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第三章
27王都にて
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ゲートを潜るとそこはタウンハウスのお屋敷だった。私は真っ先に元の温室だった場所に向かおうとしてレイジェス様に腕を掴まれた。
「どこへ行くつもりだ?」
「礼拝室がもう出来たかな? と思って見に行こうと思ったのですけれど……」
「終春節が始まったから工事は中止した。礼拝室はまだ出来ていない」
「いつ頃出来上がりますか?」
「あと一週間はかかると言っていたから6月上旬中には出来ると思う」
「そうですか……」
「アズライル様と話をしたかったのか?」
「ええ、わたくしの能力の事とか、色々聞きたかったのです。レイジェス様の記憶の件に関してもです」
レイジェス様が渋い顔をした。
「少し屋敷に入りたい、いいか?」
「はい」
私はレイジェス様に付いて行った。
「セレネ!」
玄関から使用人室の方に叫ぶとセレネが出て来た。
「ルイスはいるか?」
「はぁ、いると思いますけど、少々お待ち頂けますか?」
「では談話室で待っている」
レイジェス様が談話室に行ったので私も付いて行く。長椅子に座っているとルイスがやってきた。そが色の髪に紺碧の瞳でとても線が細くて美しい女の子だった。どうしてレイジェス様がこの女の子を呼んだの? 何者なんだろうこの人………。
セレネがブラウンティを持ってきた。
「悪いんだが、セレネ、飲み物はこれからは紅茶にトウミを入れて欲しい。ブラウンティは止めたのだ」
「あら? 旦那様、どういう風の吹き回しです。では紅茶をお持ちします、ルイスはブラウンティでいいのかしら?」
「え、ええ。私はブラウンティで平気ですよ?」
ルイスは顔をひくつかせた。
「ああ、リアは初めてだったか? ルイス=オレットだ。16歳だからオースティンと同じ歳か。諜報の者をやっている」
「こんな綺麗で可愛らしい女の子がっ!? 大変じゃないですか? お仕事」
私がルイスに聞くと、レイジェス様がくっくと笑って、ルイスは顔を真っ赤にしていた。
「これは男だぞ? リア」
「えええ? どう見ても可愛らしい美少女ですが……」
私がそう言うとルイスは険しい顔をして言った。
「もう、大分言われるのは慣れましたが、姫様みたいに可愛らしい女の子からそう言われると泣きたくなります。生まれ持った顔なので変える事が出来ませんが……」
「まぁ、そう落ち込むな。美しいと言う事は良い事だぞ?」
レイジェス様が珍しくフォローした。レイジェス様もルイスの事、綺麗だと思ったんだ…やっぱりレイジェス様は男色の気があるのでは?
「リア、君の考えている事は大体分かる……言っておくが、違うからな?」
「公爵様は私に話しが有った様ですが、私も報告があります。ダイズの件ですが、プリストン王国にありました。バザールで売ってました。別の名でしたが、多分あれがダイズだと思われます。なので買って来て、今はそれを厨房で管理して貰ってます」
「凄い! 大豆って売っていたのですね! それを植えたらもっと一杯大豆が作れるかも!」
私は目をきらきらさせた。
そして、余計な事かと思ったけど、気になったので聞いた。
「何故ルイスはこちらに置いてけぼりなんですか? アランはお城に行っているのに」
「ルイスにはダイズを探してもらっていたからな」
「もう見つかったって、さっき言ってたでしょ? じゃあお城へ行ってもいいのでは?アランだって同じ諜報の者なのにルイスだけお城に行けないなんてずるいわ?」
「姫様、私はずっと南の領地の城で諜報活動してたのですよ? 城に行った事が無いわけではございませんから…それに、アランが近くにいると体をぺたぺたと触って来ますからね。注意してもやめてくれないので困るのです」
「うむ、ルイスは屋敷で休んでいるといい。まぁ、来たかったら来ても構わない」
「アランの傍には仕事以外でいたくないので結構です」
アランはそんなにルイスにセクハラしたの…? 前にアランがレイジェス様を見る目が妖しかった事があったから、美青年系がタイプだと思ってた! 騙された!
私達はルイスと別れて玄関の外に出た。
「ゲートで商会まで行くぞ?」
「いつの間に商会にプレイスマークを?」
「グレーロック城にプレイスマークを付けに行った帰りに商会とハンスの家にプレイスマークを付けた」
「ああ……あの時ですか」
レイジェス様は商会へのゲートを開いた。商会の建物前に出た。終春節なので休みにしているかな?と思ったら営業していた。
「ふむ、あいつ、休まないで働いているのか?」
「ルイーズ様の事ですよね?」
「うむ」
「中に入ってみましょう」
私達は商会の扉を開けた。すると中からルイーズ様が大声を上げた。
「あんた達今まで何やってたのよっ!」
接客をやっている店員が狭い店ながら三名いて、客が数人いて皆その相手をしている。
私は大きな声を掛けられて驚いていたらルイーズ様が近寄ってきた。
「取り敢えず、事務所に行くわよ? 来て」
私達が二階の事務所に上がると従業員が五人増えていた。全員女性だ。
ルイーズ様がパンパンと手を叩き注目を集める。
従業員達は全員自分のデスクから立ち上がった。
「皆さん! 聞いて頂戴? 今日は会頭が来ています。はい、パチパチ!」
皆ルーズ様に言われてパチパチ拍手する。
「はい、会頭のアリア=アズライル様で~す! 皆よろしくね。じゃ、会頭から挨拶をどうぞ!」
「え? え~、只今ご紹介に預かりました、わたくしアズライル商会の会頭でアリア=アズライルと申します。8歳です。ルイーズ様に商会をお願いしたあと、放置していて申し訳ありませんでした。5月一杯はアルフォード公爵家の南の領地にいると思いますので6月からは会頭活動が出来るようになると思います。みなさんよろしくお願いします」
するとデスク前に立っていた従業員達が拍手をした。
「じゃ、会頭の挨拶は終了よ。皆さんお仕事続けて頂戴」
ルイーズ様はそう言って、私達を応接室へ案内した。バタンと扉を閉めて一言。
「今まで大変だったんだからっ!」
「も、申し訳ございません!」
私が頭を下げて謝るともういい!とまだぷんぷんしている。
私とレイジェス様は応接室の長椅子に座った。
「あら? アリアちゃん、今日なんだかちょっと違うわね?」
「ルイーズさんと会う時は男の子になるって言ってたじゃないですか。今男の子なのです」
「ぱっと見あんまり変って見えないのに、不思議ね?」
「ドレスを着ているし、子供だから男の子って分かりにくいかもです」
私がルイーズ様と話をしていると腕を組んでむすっとしているレイジェス様。
「で、今の商会の状況はどうなのでしょう? 従業員が増えている様子ですが?」
「リンスがバカ売れしちゃって大変よ!工場を二つにしたけど、まだ足りないわ? もう一つ工場を作ろうと思ってた所」
「じゃあ、儲かってるんですか?」
「かなりね。あと、リアグッズも売れ行き好調よ?追加発注してお客様をお待たせしてる所」
「おおお、凄い! ルイーズ様凄いですね。さすが私を雇いなさい、損はさせないって言っただけあります!」
ルイーズ様はくすりと笑った。
「リンスもリアグッズも商品開発したのはアリアちゃんよ? 凄いのはアンタでしょ?」
私は目をぱちぱちした。
「あとね、王宮から国立劇場であなたにコンサートをやって貰えないか? って商会を通して正式に打診が来てるわ?」
「へ?」
「6月の流星祭イベントに合わせてだからまだ考える時間はあるけどどうする?」
突然そんな事言われて驚く。正直私が歌で稼ごうと思ったのはレイジェス様に自分で稼いだお金でプレゼントしたいってそれが理由だったんだけど。
でも、自分の涙が凄く高く買取されたり、グッズを売ってもそのお金に比べれば全然たいしたことが無くって、だったら別に歌わなくてもいいじゃない?って思ってたりもした。趣味で歌って弾く位でいいんじゃない? って。
国立劇場でコンサート? 私が?
私が考え込んでいるとレイジェス様が口を開いた。
「何故王宮からコンサート依頼が来る? 前にうちの屋敷で開いたコンサートには貴族は呼んだが、王宮の者は呼んでいなかったが……」
「なんでも、宰相様の甥子さんがコンサートにいらしたそうよ? それで、アリア様のコンサートを見て宰相様にアリア様のコンサートが良かったと力説したらしいわ? 甥子さんはアリア様のファンになったようね?」
とルイーズ様がくっくっと笑うけど、レイジェス様の眉間に皺が寄った。
「そのコンサートってお金が貰えるんですか?」
「王宮依頼だしギャラは良いはずよ? 国立劇場でコンサートなんて歌い手からしたらとても名誉な事なのよ~」
へ~武道館ライブみたいな物なのかな? と想像してみた。
お金が貰えるコンサートならやってもいいんじゃない? ともう一人の悪魔な私が背後から囁いた。でも、レイジェス様の眉間に皺が寄ってるよ? と天使な私が囁く。ちらっとレイジェス様を見ると目が合った。わぁ~不機嫌そうだぁ…。
「い、今すぐにはお答えできませんので、コンサートの件はちょっと考えさせて下さい」
「なるべく早く返事を頂戴ね?王宮の担当者に連絡しなきゃいけないから」
「はい、申し訳ありません」
「ああ、そういえば、ルイーズに話そうと思ってたんだが工場をいくつか作って欲しい」
「え? 工場って何の工場よ?」
「砂糖工場だ。アズライル商会で取り扱う」
その話を聞いて私は目を丸くした。
「砂糖をわたくしが扱ってもいいのですか?」
「君が発見したんだし、食料品も扱うと言っていただろう?」
「砂糖を発見したですって!? 今より忙しくなるじゃないっ!」
「従業員を雇え。秘書や財務係を増やした方が良いんじゃないか?」
「そんな事、レイジェスに言われなくても分かってるわよ!」
レイジェス様がにやにやしだした。ルイーズ様をやり込めようとする悪い顔だ。
結局砂糖の件は事務所に地図も無かったし6月に入ってからルイーズ様とセバスで現地の砂糖の現状調査をしてからという事になった。ちなみに工場は建物だけ建てるという事に決定して場所はルイーズ様の不動産商会で見つけてくれるという事になった。
私達は話し合いを終え、商会を後にした。
「ねぇねぇ、レイジェス様」
「ん?」
「たい焼き屋さんに寄りましょうよ。城の皆さんにお土産にしましょう?」
「君が食べたいだけじゃないのか?」
「もちろんそうですよ?」
私はにこにこした。
「あっ! 終春節だからやっていないかしら?」
「あの店は平民がやっている。生活が懸かっているし、休まないと思うがな? 行くだけ行ってみるか?」
レイジェス様がそう言うと、私は走り出した。最近少し体が丈夫になって来た気がする。前はすぐぱたりと意識が途絶えてたのに、前よりは倒れなくなった。
「こら、待ちなさい! 走るな!リア!」
「捕まえてみて~?」
と私が言ったらダッシュで走ってきて速攻捕まった。早すぎるよ…レイジェス様。
「あ! お店、やってるみたいですよ」
私が指差した通りの道沿いに、赤い屋台が止まっていた。
「おじさん、こんにちは~!」
「おっ! お嬢ちゃん、またお父さんと来てくれたのかい?」
あ。私が後ろを振り向くとレイジェス様がむっとしておられる。
うわ~……レイジェス様って【お父さん】て言葉に敏感だよなぁ。
そんなに嫌なのか。
「店主よ、私はこれの父ではない。婚約者だ」
「そ、それは大変失礼しました!」
おじさんは首に掛けてあるタオルで顔の汗を拭き出した。
「たい焼きを51個頼む。1個はすぐくれ、これが今食べるのでな。残りは持ち帰る」
「51個!? 時間が少々かかりますよ? よろしいですか?」
「良い、待つ」
「ではそこに座席があるのでそこでお待ちください」
おじさんはさっそくたい焼きを大量に作り始めた。
火で暖めてある魚の形の焼き型にだーっと衣の液体を流して焼いていく。
私とレイジェス様は屋台の隣においてある簡易カフェテーブルに座った。多分ここで食べたり飲んだりするのだと思う。
「砂糖が工場で作れるようになったら、美味しいお菓子が一杯作れますね」
にこにこして言ったら呆れられた。
「今、プリストン王国の砂糖はほぼ外国からの輸入で賄っている。これが国内で売り出す事になったらどうなるか……わかるか?」
「え~? いきなり経済のお勉強ですかぁ? ん~私の商会から買う人が多くなる…のかな? あっ! だから儲かりますね!」
またにこにこして言うと、レイジェス様はこめかみを押さえた。
「……そうだ、リアの言う通り儲かる。当然他の貴族のやっかみも多くなるだろうな……」
「多分、お砂糖の値段が少し安くなりますよね?」
「ああ、だから交易して砂糖を買い付けている商会はこれから厳しくなるだろうな。今までと同じ値段では売れなくなる可能性がある。まぁ、リアがどれだけの値をつけるかによるがな」
「あんまりお安くしすぎてもダメという事ですね」
「そうだ。君は話が早くていいな」
話をしているとおじさんが半分焼けたと言って私に1個とレイジェス様にたい焼きの袋を渡した。また半分焼くのでもう少し待ってという。
レイジェス様は頷いた。
私はたい焼きが焼き立てでまだ熱いので暫く待つことにした。
いきなりレイジェス様がぽんと手のひらを打った。
「何か忘れていると思ったが、思い出した!」
「へ? 何をです?」
「君の採寸だ」
「ここからエドモンド商会は近いし、たい焼きが出来たら行くぞ」
「え? でも、洋服ならわたくし神呪で着れますから。別に無くても困りませんわ?」
「私はちゃんと君にドレスを作って着せたい。成長に伴って段々着る服が大きくなるんだぞ? 記念になるじゃないか」
「う~ん、では少しで結構ですよ?」
「うむ、わかった。少しだな」
と言って極上の微笑みを見せる。これ、私の言った事わかってんのかな?
「でも、エドモンド商会ってやってるのかしら?」
「あそこは従業員も多いし、一ヶ月も休まないと思うがな…そんなに休んだら賃金を払うだけでも大変だろう」
私は急いで自分のたい焼きを食べた。喉が詰まったので、カフェテーブルに置いてあったポットから備え付けのコップに水を注いで飲んだ。
第二陣のたい焼きの袋を私が貰ってエドモンド商会に向かった。
通りを真っ直ぐ歩くとエドモンド商会が見えて来た。
「レイジェス様、たい焼きが冷めちゃうので、採寸したらすぐ帰りますよ?
「わかった」
エドモンド商会の扉をレイジェス様が開けるとアンヌの声が聞こえた。
「まぁ、公爵様、領地に戻られていたのでは?」
「ああ、戻ってたんだが急用で来たついでにここへ寄った」
「どうされました?」
私が後ろからぴょこっと顔を出すとアンヌが少し驚いた顔をした。
「お久しぶりです、アリア様、あら? もしかして少し大きくなられました?」
「当たりです! わたくし背が少し伸びたのです!」
「あら、おめでとうございます。それでは早速採寸しなくてはいけませんね。二階へどうぞ」
アンヌに私とレイジェス様は二階に促された。
採寸場所の絨毯の所に呼ばれたので持っていたたい焼きの袋をレイジェス様に渡した。
「こちらにお願いします」
壁がメジャーになっていてそこで背を測った。それから体のあちこちを測られた。
足のサイズも測られた。今は神呪で靴を履いている。前に作って貰った靴は全部履けなくなっていたから。でも自分で呪文を唱えると靴なんてあっという間に出てくるので別に困っていない。
「ああ、アンヌ、ついでにドレス40着と靴を20足作ってくれ。あと、部屋着20着と寝巻き20着もな」
「公爵様、それでしたら、そろそろ【胸当て】が必要かと思いますけど」
「胸当て?」
「子供用のバストトップです」
ぎゃ~! バストトップってもしかしてブラジャーの事ですか? なんでそんな話をレイジェス様に…。
レイジェス様は目が点になっていた。
「あんなぺたんこで、まな板みたいな胸でも必要なのか?」
そんなぺたんことか、まな板とか言うのは酷いと思います! 失礼な!
「今育ってきている最中だから必要なのですよ。えっと、言いにくいのですが育ち盛りですと動きすぎて……その……先がですね、擦れて切れちゃう場合もあるのです。だから保護する必要があるのですよ。今の段階での【胸当て】は胸の大きさはあまり関係ないのです」
「切れるとは……恐ろしいな。痛いだろう」
レイジェス様が私を可哀想な子を見る目で見た。
けどね、私まだ乳首、擦り切れてませんからっ! でも、その擦り切れる話を聞いて私も怖くなったので欲しいと思った。
「ええ、だからお勧めしますわ」
「じゃあ、それも30着あればいいか?」
「十分です」
「デザインや色はアンヌにまかせる。リアに似合うものをよろしくな」
「ええ、承知しました」
「では城へ戻るか。リア」
私は呪文を唱えて靴を履き直した。
レイジェス様はその場でゲートを開いた。アンヌが目をぱちぱちしている。
「さようなら、アンヌ」
私はアンヌにそう言って手を振った。そしてレイジェス様と一緒にゲートを潜った。
お城に着いて、エドアルドに皆を食堂に呼んでもらった。護衛の二人と画家のハンス、お抱え執事や側仕え、音楽隊の皆も。
皆でたい焼きを食べたら美味しいかな? って思ったから。
セバスがたい焼きを暖め直してくれた。
ぞろぞろとみんなが食堂に来るけど椅子が足りない!
なので皆で立ったまま、たい焼きを食べた。
みんなたい焼きを食べた事が無くて珍しがっていた。
セバスとエドアルドがお茶の用意をして皆に配っている。
わいわいがやがやと人の賑わいが楽しかった。
「どこへ行くつもりだ?」
「礼拝室がもう出来たかな? と思って見に行こうと思ったのですけれど……」
「終春節が始まったから工事は中止した。礼拝室はまだ出来ていない」
「いつ頃出来上がりますか?」
「あと一週間はかかると言っていたから6月上旬中には出来ると思う」
「そうですか……」
「アズライル様と話をしたかったのか?」
「ええ、わたくしの能力の事とか、色々聞きたかったのです。レイジェス様の記憶の件に関してもです」
レイジェス様が渋い顔をした。
「少し屋敷に入りたい、いいか?」
「はい」
私はレイジェス様に付いて行った。
「セレネ!」
玄関から使用人室の方に叫ぶとセレネが出て来た。
「ルイスはいるか?」
「はぁ、いると思いますけど、少々お待ち頂けますか?」
「では談話室で待っている」
レイジェス様が談話室に行ったので私も付いて行く。長椅子に座っているとルイスがやってきた。そが色の髪に紺碧の瞳でとても線が細くて美しい女の子だった。どうしてレイジェス様がこの女の子を呼んだの? 何者なんだろうこの人………。
セレネがブラウンティを持ってきた。
「悪いんだが、セレネ、飲み物はこれからは紅茶にトウミを入れて欲しい。ブラウンティは止めたのだ」
「あら? 旦那様、どういう風の吹き回しです。では紅茶をお持ちします、ルイスはブラウンティでいいのかしら?」
「え、ええ。私はブラウンティで平気ですよ?」
ルイスは顔をひくつかせた。
「ああ、リアは初めてだったか? ルイス=オレットだ。16歳だからオースティンと同じ歳か。諜報の者をやっている」
「こんな綺麗で可愛らしい女の子がっ!? 大変じゃないですか? お仕事」
私がルイスに聞くと、レイジェス様がくっくと笑って、ルイスは顔を真っ赤にしていた。
「これは男だぞ? リア」
「えええ? どう見ても可愛らしい美少女ですが……」
私がそう言うとルイスは険しい顔をして言った。
「もう、大分言われるのは慣れましたが、姫様みたいに可愛らしい女の子からそう言われると泣きたくなります。生まれ持った顔なので変える事が出来ませんが……」
「まぁ、そう落ち込むな。美しいと言う事は良い事だぞ?」
レイジェス様が珍しくフォローした。レイジェス様もルイスの事、綺麗だと思ったんだ…やっぱりレイジェス様は男色の気があるのでは?
「リア、君の考えている事は大体分かる……言っておくが、違うからな?」
「公爵様は私に話しが有った様ですが、私も報告があります。ダイズの件ですが、プリストン王国にありました。バザールで売ってました。別の名でしたが、多分あれがダイズだと思われます。なので買って来て、今はそれを厨房で管理して貰ってます」
「凄い! 大豆って売っていたのですね! それを植えたらもっと一杯大豆が作れるかも!」
私は目をきらきらさせた。
そして、余計な事かと思ったけど、気になったので聞いた。
「何故ルイスはこちらに置いてけぼりなんですか? アランはお城に行っているのに」
「ルイスにはダイズを探してもらっていたからな」
「もう見つかったって、さっき言ってたでしょ? じゃあお城へ行ってもいいのでは?アランだって同じ諜報の者なのにルイスだけお城に行けないなんてずるいわ?」
「姫様、私はずっと南の領地の城で諜報活動してたのですよ? 城に行った事が無いわけではございませんから…それに、アランが近くにいると体をぺたぺたと触って来ますからね。注意してもやめてくれないので困るのです」
「うむ、ルイスは屋敷で休んでいるといい。まぁ、来たかったら来ても構わない」
「アランの傍には仕事以外でいたくないので結構です」
アランはそんなにルイスにセクハラしたの…? 前にアランがレイジェス様を見る目が妖しかった事があったから、美青年系がタイプだと思ってた! 騙された!
私達はルイスと別れて玄関の外に出た。
「ゲートで商会まで行くぞ?」
「いつの間に商会にプレイスマークを?」
「グレーロック城にプレイスマークを付けに行った帰りに商会とハンスの家にプレイスマークを付けた」
「ああ……あの時ですか」
レイジェス様は商会へのゲートを開いた。商会の建物前に出た。終春節なので休みにしているかな?と思ったら営業していた。
「ふむ、あいつ、休まないで働いているのか?」
「ルイーズ様の事ですよね?」
「うむ」
「中に入ってみましょう」
私達は商会の扉を開けた。すると中からルイーズ様が大声を上げた。
「あんた達今まで何やってたのよっ!」
接客をやっている店員が狭い店ながら三名いて、客が数人いて皆その相手をしている。
私は大きな声を掛けられて驚いていたらルイーズ様が近寄ってきた。
「取り敢えず、事務所に行くわよ? 来て」
私達が二階の事務所に上がると従業員が五人増えていた。全員女性だ。
ルイーズ様がパンパンと手を叩き注目を集める。
従業員達は全員自分のデスクから立ち上がった。
「皆さん! 聞いて頂戴? 今日は会頭が来ています。はい、パチパチ!」
皆ルーズ様に言われてパチパチ拍手する。
「はい、会頭のアリア=アズライル様で~す! 皆よろしくね。じゃ、会頭から挨拶をどうぞ!」
「え? え~、只今ご紹介に預かりました、わたくしアズライル商会の会頭でアリア=アズライルと申します。8歳です。ルイーズ様に商会をお願いしたあと、放置していて申し訳ありませんでした。5月一杯はアルフォード公爵家の南の領地にいると思いますので6月からは会頭活動が出来るようになると思います。みなさんよろしくお願いします」
するとデスク前に立っていた従業員達が拍手をした。
「じゃ、会頭の挨拶は終了よ。皆さんお仕事続けて頂戴」
ルイーズ様はそう言って、私達を応接室へ案内した。バタンと扉を閉めて一言。
「今まで大変だったんだからっ!」
「も、申し訳ございません!」
私が頭を下げて謝るともういい!とまだぷんぷんしている。
私とレイジェス様は応接室の長椅子に座った。
「あら? アリアちゃん、今日なんだかちょっと違うわね?」
「ルイーズさんと会う時は男の子になるって言ってたじゃないですか。今男の子なのです」
「ぱっと見あんまり変って見えないのに、不思議ね?」
「ドレスを着ているし、子供だから男の子って分かりにくいかもです」
私がルイーズ様と話をしていると腕を組んでむすっとしているレイジェス様。
「で、今の商会の状況はどうなのでしょう? 従業員が増えている様子ですが?」
「リンスがバカ売れしちゃって大変よ!工場を二つにしたけど、まだ足りないわ? もう一つ工場を作ろうと思ってた所」
「じゃあ、儲かってるんですか?」
「かなりね。あと、リアグッズも売れ行き好調よ?追加発注してお客様をお待たせしてる所」
「おおお、凄い! ルイーズ様凄いですね。さすが私を雇いなさい、損はさせないって言っただけあります!」
ルイーズ様はくすりと笑った。
「リンスもリアグッズも商品開発したのはアリアちゃんよ? 凄いのはアンタでしょ?」
私は目をぱちぱちした。
「あとね、王宮から国立劇場であなたにコンサートをやって貰えないか? って商会を通して正式に打診が来てるわ?」
「へ?」
「6月の流星祭イベントに合わせてだからまだ考える時間はあるけどどうする?」
突然そんな事言われて驚く。正直私が歌で稼ごうと思ったのはレイジェス様に自分で稼いだお金でプレゼントしたいってそれが理由だったんだけど。
でも、自分の涙が凄く高く買取されたり、グッズを売ってもそのお金に比べれば全然たいしたことが無くって、だったら別に歌わなくてもいいじゃない?って思ってたりもした。趣味で歌って弾く位でいいんじゃない? って。
国立劇場でコンサート? 私が?
私が考え込んでいるとレイジェス様が口を開いた。
「何故王宮からコンサート依頼が来る? 前にうちの屋敷で開いたコンサートには貴族は呼んだが、王宮の者は呼んでいなかったが……」
「なんでも、宰相様の甥子さんがコンサートにいらしたそうよ? それで、アリア様のコンサートを見て宰相様にアリア様のコンサートが良かったと力説したらしいわ? 甥子さんはアリア様のファンになったようね?」
とルイーズ様がくっくっと笑うけど、レイジェス様の眉間に皺が寄った。
「そのコンサートってお金が貰えるんですか?」
「王宮依頼だしギャラは良いはずよ? 国立劇場でコンサートなんて歌い手からしたらとても名誉な事なのよ~」
へ~武道館ライブみたいな物なのかな? と想像してみた。
お金が貰えるコンサートならやってもいいんじゃない? ともう一人の悪魔な私が背後から囁いた。でも、レイジェス様の眉間に皺が寄ってるよ? と天使な私が囁く。ちらっとレイジェス様を見ると目が合った。わぁ~不機嫌そうだぁ…。
「い、今すぐにはお答えできませんので、コンサートの件はちょっと考えさせて下さい」
「なるべく早く返事を頂戴ね?王宮の担当者に連絡しなきゃいけないから」
「はい、申し訳ありません」
「ああ、そういえば、ルイーズに話そうと思ってたんだが工場をいくつか作って欲しい」
「え? 工場って何の工場よ?」
「砂糖工場だ。アズライル商会で取り扱う」
その話を聞いて私は目を丸くした。
「砂糖をわたくしが扱ってもいいのですか?」
「君が発見したんだし、食料品も扱うと言っていただろう?」
「砂糖を発見したですって!? 今より忙しくなるじゃないっ!」
「従業員を雇え。秘書や財務係を増やした方が良いんじゃないか?」
「そんな事、レイジェスに言われなくても分かってるわよ!」
レイジェス様がにやにやしだした。ルイーズ様をやり込めようとする悪い顔だ。
結局砂糖の件は事務所に地図も無かったし6月に入ってからルイーズ様とセバスで現地の砂糖の現状調査をしてからという事になった。ちなみに工場は建物だけ建てるという事に決定して場所はルイーズ様の不動産商会で見つけてくれるという事になった。
私達は話し合いを終え、商会を後にした。
「ねぇねぇ、レイジェス様」
「ん?」
「たい焼き屋さんに寄りましょうよ。城の皆さんにお土産にしましょう?」
「君が食べたいだけじゃないのか?」
「もちろんそうですよ?」
私はにこにこした。
「あっ! 終春節だからやっていないかしら?」
「あの店は平民がやっている。生活が懸かっているし、休まないと思うがな? 行くだけ行ってみるか?」
レイジェス様がそう言うと、私は走り出した。最近少し体が丈夫になって来た気がする。前はすぐぱたりと意識が途絶えてたのに、前よりは倒れなくなった。
「こら、待ちなさい! 走るな!リア!」
「捕まえてみて~?」
と私が言ったらダッシュで走ってきて速攻捕まった。早すぎるよ…レイジェス様。
「あ! お店、やってるみたいですよ」
私が指差した通りの道沿いに、赤い屋台が止まっていた。
「おじさん、こんにちは~!」
「おっ! お嬢ちゃん、またお父さんと来てくれたのかい?」
あ。私が後ろを振り向くとレイジェス様がむっとしておられる。
うわ~……レイジェス様って【お父さん】て言葉に敏感だよなぁ。
そんなに嫌なのか。
「店主よ、私はこれの父ではない。婚約者だ」
「そ、それは大変失礼しました!」
おじさんは首に掛けてあるタオルで顔の汗を拭き出した。
「たい焼きを51個頼む。1個はすぐくれ、これが今食べるのでな。残りは持ち帰る」
「51個!? 時間が少々かかりますよ? よろしいですか?」
「良い、待つ」
「ではそこに座席があるのでそこでお待ちください」
おじさんはさっそくたい焼きを大量に作り始めた。
火で暖めてある魚の形の焼き型にだーっと衣の液体を流して焼いていく。
私とレイジェス様は屋台の隣においてある簡易カフェテーブルに座った。多分ここで食べたり飲んだりするのだと思う。
「砂糖が工場で作れるようになったら、美味しいお菓子が一杯作れますね」
にこにこして言ったら呆れられた。
「今、プリストン王国の砂糖はほぼ外国からの輸入で賄っている。これが国内で売り出す事になったらどうなるか……わかるか?」
「え~? いきなり経済のお勉強ですかぁ? ん~私の商会から買う人が多くなる…のかな? あっ! だから儲かりますね!」
またにこにこして言うと、レイジェス様はこめかみを押さえた。
「……そうだ、リアの言う通り儲かる。当然他の貴族のやっかみも多くなるだろうな……」
「多分、お砂糖の値段が少し安くなりますよね?」
「ああ、だから交易して砂糖を買い付けている商会はこれから厳しくなるだろうな。今までと同じ値段では売れなくなる可能性がある。まぁ、リアがどれだけの値をつけるかによるがな」
「あんまりお安くしすぎてもダメという事ですね」
「そうだ。君は話が早くていいな」
話をしているとおじさんが半分焼けたと言って私に1個とレイジェス様にたい焼きの袋を渡した。また半分焼くのでもう少し待ってという。
レイジェス様は頷いた。
私はたい焼きが焼き立てでまだ熱いので暫く待つことにした。
いきなりレイジェス様がぽんと手のひらを打った。
「何か忘れていると思ったが、思い出した!」
「へ? 何をです?」
「君の採寸だ」
「ここからエドモンド商会は近いし、たい焼きが出来たら行くぞ」
「え? でも、洋服ならわたくし神呪で着れますから。別に無くても困りませんわ?」
「私はちゃんと君にドレスを作って着せたい。成長に伴って段々着る服が大きくなるんだぞ? 記念になるじゃないか」
「う~ん、では少しで結構ですよ?」
「うむ、わかった。少しだな」
と言って極上の微笑みを見せる。これ、私の言った事わかってんのかな?
「でも、エドモンド商会ってやってるのかしら?」
「あそこは従業員も多いし、一ヶ月も休まないと思うがな…そんなに休んだら賃金を払うだけでも大変だろう」
私は急いで自分のたい焼きを食べた。喉が詰まったので、カフェテーブルに置いてあったポットから備え付けのコップに水を注いで飲んだ。
第二陣のたい焼きの袋を私が貰ってエドモンド商会に向かった。
通りを真っ直ぐ歩くとエドモンド商会が見えて来た。
「レイジェス様、たい焼きが冷めちゃうので、採寸したらすぐ帰りますよ?
「わかった」
エドモンド商会の扉をレイジェス様が開けるとアンヌの声が聞こえた。
「まぁ、公爵様、領地に戻られていたのでは?」
「ああ、戻ってたんだが急用で来たついでにここへ寄った」
「どうされました?」
私が後ろからぴょこっと顔を出すとアンヌが少し驚いた顔をした。
「お久しぶりです、アリア様、あら? もしかして少し大きくなられました?」
「当たりです! わたくし背が少し伸びたのです!」
「あら、おめでとうございます。それでは早速採寸しなくてはいけませんね。二階へどうぞ」
アンヌに私とレイジェス様は二階に促された。
採寸場所の絨毯の所に呼ばれたので持っていたたい焼きの袋をレイジェス様に渡した。
「こちらにお願いします」
壁がメジャーになっていてそこで背を測った。それから体のあちこちを測られた。
足のサイズも測られた。今は神呪で靴を履いている。前に作って貰った靴は全部履けなくなっていたから。でも自分で呪文を唱えると靴なんてあっという間に出てくるので別に困っていない。
「ああ、アンヌ、ついでにドレス40着と靴を20足作ってくれ。あと、部屋着20着と寝巻き20着もな」
「公爵様、それでしたら、そろそろ【胸当て】が必要かと思いますけど」
「胸当て?」
「子供用のバストトップです」
ぎゃ~! バストトップってもしかしてブラジャーの事ですか? なんでそんな話をレイジェス様に…。
レイジェス様は目が点になっていた。
「あんなぺたんこで、まな板みたいな胸でも必要なのか?」
そんなぺたんことか、まな板とか言うのは酷いと思います! 失礼な!
「今育ってきている最中だから必要なのですよ。えっと、言いにくいのですが育ち盛りですと動きすぎて……その……先がですね、擦れて切れちゃう場合もあるのです。だから保護する必要があるのですよ。今の段階での【胸当て】は胸の大きさはあまり関係ないのです」
「切れるとは……恐ろしいな。痛いだろう」
レイジェス様が私を可哀想な子を見る目で見た。
けどね、私まだ乳首、擦り切れてませんからっ! でも、その擦り切れる話を聞いて私も怖くなったので欲しいと思った。
「ええ、だからお勧めしますわ」
「じゃあ、それも30着あればいいか?」
「十分です」
「デザインや色はアンヌにまかせる。リアに似合うものをよろしくな」
「ええ、承知しました」
「では城へ戻るか。リア」
私は呪文を唱えて靴を履き直した。
レイジェス様はその場でゲートを開いた。アンヌが目をぱちぱちしている。
「さようなら、アンヌ」
私はアンヌにそう言って手を振った。そしてレイジェス様と一緒にゲートを潜った。
お城に着いて、エドアルドに皆を食堂に呼んでもらった。護衛の二人と画家のハンス、お抱え執事や側仕え、音楽隊の皆も。
皆でたい焼きを食べたら美味しいかな? って思ったから。
セバスがたい焼きを暖め直してくれた。
ぞろぞろとみんなが食堂に来るけど椅子が足りない!
なので皆で立ったまま、たい焼きを食べた。
みんなたい焼きを食べた事が無くて珍しがっていた。
セバスとエドアルドがお茶の用意をして皆に配っている。
わいわいがやがやと人の賑わいが楽しかった。
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