えて紅茶を飲んでいると、ユリウス様とクロエ様は食事を終え食堂から出て行った。その時にクロエ様が私に言った。

「昨日はシエラ様とお茶会をしていたとエドアルドから伺いました。アリア様、今日はわたくしとお茶会をしませんか? もっとアリア様と仲良くなりたいのです。わたくしは王都に来てからまだ社交界にも出ておらず友達もいませんから……」

 そんな寂しげに言われては放って置けない。

「いいですよ? 場所は昨日のお茶会室でいいとして、お時間はどうしましょう?」
「では、わたくしこれから少しやる事がありますので、そうですねお昼少し過ぎ……昼の1の刻からはいかがでしょうか?」
「では、クロエ様は場所を知らないので食堂に昼の1の刻に集合にしましょう。茶入れは誰にまかせますか?」
「ではうちの執事のオリオンにさせますわ」
「はい。ではまた後でお会いしましょう」

 私はにっこり微笑んでクロエ様を見送った。
私の顔がにまにまして緩んでいるとレイジェス様が私の頭を撫でた。

「良かったな? お友達が増えて」
「ええ!」

 魚を食べた後、私はトウミを2切れ紅茶に入れていたのをがぶっと食べきった。
2切れ位ならきつくもなかった。小さく切ってあったし。




 お茶会の時間が近づき私が食堂でクロエ様と執事のオリオンを待っていると、また私の隣で捨てられた子犬の様な目で見る大人が一人いた。
まぁ、レイジェス様なんですけど。

「また私は置いてけぼりなのか?」

 さっきは友達が出来て良かったなぁ、とか言っていたくせにこの態度だ。

「お茶会ですよ? 女子会みたいな物です。男性が来るなど不躾ですわ?」

 納得行かないようだったので言った。

「あとで一杯愛してあげますから」

 私はレイジェス様の頭を撫でた。レイジェス様は私の頬にキスをして納得したようだ。
護衛の二人とハンスがそれを見て笑っている。
こんな事ばかりしているとレイジェス様の威厳が無くなって行く気がして不安だ。
クロエ様とオリオンが来て私が先頭で皆を案内する。ハンスは大人しくしてるから絵を描かせてくれとしつこくて仕方ないのでクロエ様にも許可をもらって同室する事になった。

 あのお茶会室には名前が付いていた。【光の誓約の間】と言うそうだ。エドアルドが教えてくれた。東に向いていて太陽の光が朝一番に入り込むからだそうな。
このお城は部屋の殆どに名前が付いていると言う。図書室は【賢者の間】、あの絵画が沢山飾ってあった部屋は【緋色の天鶩絨の間】格好良い名前だ。

 お茶会室に着くと早速オリオンは水屋に入りお茶の準備を始めた。私は部屋の真ん中にある白くて丸いテーブルに着席し、クロエ様も席に着いた。護衛の二人には外の扉前で護衛してもらい、ハンスは壁際の長椅子に座ってデッサンしてもらう事にした。
席に着いてすぐオリオンがお菓子を先に持ってきた。今湯を沸かしているとの事。
それはパウンドケーキで中にトウミが入っていた。

「わぁ、美味しそう~」

 クロエ様が微笑む。

「これならアリア様も食せるかと思いまして。お砂糖とトウミを入れています」

 おおおお。シエラ様もそうだけど、クロエ様まで気を使ってくれて……感謝と感激の気持ちで胸が一杯になる。
オリオンが水屋に戻ってティーセットをワゴンに乗せて運んで来た。
その場でお茶をポットで蒸らし注いでいく。
私とクロエ様にティーカップが差し出され、オリオンはその場に少し離れて立っている。

「オリオンはわたくしのお目付け役も兼ねているの。落ち着かなくて申し訳ないと思うのですが、同席を許してくださいませ」
「ええ、大丈夫ですわ」

 私はオリオンに微笑んで軽く会釈をした。オリオンが深々とお辞儀をする。
クロエ様が私にはまだ熱いと思うお茶をごくりと一口飲んで唐突に言った。

「アリア様、お兄様の事をどう思って?」
「えっ!?」
「お兄様からアリア様に愛の告白をしたと伺ったのです。それで……気になってしまって。わたくし妹ですからね」

 うふふふといたずらっぽく笑うクロエ様。

「……どう、と言われても…わたくしはもう婚約しておりますから。ユリウス様のお気持ちに応える事は出来ません」
「今は、ですよね?」
「えっ?」
「婚約破棄など貴族の間ではよくある話だとお聞きしました。10件の婚約があったとして7件が破棄、破談になるそうですよ?」
「どうしてそんな事を知っているのです?」
「女性版の愛の教科書の4巻に書いてありました。だから婚約を決める時には慎重にと。貴族の書類に載ってしまいますからね」

 私はなんでクロエ様がこんな事を言うのか分からなかった。今はユリウス様の事を何とも思ってなくても、もしかして、いつかレイジェス様と別れると思われてる?

「人の心は移ろいやすいですから」
「そういうお考えもございますのね。よく考えておきますわ」

 私がそう言うとオリオンは渋い顔をしてクロエ様を見た。
クロエ様は私が遠まわしに【私は別の考え方だし、そんな事言われても困る】と言ったのが分かってなかったようだ。
ちなみにオリオンは分かったみたいで、クロエ様を後ろから小突いていた。

「クロエ様、あなたの気持ちを押し付けてはいけません。アリア様にはアリア様の考えがありますから……」
「そうですね、急ぎすぎてはいけませんね」

 クロエ様はいつもの柔らかい表情に戻った。
その後のお茶会ではユリウス様の告白の話は出る事も無く、普通に話をしていた。話題は主に1週間と少し後に催される【灯篭飛ばし】の祭りについてだった。
恋人達と一緒に灯篭を飛ばすというイベントが乙女心をくすぐる。
クロエ様も楽しみになったようで早く見たいと言っていた。
私達は和やかにお茶会での歓談を終えた。




 私は護衛の二人とハンスと一緒に秋桜の間に戻った。部屋にレイジェス様がいると思っていたのに何故かいない。
何処かに出かける時は必ず予定を言って行くのに……どうしたんだろう?

「アラン、何か聞いている?」
「いや、俺は聞いていない」

 アランも何も聞いていないようだ。

「大広間にいるかも知れないから、ちょっと見てきます」
「姫様じゃ、歩くのが遅い。俺がひとっ走りして見て来る、姫様はここにいろ。アーリン、ちゃんと見張っておけよ」
「ええ、分かってます、兄さん」

 暫くしてアランは戻って来たが大広間には居なかったと言う。ついでに食堂に寄り、セバスやエドアルドにもレイジェス様が居なくなった事を伝えたらしい。
やはり執事の二人共、レイジェス様がどこに行くかは聞いていなかった様だ。
何処に行ってしまったの?
私が不安になっていると部屋の扉がノックされた。アーリンが扉を開けるとそこにいたのはシエラ様だった。

「今、食堂でアルフォード公爵様がいなくなったと聞きました。本当ですか?」
「ええ、今皆で何処に行ったのかと話をしていた所です」

 シエラ様はレイジェス様を心配するような表情をして言った。

「わたくし……ヒューイット様が公爵様と一緒に歩いて行くのを見たのです」
「えっ?」

 私は胸騒ぎがした。

「まさか女に拉致された!? 公爵様が? 有り得ない」

 アランが信じられないと、その話しを打ち消す。
私は目を閉じて考えた。この世界には魔法がある。
大の男でも、どうにかされちゃう場合もあるのではなかろうか?
そう思うといてもたってもいられなくなった。

「アラン、ゲートを使えば分かるわ、わたくしのゲートはレイジェス様の元へしか開きませんから」
「姫様だけ行かすわけには行かない! 危険過ぎる!」
「そう思うのなら付いて来て?」
「私も行きますよ?」

 アーリンが言った。
シエラ様は不安そうに私達を見ている。その中で私はゲートを開いた。

「ゲート! 庇護者の元へ!」

 私が入るとアランとアーリンが付いて来た。そしてすぐゲートは消えた。
ゲートを開いて着いた部屋はカーテンが閉められて真っ暗だった。そしてムスクのむせ返るような甘い香りとお香の様な匂いが混ざって息苦しい。

「何だこの匂いはっ!?」

 アランが叫ぶ。
暗い部屋をよく見ると寝台の上に裸の男女がいた。女は寝ている男の足を跨ぎ、その男の一物をしゃぶっていた。女が叫ぶ。

「きゃああ! 何よ! いきなり!?」

 その声はヒューイット様だった。そして寝台に縛り付けられて一物をしゃぶられ、ぐったりしているのは……レイジェス様だった。
アランが素早くヒューイット様を捕まえて、アーリンが腰に付けていた紐でその手を縛る。
私はレイジェス様の顔を見た。瞳の視点が合ってない。もしかして、この部屋に充満する匂いのせい? 私は呪文を唱えた。

「ルームアクアウォッシュ! ミドルキュア!」

 そしてレイジェス様の頬をぺちぺち叩く。

「レイジェス様! 起きて! 大丈夫!?」

 意識は戻ってきた様だが、なんだか酷く怯えて落ち込んでいる。

「……私は……穢された」

 レイジェス様の一物はくたっとなっている。さっきヒューイット様にしゃぶられていた時もくたっとなっていたのだろう。穢されたとは咥えられたことを言っているの? 良く分からない。

「アクアウォッシュしますから!」

 私はそう言ってから呪文を唱えた。

「アクアウォッシュ!」

 多分体はこれで綺麗になったはず。咥えられて舐められた所も。

「これで綺麗になりましたよ、大丈夫」

 私はレイジェス様を抱きしめた。

「違う、まだ私は穢れている」

 レイジェス様は子供の様にぷるぷる震えていた。どうも様子がおかしい。

「一体……何をされたのです……?」

 レイジェス様は私から目を逸らした。
私はその顔を両手で押さえ込んで私に向けた。
じっと見つめるとレイジェス様は恐る恐る答えた。

「口付けをされた……舌が入って来た。ぬるぬるしてて生き物が蠢いている様だった……凄く嫌だった……」

 そう言って私に抱き付いて来た。もっと酷い事をされたのかと少し焦ったけど、口付け程度で良かった。

「今から消毒します。でもわたくしは消毒はできないですから、レイジェス様が協力して下さいね?」

レイジェス様は私の言っている言葉の意味が分からない様だった。
私は構わずレイジェス様に口付けをした。
その唇を割って私の小さな舌が入って行き、レイジェス様の大きな舌を吸う。
私は左手でレイジェス様の右手を掴み空にその手を導いた。一旦唇を離してレイジェス様を見て頷く。そしてまたレイジェス様の唇は私に塞がれた。
空に上げた手がレイジェス様に動かされる。彼が消毒の呪文を書いているのが分かった。口の中がしゅわしゅわした。ちゅぽんと唇の離れる音がして、私は護衛二人とヒューイット様を見た。

「アーリン、カーテンを開けて、窓も。部屋の空気を入れ替えてくださる?」
「はっ」

 アーリンは部屋中のカーテンを開き窓を開けだした。
明るい光が差し込み、空気の流れが良くなり部屋に充満した甘い匂いがマシになる。

「アランはヒューイット様を連れて少し外に出ていて?」
「ああ、分かった」

 アランはヒューイットを連れて部屋の外に出た。

「レイジェス様、もう大丈夫?」

 私が聞くとまだレイジェス様が悲しそうな瞳でその顔を曇らせた。
私はアーリンをちらっと見た。まだ言われた事をやっている。

「レイジェス様の物も……今からぱくってしますから、消毒してね?」

 レイジェス様が「えっ?」と発したのと同時に私はレイジェス様の物をしゃぶった。
口に入るだけ目一杯入れて消毒していいよ? というつもりの合図でレイジェス様の腰辺りをぱんぱんと軽く叩いた。
すると口の中がしゅわしゅわした。ちゃんと消毒できたようだ。
私がレイジェス様の物から唇を離すとそれは少し元気が良くなって来ていた。
私はレイジェス様を見て笑って言った。

「消毒したから、貴方は穢れてないわ」

 レイジェス様は一瞬、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、いつもの表情になってフッと笑った。そして辺りを見た。

「私の服がない」

 服が無い心元無さはリューク様の事件で私も分かっている。
すぐに私は呪文を唱えた。

「スァビジィエル!」

 レイジェス様に家用ローブのようなラフな紺色のローブを着衣させた。

「下着までイメージしてませんけど、応急処置です」
「この際、裸でなければなんでもいい」
「体調は大丈夫ですか? 何かお薬みたいなものを使われました?」
「ああ、匂い系の薬でやられた……私とした事が……とんだ失態だ!」
「ヒューイット様はアランが捕まえて今部屋の外にいます」

 レイジェス様は立ち上がって私を見て不思議そうな顔をする。

「……前にもこのような事があった気がする……」
「ああ、それって既視感て言うのですよ。体験した事がないのに体験した様に感じる事を言うのです」

 私達は3人で部屋をでた。部屋の前にはヒューイット様がアランに捕らえられている。ちなみにこの部屋は牡丹の間。レンブラント様とヒューイット様の部屋だった。
レンブラント様はどこへ行ったのか?

「ヒューイット、レンブラントはどこに行った? 殺したのか?」

 レイジェス様が捕われて縛られているヒューイット様を見下ろしながら言った。
殺した? その言葉に私はどきっとした。

「わたくしが殺人などするはずがこざいません。レンブラント様にはマドリードの城下町に買い物に出かけて貰いました。今回の事も何も知りません」
「取り敢えず食堂に連れて行け。処分は話を聞いてから考える」

 レイジェス様は食堂にゲートを開いた。薬で歩くのがきつかったみたいだ。
でも誰も気付いていない。
私達はゲートを通り食堂へ行った。

「旦那様! どこにいらしてたんですか!? 姫様も心配しておりましたよ!」

 セバスが捲くし立てるが、アランが捕らえてるヒューイットを見て顔色が変る。

「どういう事ですっ!?」





 結局、シエラ様も食堂に来てコモン様も来てしまった。ユリウス様とクロエ様は何も知らないだろうと言う事で呼ばないで、当事者達で多数決で裁定を行おうと言う事に決まった。その結果では番所に突き出される事も有り得る。
現在席に着いているのは私レイジェス様、コモン様、シエラ様、ヒューイット様だ。
アランとアーリン、セバス、エドアルドは普通に立っている。ハンスはユリウス様がいないのでその席に座って私をスケッチしている。
厨房からサーシャがお茶の道具セットをワゴンに乗せて運んできた。
それにセバスがお茶入れをして、サーシャとエドアルドが皆に配っている。
お茶請けにマドレーヌがテーブルの上に置かれた。

「で、肝心の婚約者のレンブラントはどこなんだ?」

 コモン様が不機嫌に言った。

「城下町に買い物を頼んだそうです。そろそろ戻って来るのでは?」

 私はコモン様に答えてお茶を飲む。まだ熱かったのでマドレーヌを取って食べた。

「ヒューイット、お前は自分が何をしたか分かってるのか? 何故あんな事をした?」

 レイジェス様がこめかみを押さえながら聞く。

「何をしたか? ええ、分かってますよ? レイジェス様のちんぽを美味しくしゃぶりました。わたくしの蜜壷に導いたけど、くたっと萎びていて役には立ちませんでしたわ?」

ヒューイット様は反抗的に挑発するように言った。それを聞いてレイジェス様は顔を顰める。

「あのあと、リアにしゃぶられたら、ちゃんと立ったがな?」

 とヒューイット様を睨む。

「もう、ケンカしないで? きちんと話し合いましょ?」

 私は二人をなだめた。
そこでヒューイット様が肩を震わせて泣き始めた。

「元はと言えばレイジェス様が悪いのよ! 私の手を握ったり、壁ドンしたり、君には格好悪い所ばかり見せてしまうな、とか私に自分の弱い所を見せて……だからわたくしだって、好きになってしまったのよ!!」

 なんですとっ!?
私はヒューイット様のその言葉を聞いて思わず冷たい視線をレイジェス様に投げかけた。

「レイジェス様? 今のヒューイット様のお言葉は本当なのでしょうか? 手を握ったり壁ドンして自分の弱い所を見せちゃったなぁ~なんて……本当に言ったのですか?」

 レイジェス様は胸に手を当てて過去を振り返っているようだ。
その顔色はどんどん悪くなる。

「……言葉は覚えがある……手を握ったのも。でも壁ドンはやってないぞ!?」
「え? レイジェス、事務所でやってたじゃないか?」

 コモン様が覚えていたようですぐ言った。

「はっ?」
「ユリウスに親睦会に来いって言った時に」

 レイジェス様はその日を振り返ってみた。

「あれは事務所の壁を歩いていた虫を潰しただけだ! 壁ドンではない!」
「レイジェスが違うと言っても、傍から見たら十分壁ドンだったぜ? 他の事務員達も私達もして欲しいって言ってたからな」

 私はコモン様のその言葉を聞いてレイジェス様に軽蔑を浮かべた顔をした。
途端にレイジェス様は焦る。

「私は何もしていない! 誤解だリア!」
「誤解かもしれないですけど、思わせぶりな行動はしてたようですね」

 つい嫌味を言ってしまった。

「普通はちんぽを舐められるなんて御褒美ですよ? 良かったですね~」

 あちゃぁ、私の嫌味が止まらない。
折角、犯されそうになっていた王子様を助けたら、犯されるべき行動を取っていたと聞かされる身にもなって欲しいものだ。助けた私は何だったんだ?

「リアに舐められるなら御褒美だが、他の女に舐められたり咥えられたりなど、ただの拷問だろうがっ!」

 そんな事言うものだからヒューイット様が切れた。

「何よこの……ふにゃちん残念美男子がっ! 童貞のくせにっ!」
「童貞のどこが悪い! 清く生きて何が行けない!? 私はなぁ、リアと致すためにとって置いてあるだけだっ!!」
「……」

 私は思わず無言になってしまった。
なんだかカオスな言い合いになってしまってる。
思わず溜息がでる。そんな呆れている私の空気を読んでエドアルドが仕切り始めた。

「結局まとめると、旦那様が思わせぶりな行動や発言をしてヒューイット様がその気になった、けれどそれは誤解で、ヒューイット様は本気になり旦那様の体が欲しくなった……そして拉致したという所でしょうか?」

 ヒューイット様は頷いた。

「その通りです」

 シエラ様が驚いている。
まぁね、女の人が大の男を拉致とか信じられないですよね。
私もそう思います。

「で、結局どうする? 番所に言うのか? 魔術師長が拉致されて襲われたと?」

 とコモン様が苦笑いする。
エドアルドが首を横に振る。

「こんな事で番所に行けばアルフォード公爵家の品位が下がりかねません。番所には届けないほうが良いと思われます」
「何だと!? 私は被害にあってるのにかっ!」
「だから、レイジェス、ちんぽしゃぶられるとか、普通は御褒美。番所に行っても届出が受理されない可能性があるよ?」

 コモン様が淡々と言った。
私はレイジェス様がショックを受けているのは分かったけど、どっちにしても二人の意見を聞いていると番所に行っても無駄そうだし……ヒューイット様の表情がすっきりしているのが気になった。

「ヒューイット様、レイジェス様の事はもう良いのですか?」

 ヒューイット様は吹っ切れた様に私を見つめた。そして頷いた。

「あれだけ、精一杯思いを伝えてもダメだったんです。諦めるしか……ないでしょ? ……今までごめんなさい、わたくし貴方に酷い事を沢山言いましたわ。 ……アリア様、わたくし……羨ましかった貴方が。でも、すっきりしました、当たって砕けて。あはははは!」

 私も頷いた。
ヒューイット様の笑った顔が以前の様な邪気の無い笑顔になっていた。

「わたくしは罪に問わない、番所に訴えないで良いと思います」
「そんな……リアまで……」
「レイジェス様は後でわたくしがお慰めします、それでいいでしょ?」
「ん? 慰め……ふむ。まぁ、それで良い。レンブラントも許したしな」

 ヒューイット様が疑問符の付いたような顔をした。

「レンブラント様が何かしたのですか?」
「ああ、リアを攫おうとした」
「何ですって!? あはははは! 私達って変な所が似ているカップルだったのね!」

 ヒューイット様が高笑いをしている中、食堂にレンブラント様が現れた。
皆が一斉にレンブラント様を見る。

「ん? 何を笑っているんだ? ヒューイットは」

 レンブラント様が呑気に言った。
コモン様がレンブラント様にニタニタした顔で言う。

「ヒューイットがレイジェスを襲ったぜ? やるなぁ? お前の婚約者は」

 レンブラント様は驚愕していた。思いっきり目が開いている。

「ほ、本当か? ヒューイット……」
「本当。でも何も出来なかったわ?」
「私は君達二人に王都に帰って欲しい。せめてそれくらい、私の気持ちが優先されてもいいだろう? 罪には問わないのだから」

 レイジェス様が言うと執事の二人は頷いた。私も頷く。コモン様とシエラ様も頷いた。

「では荷物をまとめ終わったら教えろ。ゲートを開く」

 レンブラント様とヒューイット様は部屋に荷物をまとめに行った。
私はふぅと息を吐いた。セバスが苦い顔で私に微笑む。
コモン様とシエラ様はお部屋に戻った。
レンブラント様とヒューイット様は荷物を食堂に持って来てゲートでレイジェス様と一緒にタウンハウスの屋敷に行った。二人を送るのに馬車を出すと、レイジェス様も行ってしまった。

 私は部屋に戻りたいと言うとアーリンとハンスが付いてきた。アランはお風呂に行くとの事だった。私は部屋に着く早々寝台にダイブした。
何だか精神的に疲れた。
でも問題を起こした二人がいなくなったから、これはこれでもう悩む種も無くなったのかも? そう思う事にした。
暫くしてゲートが開いてレイジェス様が帰ってきた。

「お帰りなさいませ」
「うむ、ただいま」

 レイジェス様はアーリンとハンスを下がらせた。

「さぁ、慰めてもらおうか?」

 いきなり言ってきた。

「わたくし、今そういう気分じゃないのですけれどね? 体は軋んで痛いし」
「まだ痛かったのか?」
「ええ、それになんだか疲れちゃいました。夕食の時間まで眠っていいですか?」
「構わないが……私も一緒に眠る。まだ薬が残っているのかぼぅっとするのだ」
「それは大変じゃないですか! ミドルキュア!」

 私はレイジェス様にミドルキュアをした。けれど、まだ顔は苦虫を噛んだような顔をしている。

「ミドルキュアは効いて無いようだ。眠って休んだら少しは良くなるかも知れない、私も休む」

 私は頷いて二人で寝台で休んだ。体が軋んで痛いのはまだ治らない。
レイジェス様も皆がいる前ではなんともないような顔をしていたけど、実はお薬の後遺症できつかったのかも知れない。顔色が少し青い。
私は心配しながらも瞼が重くて閉じていくのを感じた。

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「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

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