ミルキル!

上本琥珀

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22・鈴ちゃんとねおちゃん

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 今までは幽霊の案内で、近いところからって不思議に向かっていたけど、今は目的地を外れ、鈴ちゃんとねおちゃんが居る場所に向う。

「中央校舎の二階にいたっぽいけど……」
「それなら、教室だろうな」

 向かっている途中、ずっと考える。
 なんで、こんな時間に学校にいるの?
 二人で来た?
 いや、二人そんなに仲良くない。
 何かに呼ばれた?
 そういう不思議があったら、幽霊が教えてくれると思うのに、何も言われてない。

(ほんと、不思議だな)

「満永、接触する前に二人の事を見とけよ。何かに取り憑かれているかもしれない」
「何かが取り憑くことってあるの?」

(そんな怖いこと)

 円地くんは、呆れたように言う。

「さっき、理科室で見ただろ」

 そういえば、理科室にいた二人? は、人になりたい人体模型と、人の体が欲しい骨格標本だった。

「パニックで逃げさせないように、静かに近づけよ。声をかけただけで、ビックリされる可能性がある」

 円地くんの真剣な雰囲気に、わたしも重く頷く。
 だけど、階段を上る頃には、ぎゃーぎゃーと言い争っている声が聞こえて、わたし達の雰囲気も緩んでくる。

「マジかよ」

 円地くんは面倒くさそうにし、幽霊は笑っている。
 階段を上がり、わたしたちの教室に近づくと、ドアは閉まっていた。
 それなのに、こんなに声が聞こえていたんだ。
 中腰で、教室のドアについた窓からこそっと覗く。
 向こうは、言い争いに夢中でこっちに気づいていないようだった。

(窓越しだけど、行けるかな?)

 狐の窓を作り、二人を見てみる。
 まずは、鈴ちゃん。

『霊気が体に流れている』『守護霊は猫』『霊耐性は低い』

 次は、ねおちゃん。

『霊気が体に流れている』『霊耐性は低い』

 二人とも、何かに取り憑かれているような感じはなさそうだ。

「大丈夫そうだよ」

 こそっと告げると、円地くんは幽霊に指をさした後、ドアを指さす。
 幽霊は苦笑した後、静かにドアの鍵を開けたみたいだった。
 円地くん、いいように使っているなぁ。

「それじゃ、行くか」

 円地くんは、立ち上がると勢いよくドアを開け、入っていく。

「お前ら、ここでなにしてんだ」

 言い争っていた二人の目がこちらに向く。
 先に反応したのは、ねおちゃんだった。

「きゃって、は? なんで、瑠美ちゃんがいるの?」
「え、留美ちゃん? って、幽霊!」
「ぎゃー」

(あ、幽霊見たら、びっくりするか)

 二人の反応で、今更気づく。わたし達はもう、なれてしまっていた。
 驚愕の表情で二人は、教室から逃げようとする。
 ベランダに出れる掃き出し窓に二人は向かっていった。

「ちょっと、危ないよ」

 何があるか分からないんだし、近づいて止める。
 二人は、窓の鍵を開けようとするが、開かないみたいだった。

「はぁ? なんで、開かないの?」
「知らない。さっさと開けてよ!」

 喧嘩している二人を近くで見ると子猫と子うさぎが喧嘩しているような雰囲気だ。
 可愛い小動物がしゃーしゃー威嚇しあっているあの感じ。

「鈴ちゃん、ねおちゃん、大丈夫だよ。あの幽霊さん、怖くはないから」

 だいぶ近づいたところで声をかけると、二人は固まる。
 鈴ちゃんが、先に振り向いた。

「ほんとに、留美ちゃん?」

 その目は、疑いの目だ。

「そうだよ」

 落ち着かせるように、いつも通り話す。

「なんで、ここいるの? しかも、えっと……」

 鈴ちゃんは、円地くんを見た。
 その目は、困っている。円地くんの名前が出てこないみたいだった。

「円地くん」

 わたしが名前を呼ぶと、鈴ちゃんの喋りに勢いが出てくる。

「そう、円地くんとなんで居るの?」
「えっとねぇ」

 神の使いっていう、本当の事は言えない。

「七不思議探検だよ」
「こんな時間に? そいつと二人で? 意味わかんない。留美ちゃん別に、お化けとか興味無かったでしょ」

 一緒にいた期間があっただけあって、よく分かっている。
 喋る勢いも増していて、いつもの鈴ちゃんに戻ってきているみたいで安心する。

「それに今日さ……」
「今日?」

 何か言いたいのに、言いにくいのか、目を逸らし、ぽつりぽつりといった感じで言う。

「保険室、行ってたじゃん。……体調、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ」

 心配しててくれたんだ。
 鈴ちゃんの優しさが、とっても嬉しい。

「円地くんとはね、最近よく話すの。それで、なんか色々あって一緒にくることになったの。幽霊さんは、偶然この学校であって、色々案内してくれていたんだ」

 一気に言っているだけで、だいぶあやふやな説明に、鈴ちゃんは好きじゃないものを食べた時の顔をする。

「意味わかんない」
「まぁ、わたし達の事情はそんな感じなの。二人はなんでここに居るの? 一緒に来た?」
「別にぃ、偶然会っただけ。わたしは……」

 鈴ちゃんは黙ってしまう。
 それ以上は、言いたくないらしい。

「ねおちゃんは、なんでここにいるの?」

 わたしが質問するが、無視される。いじけたように髪の先をくるくる指に巻いていた。
 ねおちゃんも言いたくないらしい。
 ねおちゃんの場合は、今日、あんなことあったばっかだし、わたしに話すのが嫌なんだろう。

「よく分からないけど、予定は終わった? なら、帰る? わたし達はまだだけど、外まで送るよ」

 七不思議制定に鈴ちゃんとねおちゃんがいるのは、都合悪そうなので、ちょっと誘導してみるが、鈴ちゃんはぐにゃっと泣きそうな顔をする。

「留美ちゃん、知らないの?」
「何が?」
「私たち、小学校から出られないよ」
「えっ、そうなの!?」
「知らなかったの?」

 わたしは驚いているけど、円地くんを見ると驚いていない。
 分ってたのかな。

「うん、知らなかった。えっ、二人っていつからこの学校にいたの?」
「教室の時計が止っちゃっているから、わかんないけど、結構前。留美ちゃんは、夕方になる前からいた?」
「居たよ」
「わたし達もその前から」

 えー、じゃあ、本当に結構居るんだな。
 もう、二、三時間くらい?

「ここ、ほんと意味わかんないだから。変なの居るし、スマホ繋がらないし」
「変なの?」
「なんか、めっちゃ追われた。だから、この教室に鍵かけてたの。……あれ、鍵?」

 幽霊が開けれるって知ったらすごく怖がりそうだから、慌てて話題を帰る。

「鈴ちゃん、スマホ持っているんだね!」
「……うん。といっても、電話繋がらないし、時計狂ってるしで、明かりつけるくらいしかできないけど」

 鈴ちゃんは、不満そうにスマホを触る。

「そうなんだー」

 円地くんに近づいて、こそっと話しかける。

「二人、学校から出れないみたいだけど、どうする?」

 危ない目にあったみたいだし、一緒に行動した方がいいかもしれないけど、そしたらわたしの目や、円地くんの切る力を知ってしまうかも知れないし、怖がることで不思議の力が増してしまうかも。
 円地くんは、二人を前に言った。

「オレらは出る方法探すけど、お前ら二人どうする?」

 円地くんの言葉にねおちゃんは嫌そうにする。

「お前らって言わないでよ」

 でも、返事するだけわたしに話しかけられるよりマシなのか?
 円地くんは、ねおちゃんに言われても態度を変えない。

「いいだろ、そんなことどうだって。で、どうすんだよ」

 鋭い視線に、鈴ちゃんとねおちゃんは、目を合わせ一瞬で離す。

「留美ちゃんは、どうするの?」
「わたし? わたしは、円地くんと一緒に行動するけど」
「じゃあ、私も付いてく」
「ねおちゃんは?」

 わたしの質問に返事はない。
 その様子を見て、鈴ちゃんは不満そうに言う。

「行く気ないなら、置いてちゃっていいんじゃない」

 本人としても、わたしと一緒は嫌なのかもしれないけど、一人にするのは少し心配だ。

「ねおちゃん、一緒に行かない?」
「やだ」

 すぐに、否定される。
 ……わたしが声かけない方が良かったかな。

「いいじゃん、追いてこーよ。ビビりだし、うるさいし、役立たないし、つれってても良いことないよ」

 鈴ちゃんの言葉に、ねおちゃんは反応する。

「は? あんたに言われたくない。……ねおも付いていく。ねおの方が役立つよ」
「どっちでも良いけど、行くなら行くぞ」

 円地くんが歩くと、二人も睨み合いながらついてくる。
 大変そうだけど、近くにいる方が安心できるし、これでいいよね。
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