魔術師長様はご機嫌ななめ

鷹月 檻

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第三章

29ティオキア舞踊の夜 後編

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 音楽隊の演奏が終わり、私は拍手した。後ろにいた護衛の二人も拍手している。ハンスは絵を描くので手一杯らしい、真剣にスケッチブックに描き込みをしている。音楽隊の皆がお辞儀をして、ランがすうっと私の前に来た。

「今の曲のタイトルは【夕闇に嗤う偽りの王女】と言うのですよ。この曲は結構有名です」
「妖しくて淫靡な感じのする曲でした」
「まぁ、元は後宮の女達が国王のあそこを奮い立たせる為の舞曲ですから、厭らしい感じもするでしょうね。一曲じゃ寂しいですから、もう一曲有名所を弾きますけど、いかがです?」
「ええ、じゃあもう一曲お願い」

 ランは自分の担当の打楽器の位置に戻って、頭を振ってリズムを取ってワン、ツー、スリー! と言って曲を始めた。
さっきの曲よりもテンポが速くて、聞いてると動き出したくなって体がうずうずした。曲が終わったので拍手をするとランが来た。

「今の曲もテンポが良くて踊りやすそうでしょう? 姫様」
「ええ、体がうずうずして踊りたくなってしまいました。曲名は何と言うの?」
「今のは【無我の瞬きと悦楽の乱舞】と言います」
「タイトルが……大人な感じですね」
「まぁ、姫様には遠いタイトルですね~」

 ランがちらりと私の胸を見た。

「どうせ無いペタですよ、ぷんぷん」
「揉まれると大きくなるって聞きますけどね~」

 ニタニタ笑われてしまった。

「じゃあ、この2曲に合わせて踊る練習をしたいのですけど、良い?」
「ええ、こちらは大丈夫ですけど、先程も踊られてたのですよね? お体は大丈夫ですか?」

 私は自分の無い胸をパシッと叩いて言った。

「これでもわたくし、少し成長しましたのよ? わかる? 剣のお稽古やダンスもやったりして少し体が丈夫になってきてるの。前よりも倒れる回数も少なくなったのですよ?」

 ランは値踏みするように私を上から下まで舐めるように見回した。

「言われてみれば、少し大きくなった気がしますね? 相変わらず細いですが……でも、倒れなくなったではなくて倒れる回数が少なくなっただけなんですから、気をつける事は大事ですよ?」
「ええ、気をつけます、ありがとうラン、心配してくれて。でも今日は本当に体の調子もいいですし、大丈夫!」

 さっきレイジェス様に突っ込まれちゃったけど、ちゃんとヒールで治して貰ったし。

「分かりました。じゃあ一緒にやっちゃいましょう!」

 とランが言って、私も歌手のアリアたんモードになった。

「よ~っし!頑張るぅ!」

 私は着衣の呪文で本番用のベリーダンスの衣装に着替えた。マイクロビキニな上下、胸当ては小さくて、縁取りはダイヤ風のビーズが散りばめられている。下は上と同じダイヤ風のビーズが連なっている幅のあるベルトで、長いスリットが入っているスカートを押さえている。ベルトの両横には房の付いた紐がぶら下がっていて、ちょっと腰を振るとそれがゆらゆら揺れる。色は帝王紫色にした。鮮やかで綺麗。
三女のふわふわ女子担当ルンと四女のボーイッシュ担当のレンに「小っちゃいくせに、過激な格好だなぁ!」ってからかわれた。

「小っちゃいから、こんな過激な格好が出来るんですよ。大人だったら絶対しないと思うもん!」

 そう言うと次女のリンに鼻で笑われた。フフンて……。
まぁ、リンは18歳だし? もう大人だもんね~。
ランがパンパンと手を叩いて妹達を黙らせた。

「あなた達、分かってるのかしら? 姫様をからかわないようにね? スポンサーだって事を忘れないように?」

 笑顔で妹達を睨んだりして器用だなって思った。
ランがさっきのようにタクトを取り、また皆が楽器を弾き始めて、私はその音を聞いて大広間の隅にある鏡を見ながら踊る。自分の動きがきちんと滑らかになっているか鏡を見て確認している。何回も繰り返して体を動かす順番を覚えた。曲調的にはやっぱり最初はテンポのゆっくりな曲からやった方が良いと思うので、最初は【夕闇に嗤う偽りの王女】で、次に【無我の瞬きと悦楽の乱舞】にしようと思った。
【夕闇に嗤う偽りの王女】では大きなスカーフを使おうかと思う。色々模索しながら無心で踊っていたら音楽隊の皆に呆れられた。

「疲れちゃったよ~休憩しましょうよ? 姫様」
「あっ、ごめんなさい、つい集中し過ぎて……」

 休憩して一息付いていると次女のリンがやって来た。彼女は音楽隊で言うならば……クール担当だ。薄い紺色の髪を胸元まで伸ばしていて、瞳は金色。

「この踊りをアルフォード公爵様に……本当に見せるの?」

 リンは訝しげに聞いて来た。

「どうして? そんな事を聞くの?」
「いや……幼女趣味の男達なら喜ぶだろうけど、アルフォード公爵様は違うんでしょ? こんな踊り見せて引かないかな? って思ってさ?」

 う~ん、私はリンに言われて考えた。
そうだよ。普通の大人なら子供がこんな格好で踊ったら引くよね? でもレイジェス様が【幼女趣味じゃない】って所は正直言って微妙過ぎて分からない。
【君だから好きなんだ】と言ってはくれるし、私が男の子でも構わず愛してくれちゃうけど、北の飛び地領地に行った時に会った、見る専門幼女趣味のローラントにちょこっと色々言われただけで、少し沈む所か撃沈してた。【罪悪感が有る】って。

 それに、さっきの自我がぶっ飛んでたレイジェス様が、私の菊にあれを無理矢理挿入れようとした事を振り返ると……レイジェス様は幼女趣味……?
と言えなくもない様な……。
私は頭を左右に力強く振った。
違う違う! 絶対違うもん! レイジェス様は私に魅了されてるだけ!
幼女趣味なんかじゃ無い!
どっちにしろレイジェス様が幼女趣味なのか、違うのかなんて、私が成長して大人にならないと分からない。
大人になった私を愛せなかったら幼女趣味だし、大人になっても変らず愛してくれれば普通の男だって分かる。
私はリンの質問に苦笑いで答えてから、また踊りの練習をした。
音楽隊の皆は私の練習に付き合ってくれた。
その中でふわふわ女子キャラ担当のルンがポーズを決めた時の笑顔が物足りないと言って来た。

「じゃあ、どうすればいいの?」
「やっぱ、こういう舞踊なわけですから、色っぽく? 妖しげに微笑むのがいいかな~って思うんですよね、ルンは。姫様の笑顔は爽やか過ぎるんですよぉ~」

 ルンが指を絡めながらもじもじ話す。
ふむ、私はちょっと考えて【妖艶な笑み】をしてみた。
四女のレンが私の笑みを見て腹を抱えて笑う。

「その顔は【妖艶な笑み】って言うよりさぁ、大好物を食べて美味しい!って顔だぜ?」
「むぅ、じゃあ、こんな感じですか?」

 もう一度笑ってみる。
レンはまた私の顔を見て笑う。

「その顔はぁ、うちの犬の寝顔だな! 犬も寝てる時笑うんだぜ?」

 私の【妖艶な微笑み】が犬の寝顔と一緒にされるとは……失礼なっ!
鏡で自分の顔を見たら本当に犬の寝顔みたいな笑顔だった。
その様子をクールキャラ担当の次女、リンが涙目で口を押さえて笑う。
もう、この姉妹さんたち失礼過ぎる。

「じゃあ、これはどう?」

 もう一度笑ってみる。今度はランがプッと噴き出した。

「もう、ランまで笑うんだから~」
「す、すいません、何だか笑顔って言うよりキス待ち顔の様でしたよ?」

 そうですか、お子ちゃまのキス待ち顔は笑えちゃうんですね……しょぼん。

「あ、でも、ほら、エロい傾向が出て来たって事ですよ! 頑張ってエロ笑顔の練習をしましょう!」

 一応フォローしてくれる辺りランは優しい。
エロい傾向かぁ……、そうだよ、妖艶ってことはエロくないといかん。
エッチぃ事を考えれば【妖艶な微笑み】になるんじゃ?
私はレイジェス様のち〇こを想像してみた。
全然エロい気持ちになって来ない。あれだけ想像するんじゃダメだって事か。
じゃあ、レイジェス様に色々されてる自分を想像してみる。
あ、お股がじゅんとしちゃったよ……。

「いいんじゃん? その顔、そのまま笑ってみて?」

 とレンが言うのでそのまま笑った。

「あら! 良いじゃないですかっ!」

 ランが褒めてくれた。レンも頷いている。

「今の微笑みを忘れないようにね」

 クール担当のリンが言った。
私は微笑みも覚えて準備万端状態になった。今の時刻は夕の4の刻。
まだまだ夜になるには時間が掛かる。
私は音楽隊の皆に夜の8の刻に此処に集合してねと言って部屋に戻った。




部屋に戻るとレイジェス様とユリウス様が仲良くお話をしていた。

「お帰りなさい」

 そうユリウス様に言われて何だか違和感を感じながらも

「ただいま戻りました」

 と返事をした。
レイジェス様も普通に「お帰り」と言う。どういう事だ?
あれだけユリウス様に心を動かすなよ? と言って焼餅を焼いていた人が、婚約者に告白してきた人物を部屋に入れるとは……。
和やかに二人でリバーシをやり出した。レイジェス様のにこやかな顔を見るとやっぱりユリウス様の事を信用して、大事なお友達だと思ってるんだな~って再認識させられた。

 まぁ、レイジェス様が大事に思う人は私だって大事にしますよ? ユリウス様には貞操の危機から助けて貰った事もあるし、ある意味恩人だしね。
ユリウス様は応接セットの個人椅子に座り、レイジェス様は長椅子に座ってリバーシをやっていた。私がレイジェス様の隣に行って座ると護衛の二人も後ろに立った。
ハンスは丸椅子が自分専用状態になっているので、丸椅子を私の隣に持って来て座り、じっと私を見つめてデッサンする。
私はリバーシの盤面を見ていた。

「しまった……!」

 レイジェス様が駒の置く位置を失敗してしまった様だ。
ユリウス様が余裕の態度で言った。

「今置いた駒を別の場所へ置き直しても良いですよ?」

 レイジェス様のこめかみがピクピクしている。

「それは私が別の所に置いても勝てるという自信が有るからか?」

 ユリウス様はニヤリと笑う。

「ええ、もちろんですよ? 師長様には以前も勝っていますしね? やはり癖という物は中々抜けない様だ、攻めが安易で一般的なんですよ。もっと奇襲的なやり方なら防げませんがね」

 レイジェス様を見ると滅茶苦茶悔しそうな顔をしていた。
でも、その顔は負かされているというのに、どことなく喜んでいる様にも見える。

「私は一度自分がやった事を翻そうとは思わない、このままで良い」

 そう言って暫くリバーシを続けた後、レイジェス様はまたユリウス様に負けてしまった。しょんぼりしてるかな? 思ったけど、レイジェス様の顔を見ると全然しょんぼりしてないし、むしろ爽やかな顔をしている。

「では師長様、私が勝ったので今夜のイベントには私も参加させて頂きますよ?」

 【今夜のイベント】? 何かあったっけ? レイジェス様を見ると目を泳がせている。私は嫌な予感がした。

「も、もしかして……今夜のイベントって……」

 ユリウス様が満面の笑みで言った。

「リバーシに勝ったら、今夜アリア様が舞う【ティオキア舞踊】を見せて頂く約束をしたのですよ」

 私はぎろりとレイジェス様を睨んだ。

「レイジェス様ぁ~? どういう事でしょうか? はしたないカッコとか、人に見せられない! とか言ってた癖に、良いのですか?」
「し、仕方ないだろう、勝負に負けてしまったんだから……」
「さっき駒の置きなおしをしていれば勝っていたかも知れないのに」
「男に二言は無い! 次は勝つ!」

 え、まだ勝負する気でいるんですか? もし、賭けに私自身を賭けられたらどうする気なのかしら? と少々不安になった。さすがに断ってくれるよね、そんなのは。

「……? あの、はしたない格好と言うのは?」

 ユリウス様が不思議そうな顔をする。

「え? もしかしてユリウス様はティオキア舞踊を知らないのですか?」
「滅亡した国の名前として知ってはいますが、その舞踊は聞いた事も見た事も有りませんね。舞踊と師長様に聞いたので、普通の踊りだと思っていましたが……違うのですか?」

 ユリウス様は知らないで賭けてたのかぁ。
その事を知ってしまうと、こちらの方が申し訳なく感じて来てしまった。
だって、8歳児の無いぺたなおっぱいと、すとんとした寸胴な体であの衣装を着て踊るのを見るなんて……幼女趣味じゃなきゃ退屈でしょう?
レイジェス様だと喜ぶと思ったから特に考えもせず踊る練習をしてたけど……、他の人が見ると考えるとねぇ?
あれ? でも、良く考えたら私に愛の告白をして来たんだから、ユリウス様も幼女趣味? いや、魅了されてるだけか。魅了されてたら少しは楽しめるのかな?
助けて貰ったし、恩人でもあるからちょっと位見られても、まぁいいかぁ。
別に裸を見せるわけでもないしね。水着を着てるとでも思えばいいんだ。

「まぁ……見れば分かる」

 レイジェス様がユリウス様にそう言って、私を抱き上げ自分の膝に乗せた。
その後、二人はリバーシの戦略について語ったり、魔道具の通信機器について語ったりしていた。そう言えば、前にもコモン様と魔道具の通信機器についてお話し合いしてた様な? と思い出す。男の人ってそういう機器に興味を持つのかしらね?
と思いつつ内容が難しくて分からないけど話を聞いていた。
夕食を三人で取った後、私は音楽隊の皆とリハーサルをする為に、少し早めに大広間に行った。そこには音楽隊の他にも何故かセバスが居た。

「ど、どうしてセバスが?」

 私が動揺していると音楽隊の長女で姉御キャラ担当のランが言った。

「やっぱ、照明が無くちゃステージとして成り立たないでしょ? 私達は楽器を演奏しているから照明を弄れないし、エドアルドさんに相談したらこの城の家令のセバスに相談して下さいって言われて、セバスさんに相談したら照明を担当してくれる事になってね」

 私は自分の耳を疑った。え? セバスが照明担当?

「ええ、私が照明を担当する事になりました。よろしくお願い致しますね、姫様」

私はめまいがしてその場にしゃがんだ。そしてそのまま床に両手を付いた。
何がどうしてこうなった?
私の予定ではティオキア舞踊はレイジェス様にだけ見せるつもりで練習してた。
あんな恥ずかしい、はしたない格好ですもん、他の人に見せるなんて想定外だ。
なのに観客はどんどん増えて行ってる。
結局、この大広間に来る人物はレイジェス様、ユリウス様、私の護衛二人とハンス、それに照明担当のセバスの六名になった……。
私は泣きそうな目でセバスを見上げた。セバスは私の表情を見て動揺している。

「ど、どうしたんですっ!? 姫様?」
「何でこんな事やり始めようと思ったんだろ~? って自分に突っ込みを入れていた所です」

 セバスが目をぱちぱちさせる。

「意味がまったく分かりませんが?」

 セバスは私を見下ろして、ずり落ちそうになった眼鏡のブリッジを押さえた。

「……エロい子だと思っても、嫌いにならないでね?」

私が涙目で言うとセバスはフッと笑って

「なるわけないでしょう?」

 と言った。
そしてリモコンで照明の調節を始めた。
リハーサルは神呪でスカート付きのレオタードに着替えてやった。
そろそろ時間なので、私は神呪でティオキア舞踊の衣装に着替えた。夕方に着た紫の衣装だ。
セバスがいるから恥ずかしいので、一曲目に使うスカーフをかなり大きめの物にしてそれで体をくるんでいた。薄い素材のスカーフなのでくるんでも薄っすら自分のお腹や背中の肌色が見える。

 私は大広間の奥にある5センチほど高くなっている床の中心にスカーフに身を包んだまま跪いた。この体勢で観客を待つ。
この5センチ程の段は催し物をする時にここに立つように出来ているらしい。音楽隊も私のずっと後ろにいる。踊りやすい様にちょっと離れて真ん中にスペースを作ってくれている。
護衛のアーリンが食堂にレイジェス様とユリウス様を呼びに行って連れてきた。
大広間自体の明かりを少し暗めに設定してあり、ステージで跪いている私にスポットライトが当てられている。目の前には二つの空席の椅子。

 そこに私から見て左にレイジェス様が右にはユリウス様が座る。ハンスは左の壁際にある個人椅子に座り私を観察している。護衛の二人はレイジェス様の後ろに立った。セバスは右の壁際にいる。椅子に座ってリモコンで照明を弄っている。
パッと全部の明かりが消え……徐々に私の姿を照明が浮き上がらせる。
跪いてスカーフにその身を包んでいた私はゆっくりと両腕を広げてスカーフに風を膨らませた。それと同時に音楽が始まる。

 ユリウス様が両腕を広げた私の格好を見て動揺していた。
一瞬固まって喜んだかと思うと怒りの表情になったり、うっとりした顔になったり複雑過ぎて何を考えてるか分かんないや。
ユリウス様に比べてレイジェス様は分かり易かった。最初はむすっとしてたけど、曲と私の踊りが進むにつれ、楽しんでいる様だった。
レイジェス様が喜ぶと私も嬉しい。

 しなやかに腕を伸ばし、足をたんたんと踏み込み上半身を動かさないで腰を振る。
激しく腰を振ると、ビーズダイヤベルトの両脇に付いた紐の房が、震えて大きく揺れる。曲の最後にスカーフでふわっと身を包み妖艶に微笑んで終了。
私、ちゃんと妖艶に微笑んでいたのかな? 鏡が目の前にないので分からないけど、目の前の二人の観客の反応を見るに、ちゃんと出来ていた様だ。

 二曲目はスカーフを取って踊り始めた。最初から腰を前後に振りながら片足を重心にして周る。腕を上に上げて絡めるようにして自分の体を撫でる。
ここはランがそうすると色っぽいんじゃない? ってアドバイスしてくれた所だ。
レイジェス様がこちらを見てむすっとしているので微笑んでおいた。
すると少しどぎまぎしていた様だ。

 視線を感じてそちらを向くとセバスだった。セバスは私と目が合うとその瞳を一瞬逸らした。またすぐこちらを向いたので私はセバスにも微笑んだ。
髪をぐるっと振り回すとユリウス様がじ~っと私を見つめている。
食い入る様に見つめられるのでちょっと怖いが、楽しんで貰えてる様で何よりです。
腕を水平にして腰を左右に振って、音楽がどんどん極まると私の腰の動きも激しくなって鼓動がどきどきして苦しくなって来た。
あと、もうちょっとで曲が終わる、最後まできちんとやり切りたい。
ダダダダダダカン! カン!と打楽器で音楽が終了して、私は腰を斜めにしたまま動きを止めた。明るいスポットライトが私に当たり、私は目の前の観客二人に深々とお辞儀をした。
セバスがすぐ私に駆け寄ってきた。

「鼓動は大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫、ちょっと苦しかったけど、大人しくしてればすぐ良くなるわ?」
「セバス、これをリアに」

 レイジェス様が空間収納から鼓動がゆっくりになる薬を出してセバスに渡した。

「念のためにお飲み下さい」
「……ありがとう」

 あまりにセバスが心配そうに私を見るから、私はその薬を飲んだ。
そしてレイジェス様の前に行く。

「どうでした?」

 首を傾げて聞いたらすごい不機嫌な顔をしていた。

「けしからん! その格好もだ」

 レイジェス様は私の腕を引っ張って自分の膝の上に抱き上げた。自分のローブの袖で私の体を隠そうとしたけど、両脇に足の付け根までスリットが入ったスカートだったので膝に抱き上げられるとレイジェス様を大股で跨ぐ格好になって生足がもろ見えだし、横から見たらマイクロミニなショーツも丸見えだと思うんだけどなぁ……。ユリウス様を見ると鼻血がたら~っと流れてた。本人気付いてないっぽいので神呪でハンカチを出して渡した。
しかし、この大股でレイジェス様の膝上に乗っかるという姿勢は頂けない……。
レイジェス様の橘が大きくなって私に当たっていたからだ。
私は解除の神呪で元のドレス姿に戻った。

「え? もう元に戻したのか?」
「けしからん! て怒ってたじゃないですか、だから元に戻したのに……」
「そ、そのドレスの方が良いですよ、似合っています」

 ユリウス様が鼻をハンカチで押さえて言った。

「踊りも……素晴らしかったですよ。ティオキア舞踊と言うのは初めてでしたが……美しい踊りなのですね」

 ユリウス様が褒めてくれて嬉しかった。

「いや、あの踊りはもっとカクカクしていてそんなに美しくはない。リアがアレンジして美しくしたのだ」
「ほぅ……」

 ユリウス様が感心した顔で私を見たので、私はつい照れてしまった。

「いえ、あの、動きが滑らかな方が、綺麗に見えるかなって思って……」
「貴方には芸術の才能が有るようですね、歌も踊りもピレーネも全て素晴らしい」
「そんなに褒めても何も出ないですよ?」

 私はユリウス様にそう言ってレイジェス様にぎゅっと抱きついた。
恥ずかしいから、レイジェス様に自分を連れて部屋に戻って欲しくてそうした。
レイジェス様は私の気持ちが分かった様で、私を抱き上げて席を立った。

「では、私は部屋に戻って休む、お前はどうするんだ?」
「私は食堂でお茶でも頂いてから休みます。何だか喉が渇いてしまって」
「そうか、では先に失礼する」

 レイジェス様は大広間を出た。その後を護衛の二人とハンスが追って来る。

「ああ、アラン、悪いがセバスに部屋に茶の用意をするように言ってくれないか」
「じゃ、大広間に戻って、それから部屋に行きますよ」

 レイジェス様はアランに頷いて、アランは大広間に戻った。
私達はそのまま秋桜の間へ戻った。
部屋に着くとレイジェス様は寝室の方の応接セットの長椅子に座り、私を横に置いた。いつもならそのまま抱きかかえてるのに。
ハンスは壁際に寄せてあった自分の丸椅子を持って来て私の隣に置いてそこへ座る。
そしてまたスケッチを始めた。アーリンは私の後ろで立っている。

「あ、忘れてた。君達二人はもう下がっていいぞ。あとは茶を飲んで休むだけだからな」

 二人はお辞儀して部屋から出て行った。
レイジェス様は暫く何か考え事をしていた様だったけど、ぽつりと私に呟いた。

「……ユリウスが言っていたが、君には芸術の才能が本当に有ると私も思う」

 私はレイジェス様を見た。

「今日のリアの踊りはとても美しかった……あれを私一人が独り占めしていいのか? もっと他の者達にも見せるべきなのではないかと……思った。あれは芸術だ」

 私はそれを聞いて目が点になった。
なんであんな破廉恥な格好で踊る舞踊を他人様に見せなきゃいけないのか?
元はと言えば、レイジェス様が喜ぶかな? って思って始めた事なのに、観客は勝手に増えてるし。これ以上の人達に見られたく無いんですが?

「……えっとね? レイジェス様? 私に才能が有るとか無いとかはどうでも良いんです。私があれをやろうと思ったのは、レイジェス様が喜んでくれるかな? って思っただけで、他人様に見せようと思ったわけじゃないの。そこの所を分かって欲しいのですが?」

 ちらりとレイジェス様を見ると感極まった顔をされてしまった。

「独り占めしてもいいのだな?」

 いちいち確認しなくてもいいのに。

「当たり前でしょ? 私は貴方の物なんだから」

 ぎゅうううときつく抱きしめられているとコンコンとドアをノックされたので私はとうぞ入って、と声を掛けた。
アランが先に顔を見せるとレイジェス様はお前は下がれと手を振った。
次に、セバスがワゴンを押しながら部屋に入って来て、いつもの様に私にくっ付いているレイジェス様を見てこめかみを押さえた。
ワゴンに乗せてあるお茶セットでお茶の準備をする。

「あれ? ブラウンティではないのですか?」

 私はセバスに聞いた。

「旦那様はブラウンティは御止めになったのですよ」
「ええ? あんなに好きだったのに? どうして?」

 レイジェス様に聞くと理由はどうでもいいだろう? と誤魔化された。
そう言えばこの前、王都に行った時もお屋敷で紅茶にしてくれって言っていた様な。
セバスはレイジェス様のお茶に小さくカットしてあるトウミを2切れ入れて差し出した。私のにも3切れ入れて貰った。
紅茶には砂糖を入れていないから、トウミの甘みがお茶を程よい甘さにする。
それを知ったのはエリザベス様も来た、あの3人でのお茶会だった。

「あ、忘れていた」

 レイジェス様はそう言うと私と自分をアクアウォッシュした。

「え?」
「今日は風呂に入るのが面倒だったからだ。気にするな」
「レイジェス様が面倒なら、わたくし一人でお風呂に行くのに?」

 そう言うと苦虫を噛み潰した様な顔をされてしまった。
セバスはお茶を入れ終わると部屋を出て行った。
まだ仕事が残っているらしい、やらなければいけない事が沢山あると言っていた。
私はお茶を飲み終えると、お花を摘みに行った。
アランが言うには毎日少しずつ拡張しないと折角拡張しても元に戻ってしまうと言われたからだ。レイジェス様が致すか致さないかは関係ない。
私が今までして来た事が無駄にならないように続けるだけだ。

 と言っても花畑でするのは自分の中を空にするだけ。
もう大分慣れたので、ささっと手際良く時間もあまり掛からないで出来るようになった。自分の中を空にした後、滝の流れる泉で手を洗った後、歯磨きをした。
歯ブラシは持ちやすい形に成型してある木に豚毛を植毛してある物を使っている。
部屋に戻るとレイジェス様は寝台でもうぐっすり眠っていた。

 なのでどうしようか? と思いまた花摘みに花畑へ戻った。
隣で一人で菊を弄っているとレイジェス様が起きちゃいそうだし、だから自分でやるしかないな~と花畑へ戻って、空間収納を漁る。

『公爵様には内緒だぞ?』

 と言ってアランが私に直接くれた物がある。
菊を拡張するために菊に入れる物だけど、そこそこ大きくて卑猥な形をしている物達。これ、今だったら入るんじゃない? 最初は無理だったけど……。
プラグと呼ばれるそれは、入れたら暫くそのままにして過ごすとアランが教えてくれた。これを入れると拡がり易いって……。

 私は空間収納からそれが入っている袋を取り出して中を確認した。幾つかのサイズのプラグとそれに嵌める薄い使い捨てのゴムカバーが箱入りで入っていた。
プラグは薄いピンク色で、上の方の体の中に入る部分は、先が少し丸まった、スペード状の形をしていて、下の方は丸い穴が開いた持ち手がある。私は幾つかのプラグの中から直径が3センチ位の少し大きいかな? と思う位の物を取り出して、ゴムカバーを掛けた。

 ショーツを脱いで、空間収納からゼリーを取り出して自分の菊とカバーを掛けたプラグに塗って、深呼吸をして押し込む。
立ったままだとやりづらくて花畑の蓋に座った。両脚を上げてゆっくり押し込むとずぶずぶとプラグは私の中に入って行った。
根元が太くてそこが中々入らない。無理矢理押し込むとちょっと痛かった。

「ヒール!」

 痛かったので切れたのかも? と思い一応自分でヒールした。
プラグが全部入ったのには、自分でも驚いた。
異物感がかなり気になるけど、慣れれば大丈夫だよね?
私は出した道具を全部空間収納にしまって、手を洗って寝台に戻った。
レイジェス様が寝ているので、起こさないようにそっと寝台に入った。
最初は異物感が凄いあって寝れないと思ったけど、慣れたら割と平気だった。
これだけ大きい物が入っちゃうんだから、レイジェス様のも入っちゃうんじゃない? 人体って不思議~と呑気に考えながら眠った。

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