魔術師長様はご機嫌ななめ

鷹月 檻

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第四章

24 【続々】紳士同盟 シエラ視点

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 わたくしは夕食を終え、お風呂にコモン様と入った後、コモン様に言いました。

「コモン様、わたくしお願いがありますの」
「ん? 何?」
「今日は久々に同盟会議をしたいと思います。閨番はベティとケィティでお願いします」
「シエラから同盟会議をしたいだなんて言い出したのは……初めてじゃないか!? メルヴィンと仲直りはしたのかい?」
「仲直りというか、お話はしました。資格が無いと言っていたので与えて上げようかと思います。以前、コモン様はわたくしにメルヴィンを愛人にしても良いと仰いましたよね? 今でも許して下さいますか?」
「……資格? 良く分からないけど、愛人は別に構わないよ? 最初からそのつもりでいたしね?」
「正式にしても宜しいのですか? 一応ベティに書類は用意して貰って、後はコモン様とメルヴィンのサインを頂くだけになっています」
「手際がいいな? 書類を出して?」

 コモン様は笑いながら言って、わたくしが書類を出すとささっとサインを書いてしまいました。

「ありがとうございます!」

 わたくしはコモン様の頬にちゅっと軽くキスをしました。

「じゃあ、メルヴィン、ベティ、ケィティを呼ぶか」

 わたくしは頷いて寝台の端に座りました。コモン様はインターホンで三人に寝室に来るように言いつけました。
暫くするとノックの音がし三人共寝室に入ってきました。

「あのぅ……これは、どういう事なんでしょうか?」

 何も知らないケィティが不安そうに言いました。不安になるのも分かります、旦那様の寝室に呼ばれたのですから、その身に危険が及ぶのではないかと心配しているんですよね? でも大丈夫、貴女にはただ見ていて貰うだけですから。

「ケィティ、心配しなくても大丈夫よ? そこの長椅子に一緒に座りましょう」

 ベティが長椅子にケィティと一緒に座りました。長椅子の向きは寝台の方向を向いています。ベティはそれだけ言うとエプロンのポケットから小さな文庫本を出して読み始めました。

「ベティさんっ!?」

 ケィティがいきなり文庫本を取り出して読み始めたベティに驚いています。

「旦那様、これはどういう事です?」

 メルヴィンがコモン様に問いかけました。

「いや、同盟会議を暫くやっていなかったからね? シエラからの要望だ。同盟会議をしたいとね……」
「私は昨日シエラ様に資格が無いと言いましたが……」
「メルヴィン、それならもう愛が無いと言った方が手っ取り早かったんじゃないか? 好きだの、愛してるだの言った割りに資格が無いとか抜かすなんて、単にシエラから逃げてるだけじゃないのか?」
「そんなつもりでは……」

 わたくしは寝台から降りました。そしてメルヴィンの前に立ちました。

「わたくしに跪きなさい、メルヴィン」
「……なっ!」

 ケィティの声が聞こえました。わたくしはそちらをちらりと見ます。
ケィティは驚いた様な顔をしてこちらを見ていますが、ベティは熱心に文庫本を読んでいました。
コモン様は私の少し後ろで腕を組んでこの成り行きを見ています。
メルヴィンは暫くしてわたくしに跪きました。
メルヴィンの心にはまだわたくしがいる様です。
わたくしはメルヴィンの頭を撫でて褒めました。

「良い子ね、メルヴィン。わたくし、貴方に資格を用意したわ」

 私はコモン様とわたくしのサイン済みの愛人契約書をメルヴィンに渡しました。

「今すぐサインして頂戴? 嫌なら……今すぐ、このお屋敷から出て行って?」
「ええっ!?」

 またケィティが声を上げました。ベティがケィティに肘鉄を食らわせました。

「……この書類は……」

 メルヴィンは書類を見て驚いています。
愛人契約とは、書類で交わされる身分の証明みたいな物です。書類にすると正式に結婚していなくても、その愛人の主がもし亡くなった場合、遺産など一部の資産が愛人の物になるなど、社会的な身分だけじゃなく金銭的にも保証されています。もちろん月のお手当て等の細かい事も書類の中に書いてあります。
わたくしはメルヴィンの顎を指先で持ち上げました。

「どうするの……? サインするのしないの? 出て行くの?」
「私が言っていた資格と言うのは……こういう意味じゃないのですが……」
「メルヴィン、貴方の気持ちなんか聞いていない。サインするのしないの? わたくしはそれを聞いているの。どうなの?」

 わたくしはメルヴィンの瞳を見つめたままキスをしました。
それを見ていたケィティがまた声を上げます。

「ぇええっ!?」

 ケィティ、……うるさい子ね。

「もう二度と言わないわ……貴方が好き、メルヴィン……」

 ケィティがまた何か言いそうになって、ベティがその口を押さえ込んでしまいました。

「……シエラ様と……離れたくない!! でも……」
「貴方のコンプレックスはわたくしへの愛情よりも勝るの? そんなもの抱え込んでいても幸せになれないし、気持ち良くも無い。メルヴィン、貴方に必要なのはそんなどうでもいい物なんかじゃない……わたくしよ? そんなつまらない物など捨てればいい、何の役にも立たないゴミよ。貴方が資格が無いと嘆くなら、わたくしが、【わたくしを愛する資格】を貴方に差しあげます」
「……」
「愛してるわ、メルヴィン……貴方はわたくしに愛されてる。これは資格にならないの?」

 わたくしはメルヴィンのおでこに、頬に唇に優しく何度もキスをしました。
メルヴィンは動揺しているのか震えていました。
わたくしは常にメルヴィンを使用人として扱っていました。
好きだとか愛してるなんて言ったのは、この前の馬車の帰りと今だけです。でも、メルヴィンが書類にサインをすれば、もうわたくしの心を隠さなくても良いのです。
メルヴィンを愛してると素直に言っても良いのです。
わたくしは何度もメルヴィンに優しいキスをしました。
お願い、ずっと傍にいて……サインをして……心の中で懇願する様に、メルヴィンの瞳を確かめながらその瞼にキスをしました。
その時でした。

「……ペンを……ペンを貸して下さい」

 コモン様がペンをメルヴィンに渡し、メルヴィンはサインをし、正式にわたくしの愛人となったのです。
わたくしは宝石箱に置いてあった、ピアスの穴開け用の少し太めの針を持ってきました。
そしてメルヴィンに渡しました。

「? これを私にどうしろと……?」
「それでわたくしの耳に穴を開けて頂戴」
「はっ?」
「ピアスの穴よ」

 わたくしがそう言うとコモン様が反応しました。

「針でやると痛いぞ? 魔法でやった方が早いし、痛く無いじゃないか」
「痛い思いをして血を流したいんです」
「シエラ……どうして?」

 コモン様が不思議そうにわたくしを見つめました。

「わたくしの一番はコモン様、貴方です。それは変わりません。わたくしの蜜花も貴方の物です。けど、わたくしはメルヴィンの事も好きで愛しています。だから、わたくしの体に穴を開けて、血を流させなさい。……わたくしがそうして欲しいの」

 わたくしはメルヴィンの頬を撫でました。

「……シエラ様っ!」

 跪いたままだったメルヴィンが、わたくしの腰に両腕を伸ばし抱き付きました。

「でも、私はシエラ様を傷つけたくない! 痛い事などもっての他です!」
「聞いた話だけど、平民がピアス穴を開ける時は氷で冷やすらしいよ? そうすると感覚が鈍くなるとかって聞いた。エアアイスで耳だけちょっと冷やしてみるかい?」

 コモン様がそう言ったのでわたくしは頷きました。すぐにエアアイスの呪文が唱えられ、わたくしの耳の辺りは冷えてきて、感覚が鈍くなった様に感じました。
わたくしは壁際に置いてある丸椅子を持って来てメルヴィンの前に座りました。

「準備はできたわ、さぁ開けて頂戴」

 メルヴィンの手には針が握られています。

「私に貴女を傷つけろと……?」
「そうよ。傷つけて、この痛みごと貴方の物にして? ねぇ、メルヴィン」

 メルヴィンは一瞬諦めた様な顔をしてから何かを決意したのでしょう、私に近寄り耳たぶに触りました。

「……小さくて、柔らかくて穢れを知らない貴女の耳、こんな所に穴を開けるなんて……」
「穴を開けて穢すのは、誰でも無い貴方よ? 貴方だから許すの、メルヴィン」

 メルヴィンは耳たぶの端を持ち、針でわたくしの耳たぶを刺しました。針はそこに突き刺さりましたが、震えていたからか、思いっきり刺せなかったのでしょう、皮一枚分残って、裏側にまで針の先が出ていませんでした。

「ああっ! シエラ様!」
「もっと奥まで入れて? ちゃんと皮を突き破ってね? じゃないと、中途半端だとわたくしが痛いの」

 コモン様の魔法で感覚は鈍いですが、やはり痛みは少しあります。眉間に皺が寄りました。でも、痛そうな顔をしては、メルヴィンがわたくしに穴を開けられません。
わたくしは平静を装って、普通に話しました。

「申し訳ございません!」
「殿方は女の蜜花は平気で破ると言うのに、耳たぶに穴を開けるのは怖いなんて、意気地が無いのね……?」

 わたくしがふふっと笑うと、メルヴィンは顔を真っ赤にして言いました。

「私が愛しているのは後にも先にもシエラ様だけです! 他の女の蜜花など、破った事はございませんっ!」

 え? と言う事は……メルヴィンは25歳で童貞……。
でも、よくよく考えたらそれもそうな気がします。メルヴィンはわたくしが3歳の頃から令嬢執事として、常にわたくしの傍に居た記憶があります。彼女を作る余裕など無かったのでしょう。仕事に真面目なのは良いのですが、プライベートはもっと楽しんだ方が良いと思うのですけどね。

「ええっ!?」

 またケィティです。驚くのは構いませんが、声を出さないようにして貰いたい物です。ベティなんて文庫本を読んだまま、わたくし達の事など丸っきり眼中にございません。ベティを見習って欲しいですね。

「一気にやって? わたくしに痛い思いをさせたくないなら」

 メルヴィンは頷き、ぐっと針を押し込みました。つぅっと耳から血が流れているのが分かりました。メルヴィンはぐりぐりと抉る様に皮を突き破ると、針を一回りさせて抜きました。
わたくしの耳たぶをその口に含み、舐めながら吸いました。
くすぐったくて気持ちが良くて、まるでメルヴィンに包まれている様でした。
メルヴィンが反対側の耳に穴を開けようとしていると、コモン様が自分の宝石箱から仮留め用の金のピアスを出してきて、私の耳に付けました。

「俺が昔使ってたやつ、今使ってないから。ちゃんと消毒済みだよ」

 もう片方の方はメルヴィンが躊躇無く耳たぶを刺し、一度で針が突き抜けました。そちらの耳たぶもメルヴィンは口に含みちゅうちゅうと吸いました。
そのあとコモン様がまたピアスを嵌めてくれました。

「じゃ、準備完了だね」

 コモン様が前から、わたくしの寝巻きの前ボタンを外していきます。メルヴィンは後ろから寝巻きの裾に手をいれ、紐ショーツを脱がし始めました。

「えっ? えっ? えっ?」

 ケィティが、今起きてる事が理解出来ない様で目を丸くしています。

「少しお静かに……。あと、閨番の事はあるかも知れないと、面接の時に言いましたし、書類にも書かれていますよ? きちんと確認しなかったのですか?」

 ベティがケィティを窘めています。
紐ショーツはストンと床に落ち、前ボタンを全部外された寝巻きは、メルヴィンが手際良く脱がせてくれました。わたくしはコモン様に両手を上げさせられ、そのままシュミーズを上に引っ張り上げ、脱がされて裸になってしまいました。
裸のわたしくをコモン様は寝台に乗せ、わたくしはごろんと横になりました。
コモン様とメルヴィンは二人共洋服を脱ぎ始め、裸になりました。二人共一物がいきり勃っています。

「もしかして……三人で致すのですかっ!? お二人の……ちんこが勃っていますし……大き過ぎます!」
「実況中継しなくて宜しい! ちんこ言うんじゃありません!」

 ベティがケィティの発言についにイラ立ち、後頭部を文庫本で叩きました。

「痛たたた……酷いですぅ」

 ケィティは涙目になっていました。
コモン様はごろりと横になったわたくしの足元に、メルヴィンはわたくしの枕元に来ました。コモン様はわたくしの臍を舐めてそのまま下に下がって行き、わたくしのぴたりと閉じたたてすじに舌を細くしてこじ開けてきました。メルヴィンはわたくしの乳首を持て遊んだあと、自分の肉棒をわたくしのお口に入れました。
久しぶりのメルヴィンのここを、わたくしは大切な物を扱うようにそうっとぺろぺろと亀頭の先を舐め、ちゅぱちゅぱと吸いました。

「うぅっ! シエラ様、先を弄りすぎです! そんなにしてはイッてしまいます……!」

 わたくしはちょっとお口からメルヴィンの物を離しました。

「でも、気持ちが良いのでしょう? ほら、ちょっとちゅぱちゅぱしただけなのに、こんなにメルヴィンのお汁が出てるわ?」

 わたくしはその汁が垂れてきたので陰茎の下の方から舌で掬う様に舐め取りました。

「ちょっとしょっぱいわ」

 メルヴィンは体勢を少しずらしてわたくしにキスをしてきました。メルヴィンの大きな舌がわたくしの口の中で暴れわたくしを求めます。

「ああ、シエラ様……久しぶりのシエラ様は甘くて美味しくて……絶とうとしていたのに……出来なかった。貴女はまるで……麻薬の様だ」

 わたくしはメルヴィンの肉棒を両手で握り口に入れました。そして扱きます。
メルヴィンはわたくしに責められながらも奉仕しようと懸命にわたくしの乳首をしゃぶります。ちゅっちゅっと乳首を吸う音が寝室に響きました。

「やっぱり、メルヴィンがいるとシエラの反応がいいな。さっきからここがひくついているよ」

 コモン様はその長い舌を尖らせて、れろれろとわたくしの蕾を苛めます。コモン様がわたくしの両足首を持ちM字開脚の体勢にしました。そして自分の亀頭の先をわたくしの秘所に充てて擦り付けます。上下にたてすじを撫で付けるように擦られ、それが蕾に触れてわたくしは思わず声を出してしまいました。

「んっ、」

 わたくしが声を出すと二人共喜んでしまいました。

「シエラっ!」
「シエラ様っ!」

 コモン様はわたくしに覆い被さる様に、自分の肉棒を擦りながら亀頭の先をわたくしの秘所に擦りつけ、もうあそこがぬるぬるに濡れてしまって、これはコモン様の汁だけじゃなくて、わたくしの愛液も混じっているんだと思うと恥ずかしくなってきて顔に熱を感じました。メルヴィンもわたくしの声で反応して口の中で先が膨らんだ気がします。わたくしが二人の下になって見上げていると、コモン様とメルヴィンはお互い顔を見合わせていました。

「メルヴィン、お前の考えそうな事は何となく分かるが、シエラを悲しませるな、裏切るな」
「……申し訳ありませんでした。もう二度とこの様な事はありません!」

 メルヴィンはしっかりとコモン様を見つめ、約束をしました。コモン様は頷きわたくしの太ももを閉じて、そこに自分の肉棒を挿入し腰を動かし始めました。わたくしのお股の間に太く硬く熱い物がぬっぷぬっぷと出入りします。それはわたくしの蕾と丁度擦れ、下半身がその刺激で蕩けて行く様で頭の中がぼぅっとします。

「ああ……シエラ、気持ち良い……愛してる、メルヴィンばかり見るなよ? ぅっ、くっ、……俺の事も愛してくれ!」
「ええ、コモン様、んっ、はぁ……大好きよ……きもち、いぃ」
「シエラ様! シエラ様! シエラ様ああぁああ!」

 メルヴィンはわたくしのお口の中に激しく腰を打ち付けて来ます。

「あ゛ぁっ、ぐっ、うぷっ」

 喉の奥に打ち付けられて一瞬吐きそうになりました。わたくしは両手を伸ばしてメルヴィンの腰を優しく撫でました。
焦らなくても大丈夫よ? メルヴィン。
そっとそのリズムに手を添えて、わたくしはメルヴィンが打ち付ける腰の動きをリードしました。

「すいません、すいません! シエラ様ぁああ! 愛しています! 貴女は私の物だ!」
「シエラは俺の物でもあるぞっ!」

 コモン様も一層腰の動きを早めわたくしの秘所や蕾を責め立て、わたくしは自然と腰が浮き上がりました。気が付くと腰だけ浮いて弓なりの様になっています。
ああ、お股が蕩けてぐずぐずになって、もう何も考えられません。目がちかちかしてきました。

「くっ、シエラ、いくよ、射精すからね! うぅうっ、イクっ!」
「私もシエラ様の中で……射精します! あああっ! いくううっ!」
「あ゛あ゛あああぁっ!!」

 メルヴィンの物がお口に一杯だったので、喘ぎ声にしかなってませんでした。
三人一緒に達して、メルヴィンの液はわたくしのお口の中に出されたので飲み込んでしまいました。コモン様の白濁の液はわたくしのお腹にまだ散らばっています。
わたくしはそれを指に一掬いし、ちゅぱちゅぱとその指を舐めました。
コモン様はそのわたくしの姿を見て満足しています。

「……しょっぱくて苦いけど、コモン様の愛情がこもってて美味しいです」

 コモン様がすぐにアクアウォッシュしました。
コモン様がアクアウォッシュをしたという事はまだ終わりではありません。でも、一段落ついたのでベティにお茶をお願いしました。喉が渇いたのです。
ベティが寝室から消えると、ケィティが戸惑っていました。

「……ケィティ、貴女も混ざる? メルヴィンが好きなのでしょ?」

 わたくしが聞くとケィティは動揺していました。

「あっ、あの、私が好きって言うのは……そんなハードな意味じゃなくて……こう、淡い、恋心的な? 物だったんですけど……」
「? 持っていたのは淡い恋心で、肉欲は無いという意味ですか?」
「えっと、……無くは無いです、そりゃ、多少はあったと思います……でも、こんなのじゃ無かったんです……」

 わたくしにはまったく意味が分かりませんでした。
わたくしがコモン様を見るとコモン様が分かりやすく答えてくれました。

「ケィティは普通の乙女で、恋心が芽生え、付き合い、自然に体の関係になるってのが理想だったんじゃないか?」

 ん? わたくしはコモン様の言葉に引っ掛かりを感じました。ケィティの事を普通の乙女と言ったのです。

「……では、わたくしは普通の乙女じゃないのですか? わたくしはその説明の様に考えた事などありません」

 ベティが紅茶セットを乗せたワゴンを押して寝室に戻り、皆に紅茶をいれています。
「まぁ、伯爵令嬢の場合、親が結婚相手を決める事が多いからなぁ、だからメルヴィンも自由恋愛みたいな事は教えて無かったんだろうな? ……じゃあ、シエラはどんな風に考えているんだい? 恋愛について」
「……前は何も考えていませんでした。こんな出来損ないなわたくしを、愛してくれる人などいないと思っていたからです。でも最近はこう思ってます、……わたくしを愛してくれる人には、わたくしの全てを持って応えたいと。この身も心も捧げます、それがわたくしの愛情です」
「ふむ、シエラ、君はわかりやすいね」
「難しく考え込むのは性に合いませんの。そんなのは哲学者の仕事ですわ」

 それを聞いたメルヴィンがははっと笑いました。

「わたくし笑ってしまう様な事を言ったかしら?」

 メルヴィンが少し素に戻って言いました。

「いいえ、自分が馬鹿だったなぁと思いまして。自分は何も無いと卑屈になっていたのかもしれません」
「何も無くないわ? 貴方にはわたくしがいます」
「ええ、それに気付かせて頂きました」
「所で、お茶が冷めてしまいます、どうぞ?」

 ベティが皆にお茶を勧めました。
その後、黒縁眼鏡の端をくぃっと上げてケィティに言いました。

「ケィティ? 貴女、同盟会議に参加するの?」
「え? え? 同盟会議って、閨事の事ですよね? ……先程シエ……、あ、いえ、奥様にも聞かれましたが……」
「ちょっと待ってくれ、それは俺達に拒否権は無いのか?」

 コモン様が困った顔をして言いました。
ベティの厳しい目線がコモン様に突き刺さります。

「俺さぁ、正直言うと、今まで一杯女と遊んできて、【遊び人】て周りからも言われてきた。でも、ここんとこ……勃たないんだ。年のせいかな? まだ25歳だと言うのにさぁ?」

 ん? さっきはびきんびきんにそそり勃っていましたが、どういう事でしょうか?
ベティが眉間に皺を寄せて言いました。

「先程は奥様の前でバキバキにそそり勃っていたのは気のせいでしょうか?」
「いや~それがシエラには勃起するんだよね~。この前魔道具関係の接待で連れて行かれた店の女の子にさぁ、誘われて宿に行ったのは良いんだけど……結局勃たなかったんだよね……たぶん、ケィティがエロい格好して誘ってきても、俺、勃たないと思う! 勃起しない自信があるっ!」

 コモン様は賢いはずなのに、たまにお馬鹿に見えるのは気のせいでしょうか?
浮気を自白するなんて……後でお仕置きですね。そうね、鞭で苛めてあげましょう。
ベティは右眉を上げて言いました。

「相変わらず女性に対して失礼な事を平気で言う男ですねぇ……。教えてあげましょう、旦那様が何故他の女に勃起しなくなったか」
「え? 分かるのか?」
「分かります。それはロリコンという不治の病に掛かってしまったせいです。もう幼女にしか勃起しませんからね? 浮気は止めた方がいいですよ? 相手の女性の前で勃たなくて恥を掻くだけですからね」

 ベティは蛆虫でも見るような目で、コモン様を蔑むように見ました。
コモン様は固まっています。

「私もたぶん、ケィティが同盟会議に参加しても勃たないと思います」
「ええ、メルヴィンさん、あなたは生粋のロリコンですからね、仕方無いでしょう」

 ベティの一言でメルヴィンは撃沈しました。呆然としてぴくりとも動きません。

「私、愛の告白をした訳でも無いのに、何だか二人の男性に振られた気分です……」

 ケィティが、ぷうっっと頬を膨らませベティを上目遣いで見ました。

「その割に……にこやかな顔をしているけど?」

 ベティが聞くとケィティはきらきらした瞳で答えました。

「だって、私興奮したんです! あんな小さな奥様の体を、二人の大人の男が蹂躙するんですよ? ちんこ咥えて、お股でも受け入れて、もう……興奮して、涎が出そうになっちゃいました!」

 呆れてベティの口が開いてしまいました。

「ちんこ言うんじゃありません! ……何だか新しい世界へ続く扉が開いた様ね?」

 ベティがこめかみを押さえています。
結局ケィティは同盟会議には参加せず、閨番もコモン様が中止にしました。
三人でゆっくり同盟会議をしたかったからです。
ベティとケィティは二人共寝室から出て行きました。
元はと言えば、閨番はこちらのお屋敷に来てから付けていませんでした。今回わたくしが閨番を付けた理由は、ケィティにメルヴィンを諦めて欲しかったからです。
メルヴィンは情が深い所がありますから、身近になれば自然と愛情を感じてしまうかと心配していたのです。でも、わたくしにしか勃起しないというなら、それは無駄な心配だったのかも知れません。
コモン様もわたくしを愛してるという割りに、お店の女の子に誘われて付いて行ってしまうなんて……まだまだ躾が足りない様ですね。
お仕置きを沢山しなくてはいけません。
わたくし達はこれからまた愛し合う予定ですが……うふふ、凄く楽しみです。


 後日、リッツ伯爵家に出す閨番報告書をケィティに任せると、報告書が官能小説の様になっていて、ベティが呆れて書き直したそうです。
わたくしはベティからその話を聞いて笑ってしまいました。

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