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第四章
15 閑話 執事の独り言 セバス視点
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私はメヌットの三匹の子豚亭の裏で旦那様達と合流したが、姫様のその姿に驚きを隠せなかった。首には黒い金属の首輪を付けられ、切られて短くはなっていたが鎖の端が見えた。両足首にも黒い金属の足輪がされていて右足の方にはやはり切られてはいたが太い鎖の切れ端が残っていた。
寝巻きの様な薄い透けたドレスを着、ぱっと見て痩せたのが分かった。こんな痛々しい姿にするなど、本当にユリウス様が許せなくて、私は久しぶりに人を憎んだ気がする。
しかし、男子の姿だったという事もあり、姫様はぎりぎりその身を守る事が出来たと言っていた。自分の誇りを守ったその姿は、私にはとても眩しく見えた。
あの神聖大国と言われるワイアット皇国の皇王でさえ、姫様を穢す事は出来なかった。その事に私はほっとした。
だがそれはほんのつかの間の安堵だった。
旦那様はやり過ぎたのだ。あれだけ私が手加減する様に言ったのに、本当に焼け野原の様にしてしまうなど、怒り過ぎだろう。
その件で姫様はガブリエル王に王宮に呼ばれた。
召集命令で断るわけにもいかず、宮殿に行くと会議室には姫様の他に旦那様とユリウス様も来た。その場にはもちろんガブリエル王もいた。
私は姫様を奪還した時の姿が忘れられなくて、あんな酷い姿にしたユリウス様を憎々しく思った。なのに会議の流れは姫様のお子様がユリウス様の許婚となるという悪夢の様な結果になってしまった。
私の納得が行かなくても、国の命令には逆らえない。
皆が書類にサインをし事態はこれをもって終了となった。
しかし、本当にユリウス様は姫様を諦めたのか? グレーロック城であれだけ私達を騙して来た姿を見ているので、俄かには信じ難い。
そして暫く日が経ち、流星祭の前日にユリウス様が屋敷に現れた。まだ慣れていない、新しく来たフットマンのローレンスが対応したせいか、ローレンスはユリウス様を屋敷に通してしまった。
不躾にも私に茶を出せと要求する。権力がある者はどうしてこうなのか?
そして姫様が返して欲しがっていた絵をローレンスに渡したと言う。私はそれを玄関に置きっ放しにしていたローレンスを叱りつけ、急いでその絵を回収した。
中身はどんなものか姫様から少し聞いた。そんな物を誰が見るかも分からない玄関に置いておく事など出来ない。
私が玄関に行くとローレンスも付いて来た。
「次からはユリウス様が来たらすぐにお通しせず、私に声を掛けて下さい」
「す、すいませんでした」
「分かればいいですよ」
私はその絵を持って姫様の部屋に行った。ローレンスには食堂に戻るように言ってある。私はその絵につい興味を持ってしまい、包んである紺の布を取った。
そこには乳白色の肌に赤味を帯びさせ、蕩けるような顔でユリウス様の一物を蜜花に受け入れている姫様の姿が描かれていた。
「なるほど、これは……姫様が回収したがるはずだ……」
私は硬くなった自分の下半身を鎮める為に深呼吸をした。
ふぅ。
そして元通りに布を包みなおした。姫様の机にそれを置いて私は食堂に向かった。
食堂へ行くとユリウス様に話があると言われ食堂の大扉から直接外に連れ出された。
「話とは何ですか?」
私は胡散臭い者を見る目つきでユリウス様を見た。
「まぁ、そう睨むな。お前も庇護者候補なんだろう?」
「……なっ!」
「やはりその反応を見ると私の読みは当たったか」
「その件は公表しないで下さいよ?」
ユリウス様は不思議そうな顔をして、私をまじまじと見つめた。
「何故だ? お前だって、アリア様を求めて止まないだろうに……」
「私は貴方とは違う。姫様の幸せを願っている。確かに誘惑に負けそうになる時もあるが……姫様の幸せは旦那様と共にある」
「……お前の様な愛し方もあるのだな……もう少し前にお前と話をしたかった」
ユリウス様は神妙な顔をして私を見るが、私には彼が何を考えているか分からなかった。
「もう、本当に姫様の事は諦めたのですね……?」
念を押す様に聞いたが帰ってきたのは吹っ切れた様な爽やかな笑顔だった。
「ああ、彼女にはもう先約がいるからな。私はアリア様の子を愛する事に決めた」
「何年後になるか分からないのに、貴方も気の長い人ですね?」
ユリウス様はフッと笑って食堂に戻っていった。私もそれに続いた。
ユリウス様が帰られた後、私は自分の執務室に行った。そしてお茶を飲みながら人員配置を考えていた。オーティスが北の領地に行ってしまった事で、こちらは人手不足だ。新しい人員はまだ補充されない。エドアルドに通信で聞いた所に寄るとまだ指導中で、もう暫く待って欲しいと言われた。
取りあえず、今居るローレンスに頑張って貰うしか無いだろう。あと、姫様の護衛をもう一人探しているが中々見つからない。女が一番良いのだが女の護衛がいない。
まぁ、男の護衛は沢山いるのだが男色家の護衛が中々来ない。
どうしたものか……。新しい護衛がくるまで臨時でリリーに護衛をやらせてはいるが護衛も側仕えもでは仕事が有り過ぎる。早く次の護衛を決めなくては……。
私が悩んでいると執務室をノックする音が聞こえた。
誰だ?
「どなたです?」
「諜報のルイス=オレットです、少しお話しがあります」
「どうぞ入って下さい?」
ルイス? なんだ? 彼が私の執務室に来るのは珍しい。
ドアを開けて入って来たルイスはそが色のふわふわした髪を後ろでちょこんと縛っていた。紺碧の瞳がこちらを見つめる。
見た目だけは美少女だが、騙されてはいけない。ルイスは男だ。
「どうしました?」
「姫様の護衛を探していると聞きましたが、まだ募集しておりますか?」
「え? もしかして、ルイス、貴方が?」
「あ、いいえ、私ではなくて私の弟なんですが……」
私は弟と言われ、ルイスと同じ背丈の美少女を想像してしまった。とても護衛向きでは無い。
「あ~、えっと、うちの弟は私よりでかいです。腕っ節も強いですが、今職を探してまして……ほら、【貴族落ち】だと信用が無くて雇って貰えないじゃないですか、あちこち面接を受けても弾かれてしまうんです」
「貴族学校は卒業したのですか?」
「ええ、今年の春卒業しました」
「ふむ……男色家なのですか?」
「たぶんそうだと思います」
「え、それ重要ですよ?」
「私からでは身内で聞きずらいです、セバスさんが面接で聞いて貰えますか?」
「ではそうしましょう。明日、面接にこれますかね?」
「今無職で家でぶらぶらしているので大丈夫と思います」
「じゃあ、明日何時がいいですか?」
「昼過ぎの、そうですね1の刻くらいで」
「じゃあ、それで弟さんに連絡お願いしますね」
「では失礼します」
ルイスはそう言って部屋から出て行った。
翌日、学習室で面接をするのに机をくっ付けて長テーブルを作った。そして面接官用の椅子を五人分置く。面接者側には、ルイスも弟が不安で見たいと言われ二つ椅子を用意した。何故面接官用にこんなに椅子の数があるかというと、今朝旦那様に護衛の者の面接があると言ったのが原因だ。仕事中にも関わらず旦那様とユリウス様までが面接に来た。この二人とあとはセレネ、私、姫様が面接官となる。
以前、ゼフィエルが居た時の面接の様にならなければ良いが……。
私は旦那様と姫様に話を聞いただけなので少ししか知らないが、面接者が暴れたと言っていた。
面接官が皆揃い椅子に座っていると、ルイスが失礼しますと言って入って来たが、後ろにいる男を見て誰もが驚いた。
ルイスは男の割りに小さく身長が169センチしか無いと言っていたが、弟は全く逆でかなり大きかった。2メートルを優に超えていると思う。旦那様よりも背が高いとは……。そして筋肉も隆々としていた。
姫様は筋肉質の男が苦手だが、大丈夫なのか? とちらりと見たら、大きさのせいか、珍しいペットでも見る様な、きらきらした瞳でルイスの弟を見ていた。
「初めまして、セドリック=オレットです、15歳です」
私以外の皆が彼の年齢を聞いて驚いていた。もっと年上に見えるのだ。20歳位に。
ルイスと並んで座っていると年上の彼氏と年下の彼女の様にしか見えない。
「では質問を致します、貴方は男色家ですか?」
私は質問した。暫く考えてからセドリックが答える。
「多分そうかも知れない。だって俺、兄さんが好きだから」
隣に座っていたルイスが驚愕した顔をで弟を見上げていた。
こんな答えをされたが、私は質問を続けた。
「ではルイスに性的に興奮するという事ですか?」
その質問にはセドリックは即答だった。
「毎日兄さんをおかずに抜いてます!」
爽やかな笑顔で言う。
ルイスが更に驚愕した顔で弟を見つめた。その肩はぷるぷる震えている。
確かこういった話題は姫様の大好物である。私が姫様を見ると、鼻息が荒くなってフンフン言いながら頬を紅潮させていた。
「ふむ、では、ルイスと体の関係があると言うことですか?」
「んなわけないでしょうがあああっ!!」
ルイスの叫びだった。
「兄さんは俺にやらせてくれない。ケチだ! こんなに好きなのに!」
「ふざけんなっ! お前本当に殺すぞ! 僕は男でお前も男で兄弟だろうがっ!」
「俺知ってるよ? 俺は母さんの連れ子だから、兄さんとは血が繋がってない」
セドリックがそう言うとルイスは放心した様に固まっていた。
「……もしかして、兄さん……知らなかったの?」
「え? 僕とお前……え? 兄弟じゃ……無かったのか?……」
「……うん」
ルイスはボッ!と顔を赤くして学習室を走って出て行った。
「兄さん!」
セドリックはルイスの後を追いかけて学習室から出て行ってしまった。
私達面接官はここまでを、まるで昼のメロドラマの様に堪能させて貰った。
皆ルイスとセドリックが出て行った事を露ほども気にしていない。
「で、どうします?」
私が聞くと、私を含めて全員一致だった。
「「「「合格でしょう!」」」」
私が厨房で夕食の後片付けで食器洗いを手伝っているとサーシャがやって来た。
「セバスさんがそんな事、やらなくていいですよ! ローレンスは何やってんですか! まったくもう!」
「彼には学習室を片付けて貰っているし、掃除もね」
「あとで掃除チェックしてやらないとですね」
「あ、そうそう、今日サーシャの好きそうな話が……」
と言いかけて止めた。家令で執事とも有ろう者が、ルイスの噂話などするものでは無いと、もう一人の良心的な私が囁いた。
「あ、詳しくは姫様の方にお聞きくださいませ」
「も~中途半端だなぁ、セバスさんは……、気になっちゃうじゃないですか。とにかく皿洗いは代わりますんで、休憩して下さい」
料理長のエンリケがお湯をくれた。お茶でも作って飲んでくれという意味らしい。
「ありがとう、エンリケ」
「いえいえ」
私は厨房室の脇にある小さな休憩室に入りお茶を作って飲んだ。小さな丸テーブルが有り、そこにカップを乗せる。
ふぅ~今日も一日やっと終わったな。明日は流星祭だ。お屋敷にいる事が出来ない分、ローレンスには頑張ってもらわないと……。
しかし、護衛が決まって良かった。姫様にも興味がないし、とてもいい物件の様に思えた。
「セバスさ~ん!」
ん? 休憩に入ったと思ったら何かあったのか? 私は休憩室から出て、リリーの所に行こうとした。
「あ、セバスさん、セレネさんも呼んでましたよ」
とサーシャが言う。
まったく、私の体は一つしかないと言うのに……あっ! こういう時こそだ!
私は呪文を唱えた。
私は分裂して三人になった。
「セバス二号はリリーの所へ、セバス三号はセレネの所へ、そして私は休憩する! さぁ行け!」
そう言うと、分身セバス二号と三号は散って行った。
かなり効率的な仕事のやり方を私は覚えた。
寝巻きの様な薄い透けたドレスを着、ぱっと見て痩せたのが分かった。こんな痛々しい姿にするなど、本当にユリウス様が許せなくて、私は久しぶりに人を憎んだ気がする。
しかし、男子の姿だったという事もあり、姫様はぎりぎりその身を守る事が出来たと言っていた。自分の誇りを守ったその姿は、私にはとても眩しく見えた。
あの神聖大国と言われるワイアット皇国の皇王でさえ、姫様を穢す事は出来なかった。その事に私はほっとした。
だがそれはほんのつかの間の安堵だった。
旦那様はやり過ぎたのだ。あれだけ私が手加減する様に言ったのに、本当に焼け野原の様にしてしまうなど、怒り過ぎだろう。
その件で姫様はガブリエル王に王宮に呼ばれた。
召集命令で断るわけにもいかず、宮殿に行くと会議室には姫様の他に旦那様とユリウス様も来た。その場にはもちろんガブリエル王もいた。
私は姫様を奪還した時の姿が忘れられなくて、あんな酷い姿にしたユリウス様を憎々しく思った。なのに会議の流れは姫様のお子様がユリウス様の許婚となるという悪夢の様な結果になってしまった。
私の納得が行かなくても、国の命令には逆らえない。
皆が書類にサインをし事態はこれをもって終了となった。
しかし、本当にユリウス様は姫様を諦めたのか? グレーロック城であれだけ私達を騙して来た姿を見ているので、俄かには信じ難い。
そして暫く日が経ち、流星祭の前日にユリウス様が屋敷に現れた。まだ慣れていない、新しく来たフットマンのローレンスが対応したせいか、ローレンスはユリウス様を屋敷に通してしまった。
不躾にも私に茶を出せと要求する。権力がある者はどうしてこうなのか?
そして姫様が返して欲しがっていた絵をローレンスに渡したと言う。私はそれを玄関に置きっ放しにしていたローレンスを叱りつけ、急いでその絵を回収した。
中身はどんなものか姫様から少し聞いた。そんな物を誰が見るかも分からない玄関に置いておく事など出来ない。
私が玄関に行くとローレンスも付いて来た。
「次からはユリウス様が来たらすぐにお通しせず、私に声を掛けて下さい」
「す、すいませんでした」
「分かればいいですよ」
私はその絵を持って姫様の部屋に行った。ローレンスには食堂に戻るように言ってある。私はその絵につい興味を持ってしまい、包んである紺の布を取った。
そこには乳白色の肌に赤味を帯びさせ、蕩けるような顔でユリウス様の一物を蜜花に受け入れている姫様の姿が描かれていた。
「なるほど、これは……姫様が回収したがるはずだ……」
私は硬くなった自分の下半身を鎮める為に深呼吸をした。
ふぅ。
そして元通りに布を包みなおした。姫様の机にそれを置いて私は食堂に向かった。
食堂へ行くとユリウス様に話があると言われ食堂の大扉から直接外に連れ出された。
「話とは何ですか?」
私は胡散臭い者を見る目つきでユリウス様を見た。
「まぁ、そう睨むな。お前も庇護者候補なんだろう?」
「……なっ!」
「やはりその反応を見ると私の読みは当たったか」
「その件は公表しないで下さいよ?」
ユリウス様は不思議そうな顔をして、私をまじまじと見つめた。
「何故だ? お前だって、アリア様を求めて止まないだろうに……」
「私は貴方とは違う。姫様の幸せを願っている。確かに誘惑に負けそうになる時もあるが……姫様の幸せは旦那様と共にある」
「……お前の様な愛し方もあるのだな……もう少し前にお前と話をしたかった」
ユリウス様は神妙な顔をして私を見るが、私には彼が何を考えているか分からなかった。
「もう、本当に姫様の事は諦めたのですね……?」
念を押す様に聞いたが帰ってきたのは吹っ切れた様な爽やかな笑顔だった。
「ああ、彼女にはもう先約がいるからな。私はアリア様の子を愛する事に決めた」
「何年後になるか分からないのに、貴方も気の長い人ですね?」
ユリウス様はフッと笑って食堂に戻っていった。私もそれに続いた。
ユリウス様が帰られた後、私は自分の執務室に行った。そしてお茶を飲みながら人員配置を考えていた。オーティスが北の領地に行ってしまった事で、こちらは人手不足だ。新しい人員はまだ補充されない。エドアルドに通信で聞いた所に寄るとまだ指導中で、もう暫く待って欲しいと言われた。
取りあえず、今居るローレンスに頑張って貰うしか無いだろう。あと、姫様の護衛をもう一人探しているが中々見つからない。女が一番良いのだが女の護衛がいない。
まぁ、男の護衛は沢山いるのだが男色家の護衛が中々来ない。
どうしたものか……。新しい護衛がくるまで臨時でリリーに護衛をやらせてはいるが護衛も側仕えもでは仕事が有り過ぎる。早く次の護衛を決めなくては……。
私が悩んでいると執務室をノックする音が聞こえた。
誰だ?
「どなたです?」
「諜報のルイス=オレットです、少しお話しがあります」
「どうぞ入って下さい?」
ルイス? なんだ? 彼が私の執務室に来るのは珍しい。
ドアを開けて入って来たルイスはそが色のふわふわした髪を後ろでちょこんと縛っていた。紺碧の瞳がこちらを見つめる。
見た目だけは美少女だが、騙されてはいけない。ルイスは男だ。
「どうしました?」
「姫様の護衛を探していると聞きましたが、まだ募集しておりますか?」
「え? もしかして、ルイス、貴方が?」
「あ、いいえ、私ではなくて私の弟なんですが……」
私は弟と言われ、ルイスと同じ背丈の美少女を想像してしまった。とても護衛向きでは無い。
「あ~、えっと、うちの弟は私よりでかいです。腕っ節も強いですが、今職を探してまして……ほら、【貴族落ち】だと信用が無くて雇って貰えないじゃないですか、あちこち面接を受けても弾かれてしまうんです」
「貴族学校は卒業したのですか?」
「ええ、今年の春卒業しました」
「ふむ……男色家なのですか?」
「たぶんそうだと思います」
「え、それ重要ですよ?」
「私からでは身内で聞きずらいです、セバスさんが面接で聞いて貰えますか?」
「ではそうしましょう。明日、面接にこれますかね?」
「今無職で家でぶらぶらしているので大丈夫と思います」
「じゃあ、明日何時がいいですか?」
「昼過ぎの、そうですね1の刻くらいで」
「じゃあ、それで弟さんに連絡お願いしますね」
「では失礼します」
ルイスはそう言って部屋から出て行った。
翌日、学習室で面接をするのに机をくっ付けて長テーブルを作った。そして面接官用の椅子を五人分置く。面接者側には、ルイスも弟が不安で見たいと言われ二つ椅子を用意した。何故面接官用にこんなに椅子の数があるかというと、今朝旦那様に護衛の者の面接があると言ったのが原因だ。仕事中にも関わらず旦那様とユリウス様までが面接に来た。この二人とあとはセレネ、私、姫様が面接官となる。
以前、ゼフィエルが居た時の面接の様にならなければ良いが……。
私は旦那様と姫様に話を聞いただけなので少ししか知らないが、面接者が暴れたと言っていた。
面接官が皆揃い椅子に座っていると、ルイスが失礼しますと言って入って来たが、後ろにいる男を見て誰もが驚いた。
ルイスは男の割りに小さく身長が169センチしか無いと言っていたが、弟は全く逆でかなり大きかった。2メートルを優に超えていると思う。旦那様よりも背が高いとは……。そして筋肉も隆々としていた。
姫様は筋肉質の男が苦手だが、大丈夫なのか? とちらりと見たら、大きさのせいか、珍しいペットでも見る様な、きらきらした瞳でルイスの弟を見ていた。
「初めまして、セドリック=オレットです、15歳です」
私以外の皆が彼の年齢を聞いて驚いていた。もっと年上に見えるのだ。20歳位に。
ルイスと並んで座っていると年上の彼氏と年下の彼女の様にしか見えない。
「では質問を致します、貴方は男色家ですか?」
私は質問した。暫く考えてからセドリックが答える。
「多分そうかも知れない。だって俺、兄さんが好きだから」
隣に座っていたルイスが驚愕した顔をで弟を見上げていた。
こんな答えをされたが、私は質問を続けた。
「ではルイスに性的に興奮するという事ですか?」
その質問にはセドリックは即答だった。
「毎日兄さんをおかずに抜いてます!」
爽やかな笑顔で言う。
ルイスが更に驚愕した顔で弟を見つめた。その肩はぷるぷる震えている。
確かこういった話題は姫様の大好物である。私が姫様を見ると、鼻息が荒くなってフンフン言いながら頬を紅潮させていた。
「ふむ、では、ルイスと体の関係があると言うことですか?」
「んなわけないでしょうがあああっ!!」
ルイスの叫びだった。
「兄さんは俺にやらせてくれない。ケチだ! こんなに好きなのに!」
「ふざけんなっ! お前本当に殺すぞ! 僕は男でお前も男で兄弟だろうがっ!」
「俺知ってるよ? 俺は母さんの連れ子だから、兄さんとは血が繋がってない」
セドリックがそう言うとルイスは放心した様に固まっていた。
「……もしかして、兄さん……知らなかったの?」
「え? 僕とお前……え? 兄弟じゃ……無かったのか?……」
「……うん」
ルイスはボッ!と顔を赤くして学習室を走って出て行った。
「兄さん!」
セドリックはルイスの後を追いかけて学習室から出て行ってしまった。
私達面接官はここまでを、まるで昼のメロドラマの様に堪能させて貰った。
皆ルイスとセドリックが出て行った事を露ほども気にしていない。
「で、どうします?」
私が聞くと、私を含めて全員一致だった。
「「「「合格でしょう!」」」」
私が厨房で夕食の後片付けで食器洗いを手伝っているとサーシャがやって来た。
「セバスさんがそんな事、やらなくていいですよ! ローレンスは何やってんですか! まったくもう!」
「彼には学習室を片付けて貰っているし、掃除もね」
「あとで掃除チェックしてやらないとですね」
「あ、そうそう、今日サーシャの好きそうな話が……」
と言いかけて止めた。家令で執事とも有ろう者が、ルイスの噂話などするものでは無いと、もう一人の良心的な私が囁いた。
「あ、詳しくは姫様の方にお聞きくださいませ」
「も~中途半端だなぁ、セバスさんは……、気になっちゃうじゃないですか。とにかく皿洗いは代わりますんで、休憩して下さい」
料理長のエンリケがお湯をくれた。お茶でも作って飲んでくれという意味らしい。
「ありがとう、エンリケ」
「いえいえ」
私は厨房室の脇にある小さな休憩室に入りお茶を作って飲んだ。小さな丸テーブルが有り、そこにカップを乗せる。
ふぅ~今日も一日やっと終わったな。明日は流星祭だ。お屋敷にいる事が出来ない分、ローレンスには頑張ってもらわないと……。
しかし、護衛が決まって良かった。姫様にも興味がないし、とてもいい物件の様に思えた。
「セバスさ~ん!」
ん? 休憩に入ったと思ったら何かあったのか? 私は休憩室から出て、リリーの所に行こうとした。
「あ、セバスさん、セレネさんも呼んでましたよ」
とサーシャが言う。
まったく、私の体は一つしかないと言うのに……あっ! こういう時こそだ!
私は呪文を唱えた。
私は分裂して三人になった。
「セバス二号はリリーの所へ、セバス三号はセレネの所へ、そして私は休憩する! さぁ行け!」
そう言うと、分身セバス二号と三号は散って行った。
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