魔術師長様はご機嫌ななめ

鷹月 檻

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第四章

38 6番目の庇護者候補(エピローグ)

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 ネルガル様に抱き上げられたまま、来た時と同じような白い空間を通って私は白空宮殿のドーム状の内宮に出た。父神様ももちろん一緒に付いて来ている。
あちらでは二月程いて伸びた髪が何故かあの白い空間を通ったら元通りの髪の長さに戻っていた。
父神様がネルガル様から私を取り上げて抱きしめた。

「まったく……どれだけ我が心配したと思っているのか……この馬鹿娘が」
「申し訳ありませんでした」

 私は床に降ろされた。

「所で、イズモ会議はもう終わったんですか?」

 私が聞くと父神様とネルガル様が顔を見合わせた。

「そなたが消えてからこちらでは4刻程しか時間が経っていない。イズモ会議は明日だ」

 あっちでは二月が経っていたのに、こちらでは4刻?

「取り合えず、談話室に行かないか? そっちでゆっくり座って話さないか?」

 ネルガル様がそう言うと父神様も頷いた。

「我はリシュフェルに茶の用意をする様に言ってくる、先に二人で談話室に行ってくれないか」
「わかった」

 私はネルガル様と談話室に行った。
室内に入るとやはりここも真っ白に整えられた部屋で私は白くてふかふかなリラックスチェアに座った。ぼふっと体が沈みこむ。
テーブルを挟んだ真向かいの長椅子にネルガル様が座った。

「本当に無事に帰ってきて良かった……お前がいなくなったのは私のせいでもあるからな、心配したぞ?」
「ネルガル様のせい? どうして? 私が移動の呪文をする時に余計な事を考えたせいだと思うんですけど?」
「あの神呪は少し難しい、雑念があるとやばいことになるからな。普通は帰りの呪文も教えてから実施訓練するんだが、神呪を教えるのが久しぶりすぎてアズライルも私もそれを失念していたんだ。それに、私が『逆行』の呪文などと言わなければお前も興味を持たなかっただろう? 結局私が好奇心に火を付けた形になったからな……」
「でも、これで帰りの呪文を教われば、延々とお寿司が食べ放題ですよ?」
「お前は懲りてないのかっ!?」

ネルガル様は私に呆れていた。
ネルガル様と他にもお話しをしてまったりしていると父神様が来た。
父神様の後ろには10代後半位の無表情なメイド服を着た女の子とワゴンにティーセットを乗せたリシュフェルがいた。

「アリア、紹介する、こちらは混沌の狭間の管理人である機械人形だ。オートマタが制御装置を直してお前を助けた。ちゃんと礼を言え」

 機械人形? オートマタ?
顔に線がある以外は凄く人間ぽい。なのに人間じゃないの?
私はリラックスチェアから立ちあがりぺこりとお辞儀した。

「ありがとうございました! もうこの時代に帰れないんじゃないかって……凄く不安でした。助けてくれてありがとうございます!」
「貴女がアリアか。思ってたよりも小さいですね」
「え?」
「貴女の話は聞いています、皆可愛らしいというが、確かに可愛いかも知れない」
「ん? アバヤを着ているのに分かるの??」
「透過して見ていますからね」
「ぎゃっ!」

 私が慌てて体を隠すとオートマタはクククと笑っていた。笑い声が不気味過ぎる。
ってか、オートマタの言葉に疑問を持った。『皆』? 誰から私の話を聞いたと言うのか? 父神様からかな?
疑問に思っているとリシュフェルが皆にお茶を出していた。
父神様がオートマタに椅子を勧めた。

「取り合えず、そこに座れ、オートマタ」
「いいえ、私は立ったままで結構です」

 リシュフェルが立ったままのオートマタにお茶を渡していて、オートマタはそれを普通に飲んでいた。
へ~機械でもお茶を飲めるんだ? 体の中ってどうなってるんだろう?
とか思って気になってついじろじろ見てしまった。
そんな私を見て父神様がゴホンと咳払いをして、私の隣のリラックスチェアに座った。オートマタはネルガル様の座っている長椅子の横に立ったままでいる。

「リシュフェル、庇護者候補の書類は持って来たか?」
「はい、持って来ましたけど……ウィルスにやられて書類も穴あき状態ですが……こんな物でも良いのでしょうか?」
「アリアが見たがってた、渡してやってくれ」

 リシュフェルは所々穴の開いた書類を一枚私に渡した。
私はそれを見て愕然とした。
その書類にはこう書いてあった。





〇アリア=アズライルの庇護者候補に関するデーター(相性)



■1位レイジェス=アルフォード24歳、99%(死亡)
■1位セバス=ブラックウェル26歳、90%
■2位ユリウス=ワイアット=シルヴェストル23歳、89%
■3位                25歳、85%
■4位                28歳、80%
■5位                10歳、78%
■6位フェリシアン=アルフォード45歳、77%



※相性第一位のレイジェス=アルフォード死亡の為、2位以下を繰り上げる。






『レイジェス=アルフォード死亡の為』!?

 私が驚いてその書類を持ったまま固まっていると父神様が不審に思ったのか、私からその紙を取り上げて読み始めた。

「……何だこれは……」

 父神様が発した言葉で私は我に返った。
もしかして私が過去に飛んだから? 歴史が変わってレイジェス様が死んじゃったってこと? それに何故かレイジェス様のお父様の名前がある。彼はもう亡くなったはずなのに死亡とされていないのは何故?
色々考えたら居ても立ってもいられなかった。

「父神様、わたくし、帰らなきゃ! ……レイジェス様が! レイジェス様が……!」
「アリア、落ち着け! レイジェスにチャンネルを合わせる」

 父神様はそう言うと腕をまっすぐ伸ばして唱えた。

『レイジェス=アルフォード・チャンネル』

 ヒュンと音がして室内の何もない空間にテレビのモニターの様な画面が映し出された。そこには普通にお屋敷の中でセバスと話し、笑っているレイジェス様が映し出されていた。
私はほっとした。

「……良かった、ちゃんとレイジェス様は生きてる!」
「しかし、これはどういう事なんだ?」

 父神様はモニターと書類を交互に何度も見直している。
ネルガル様がオートマタに聞いた。

「制御装置は直ったんだよな?」
「ええ、きちんと直しました」
「じゃあ、もう一度データーを取り出してみればいいんじゃないか? たぶん、以前にアズライルがこの書類を作った時はもう既にウィルスが蔓延していた可能性が高いわけだし、正確な反応が出なくてバグったのかも知れない」
「ふむ……。だが、確かにあの時機械の画面の方ではレイジェス死亡などとは出なかったんだがなぁ……。書類と画面が違うとは、あの時点で制御装置がバグっていたという事なのか……?」

 父神様は首を傾げて考えながら、リシュフェルとオートマタを連れて制御室へ向かった。
私とネルガル様はここにそのまま残る事にした。

「しかし、残念だったな?」

 ネルガル様に急にそう言われて何のことかと思った。

「え?」
「他の庇護者候補について知りたかったんだろう? 3位、4位、5位の名前が見えないのではちっとも役に立たないなと思ってな?」

 ネルガル様は書類をパチンと指で弾いてテーブルに置いた。
3位~5位の名前の部分には穴が開いていてそこに位置する者の名前は分からなかった。分かるのは年齢と相性の%だけ。
そして、私がフェリシアンに触れられても嫌だと感じない理由も分かってしまった。
彼は本来なら表示される事の無かった6番目の庇護者候補だった。

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