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第三章
30閑話 神饌の料理人
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私は朝、異物感で目覚めた。
あ、そう言えば、昨日プラグを挿入っぱなしで寝たんだっけ……。
その状態が割と平気な自分に笑ってしまう。
取り敢えず、これを抜かなきゃ……。
レイジェス様はまだ眠っている。私はそっとお花を摘みに行った。
お花を摘みに行ってプラグを抜いて、アクアウォッシュして空間収納にしまった。
抜いたあとを触ると拡がっちゃってるのが分かった。
ちょ、うわぁ……こんなに拡がると思わなかった……閉じるのこれ?
焦っていると徐々に閉じてきたのでほっとした。
部屋に戻ってクローゼットの引き出しからショーツを出して履いた。昨日はショーツを履かないで寝たので履いていなかったからだ。
もぞもぞとやっているとレイジェス様が起きてしまった。
寝ぼけた顔でこっちに来なさいと言う。
私は寝台に登り、もぞもぞとレイジェス様の近くに行った。
ぎゅっと私を抱きしめると、安心したのかレイジェス様はまた眠ってしまった。
ん~またメモでも置いて行く?
すやすや寝ている寝顔がなんだか憎たらしい、私はレイジェス様の鼻を摘んだ。
前に私もこうやって起こされたもん、いいよね?
「ふぁっ!? 何をする!」
「わたくし起きて、ちょっとやりたい事がございます。ダイヤが欲しいのですけど、レイジェス様が管理してるでしょ? 1個でいいから下さいな」
レイジェス様は不機嫌な顔で空間収納から皮袋を取り出した。
「ダイヤをどうするのだ?」
「差し上げます」
「はっ? 誰にだ……」
「え? いつもお世話になっている料理長さんに? 上げたいなぁと思ったのですが?」
「リア、彼にはきちんと賃金を払っている。それ以上には必要ないだろう」
「そうかも知れないけど、私やレイジェス様が気付く前から神饌を選んで作ってくれていたんでしょ? いつもお世話になってるし、私から何か気持ちの篭った贈り物をお渡ししたかったのです。どうせ貰うなら高価な物がいいかな? って思ったんですけど?」
レイジェス様はため息をひとつ吐いて空間収納から小さな木箱を出した。木箱の中には艶のある赤い布が敷いてあった。その木箱に皮袋から選んだ結構大きめのダイヤを載せて私に渡した。赤い布のせいか箱とダイヤが立派に見える。
「ただ裸で渡す訳にもいかないだろう? このまま渡すと良い」
「ありがとうございます」
私はレイジェス様のほっぺにちゅっとして寝台から降りた。
「待ちなさい、行くなら私も一緒に行こう」
レイジェス様も寝台を降りて着替えた。
二人で食堂に行くとエドアルドがいて朝の挨拶を交わす。
「姫様はいつものトウミの紅茶で良いですか?」
「ええ、いつものでお願い」
「旦那様はどうされますか?」
「私は、パンとスープだけで良い、今日はあまり食欲が無い」
「承知しました」
エドアルドが厨房に行くとセバスがワゴンにお茶セットを乗せて来た。
「おはようございます、旦那様、姫様」
「うむ」
「おはようございます、セバス」
「姫様のお茶は今お作り致します、少々お待ち下さい」
セバスは茶葉を取って紅茶ポットに入れるとお湯を注いだ。
そして蓋をして蒸らす。
ティーカップにトウミを入れて、蒸らしたポットを揺らしてからカップに注ぐとトウミの良い香りと紅茶の香りがふんわりと広がった。
それを私の前に差し出す、細長くて白い綺麗な指。
「姫様、少し熱いので時間を置いた方が良いかも知れません」
私は頷いてカップを前に、じっと待った。
それを見てレイジェス様が
「お預けを食らった犬の様だな」
と笑う。
ホント、レイジェス様って無神経だわ……デリカシーの欠片もない。
私はぷぅと頬を膨らませた。セバスがくっくと笑っている。
エドアルドがトレーに料理を乗せて運んで来て、レイジェス様の前に差し出した。
私は少し冷めたトウミ紅茶を飲んだ。
「とても美味しいわ」
セバスに微笑むと彼は頷いて厨房に消えた。
レイジェス様は食事を終えると、エドアルドに料理長を呼んで欲しいと言った。
暫くすると白い調理服に赤いネッカチーフ、山高帽を被った料理人が来た。
山高帽からくせのある短い茶髪が見える。おどおどしているその瞳は青い。
前にも見た事がある料理長さんだった。
「わ、私に公爵様が何の用でしょうか? 私が何かヘマをしましたか……?」
「エドアルド、お前どういう呼び方をしたんだ? 何故こんなに怯えている?」
レイジェス様がイラっとして言うから料理長さんが尚更恐縮してしまった。
「私は普通に公爵様が呼んでますから、食堂に来て下さいと言っただけですが?」
エドアルドが無表情にレイジェス様に言い返すと料理長さんが焦っていた。
「す、すいません! やっぱり私が何かしたんですよね……?」
「いや、お前に話があるのは私ではない。アリアだ」
「アリア様が? ……私はどんな失礼をしてしまったのでしょうか!?」
う~ん、お礼を言おうとしていた相手が恐縮してしまって……お礼を言いにくいのですが? エドアルドは無表情だし、レイジェス様はイラっとしてるし、ダメだこれ。
「いえ、何も貴方はヘマなどしていないわ? 料理長さん、お名前を伺いたいのですけど、何ておっしゃるの?」
「私はエンリケ=ロデス、45歳です。家族も嫁と娘がいます……今クビになって路頭に迷うと家族共々困ってしまいます…! 何とぞクビは…簡便して下さい!」
「クビになんてしません。むしろずっと居て頂きたいと思ってます。今日はね、いつものお礼を言いたかったの」
「お礼?」
「ええ、いつもわたくしの為に美味しい神饌料理をありがとうございます。わたくし少し体が成長して大きくなりましたのよ?」
そう私が言うとエンリケは私を上から下までじっと見た。
「そう言えば、以前厨房に来た時より大きくなられましたね?」
「えへへ~わかる? でね、今日はいつものお礼ってことで何か渡したいな~と思ってこれを持ってきたの」
どうぞと言ってエンリケに木箱を渡した。
「なんですか? ……これは?」
「開けてみて?」
エンリケは私が渡した木箱の蓋を開けて目を見開いた。
「な、何ですこれは!?」
「ダイヤだ。リアの涙から出来ている、超高級品だ」
私はぎろりとレイジェス様を睨んだ。貴方は一言余計なんです、大人しくしてて?
と言う意味で手を握ったのに、全然分かってなくて、ぎゅっと握り返された。
「そ、そんな高価な物を私に……?」
「一般的には高価だけど、わたくしからするとただの涙ですから、でも、何かあった時にお金に変えられる方が便利でしょう?」
「まぁ、その大きさだと3000万ギル位か?」
レイジェス様がまた余計な事を言った。金額を言ってしまうなんて不躾な。
「3000万ギル!?」
料理長さんの青い瞳が見開かれた。
「売って金にするなり好きにすれば良い」
「レイジェス様! 失礼な言い方はやめて!」
私が窘めるとレイジェス様はむっとしながらも大人しくなった。
エンリケは頭を左右に振った。
「売るなんてしません! これは我が家の家宝にします!」
「えっ?、あ、あのぅ……」
家宝? って……。あの、家の代々のお宝の事ですよね?
そんな大層な物に私の涙が? なんだか申し訳無くなってきた。
「これは神からの贈り物ですよ? それも、その体から出た雫です!」
【体から出た雫】という呼び方がなんだか厭らしいんですが? おかげでレイジェス様がまたむすっとしてしまった。
「そんな素晴らしいものを売るなんて出来ません! 我が家の家宝にして後生大事にさせて頂きます! ありがとうございました! アリア様」
エンリケは深々とお辞儀をした。レイジェス様は手で下がれと合図をしてエンリケは厨房へ戻った。
「【体から出た雫】というのが厭らしい表現ですが、子煩悩の愛妻家が言うと何の邪気も感じない所が面白い物ですねぇ」
そう言って、エドアルドがレイジェス様を見てくっくと笑う。
無表情で笑われると怖いんですが……まるでホラーだ。
私が席を立つとレイジェス様に腕を掴まれた。
「今度はどこへ行くつもりだ?」
「図書室に行って本を借りて、お部屋で読もうと思ってましたけど?」
「ふむ……エドアルド、アーリンを呼んでリアに付けてやってくれ。私は先に部屋に戻っている、ちゃんと部屋に戻って来いよ?」
図書室まで付いて来る! って言うかと思ったらアーリンを付けると言い出した。
……あ、そうか、図書室からあの地下室へ行けるからだ……。
レイジェス様は思い出したくないのかも知れない。あの地下室の事を。
エドアルドが厨房の奥にある通信機器でアーリンを呼んだ。暫くするとアーリンが来て一緒に図書室へ行った。
「昨日のティオキア舞踊はとても素晴らしかったですよ。私は涎が出てしまいました!」
「えっ!?」
「あっ、涎ではなくて、ため息です! ため息!!」
アーリンが目を泳がせて焦っている。どう聞いても【涎】って聞こえたんだけど……私の気のせいか。
「今日はどんな本を借りるのですか?」
「まだどんな本を借りるか考えてないの。インスピレーションで決めるわ?」
私がとととっと歩くとアーリンもすすすっと付いて来る。なんだか面白い。
とととっと歩いて棚の後ろに隠れるとアーリンが焦って大股でスタスタ来た。
「姫様? かくれんぼは無しですよ?」
「分かってますってば、ちょっとアーリンが面白くてね。うふふ」
「もう、そんな可愛らしい笑顔で笑って誤魔化してもダメですからね?」
と一応叱られた。アーリンは私に甘いなぁと思った。
ふと見ると【記憶の中の輪廻転生】というタイトルの本に目が行った。
インスピレーションを感じた。この本にしよう! 今日借りるのは、と思って手に取ると小さく書いてあった著者の名前が読めた。
【マリエッタ=スズキルステン】と書いてある。
あれ? これって前に読んだ本の……作者。
私はその本を持って図書室を後にした。
「ただいま戻りました」
「お帰り」
「お帰りなさい」
部屋に戻るとまたユリウス様がいた。
仲良くなり過ぎじゃない? レイジェス様、分かってる? この人私に愛の告白してますからね?
無邪気な顔でにこにこユリウス様とお話ししているレイジェス様を見て、私は何とも言えない気持ちになった。
私は二人に構わず寝台にドレスのまま登って、寝転がって本を読み始めた。
「姫様? ドレスが皺になってしまいますよ?」
アーリンに注意されたけど、着替える場所が無いじゃない。
「あちらのお部屋でお着替えになっては?」
と垂れ壁の向こうの応接室を指差すアーリン。私はしぶしぶ頷いてクローゼットから部屋着を取り出した。
「私がお手伝いしますよ!」
「お願いしてもいいの? アーリン?」
「ええ! 大歓迎です!」
「ちょっと待て! アーリンはダメだろう?」
レイジェス様がユリウス様そっちのけで割って入る。アーリンが私の着替えの手伝いをするという事に反対するのを不思議そうに見るユリウス様。
「別にいいじゃない、女同士ですもの。何がいけないのか分からないわ?」
「アーリンは君を狙っているんだぞ!?」
私は目が点になった。好いてくれてるのはアランも言っていたから分かっていたけど、狙ってるって……それはいくらなんでもないでしょう?
「そうなの? アーリン?」
アーリンは頭をぶんぶん振った。
「そりゃ、姫様は可愛らしくて、たまに良からぬ想いを抱いちゃう時も有りますけど、私はあくまで姫様の護衛騎士ですから! 妄想で穢しても実際は穢しません! 狙ったりなんてとんでもない!」
私とユリウス様は思わず口をあんぐりと開いてしまった。
私って、妄想でアーリンに穢されていたのね? その妄想ってどんなの?って変に興味が湧いてしまった。
「ほら、私の言う通り、良からぬ想いを抱いているではないか」
「公爵様! 私は妄想だけですから! それに突っ込むブツも付いてませんしね!」
レイジェス様が私の耳を両手で塞いでしまった。
「そんな下品な言葉をリアに聞かせるな! 護衛ともあろう者がっ!」
「も、申し訳ありません!」
アーリンが深々と頭を下げた。
「もう、いいわ二人共」
私はそう言ってから神呪で黒いネグリジェの様な部屋着に着替えた。
「今から本を読むから、邪魔しないでね?」
私はにっこり笑って、持っていた部屋着を空間収納にしまって、また寝台に登って寝転がった。そして図書室で借りて来た本を開く。
レイジェス様はまだアーリンとごちゃごちゃ言い合いをして、ユリウス様が何故か仲裁に入っている。
私はそんな喧騒もどこかに置き去りにして、本の中に沈み込んでいた。
結局この本の内容は、マリエッタの自伝的な物語で、たまに思い出されるフラッシュバックの様な記憶みたいな物が、自分の前世での出来事なのではないか? と思っていたマリエッタは、輪廻転生が本当にあるんじゃないかと、何人かの同じような経験が有る人を集めてサンプルにし、その記憶を辿る実験を結果として載せていた物だった。
中々興味深い。輪廻転生は確かにある。だって、そもそも私がそうだ。
この世界の人達は輪廻転生をどれ位の割合で信じているのかな? 少し気になった。
本を読み終えると丁度お昼だった。レイジェス様はまたユリウス様とリバーシをしている。
どうせまた負けているんでしょ? と思いつつ気になって、とととっと寄って見ると珍しくレイジェス様が勝っている。
私が長椅子に座るのに気付いて、抱き上げられて膝の上に乗せられた。
手が胸に当たってますが? レイジェス様を見上げるとわざとやっている様だ。
勝ってるからって随分余裕があるんですね?
ユリウス様が渋い顔をして私とレイジェス様を見つめる。そして唸る。
「うううぅぅぅ」
「ん? 次の手が無い様だな? もう一度私の番か?」
ニタニタ笑いながら言うから性格が悪い。
「くそっ!」
ユリウス様でもそんな言葉を使うのね、とびっくりする私。
レイジェス様が黒い駒を置いて全部が真っ黒になってゲーム終了となった。
「うん、やっぱり一色に染めるのは気持ちが良いな」
ははははと高笑いするレイジェス様に対してしょんぼりするユリウス様。
「レイジェス様はあんまり笑わないの! ユリウス様も、一回負けた位で落ち込まない! お昼ですし、昼食に行きません?」
三人で食堂に行くとコモン様とシエラ様も昼食を取っていた。
クロエ様も私達が来たあとすぐに来てみんなで昼食を取った。そして皆で話が盛り上がって、午後はコントルダンスをしようって事になった。
人数が多い方が楽しいって理由で使用人達にも参加してもらう事になった。
「私は踊りたい相手もいませんし、仕事も残ってますからね、出ませんよ? その代わりと言っては何ですが、セバスを出しましょう」
エドアルドの隣に立っていたセバスが急に話を振られて少し驚いていた。
「私がですか? まだ仕事もあると言うのに……良いのですか? エドアルド」
「エドアルドが良いって言ったんだから良いんじゃなくて? わたくしもたまにセバスと踊りたいですし、わたくしにダンスを教えてくれたのはセバスなのに、最近は一緒に踊ってませんもの」
セバスはフッと何かを思い出した様に微笑んで、参加させて下さいと言った。
昼食を終えると皆で大広間に移動した。
エドアルドが音楽隊に通信で連絡してくれていて大広間に行くともうラン達が音合わせをしていた。参加する使用人はコモン様の執事ルイとシエラ様の執事メルヴィン、側仕えのベティ、クロエ様の側仕えのアルテダ、うちからはセバス、アーリン、アランが出る。サーシャには「絶対出ません! 有り得ません!」と速攻で却下されてしまった。なのでサーシャにはお茶係りをして貰う事になった。
ユリウス様の執事が来ていないので聞いてみると、オリオンはこういう集まりは苦手だそうで、お部屋で過ごすとユリウス様が言っていた。
女の子が一人足りないので音楽隊で一人抜けてダンスに参加する事になった。
けど、音楽隊の姉妹全員で代わる代わる踊ろうと話し合いで決まり、一番最初は長女のランからだった。他の三人も休憩が入る毎に代わって全員ちゃんと踊っていた。
何故かアーリンがルイにお願いして男子と入れ替わって踊っていた。なので私もアーリン相手に踊った。
「姫様と踊れるなんて感激です!」
「なんだか女性相手に踊るなんて不思議な気分です」
アーリンの後にまたセバスの順番が回って来た。
「セバス、ありがとう」
「え? 私は何も……?」
「だって、わたくしにダンスを教えてくれたのはセバスですもの。ダンスがこんなに楽しいとは思いませんでした。そういう意味での教えてくれてありがとう! です」
セバスは目をぱちぱちさせてにっこり笑った。
私達は夕食の時間までわいわいと踊り楽しく過ごした。
部屋に戻るとレイジェス様がお風呂に行こうと言ったので私も一緒に付いて行った。
いつもと違って、自分のローブをさっさと脱ぐと浴室へ入ってしまった、あれ? と思った。いつもなら私のドレスを脱がすのに、先に浴室へ行くなんて無かった。…あ、そういえば私神呪で部屋着を着てたんだ、この黒のワンピース。解除したら元のドレスになっちゃうし、あれを一人で脱ぐのは大変だ……このワンピースなら自分でも脱げる。
下着まで神呪で作ってないからワンピースの下は下着を履いてないし……。
結局着替えの楽さで今着てるワンピースを脱ぐ事にした。そして脱いだ服をアクアウォッシュしておいた、帰りに着れる様に。
それにしても……レイジェス様の態度がいつもと違う気がするのは気のせい?
昨日も致さないで寝ちゃったし……初めての晩餐会に行った後から、毎日の様に私の体に触れられていたから……こんな状態が初めてで、変に感じるだけなのかな?
よく分かんないや……。
私は浴室に入ってバスチェアを持って来て置いた後、お湯を浴槽から桶で汲んで来て、備え付けの石鹸を取ってバスチェアに座った。手で泡々にして足から洗う。
レイジェス様はもう体を洗い終わって湯船に浸かっている。
こちらを見ようともしない……どうしたんだろう? 私、何かしたかな?
私が自分の背中が洗えなくて困っているとそこだけは手伝ってくれた。
怒ってる訳じゃないみたい。どうしてかは分からないけど、私になるべく触りたくないだけみたいだ。背中を大きな手でさっと洗うとまた浴槽に戻ってしまった。
私はお股を洗ってから浴槽に入った。するとレイジェス様が私をよけた。
いつもなら抱き上げてお膝に乗せるのに……。
私はじっとレイジェス様を見つめたけど、やっぱりこちらを見ようともしなかった。
レイジェス様は浴槽から先に出た。
私はぽつんと一人お湯に浸かっていた。
……いいじゃない、たまには一人でお風呂でまったりするのも。
だって、ちょっと前そう思ってたじゃない? ゆっくり一人でお風呂に浸かりたいって。じゃあ、この状況を楽しもう!
レイジェス様が私に飽きちゃったのかも……なんて考えても仕方ないじゃん。
もうちょっとおっぱいが大きかったら、こんな事にならなかったのかなぁ? とか
私が大人だったらなぁ? とか、考えてもどうにもならない事ばっかり。
どうにもならない事は、ちょっと何処かに置いておこう。
私はお風呂の中でクロールをした。
ばちゃばちゃと泳ぐと飛沫が顔に当たってたらりと流れる。
これは飛沫が飛んだだけ、涙じゃない。
私は仰向けになって背泳ぎをした。
ぷかりと湯船に浮いてゆらゆら揺れる。私はゆっくり目を閉じた。
部屋に戻るとレイジェス様はもう寝台に入って眠っていた。昨日と同じ状態だから今日もきっと致さないんだろうと思う。でも私はお花摘みに行く。
折角拡がって来ている菊の拡張作業を休んで、無駄にしたくなかった。
体の中を空にして、自分でプラグを選ぶ。昨日より少し大きいプラグに挑戦してみる事にした。カバーを付けてゼリーを菊とプラグに塗りつけて自分の中に挿入れる。
昨日よりちょっときつい。ぐっと押し込んでやっと入ったけど、ちょっと痛かった。
だから何処かが切れちゃったんだと分かる。
「ヒール!」
痛いのが何とも無くなった。ただ異物感と圧迫感だけになる。
私はショーツを履くのに屈むのがきつくて、ショーツを履くのを止めた。
寝台に戻ってレイジェス様の寝顔を見た。その寝顔はいつもと変らない。
私はレイジェス様の手に自分の手を少し重ねて眠った。
あ、そう言えば、昨日プラグを挿入っぱなしで寝たんだっけ……。
その状態が割と平気な自分に笑ってしまう。
取り敢えず、これを抜かなきゃ……。
レイジェス様はまだ眠っている。私はそっとお花を摘みに行った。
お花を摘みに行ってプラグを抜いて、アクアウォッシュして空間収納にしまった。
抜いたあとを触ると拡がっちゃってるのが分かった。
ちょ、うわぁ……こんなに拡がると思わなかった……閉じるのこれ?
焦っていると徐々に閉じてきたのでほっとした。
部屋に戻ってクローゼットの引き出しからショーツを出して履いた。昨日はショーツを履かないで寝たので履いていなかったからだ。
もぞもぞとやっているとレイジェス様が起きてしまった。
寝ぼけた顔でこっちに来なさいと言う。
私は寝台に登り、もぞもぞとレイジェス様の近くに行った。
ぎゅっと私を抱きしめると、安心したのかレイジェス様はまた眠ってしまった。
ん~またメモでも置いて行く?
すやすや寝ている寝顔がなんだか憎たらしい、私はレイジェス様の鼻を摘んだ。
前に私もこうやって起こされたもん、いいよね?
「ふぁっ!? 何をする!」
「わたくし起きて、ちょっとやりたい事がございます。ダイヤが欲しいのですけど、レイジェス様が管理してるでしょ? 1個でいいから下さいな」
レイジェス様は不機嫌な顔で空間収納から皮袋を取り出した。
「ダイヤをどうするのだ?」
「差し上げます」
「はっ? 誰にだ……」
「え? いつもお世話になっている料理長さんに? 上げたいなぁと思ったのですが?」
「リア、彼にはきちんと賃金を払っている。それ以上には必要ないだろう」
「そうかも知れないけど、私やレイジェス様が気付く前から神饌を選んで作ってくれていたんでしょ? いつもお世話になってるし、私から何か気持ちの篭った贈り物をお渡ししたかったのです。どうせ貰うなら高価な物がいいかな? って思ったんですけど?」
レイジェス様はため息をひとつ吐いて空間収納から小さな木箱を出した。木箱の中には艶のある赤い布が敷いてあった。その木箱に皮袋から選んだ結構大きめのダイヤを載せて私に渡した。赤い布のせいか箱とダイヤが立派に見える。
「ただ裸で渡す訳にもいかないだろう? このまま渡すと良い」
「ありがとうございます」
私はレイジェス様のほっぺにちゅっとして寝台から降りた。
「待ちなさい、行くなら私も一緒に行こう」
レイジェス様も寝台を降りて着替えた。
二人で食堂に行くとエドアルドがいて朝の挨拶を交わす。
「姫様はいつものトウミの紅茶で良いですか?」
「ええ、いつものでお願い」
「旦那様はどうされますか?」
「私は、パンとスープだけで良い、今日はあまり食欲が無い」
「承知しました」
エドアルドが厨房に行くとセバスがワゴンにお茶セットを乗せて来た。
「おはようございます、旦那様、姫様」
「うむ」
「おはようございます、セバス」
「姫様のお茶は今お作り致します、少々お待ち下さい」
セバスは茶葉を取って紅茶ポットに入れるとお湯を注いだ。
そして蓋をして蒸らす。
ティーカップにトウミを入れて、蒸らしたポットを揺らしてからカップに注ぐとトウミの良い香りと紅茶の香りがふんわりと広がった。
それを私の前に差し出す、細長くて白い綺麗な指。
「姫様、少し熱いので時間を置いた方が良いかも知れません」
私は頷いてカップを前に、じっと待った。
それを見てレイジェス様が
「お預けを食らった犬の様だな」
と笑う。
ホント、レイジェス様って無神経だわ……デリカシーの欠片もない。
私はぷぅと頬を膨らませた。セバスがくっくと笑っている。
エドアルドがトレーに料理を乗せて運んで来て、レイジェス様の前に差し出した。
私は少し冷めたトウミ紅茶を飲んだ。
「とても美味しいわ」
セバスに微笑むと彼は頷いて厨房に消えた。
レイジェス様は食事を終えると、エドアルドに料理長を呼んで欲しいと言った。
暫くすると白い調理服に赤いネッカチーフ、山高帽を被った料理人が来た。
山高帽からくせのある短い茶髪が見える。おどおどしているその瞳は青い。
前にも見た事がある料理長さんだった。
「わ、私に公爵様が何の用でしょうか? 私が何かヘマをしましたか……?」
「エドアルド、お前どういう呼び方をしたんだ? 何故こんなに怯えている?」
レイジェス様がイラっとして言うから料理長さんが尚更恐縮してしまった。
「私は普通に公爵様が呼んでますから、食堂に来て下さいと言っただけですが?」
エドアルドが無表情にレイジェス様に言い返すと料理長さんが焦っていた。
「す、すいません! やっぱり私が何かしたんですよね……?」
「いや、お前に話があるのは私ではない。アリアだ」
「アリア様が? ……私はどんな失礼をしてしまったのでしょうか!?」
う~ん、お礼を言おうとしていた相手が恐縮してしまって……お礼を言いにくいのですが? エドアルドは無表情だし、レイジェス様はイラっとしてるし、ダメだこれ。
「いえ、何も貴方はヘマなどしていないわ? 料理長さん、お名前を伺いたいのですけど、何ておっしゃるの?」
「私はエンリケ=ロデス、45歳です。家族も嫁と娘がいます……今クビになって路頭に迷うと家族共々困ってしまいます…! 何とぞクビは…簡便して下さい!」
「クビになんてしません。むしろずっと居て頂きたいと思ってます。今日はね、いつものお礼を言いたかったの」
「お礼?」
「ええ、いつもわたくしの為に美味しい神饌料理をありがとうございます。わたくし少し体が成長して大きくなりましたのよ?」
そう私が言うとエンリケは私を上から下までじっと見た。
「そう言えば、以前厨房に来た時より大きくなられましたね?」
「えへへ~わかる? でね、今日はいつものお礼ってことで何か渡したいな~と思ってこれを持ってきたの」
どうぞと言ってエンリケに木箱を渡した。
「なんですか? ……これは?」
「開けてみて?」
エンリケは私が渡した木箱の蓋を開けて目を見開いた。
「な、何ですこれは!?」
「ダイヤだ。リアの涙から出来ている、超高級品だ」
私はぎろりとレイジェス様を睨んだ。貴方は一言余計なんです、大人しくしてて?
と言う意味で手を握ったのに、全然分かってなくて、ぎゅっと握り返された。
「そ、そんな高価な物を私に……?」
「一般的には高価だけど、わたくしからするとただの涙ですから、でも、何かあった時にお金に変えられる方が便利でしょう?」
「まぁ、その大きさだと3000万ギル位か?」
レイジェス様がまた余計な事を言った。金額を言ってしまうなんて不躾な。
「3000万ギル!?」
料理長さんの青い瞳が見開かれた。
「売って金にするなり好きにすれば良い」
「レイジェス様! 失礼な言い方はやめて!」
私が窘めるとレイジェス様はむっとしながらも大人しくなった。
エンリケは頭を左右に振った。
「売るなんてしません! これは我が家の家宝にします!」
「えっ?、あ、あのぅ……」
家宝? って……。あの、家の代々のお宝の事ですよね?
そんな大層な物に私の涙が? なんだか申し訳無くなってきた。
「これは神からの贈り物ですよ? それも、その体から出た雫です!」
【体から出た雫】という呼び方がなんだか厭らしいんですが? おかげでレイジェス様がまたむすっとしてしまった。
「そんな素晴らしいものを売るなんて出来ません! 我が家の家宝にして後生大事にさせて頂きます! ありがとうございました! アリア様」
エンリケは深々とお辞儀をした。レイジェス様は手で下がれと合図をしてエンリケは厨房へ戻った。
「【体から出た雫】というのが厭らしい表現ですが、子煩悩の愛妻家が言うと何の邪気も感じない所が面白い物ですねぇ」
そう言って、エドアルドがレイジェス様を見てくっくと笑う。
無表情で笑われると怖いんですが……まるでホラーだ。
私が席を立つとレイジェス様に腕を掴まれた。
「今度はどこへ行くつもりだ?」
「図書室に行って本を借りて、お部屋で読もうと思ってましたけど?」
「ふむ……エドアルド、アーリンを呼んでリアに付けてやってくれ。私は先に部屋に戻っている、ちゃんと部屋に戻って来いよ?」
図書室まで付いて来る! って言うかと思ったらアーリンを付けると言い出した。
……あ、そうか、図書室からあの地下室へ行けるからだ……。
レイジェス様は思い出したくないのかも知れない。あの地下室の事を。
エドアルドが厨房の奥にある通信機器でアーリンを呼んだ。暫くするとアーリンが来て一緒に図書室へ行った。
「昨日のティオキア舞踊はとても素晴らしかったですよ。私は涎が出てしまいました!」
「えっ!?」
「あっ、涎ではなくて、ため息です! ため息!!」
アーリンが目を泳がせて焦っている。どう聞いても【涎】って聞こえたんだけど……私の気のせいか。
「今日はどんな本を借りるのですか?」
「まだどんな本を借りるか考えてないの。インスピレーションで決めるわ?」
私がとととっと歩くとアーリンもすすすっと付いて来る。なんだか面白い。
とととっと歩いて棚の後ろに隠れるとアーリンが焦って大股でスタスタ来た。
「姫様? かくれんぼは無しですよ?」
「分かってますってば、ちょっとアーリンが面白くてね。うふふ」
「もう、そんな可愛らしい笑顔で笑って誤魔化してもダメですからね?」
と一応叱られた。アーリンは私に甘いなぁと思った。
ふと見ると【記憶の中の輪廻転生】というタイトルの本に目が行った。
インスピレーションを感じた。この本にしよう! 今日借りるのは、と思って手に取ると小さく書いてあった著者の名前が読めた。
【マリエッタ=スズキルステン】と書いてある。
あれ? これって前に読んだ本の……作者。
私はその本を持って図書室を後にした。
「ただいま戻りました」
「お帰り」
「お帰りなさい」
部屋に戻るとまたユリウス様がいた。
仲良くなり過ぎじゃない? レイジェス様、分かってる? この人私に愛の告白してますからね?
無邪気な顔でにこにこユリウス様とお話ししているレイジェス様を見て、私は何とも言えない気持ちになった。
私は二人に構わず寝台にドレスのまま登って、寝転がって本を読み始めた。
「姫様? ドレスが皺になってしまいますよ?」
アーリンに注意されたけど、着替える場所が無いじゃない。
「あちらのお部屋でお着替えになっては?」
と垂れ壁の向こうの応接室を指差すアーリン。私はしぶしぶ頷いてクローゼットから部屋着を取り出した。
「私がお手伝いしますよ!」
「お願いしてもいいの? アーリン?」
「ええ! 大歓迎です!」
「ちょっと待て! アーリンはダメだろう?」
レイジェス様がユリウス様そっちのけで割って入る。アーリンが私の着替えの手伝いをするという事に反対するのを不思議そうに見るユリウス様。
「別にいいじゃない、女同士ですもの。何がいけないのか分からないわ?」
「アーリンは君を狙っているんだぞ!?」
私は目が点になった。好いてくれてるのはアランも言っていたから分かっていたけど、狙ってるって……それはいくらなんでもないでしょう?
「そうなの? アーリン?」
アーリンは頭をぶんぶん振った。
「そりゃ、姫様は可愛らしくて、たまに良からぬ想いを抱いちゃう時も有りますけど、私はあくまで姫様の護衛騎士ですから! 妄想で穢しても実際は穢しません! 狙ったりなんてとんでもない!」
私とユリウス様は思わず口をあんぐりと開いてしまった。
私って、妄想でアーリンに穢されていたのね? その妄想ってどんなの?って変に興味が湧いてしまった。
「ほら、私の言う通り、良からぬ想いを抱いているではないか」
「公爵様! 私は妄想だけですから! それに突っ込むブツも付いてませんしね!」
レイジェス様が私の耳を両手で塞いでしまった。
「そんな下品な言葉をリアに聞かせるな! 護衛ともあろう者がっ!」
「も、申し訳ありません!」
アーリンが深々と頭を下げた。
「もう、いいわ二人共」
私はそう言ってから神呪で黒いネグリジェの様な部屋着に着替えた。
「今から本を読むから、邪魔しないでね?」
私はにっこり笑って、持っていた部屋着を空間収納にしまって、また寝台に登って寝転がった。そして図書室で借りて来た本を開く。
レイジェス様はまだアーリンとごちゃごちゃ言い合いをして、ユリウス様が何故か仲裁に入っている。
私はそんな喧騒もどこかに置き去りにして、本の中に沈み込んでいた。
結局この本の内容は、マリエッタの自伝的な物語で、たまに思い出されるフラッシュバックの様な記憶みたいな物が、自分の前世での出来事なのではないか? と思っていたマリエッタは、輪廻転生が本当にあるんじゃないかと、何人かの同じような経験が有る人を集めてサンプルにし、その記憶を辿る実験を結果として載せていた物だった。
中々興味深い。輪廻転生は確かにある。だって、そもそも私がそうだ。
この世界の人達は輪廻転生をどれ位の割合で信じているのかな? 少し気になった。
本を読み終えると丁度お昼だった。レイジェス様はまたユリウス様とリバーシをしている。
どうせまた負けているんでしょ? と思いつつ気になって、とととっと寄って見ると珍しくレイジェス様が勝っている。
私が長椅子に座るのに気付いて、抱き上げられて膝の上に乗せられた。
手が胸に当たってますが? レイジェス様を見上げるとわざとやっている様だ。
勝ってるからって随分余裕があるんですね?
ユリウス様が渋い顔をして私とレイジェス様を見つめる。そして唸る。
「うううぅぅぅ」
「ん? 次の手が無い様だな? もう一度私の番か?」
ニタニタ笑いながら言うから性格が悪い。
「くそっ!」
ユリウス様でもそんな言葉を使うのね、とびっくりする私。
レイジェス様が黒い駒を置いて全部が真っ黒になってゲーム終了となった。
「うん、やっぱり一色に染めるのは気持ちが良いな」
ははははと高笑いするレイジェス様に対してしょんぼりするユリウス様。
「レイジェス様はあんまり笑わないの! ユリウス様も、一回負けた位で落ち込まない! お昼ですし、昼食に行きません?」
三人で食堂に行くとコモン様とシエラ様も昼食を取っていた。
クロエ様も私達が来たあとすぐに来てみんなで昼食を取った。そして皆で話が盛り上がって、午後はコントルダンスをしようって事になった。
人数が多い方が楽しいって理由で使用人達にも参加してもらう事になった。
「私は踊りたい相手もいませんし、仕事も残ってますからね、出ませんよ? その代わりと言っては何ですが、セバスを出しましょう」
エドアルドの隣に立っていたセバスが急に話を振られて少し驚いていた。
「私がですか? まだ仕事もあると言うのに……良いのですか? エドアルド」
「エドアルドが良いって言ったんだから良いんじゃなくて? わたくしもたまにセバスと踊りたいですし、わたくしにダンスを教えてくれたのはセバスなのに、最近は一緒に踊ってませんもの」
セバスはフッと何かを思い出した様に微笑んで、参加させて下さいと言った。
昼食を終えると皆で大広間に移動した。
エドアルドが音楽隊に通信で連絡してくれていて大広間に行くともうラン達が音合わせをしていた。参加する使用人はコモン様の執事ルイとシエラ様の執事メルヴィン、側仕えのベティ、クロエ様の側仕えのアルテダ、うちからはセバス、アーリン、アランが出る。サーシャには「絶対出ません! 有り得ません!」と速攻で却下されてしまった。なのでサーシャにはお茶係りをして貰う事になった。
ユリウス様の執事が来ていないので聞いてみると、オリオンはこういう集まりは苦手だそうで、お部屋で過ごすとユリウス様が言っていた。
女の子が一人足りないので音楽隊で一人抜けてダンスに参加する事になった。
けど、音楽隊の姉妹全員で代わる代わる踊ろうと話し合いで決まり、一番最初は長女のランからだった。他の三人も休憩が入る毎に代わって全員ちゃんと踊っていた。
何故かアーリンがルイにお願いして男子と入れ替わって踊っていた。なので私もアーリン相手に踊った。
「姫様と踊れるなんて感激です!」
「なんだか女性相手に踊るなんて不思議な気分です」
アーリンの後にまたセバスの順番が回って来た。
「セバス、ありがとう」
「え? 私は何も……?」
「だって、わたくしにダンスを教えてくれたのはセバスですもの。ダンスがこんなに楽しいとは思いませんでした。そういう意味での教えてくれてありがとう! です」
セバスは目をぱちぱちさせてにっこり笑った。
私達は夕食の時間までわいわいと踊り楽しく過ごした。
部屋に戻るとレイジェス様がお風呂に行こうと言ったので私も一緒に付いて行った。
いつもと違って、自分のローブをさっさと脱ぐと浴室へ入ってしまった、あれ? と思った。いつもなら私のドレスを脱がすのに、先に浴室へ行くなんて無かった。…あ、そういえば私神呪で部屋着を着てたんだ、この黒のワンピース。解除したら元のドレスになっちゃうし、あれを一人で脱ぐのは大変だ……このワンピースなら自分でも脱げる。
下着まで神呪で作ってないからワンピースの下は下着を履いてないし……。
結局着替えの楽さで今着てるワンピースを脱ぐ事にした。そして脱いだ服をアクアウォッシュしておいた、帰りに着れる様に。
それにしても……レイジェス様の態度がいつもと違う気がするのは気のせい?
昨日も致さないで寝ちゃったし……初めての晩餐会に行った後から、毎日の様に私の体に触れられていたから……こんな状態が初めてで、変に感じるだけなのかな?
よく分かんないや……。
私は浴室に入ってバスチェアを持って来て置いた後、お湯を浴槽から桶で汲んで来て、備え付けの石鹸を取ってバスチェアに座った。手で泡々にして足から洗う。
レイジェス様はもう体を洗い終わって湯船に浸かっている。
こちらを見ようともしない……どうしたんだろう? 私、何かしたかな?
私が自分の背中が洗えなくて困っているとそこだけは手伝ってくれた。
怒ってる訳じゃないみたい。どうしてかは分からないけど、私になるべく触りたくないだけみたいだ。背中を大きな手でさっと洗うとまた浴槽に戻ってしまった。
私はお股を洗ってから浴槽に入った。するとレイジェス様が私をよけた。
いつもなら抱き上げてお膝に乗せるのに……。
私はじっとレイジェス様を見つめたけど、やっぱりこちらを見ようともしなかった。
レイジェス様は浴槽から先に出た。
私はぽつんと一人お湯に浸かっていた。
……いいじゃない、たまには一人でお風呂でまったりするのも。
だって、ちょっと前そう思ってたじゃない? ゆっくり一人でお風呂に浸かりたいって。じゃあ、この状況を楽しもう!
レイジェス様が私に飽きちゃったのかも……なんて考えても仕方ないじゃん。
もうちょっとおっぱいが大きかったら、こんな事にならなかったのかなぁ? とか
私が大人だったらなぁ? とか、考えてもどうにもならない事ばっかり。
どうにもならない事は、ちょっと何処かに置いておこう。
私はお風呂の中でクロールをした。
ばちゃばちゃと泳ぐと飛沫が顔に当たってたらりと流れる。
これは飛沫が飛んだだけ、涙じゃない。
私は仰向けになって背泳ぎをした。
ぷかりと湯船に浮いてゆらゆら揺れる。私はゆっくり目を閉じた。
部屋に戻るとレイジェス様はもう寝台に入って眠っていた。昨日と同じ状態だから今日もきっと致さないんだろうと思う。でも私はお花摘みに行く。
折角拡がって来ている菊の拡張作業を休んで、無駄にしたくなかった。
体の中を空にして、自分でプラグを選ぶ。昨日より少し大きいプラグに挑戦してみる事にした。カバーを付けてゼリーを菊とプラグに塗りつけて自分の中に挿入れる。
昨日よりちょっときつい。ぐっと押し込んでやっと入ったけど、ちょっと痛かった。
だから何処かが切れちゃったんだと分かる。
「ヒール!」
痛いのが何とも無くなった。ただ異物感と圧迫感だけになる。
私はショーツを履くのに屈むのがきつくて、ショーツを履くのを止めた。
寝台に戻ってレイジェス様の寝顔を見た。その寝顔はいつもと変らない。
私はレイジェス様の手に自分の手を少し重ねて眠った。
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